愚図な妖狐は嗜虐癖な陰陽師に甘く抱かれる ~巡り捲りし戀華の暦~

日蔭 スミレ

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第参章

第22話 異種の親友、彼女の赤面

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 ──山の上には入道雲。
 燦々とした日差しも弱まり、カナカナとひぐらしの鳴く境内では、活気溢れる怒声が二つ響いていた。

 刀を振るうタキを相手に、朧は素手で立ち向かう。この手合わせの光景はここ最近、夕刻の日常となりつつあった。季音は蘢と境内の石段に腰掛けて、その様子を傍観していた。

「気温も高いのに、よくやりますね……毎日毎日」

 ――見てて暑苦しくて堪らないですよ。と、付け添えて、蘢は赤々とした目を細めた。確かに蘢の言う通りだろう。飽きもせず毎日チャンバラごっこを繰り返しているのだ。

「そうですね、よく飽きないですよね……」

 手扇子で熱気を払いながら、季音が応える。
 すると、『騒がしいのは迷惑だが、賑やかなことは悪くない』と、蘢が口角を緩めるので、季音も笑みを浮かべて手合わせする二匹に視線を向けた。

 ……たぶん、あの宴会の後からだろう。朧とタキはすっかり意気投合して仲良くなった。

 妖同士ということもあるが、きっと根本的な性質が似ているからこそ、こうも気が合ったのだと想像は容易い。

 だが、なぜ手合わせなのだろう……と不思議に思って蘢に聞いてみる。すると『たぶんタキ殿も脳みそは筋肉』なんて言うものだから、妙に納得してしまった。

 負かされたことが余程悔しかったのだろう。タキの性格を考えると、この手合わせはきっとタキから持ちかけたのだと想像できた。

 ただ、こうも急激にタキと朧が仲良くなるとは思ってもいなかった。大親友を取られたような気がして、季音はほんの少し寂しさを感じた。

 だが、それは口に出せるものではない。

 夫婦になることを合意してからは、季音は龍志の傍にいる時間が圧倒的に多いのだ。自分のことを棚に上げてしまう……だから、そんなことは言えたものではなかった。

 ましてや自分が人間だったことを、季音はタキに一切語っていなかった。それを話せば、この関係がぎくしゃくしてしまうのではないかと怖かったのだ。

 それでも、タキがこの社に来てから心の距離が生じたなんて思えなかった。まるで何事もなかったかのように、彼女とは今まで通りの関係なのだから。
 そんなことを考えているさなかだった。

「おい、おキネ」

 突然タキに呼ばれ、季音は驚いて裏返った返事をする。
 もう今日のチャンバラは終わったのだろうか……。彼女は刀を鞘に収め、手ぬぐいで汗を拭いながら季音の方に歩み寄ってきた。

「何だよ、嗜虐癖のことを考えてたのか」
「え?」

 嗜虐癖――それが龍志を指していると分かり、季音は目を丸く見開いた。
 すると、タキは露草色の瞳をじっとりと細め──「お前、顔に出やすいから分かるわ」と、言って鼻を鳴らされた。

「え。で……な、なに、呼んだりして」

 否定も肯定もせず、季音は平然を装ってき返した。
 先程まで汗が滲むほど暑かったが、一瞬にして背筋が冷たくなった気がした。何もかも見透かしているのだろうか。そんな気がして、タキをじっと見つめると、彼女は大きなため息をつく。

「お前が寂しそうな顔をしてたから、止めた。そんで声かけた」

 ――少し裏で話さないか? と、付け足すと同時に、タキは季音の袖を掴んで無理やり立ち上がらせた。

「お、おタキちゃん……?」

 あまりの急展開に、季音は戸惑った。それも、寂しい顔だなんて……。
 自分がどんな顔でタキを見ていたかなんて分からないが、龍志のことを出した時点で嫌な予感がした。

 思わず助け船を求めるように蘢に視線を送るが、彼は我関せずといった具合にこちらを見ようともしなかった。

 そういえば、そういう神獣だった――彼はかなりの人見知りだ。いまだに彼とタキの間には心の距離があるのだろう。
 季音はそのままずるずると、境内の裏手へと連れていかれた。

 ***

 裏戸に続く石段の上にどかりと腰掛けて、タキは季音にじっと視線を向けた。

 きっと、言わなかったことを全て吐かされるのだろうか……。
 そう思って、つい俯いてしまうと、タキは優しい声で季音の名を呼ぶ。

「なぁ、今日あいつ、夕飯何にするって言ってた?」

 思いがけない質問だった。季音は顔を上げ、吃驚して唇をあわあわと動かした。

「え、ああ……えっと、畑でお茄子を採ってたから、茄子の料理じゃないかしら」

 龍志が早朝に畑で茄子を収穫していたことを思い出し、そう答えると、タキはムッと唇を尖らせた。

「おい。おキネ。お前、魚が食いたいって言ってこいよ」
「え……え、え」

 宴会の席で出されてから焼き魚が余程気に入ったのだろうか。
 まるで子どものように催促するので、季音は眉根を下げて困り果てると、タキは噴き出すように笑い始めた。

「冗談だ。出されたものは何だって食う。約束したしな」

 悔しいが、あいつの出す飯は何だって旨いから……なんて言って、彼女は無邪気な笑顔を咲かせた。とりあえず、他愛もない普段通りの会話でよかったと、季音は胸を撫で下ろした途端だった。

「さておき、おキネ。お前、あいつのことが好きか?」

 その問いかけは、先程と変わらない平坦な口調だった。彼女の言葉を頭でしかと認識し、季音は息を飲んだ。

 ――返答次第では怒らせてしまうかもしれない。絶縁されてしまうかもしれない。真実を話せば、嫌われてしまうかもしれない。そんな恐怖に、季音の身体はたちまち戦慄いた。

「素直に言え」

 少しばかり棘のある言い方だった。もはやそれは示唆しさとも受け取れるほど――季音がタキの方を向くと、彼女は青く萌える露草色の瞳で鋭く季音を射貫いていた。

 それだけで背筋が凍りついた。だが、ここまで詰められれば、事実を言わねばならない。

「……龍志様が好きよ」

 数拍の間を置いて口にした答えは、わずかに震えていた。
 タキが肩を震わせているのを見て、季音は彼女が本当に怒っているのだと悟った。  

 当たり前だ。あってはならないことなのだから。
 叱責される覚悟で身をすくめたその瞬間――タキの様子がおかしいと季音は気づいた。  彼女がほんの少し口角を緩めたかと思うと、突然、手で口元を覆い、くすくすと笑い声を漏らし始め、季音は目を丸くしてしまった。  

「……お、おタキちゃん?」
「ばーか! 見りゃ分かるわ、そんなん!」

「……怒らないの?」

 思わずくと、彼女はさらに『馬鹿』と突っ撥ねた。

「別に。あの時、お前らが沢で乳繰ちちくり合ってるの見てたし」
「ち、ちちくりあう……」

 つまりイチャイチャしていたと。季音は顔を真っ赤にして両頬に手を当てた。

「あと、朧の横流し情報でな」

 何を吹き込まれたのか気になってしまうが……蘢の式神契約の件といい、朧の性質を考えると大袈裟に盛ったことを言っていそうな気がしてならない。

 季音がさらにぽっと顔を赤く染めると、タキは季音の袖を引っ張り、隣に座るように促した。

「むしろ、襖を隔てて隣で半年も一緒にいて何も起きない方がおかしいからな。べつにお前が幸せならそれでいいや。あいつ、人にしちゃかなり特殊だし……まぁ、お前の趣味、良いとは言えないけどな」

 思いがけない言葉だった。どこか嬉しく感じ、季音は頷き、龍志のお陰で自分が人だった手がかりを掴んだことを話した。

 ……会いたかった人は龍志だったと、その件も告げたが、彼女の反応はとても穏やかだった。だが、つい先程のタキの発言に、季音は時差で引っかかりを感じた。

「そうだ待ってよ、おタキちゃん。私、さらっと受け流しちゃったけど、おタキちゃんは襖も何もない場所じゃない……」
「は?」

 タキは眉間に深く皺を寄せ、気の抜けた声を出す。

「朧様や蘢様のことだけど……特に朧様、だって同じ空間で寝てるじゃない」

 ――それに最近じゃとっても仲良し。と思わず口に出すと、タキは唇を震わせ、牙が見えるほど大口を開けた。

「ば、馬鹿! 蘢はまずねぇわ、あんな貧弱高飛車神獣!」

 いくらなんでも酷い言いようではないだろうか。少しばかり蘢が気の毒になってしまう。
 それどころか、こんな大声で言ったら境内の表にいる蘢に確実に聞こえてしまうだろう。季音は盛大な悪口が蘢に届いていないか、妙に心配になってしまった。

「――っ。お、朧に関しても、あいつはただの飲み仲間だ! 同じ妖とはいえ種族違うし、強いからこそ尊敬する。それに、おれは頬傷なんて気にしてないって何度も言ってるのに、あいつしつこく謝るし! そういう面倒見の良さは……その、おれは嫌いじゃないが」

 怒っているのだろうか。タキは随分と早口だった。
 だが、語尾に向かうほど、彼女の頬がほんのり薄紅に染まるのを見て、季音は唖然とした。

 その表情はあまりにも新鮮だった。いや、凜々しい彼女がこんな乙女のような顔を見せたことなど、記憶の中では一度もないだろう。

「え、もしかして、おタキちゃん、朧様が好きな……の?」

 思わず口にした瞬間、タキは顔を赤々と染めた。

 これは間違いなく図星なのだろう。いや、無自覚なのか。
 そんな風に思った瞬間、季音の頭にタキのげんこつが落ちてきた。

「痛っ!」

 別に殴ることないじゃないか、と季音は視線だけで訴えた。だが、タキは今にも泣きそうな顔で拳を握り締め、ぷるぷると震えていた。

「――っ! いいか、ああいうのは決まって、乳と尻が出てる背が高い妖艶な雌鬼が好きなんだ! 見てみろ、おれのこの貧相な胸と尻を。というか、おれとあいつは異種!」

 タキが震えた声で言った。そのときだった。

「あ? 俺の趣味かぁ? 貧乳でも尻が出てなくとも、異種族でも一向に構わねぇがな。まぁ、強いて言うなら旨い酒を飲めることが絶対条件で気が合えば良い。それで抱き心地が良さそうなら最高だな」

 途端に社の横手から声が響く。タキは『い』に濁点を付けたような濁った短い悲鳴を上げた。

「……なんか僕に対する物凄い暴言が聞こえた気がしましたけど」

 案の定、蘢と朧だった。
 彼らは裏手の石段に腰掛けたタキと季音の方へ近づいてきた。

 一匹はニヤけ、一匹は明らかに不服そうな顔をしている。
 やはり聞こえていたのか。いや、聞こえているだろうとは思っていた。蘢に何か弁解したいところだが、言えば変に拗れて面倒だろう。季音は口を挟むことなく、眉を下げて彼らを見るしかなかった。

「ほぅ……そうか、タキは俺が好きなのか。まぁ、俺の条件には完全に合致してるから、つがいの候補にしてやろう」

 ――けどな、お前はもう少し肉付きを良くしろ、軽すぎ。なんて、大きな牙を覗かせて朧は優しく笑む。だが、タキは火がつきそうなほど顔を赤々と染め――

「馬鹿! 酔っ払い! クソ鬼!」
 と、金切り声にも等しい罵詈雑言を浴びせた。

 ***

 その晩、季音はその日の出来事を龍志の手枕の上で話した。
 タキの真っ赤になった顔。朧の嬉しそうな笑顔。ずっとふてくさっていた蘢……そんな話に、彼は肩を震わせて大笑いした。

「騒がしいと思ったらそんなことがあったのか。見たかった。蘢は気の毒だったな」

 まぁ、あいつの機嫌を取るのは俺の得意分野だし、大丈夫だろう。なんて笑って、彼は季音の髪を梳くように撫でた。

「でもお前は本当に良い友を持ったな。お前を取り戻そうと命までかけてくれた。そこまで思われるなんて、人であれ妖であれ滅多にあるものじゃないだろう。こういう出会いって何と言うか分かるか?」

 そうかれて、季音は思案顔になる。

「……運命ですか?」

 漠然とした答えを口にすると、彼は『そうとも言えるだろうが』と口を挟んだ。

 髪を撫でられる心地良さに、段々と眠気が漂ってきた。季音はふわっと『何ですか』と尋ねると、彼は緩やかに唇を綻ばせた。

「奇跡だ」
「奇跡……」
「そう。自然法則さえ超えたもの、神がかりな幸運だ。そうとしか形容できない」

 神がかりな幸運。そう言われてみると、確かに彼の言う通り。すべてが幸運で満たされているように感じてしまう。

「……私、きっとこの世で一番幸せな狐かもしれない」
「必ずしもあるものではない、大事にしろ。さぁもう、寝よう。夜も更ける」

 そう言って龍志は季音の頬と耳に、そして唇に唇を落とした後、裸火らかを吹き消した。
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