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第参章
第21話 龍の子
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宴会の明朝。境内は朝靄が煙り、夏にも関わらず漂う空気はひんやりとしていた。
昨晩の賑やかさは嘘のようだった。
珍しく朧は鼾をかいておらず、彼は酔いつぶれた蘢の横で酒樽を抱えて死んだように眠っていた。
その対角線上――奥の神殿を背もたれにしてタキは座したまま眠っていた。刀を大事そうに抱えて眠るタキの前まで龍志が近づくと、彼女はぱちりと露草によく似た青い瞳を開く。
「何だよ」
「早朝に悪い。折り入った話がある」
その言葉を告げると、龍志は神殿を横切り、裏手へと向かった。
背後からかすかな衣擦れの音が響く。タキがすぐさまついてきたのだろう。静かな足音を確認し、龍志は裏戸をそっと開いた。
案の定、タキはすぐに姿を現した。彼女が表に出ると、龍志は静かに戸を閉める。
「おい、匂いから察するが……ろくでもねぇ報告なら今、叩っ斬るぞ」
その言葉に龍志は目を丸くする。さすがは獣の妖――分かるのか。
「鋭いな、だがそうじゃない」
一応応えると、彼女はふんと鼻を鳴らした。
「生憎おれは、ただの妖だ。一晩の過ちを懺悔したいなら入り口で酔い潰れて伸びてる高飛車な神獣にでもしてこい。何があろうがおれには関係ない」
タキは肩をすくめ、朝靄に霞む神殿の裏戸の縁にもたれる。青の瞳が、早朝の冷たい光を映して鋭く光った。
「お前のことなら問答無用で斬りかかって来そうだと思ったから、予想外だ……」
「おキネがお前に惚れ込んでるのは見ていりゃ分かるからな、自然な流れで成り行きだろ? いちいち文句を言うほど、おれの器が小さくない。おれはあいつの親でもつがいでもない。そもそも同種でもない」
……ただのダチだ。と付け添えると、彼女はふん。と鼻を鳴らす。
「なるほどな……」
「……それで本題は何だ」
――下らぬことなら戻って寝ると、青い瞳を細めて彼女は唇を曲げた。
「……お前は二百年生きてると言ったよな?」
静かに龍志が訊けば、『それがどうした』とでも言いたげに、タキは眉をひそめる。
「それだけ生きてる上、狸という種族を考慮すれば……季音が何かはさすがに知ってるだろ」
それを告げた途端、タキは青々とした目を見開く。
明らかに知ってるだろう――それを確信して龍志はさらに追求した。
「どうして、〝あれ〟に近づいた。お前は賢いから分かるはずだ――手に負えないだろうことを分かっていて、どうして俺からあれを取り返そうとした。お前は季音を友だと言ったが、あれを本当に友だと思っているのか?」
するとタキは龍志から視線を反らし、澱でも吐き出すよう、深く息をつく。
「そもそもお前が何者なんだよ。神に通じる力を持つ人とは分かるが……」
「ただの神職者で陰陽師だ。数百年前も陰陽師だった。お前たち獣の妖と同じで、輪廻前の記憶を継いでいるだけだ。数百年前に荒神を封じた奴と言えば分かるか? お前ら狸の一族にも沢に設けた祠を見守れと散々に脅したからな」
――そこまで言えば分かるだろ。と、龍志が告げると、タキは眉間に深い皺を寄せた。
「いまだに新しい伝承だ。だから分かるさ。そのお陰で意味不明な掟が課されてこっちは、散々な使命を背負わされてるからな」
反吐でも吐き出すようにタキは言った。
――過去の自分、詠龍は荒神を封じた後にこの祠を何としてでも守れと狸の妖たちに頼んだことがあった。従わなければ、お前たち一族を末代まで呪い続けるくらいのことは言っただろう。
だが、さすがにその後の狸の内部事情や掟のことなど分かりもしない。
何せ詠龍は荒神と藤香二つの魂を封じたことにより、呪詛返しの負荷に肉体は耐えることができず、その後二年足らずで黄泉へと旅立ったのだから……。
龍志が神妙に眉根を寄せていれば、タキは首を掻きながら一つ舌打ちを入れる。
「封印が解けた時、荒神を鎮めるために魂を捧げる贄を選ぶことになった。簡単に言えば、〝せいぜい満足するまで嬲り殺される役目〟だ。その贄は、新月の夜に輪廻した〝獰猛〟な血筋を持つ狸から選ばれる。そして、その狸を〝狸として扱わず龍の子〟として扱う――つまり、狸でありながら狸でない存在として、群れから疎外される。それがおれだ」
「いかにも温和で臆病な狸がやりそうなことだな」
ため息交じりに龍志が言うと、タキは「だろう?」と鼻で笑った。
「そいで、今のあいつは人の方だろう? あんな妖気の欠片もない愚図な荒神がいるか。おれは様子を見ようと思った。そもそもあいつを殺そうが、中に潜むのは荒神だ。それで終わるなんて思わないからな、どうすることもできないから一緒にいただけだ」
「それで情が移ったと……」
彼女の態度や行動と照らし合わせると、そうだろう。そうとしか言えないだろう。
彼女もまた輪廻の後は孤独に生きていたのだと想像も容易い。きっと、寂しさもあっただろう。
どうやらこれが図星のようで、タキは特に何も言い返さなかった。
「この件を山の妖は知ってるのか?」
訊くと、彼女はすぐに頷いた。
「狸が祠を護る役目を負ってるのは誰もが知ってる。けれど皆、高みの見物だ。おキネが荒神の器だと分かってるはずなのに、誰も本当のことを口にしない。荒神が顔を出して山を荒らされても困るからな。それに、入れ物の肉体を壊しただけで終わるはずがないってことも分かってる。正体は堕ちた神だ。次の入れ物を探すのは目に見えてる。だから、誰もあいつを殺そうとしなかった。〝自分を知ってるか?〟とあいつが問いかけても、皆、しらを切るんだからな」
――ただ静かに見守る他はない。
そう付け添えて、タキは貝殻のような白い瞼を伏せた。
「あとな。あいつ、随分と綺麗な簪を見てはおれに〝誰かは分からないけど会いたい人がいる〟って散々言ってた。詮ずるところお前が人だった頃のおキネのつがいだろう?」
タキは瞼を持ち上げて、龍志の方をまっすぐに射貫く。
――そこまで分かっていたのか。人の話を聞きもしない粗暴な狸だと思っていたが、どうやら頭は良いらしく鋭い洞察力を持ち合わせている。龍志は感心してしまった。
「ああ、全部当たってる。賢いなお前は」
素直に褒めれば、タキは身震いをして『お前に褒められると寒気がする』と舌打ちを入れた。
「さておき、話を戻すが……どうしてお前はあいつを取り戻そうとした?」
「供物として自分なりの責任もあったからだ。おれは人は嫌いだが……あいつは、何も知らずにこんなおれを馬鹿みたいに信じてくれた。笑ってくれた。だから、そんなあいつが好きだ。だから必ず取り戻して、時が満ちれば己の責任を全うしようとした」
――理由はそれだけじゃダメか?
潔いほどにはっきりとタキは言う。
その瞳は、あまりにもまっすぐで気圧されてしまいそうなほど――龍志はすぐに首を横に振る。
「ダメではない、それでいい。分かってるだろうがいずれ時は来る。季音が妖術を使ったのは見ただろう。お前の背負ったその使命、俺が塗り替えさせてくれ。そもそもが狸だが〝龍の子〟なのだろう――ならば、〝本当の龍の子〟になれ。俺の式神になれ」
決して無駄死にするな。と、凄み──龍志はさっと懐から短冊型の呪符を取り出した。
それは何も書かれておらず、真っさらなもので……。
しかし、見たタキはたちまち目を尖らせて、龍志を睨み据える。
「呼び出しの理由は、そういうことか。しつこい奴だ。そもそもお前に負けた身だ、拒否もできぬことを良いことに、随分強引な勧誘をするもんだな」
顔をしかめたタキは彼の手にある白紙の呪符を奪い取るなり、くしゃくしゃに丸め込む。
「タキ、俺の式神になれ。時が満ちる寸前で俺は季音を討つ。それが俺が輪廻した意味だ。今度は封じやしない。本気で殺す気でいる。――俺の詰めが甘すぎたせいで、お前のような者を出したことは事実だ。供物ではなく一つの刃として、お前の力を貸せ」
真摯に龍志はタキに頭を垂れた矢先。頬にたちまち鈍痛が襲いかかった。
殴られた――と、それを悟るのはすぐだった。顔を上げると、案の定タキは拳を握って震えていた。
「行く末はどうにもならんことは初めから覚悟してる! だが、お前は本当にそれで良いのか! お前は前世から、あいつのつがいだろ! 騙した挙げ句の果てに殺すのか、他のやり方はないのか! ……何が、何がっ、何が狸は傲慢だ! そっちの方が身勝手で傲慢だ!」
――だから、おれは人は大嫌いだ。と、タキは剣幕にがなるが龍志は怯むことなく、頷いた。
「悔いはある、罪悪感もある。だから、時が満ちるまでは妻を命がけでも幸せにすると誓った。愛しく思う気持ちも引き継がれたのだから、過去に詠龍が寵愛した以上に愚図なあいつが愛おしく思う。だが、やらねばならない」
――自分の命を投げ出して死に急ぐとしても成し遂げなければいけない、自分にしかできないことだから。と、胸に秘めた思いを全て曝け出し、龍志はタキを真摯に射貫く。
「頼む。手数になってくれ」
タキは今度は殴ってこなかった。ただ一つ落胆のため息をつき、彼女は龍志に顔を上げるように言う。
「分かった。悔しいが、おれはもうお前に刃向かえない。だが、条件がある。お前の式になるには、おれは惨めなほどに力不足だ。血反吐を吐いてでも神獣や鬼と互角になれるほどに急ぎ強くなる」
──だから、暫くは待って欲しい。
ただそれだけを告げて、タキは朝霧の中に姿を消した。
昨晩の賑やかさは嘘のようだった。
珍しく朧は鼾をかいておらず、彼は酔いつぶれた蘢の横で酒樽を抱えて死んだように眠っていた。
その対角線上――奥の神殿を背もたれにしてタキは座したまま眠っていた。刀を大事そうに抱えて眠るタキの前まで龍志が近づくと、彼女はぱちりと露草によく似た青い瞳を開く。
「何だよ」
「早朝に悪い。折り入った話がある」
その言葉を告げると、龍志は神殿を横切り、裏手へと向かった。
背後からかすかな衣擦れの音が響く。タキがすぐさまついてきたのだろう。静かな足音を確認し、龍志は裏戸をそっと開いた。
案の定、タキはすぐに姿を現した。彼女が表に出ると、龍志は静かに戸を閉める。
「おい、匂いから察するが……ろくでもねぇ報告なら今、叩っ斬るぞ」
その言葉に龍志は目を丸くする。さすがは獣の妖――分かるのか。
「鋭いな、だがそうじゃない」
一応応えると、彼女はふんと鼻を鳴らした。
「生憎おれは、ただの妖だ。一晩の過ちを懺悔したいなら入り口で酔い潰れて伸びてる高飛車な神獣にでもしてこい。何があろうがおれには関係ない」
タキは肩をすくめ、朝靄に霞む神殿の裏戸の縁にもたれる。青の瞳が、早朝の冷たい光を映して鋭く光った。
「お前のことなら問答無用で斬りかかって来そうだと思ったから、予想外だ……」
「おキネがお前に惚れ込んでるのは見ていりゃ分かるからな、自然な流れで成り行きだろ? いちいち文句を言うほど、おれの器が小さくない。おれはあいつの親でもつがいでもない。そもそも同種でもない」
……ただのダチだ。と付け添えると、彼女はふん。と鼻を鳴らす。
「なるほどな……」
「……それで本題は何だ」
――下らぬことなら戻って寝ると、青い瞳を細めて彼女は唇を曲げた。
「……お前は二百年生きてると言ったよな?」
静かに龍志が訊けば、『それがどうした』とでも言いたげに、タキは眉をひそめる。
「それだけ生きてる上、狸という種族を考慮すれば……季音が何かはさすがに知ってるだろ」
それを告げた途端、タキは青々とした目を見開く。
明らかに知ってるだろう――それを確信して龍志はさらに追求した。
「どうして、〝あれ〟に近づいた。お前は賢いから分かるはずだ――手に負えないだろうことを分かっていて、どうして俺からあれを取り返そうとした。お前は季音を友だと言ったが、あれを本当に友だと思っているのか?」
するとタキは龍志から視線を反らし、澱でも吐き出すよう、深く息をつく。
「そもそもお前が何者なんだよ。神に通じる力を持つ人とは分かるが……」
「ただの神職者で陰陽師だ。数百年前も陰陽師だった。お前たち獣の妖と同じで、輪廻前の記憶を継いでいるだけだ。数百年前に荒神を封じた奴と言えば分かるか? お前ら狸の一族にも沢に設けた祠を見守れと散々に脅したからな」
――そこまで言えば分かるだろ。と、龍志が告げると、タキは眉間に深い皺を寄せた。
「いまだに新しい伝承だ。だから分かるさ。そのお陰で意味不明な掟が課されてこっちは、散々な使命を背負わされてるからな」
反吐でも吐き出すようにタキは言った。
――過去の自分、詠龍は荒神を封じた後にこの祠を何としてでも守れと狸の妖たちに頼んだことがあった。従わなければ、お前たち一族を末代まで呪い続けるくらいのことは言っただろう。
だが、さすがにその後の狸の内部事情や掟のことなど分かりもしない。
何せ詠龍は荒神と藤香二つの魂を封じたことにより、呪詛返しの負荷に肉体は耐えることができず、その後二年足らずで黄泉へと旅立ったのだから……。
龍志が神妙に眉根を寄せていれば、タキは首を掻きながら一つ舌打ちを入れる。
「封印が解けた時、荒神を鎮めるために魂を捧げる贄を選ぶことになった。簡単に言えば、〝せいぜい満足するまで嬲り殺される役目〟だ。その贄は、新月の夜に輪廻した〝獰猛〟な血筋を持つ狸から選ばれる。そして、その狸を〝狸として扱わず龍の子〟として扱う――つまり、狸でありながら狸でない存在として、群れから疎外される。それがおれだ」
「いかにも温和で臆病な狸がやりそうなことだな」
ため息交じりに龍志が言うと、タキは「だろう?」と鼻で笑った。
「そいで、今のあいつは人の方だろう? あんな妖気の欠片もない愚図な荒神がいるか。おれは様子を見ようと思った。そもそもあいつを殺そうが、中に潜むのは荒神だ。それで終わるなんて思わないからな、どうすることもできないから一緒にいただけだ」
「それで情が移ったと……」
彼女の態度や行動と照らし合わせると、そうだろう。そうとしか言えないだろう。
彼女もまた輪廻の後は孤独に生きていたのだと想像も容易い。きっと、寂しさもあっただろう。
どうやらこれが図星のようで、タキは特に何も言い返さなかった。
「この件を山の妖は知ってるのか?」
訊くと、彼女はすぐに頷いた。
「狸が祠を護る役目を負ってるのは誰もが知ってる。けれど皆、高みの見物だ。おキネが荒神の器だと分かってるはずなのに、誰も本当のことを口にしない。荒神が顔を出して山を荒らされても困るからな。それに、入れ物の肉体を壊しただけで終わるはずがないってことも分かってる。正体は堕ちた神だ。次の入れ物を探すのは目に見えてる。だから、誰もあいつを殺そうとしなかった。〝自分を知ってるか?〟とあいつが問いかけても、皆、しらを切るんだからな」
――ただ静かに見守る他はない。
そう付け添えて、タキは貝殻のような白い瞼を伏せた。
「あとな。あいつ、随分と綺麗な簪を見てはおれに〝誰かは分からないけど会いたい人がいる〟って散々言ってた。詮ずるところお前が人だった頃のおキネのつがいだろう?」
タキは瞼を持ち上げて、龍志の方をまっすぐに射貫く。
――そこまで分かっていたのか。人の話を聞きもしない粗暴な狸だと思っていたが、どうやら頭は良いらしく鋭い洞察力を持ち合わせている。龍志は感心してしまった。
「ああ、全部当たってる。賢いなお前は」
素直に褒めれば、タキは身震いをして『お前に褒められると寒気がする』と舌打ちを入れた。
「さておき、話を戻すが……どうしてお前はあいつを取り戻そうとした?」
「供物として自分なりの責任もあったからだ。おれは人は嫌いだが……あいつは、何も知らずにこんなおれを馬鹿みたいに信じてくれた。笑ってくれた。だから、そんなあいつが好きだ。だから必ず取り戻して、時が満ちれば己の責任を全うしようとした」
――理由はそれだけじゃダメか?
潔いほどにはっきりとタキは言う。
その瞳は、あまりにもまっすぐで気圧されてしまいそうなほど――龍志はすぐに首を横に振る。
「ダメではない、それでいい。分かってるだろうがいずれ時は来る。季音が妖術を使ったのは見ただろう。お前の背負ったその使命、俺が塗り替えさせてくれ。そもそもが狸だが〝龍の子〟なのだろう――ならば、〝本当の龍の子〟になれ。俺の式神になれ」
決して無駄死にするな。と、凄み──龍志はさっと懐から短冊型の呪符を取り出した。
それは何も書かれておらず、真っさらなもので……。
しかし、見たタキはたちまち目を尖らせて、龍志を睨み据える。
「呼び出しの理由は、そういうことか。しつこい奴だ。そもそもお前に負けた身だ、拒否もできぬことを良いことに、随分強引な勧誘をするもんだな」
顔をしかめたタキは彼の手にある白紙の呪符を奪い取るなり、くしゃくしゃに丸め込む。
「タキ、俺の式神になれ。時が満ちる寸前で俺は季音を討つ。それが俺が輪廻した意味だ。今度は封じやしない。本気で殺す気でいる。――俺の詰めが甘すぎたせいで、お前のような者を出したことは事実だ。供物ではなく一つの刃として、お前の力を貸せ」
真摯に龍志はタキに頭を垂れた矢先。頬にたちまち鈍痛が襲いかかった。
殴られた――と、それを悟るのはすぐだった。顔を上げると、案の定タキは拳を握って震えていた。
「行く末はどうにもならんことは初めから覚悟してる! だが、お前は本当にそれで良いのか! お前は前世から、あいつのつがいだろ! 騙した挙げ句の果てに殺すのか、他のやり方はないのか! ……何が、何がっ、何が狸は傲慢だ! そっちの方が身勝手で傲慢だ!」
――だから、おれは人は大嫌いだ。と、タキは剣幕にがなるが龍志は怯むことなく、頷いた。
「悔いはある、罪悪感もある。だから、時が満ちるまでは妻を命がけでも幸せにすると誓った。愛しく思う気持ちも引き継がれたのだから、過去に詠龍が寵愛した以上に愚図なあいつが愛おしく思う。だが、やらねばならない」
――自分の命を投げ出して死に急ぐとしても成し遂げなければいけない、自分にしかできないことだから。と、胸に秘めた思いを全て曝け出し、龍志はタキを真摯に射貫く。
「頼む。手数になってくれ」
タキは今度は殴ってこなかった。ただ一つ落胆のため息をつき、彼女は龍志に顔を上げるように言う。
「分かった。悔しいが、おれはもうお前に刃向かえない。だが、条件がある。お前の式になるには、おれは惨めなほどに力不足だ。血反吐を吐いてでも神獣や鬼と互角になれるほどに急ぎ強くなる」
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ただそれだけを告げて、タキは朝霧の中に姿を消した。
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