愚図な妖狐は嗜虐癖な陰陽師に甘く抱かれる ~巡り捲りし戀華の暦~

日蔭 スミレ

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第肆章

第28話 取り戻した記憶、藤の簪宿す過去の業

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 ※※※
 
 ……藤香御前。

 そう呼ばれた過去世の自分は、帝の妾の子。生まれつきの病弱で、二十歳までとても生きられないと言われてきた。

 薬師も匙を投げる不治の病は、悪霊や魑魅魍魎ちみもうりょうの仕業だとされた時代。藤香の父は、彼女の主治として陰陽師、藍生詠龍をそばに置いた。そして、ついには彼女の伴侶として詠龍を選び、藤香にその縁を告げた。

 きっと彼からすれば、押しつけられるような婚姻だったに違いない。それでも彼は、自分……藤香を大事にしてくれた。

 冗談を言ってからかい、意地悪な顔を見せることもあったが、彼はいつも優しかった。冷える身体を温めるように同じ床で抱きしめて眠ってくれたこと。いつも優しく触れてくれたこと。幾度も接吻くちづけしてくれたこと。ふとした時に優しい笑みを向けてくれて、これまでの孤独が嘘のように、心が満ちるほどの温もりを与えてくれた。

 ……直接的な言葉で告げることはなくとも、深く愛してくれていたことを、態度でいつも示してくれた。

 もとより、藤香は密かに憧れを抱いていた。そんな彼と一緒にいられたこと、愛されたことも、幸運であり幸せだと思っていた。

  しかし、詠龍が見抜いた藤香の病の原因は、悪霊や魑魅魍魎ちみもうりょうの仕業ではなく、ただの病に過ぎなかった。医者ではない彼にできるのは、回復を願う祈祷だけ。だが、藤香の容態が上向くことはなく、婚姻から一年も経たないうちに悪化する一方だった。ついに彼女は宮廷を追われ、寂しく去るしかなかった。

 主殿から遠い離れに住んでいたとしても、病が宮廷内に広がるのを恐れたのだろう。加えて、二年、三年と看病を続けたにもかかわらず、藤香の容態に回復の兆しがまるで見えないことから、詠龍は宮廷と朝廷での責務を解かれた。

 だが、ある意味で〝自由の身〟になったとも言える。誰にも干渉されず、哀れみや蔑みの目に晒されることもなくなった。

 そうして、二人は詠龍の生家――黒羽の地へと赴いた。

 それでも、藤香の心には気がかりが残った。詠龍は彼女の病のせいで無理やり婚姻を強いられ、専門外の病を治せなかったために御役御免おやくごめんとなったのだから。

 申し訳ないと何度も詫びたが、彼は「気に病みすぎれば不細工になる」だの、そんな意地の悪い冗談ばかり言っていた。その裏を返せば彼なりの「大丈夫」「気にするな」――それが分かるからこそ、藤香は彼の妻になれたことを改めて幸せに思った。

 来る日も来る日も布団の中で過ごす日々。時折調子が良い時は、彼の目を盗んで社に参拝することが藤香の日課だった。調子さえ良ければ、毎日のように社の神に手を合わせただろう。

 長くは生きられない。二十歳まで持つことは難しい。そう告げられても、愛おしい詠龍がそばにいるから、藤香はもっと生きたいと願わずにはいられなかった。ともに過ごす日々が増えるたび、胸には様々な願いが芽生えた。

 早く身体が良くなりますように。詠龍様と季節の花や美しい景色を見に行けますように。いつか詠龍様の子を宿せますように。

 藤香はそんな密やかな願いを、いつも社の神にそっと捧げていた。その願いが聞き届けられたのだろうか。その年の暮れ、深い雪が降り積もる凍てつく冬の夜に、女神がひそやかに現れた。

 ――願いを叶えてやろう、だから代わりに身体を貸して欲しい。
 確かにそんなことを頼まれた。

 だが、そのころには藤香も自らの死期が間近に迫っていることを悟っていた。床から起き上がることもできず、食べ物はほとんど喉を通らない。痩せ細る身体は、日ごとに力を失っていた。

 それでも、唯一の神はいつだって無謀な願いを黙って聞き続けてくれた。それくらいなら構わない――藤香は心でそう呟き、静かに合意した。だが、その瞬間、彼女の記憶はふっと途切れた。

 ***

 過去の全てを取り戻した季音は、真っ白な顔で朱塗りの門を呆然と眺めた。自分の心に住まう狐――その正体は、社の女神だった。

 その瞬間、季音は自分の身体に何かが入り込んだ後の光景を、まるで他人ごとのように思い出した。

 布団から跳ね起き、抗えない破壊衝動に駆られ、狂ったように家財を蹴散らす。出てこい、血を絶やしてやると――半狂乱で物騒な言葉を叫ぶうち、藤香の髪は瞬く間に白々と染まり、狐の耳と尾が生え、今の姿とそっくりそのままに変わっていた。

 何事かと飛び起きて駆けつけた詠龍の顔は、蒼白に凍りついていた。なにしろ、その時には藤香の姿はもはや人でなく、大きな雪白せっぱくの獣そのものだった。藤色の狐火をまとい、ふじ色の瞳の周りに朱の紋様が浮かび、尾はみるみる九本に分かれていく。

 ――見つけた。

 詠龍に爪を立て、真っ先に彼を殺そうとした。だが、詠龍は獅子といぬの二体の神獣の式を呼び出し、変わり果てた藤香と対峙した。

 破壊の衝動は、獅子を殺してもなお収まることなく燃え盛った。社を飛び出し、沢を下って狸の妖の群れに襲いかかり、山の妖を次々に打ちのめし、いくら血を浴びても満足せず、人の里へ下りて一晩中暴れ回った。

 やがて、夜が明ける頃、ようやく心がわずかにぎ、暁の光の中で詠龍が再び藤香の前に現れた。そして、彼の手によって、この身はほこらに封じられた。

 頭に流れ込む情景に、季音は目を大きくみはり、身体を震わせた。信じ難いが、これが全てなのだろう。これが自ら背負ったごうに違いない。そして、恐らく自分を完全に滅することが、龍志の背負った輪廻の宿命なのだろう。

 それでも彼は季音を愛してくれた。こんな姿になっても、藤香そのものである季音を、全身で抱きしめてくれた。いつも真っ直ぐに向き合ってくれた。その真実を理解した瞬間、涙が止めどなく溢れ、止まることはなかった。

 こんな運命はあまりにも酷い。あまりにも残酷だ。だが、この災いは無力で神頼みに縋るしかない脆弱な自分が招いたものに違いない。

 しゃくり上げながら嗚咽を漏らす季音は、激しく門を叩いた。

 自分の叫びが届いているはずだと信じながら、季音は言葉にならない叫びを上げ、門を叩き続けた。だが、その門は無情にも微動だにしなかった。

「出して……! 返して! 私の身体を返してよ! 私の龍志様に酷いことをしないで!」

 ――お願いだから返して。

 季音は懐から御札を取り出し、握りしめた。

 吉河神社の縁起物――彼の亡き父に貰ったものだ。想いはいくらあれど、無力な自分はやはり祈ることしかできない。

 再び脳裏に浮かぶ白き獣の姿。季音はその名をふと思い出した。
 まことの名は自分と同じ藤の名を持つ――藤夜ふじよと。

「藤夜様、開けて……! 私の身体を返して!」

 季音は御札をくしゃくしゃになるほど握りしめた、そのときだった。藤色の炎が自分の手から溢れんばかりに燃え上がり、札を燃やした。その須臾しゅゆ――立ちはだかる門は桜吹雪を舞い上げて開いた。

 ***

 我に返ると、見慣れた龍志の寝室だった。朝を迎えたのか、障子の隙間から朝の淡い陽光がこぼれていた。

 いつも通りの、穏やかな朝の情景。だが、この部屋いっぱいに漂う臭いは、むせ返るほどの血の香り。

 静謐せいひつに包まれた部屋の中、自分の下からか細い息の音が聞こえてきた。季音が視線を下ろす――そこには、龍志が血塗れになって横たわっていた。

 背筋が凍りついた。自分が……否、藤夜が何をしたのか想像するのも恐ろしかった。

「……龍志様?」

 季音は急いで彼から退いた。

 まるで虫の息のようだった。どこで呼吸をしているかも分からない、彼の喉からか細い音が漏れていた。季音の声に促されるように、龍志は緩やかに瞼を持ち上げ、黒々と澄んだ黒曜石の瞳を開いた。しかし、その瞳には今、生命力が微弱にしか感じられず、死の影さえ見えた。

「季音……だよな?」

 静かに問われ、季音は小さく頷いた。身体の震えが止まらない。それなのに、これまでまとわりついていた気だるさが、まるで霧が晴れるように消え去っていた。

 そのとき、季音は自分が何かを強く握りしめていることに気づいた。ふと視線を右手に落とすと、血に濡れたふじの簪がそこにあった。

(まさかこれで、私は彼を……)

 季音の顔が強ばり、思わず簪を投げ捨てた。カツンと襖に当たる音が、静寂に包まれた部屋に無情に響き渡った。

「季音……」

 聞き取るのもやっとの細い声で、彼はもう一度自分の名を呼んだ。何か言いたいのだろう。季音は畳に震えた手をつき、彼の口元に耳を寄せた。

「……蘢に朧。あと、タキを呼んできてくれ。お前は少し社から離れていろ。社を出て、東に進んで山を三つ超えろ。そこは何もない。妖も人もいない、硫黄臭い火山地帯がある。雨風もしのげる洞窟もあっただろう。俺の精気も食ったし、あと三日ほど頑張れるか? ……お前は、俺が来るまで、そこで大人しく待っていろ。必ず迎えに行く」

 血の気のない唇を動かすほど、彼の唇から血が漏れた。それでも構わずに彼は言葉を続けた。

「ここはさ。小汚いぼろ屋だが……輪廻前からの俺とお前の家だ。こんな場所でやりあえば家も社も壊れる。恨み晴らしなら付き合ってやるから、そのくらい俺の我が儘を聞け……って、お前の中の狐に伝えてくれ。あいつ、俺のことは嫌いでも、お前のことをどこか心配してた。多分聞いてくれるだろ」

 季音は頷き、涙で濡れた瞳で龍志を見下ろした。すると、彼は血の気のない手を伸ばし、季音の髪をすくうように撫でた。

「……おい、やめろよ。そんな顔をされると、俺が死ぬ寸前みたいに見えるから止めろ。ほら笑え」

 こんな状況でどうしてそんな冗談が言えるのだろう。そんな風に思えてしまうが、季音は彼の言葉を呑み、涙を拭って頷いた。

 龍志は安堵したように笑んだ。それから一拍も経たぬうち、彼は卒倒するように眠りに落ちた。

 彼の生命力は妖並――蘢の言った言葉を信じるしかない。眠りに落ちた彼の胸が上下していることを確認すると、季音は床に置かれた自分の着物を持ち、一目散に社へ向かった。
 だが、正面まで行くまでもなく、蘢と朧、そしてタキも社の端で呆然と立ち尽くしていた。

「季音殿です、よね……?」

 赤々とした瞳を丸く開いた蘢は、短刀を握り、季音を真っ直ぐに見つめて問う。季音は無言で頷き、再び溢れる涙を拭い、彼らに向きあった。

「……蘢様、朧様、それからおタキちゃんも。龍志様の元へ行ってください。私は龍志様に言い渡された約束の場所に向かいます。彼をお願いします」

 ただそれだけを告げ、季音は鳥居の脇を通り抜け、社を後にした。
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