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第19話 天上界11日目 その1 いくら丁寧にしても、無理は通りませんからね
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「さ、太郎さん、そろそろ起きて」
モニア様が女神様のような慈愛の目で俺を見ていた。
いや、モニア様は最初から女神様だけど。
天上界に来てから、一番優しい起こし方だな。
昨晩は大変だった。
圭に会いたいと思ったらまた圭がここに来かねないから、圭と親父とお袋の家族三人で楽しく暮らしている姿を、必死で想像した。
俺が官庁に就職してからは家族団らんに加わる時間もなかったから、想像するのは難しいことではなかったけど(涙)。
とにかく、三人での暮らしに早く慣れてほしい。
圭を呼ぶのは、本当に俺が困ったときだけだ。多分。
さあ、今日からまたモニア様と楽しく、いや、真摯に論議を重ねよう。
「おはようございます。また今日からよろしくお願いいたします」
「あなた、いやに丁寧ね。いくら丁寧にしても、無理は通りませんからね」
「俺が今まで無理を通したことなんてありましたか?」
「無理を通さなかったことがあれば教えてほしいわ」
「いやだなあ。一介の人間が、神様相手に無理を言えるわけないじゃないですか。さ、モニア様、早く本題に入りましょう」
なんなの、こいつの切り替えの早さは。
と言いたいところだけど、圭ちゃんやご両親のことを頭から追い払おうとしたことくらい、私にはわかるわ。
私は優しい女神だから、ちゃんと論議に乗ってあげる。
この前はどうなるかと思ったけど、圭ちゃんが来たのは、私にとってはいい気分転換になったわ。こいつの家族思いのところもちょっとは見えたし。
でも、こいつとの論議も今日限りだけどね。
今日こそは、きっちり転生先を決めて転生させてあげるわ。
「あと残っているのは……そうね、時代とか文化とかって言っていたわね。あなた中世ヨーロッパって言っていたけど、中世っていつのこと?」
「モニア様、また難しい問題をぶっ込んできましたね」
「あなたが言ったんじゃないの」
「いや、普通、異世界っていうと想像するのが、まだ科学文明があまり発展していない世界である気がして、ならば中世くらいかなって」
「いい加減ね。なんで科学文明が発展していちゃだめなの?」
「だって科学文明が発展していたら、武器も銃とか大砲とかになっちゃって、剣と魔法が入り込む余地がなくなるじゃないですか」
ああ、やっぱり魔法に触れちゃうか。
「魔法ね。実は魔法は困りものなのよ」
「とおっしゃいますと?」
「魔法はね、私たち神が持つ神力を、一部の世界で人間に授与してみたものなのよ」
「異世界ではポピュラーじゃないんですか?」
「この前も言ったように、あなたが元いた世界も異世界のひとつなんだけど、魔法ってなかったわよね」
「魔法瓶ならありましたよ」
「じゃあ、あなたが転生先に持ち込めるのは魔法瓶だけにするわね」
次回からは、「異世界は魔法瓶ととともに」にタイトルを変えてお届けしようかしら。
「モニア様、それは勘弁してください。魔法瓶でどうやって魔王と戦うんですか」
ああ、魔王にも触れちゃうのね。
「熱いお湯を魔王にかけてみたらどうかしら」
「熱いお湯をかけるって、女神様がそんな残酷なことを勧めていいんですか?」
魔法でビームみたいなものを浴びせるのとどう違うのかしら。
「あなた、本当にしっかり転生したいの? もう今ここで、あみだくじで適当に選んだ世界に飛ばしてもいいのよ」
「あみだくじって、なんであみだくじって言うのでしょう。阿弥陀如来と関係あるのかな」
「私に仏教に関わる知識を問われても困るわ。いいわ、もうあみだくじを作るから。せめてあなたにどの線を選ぶかだけは決めさせてあげるわ」
「もう茶化さないのであみだくじは勘弁してください」
頭を下げたけど、殊勝さはいつまでもつのかしら。
どうして俺はモニア様に茶々を入れたくなるのだろう。好きな子にちょっかいをかける小学生か俺は。
あれ、そうしたら俺はモニア様が好きってことになるけど。
うん、俺の物語にラブコメ要素を入れるのもいいのかもしれないな。
ふたりの関係は少しずつ深めていくとして、まずは魔法だ。
「話を戻しますけど、なんで魔法は困りものなんですか」
「話を進めたいのはこっちなんですけどね。あのね、魔法があったら、科学文明が進むと思う?」
「いえ、魔法があったら、もしかしたら魔法関係の研究は進むかもしれないけど、わざわざ物理とか化学とかの、基礎研究をしようとは思わないかもしれませんね」
「そうなのよ。そこが問題なの。魔法を授与した世界では、科学文明の進展がほかの世界より遅くなってしまったの」
「ならば、なんでその世界に魔法を授与したんですか」
「創造担当は魔法をてこにして、その世界の科学文明を発展させようとしたらしいんだけど、逆効果だったみたいね」
「その世界では、魔法の研究は進んだのですか?」
「魔法の元は神の神力ですからね、研究してもそう簡単には発展しないのよ」
「少しは発展したのでしょうか?」
「発展というか、変な方向にね。それで、人間に本当に魔法を授与してよいのか、授与してしまった世界はどうするのか、創造担当で今論議している最中らしいの」
「でも、今の地球の科学文明も結構ヤバイですよ。核兵器とか地球温暖化とか」
「第三十九世界ね。魔法が変な方向に発展した世界も問題だけど、そこみたいに人間の力で科学技術を発展させすぎたも問題になっているわ」
あれ、人類も神の怒りを買ってバベルの塔みたいになるのかな。
モニア様が女神様のような慈愛の目で俺を見ていた。
いや、モニア様は最初から女神様だけど。
天上界に来てから、一番優しい起こし方だな。
昨晩は大変だった。
圭に会いたいと思ったらまた圭がここに来かねないから、圭と親父とお袋の家族三人で楽しく暮らしている姿を、必死で想像した。
俺が官庁に就職してからは家族団らんに加わる時間もなかったから、想像するのは難しいことではなかったけど(涙)。
とにかく、三人での暮らしに早く慣れてほしい。
圭を呼ぶのは、本当に俺が困ったときだけだ。多分。
さあ、今日からまたモニア様と楽しく、いや、真摯に論議を重ねよう。
「おはようございます。また今日からよろしくお願いいたします」
「あなた、いやに丁寧ね。いくら丁寧にしても、無理は通りませんからね」
「俺が今まで無理を通したことなんてありましたか?」
「無理を通さなかったことがあれば教えてほしいわ」
「いやだなあ。一介の人間が、神様相手に無理を言えるわけないじゃないですか。さ、モニア様、早く本題に入りましょう」
なんなの、こいつの切り替えの早さは。
と言いたいところだけど、圭ちゃんやご両親のことを頭から追い払おうとしたことくらい、私にはわかるわ。
私は優しい女神だから、ちゃんと論議に乗ってあげる。
この前はどうなるかと思ったけど、圭ちゃんが来たのは、私にとってはいい気分転換になったわ。こいつの家族思いのところもちょっとは見えたし。
でも、こいつとの論議も今日限りだけどね。
今日こそは、きっちり転生先を決めて転生させてあげるわ。
「あと残っているのは……そうね、時代とか文化とかって言っていたわね。あなた中世ヨーロッパって言っていたけど、中世っていつのこと?」
「モニア様、また難しい問題をぶっ込んできましたね」
「あなたが言ったんじゃないの」
「いや、普通、異世界っていうと想像するのが、まだ科学文明があまり発展していない世界である気がして、ならば中世くらいかなって」
「いい加減ね。なんで科学文明が発展していちゃだめなの?」
「だって科学文明が発展していたら、武器も銃とか大砲とかになっちゃって、剣と魔法が入り込む余地がなくなるじゃないですか」
ああ、やっぱり魔法に触れちゃうか。
「魔法ね。実は魔法は困りものなのよ」
「とおっしゃいますと?」
「魔法はね、私たち神が持つ神力を、一部の世界で人間に授与してみたものなのよ」
「異世界ではポピュラーじゃないんですか?」
「この前も言ったように、あなたが元いた世界も異世界のひとつなんだけど、魔法ってなかったわよね」
「魔法瓶ならありましたよ」
「じゃあ、あなたが転生先に持ち込めるのは魔法瓶だけにするわね」
次回からは、「異世界は魔法瓶ととともに」にタイトルを変えてお届けしようかしら。
「モニア様、それは勘弁してください。魔法瓶でどうやって魔王と戦うんですか」
ああ、魔王にも触れちゃうのね。
「熱いお湯を魔王にかけてみたらどうかしら」
「熱いお湯をかけるって、女神様がそんな残酷なことを勧めていいんですか?」
魔法でビームみたいなものを浴びせるのとどう違うのかしら。
「あなた、本当にしっかり転生したいの? もう今ここで、あみだくじで適当に選んだ世界に飛ばしてもいいのよ」
「あみだくじって、なんであみだくじって言うのでしょう。阿弥陀如来と関係あるのかな」
「私に仏教に関わる知識を問われても困るわ。いいわ、もうあみだくじを作るから。せめてあなたにどの線を選ぶかだけは決めさせてあげるわ」
「もう茶化さないのであみだくじは勘弁してください」
頭を下げたけど、殊勝さはいつまでもつのかしら。
どうして俺はモニア様に茶々を入れたくなるのだろう。好きな子にちょっかいをかける小学生か俺は。
あれ、そうしたら俺はモニア様が好きってことになるけど。
うん、俺の物語にラブコメ要素を入れるのもいいのかもしれないな。
ふたりの関係は少しずつ深めていくとして、まずは魔法だ。
「話を戻しますけど、なんで魔法は困りものなんですか」
「話を進めたいのはこっちなんですけどね。あのね、魔法があったら、科学文明が進むと思う?」
「いえ、魔法があったら、もしかしたら魔法関係の研究は進むかもしれないけど、わざわざ物理とか化学とかの、基礎研究をしようとは思わないかもしれませんね」
「そうなのよ。そこが問題なの。魔法を授与した世界では、科学文明の進展がほかの世界より遅くなってしまったの」
「ならば、なんでその世界に魔法を授与したんですか」
「創造担当は魔法をてこにして、その世界の科学文明を発展させようとしたらしいんだけど、逆効果だったみたいね」
「その世界では、魔法の研究は進んだのですか?」
「魔法の元は神の神力ですからね、研究してもそう簡単には発展しないのよ」
「少しは発展したのでしょうか?」
「発展というか、変な方向にね。それで、人間に本当に魔法を授与してよいのか、授与してしまった世界はどうするのか、創造担当で今論議している最中らしいの」
「でも、今の地球の科学文明も結構ヤバイですよ。核兵器とか地球温暖化とか」
「第三十九世界ね。魔法が変な方向に発展した世界も問題だけど、そこみたいに人間の力で科学技術を発展させすぎたも問題になっているわ」
あれ、人類も神の怒りを買ってバベルの塔みたいになるのかな。
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