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「リリィ、今日は外に出かけよう」
「え……」
レオンの屋敷に来てから、外に出ることはなかった。
外出は許されていたが、その場合は誰かレオンの指名するお付きの者を連れていかないといけないため、面倒だったからだ。
「リリィ、ここに来てからずっと部屋に籠りきりだろう? たまには外の空気を吸った方がいいだろう」
「そうね」
乗り気ではなかったが、確かに私もそろそろ外に出たいと思っていたから素直に頷いてレオンの手を取った。
久しぶりの外は眩しい。
レオンに手を引かれて連れて来られたのは、近くの商店だった。
いろいろな料理やキラキラしたアクセサリーを売っているお店が立ち並んでいて、思わず目を奪われる。
しばらくいろいろ見ながら歩いていると、すごく好みのデザインのチョーカーが目に入った。
「可愛い! ……うわっ」
思わず目を奪われた方へ体を向けた時、私の体が大きくぐらついた。
さらに私の足に引っ掛かった物が私の足の動きと同時に移動して、私が地面に倒れるのと共に、ガッシャーンと耳を塞ぎたくなるような音が耳に届いた。
「ちょっと! 何してくれてるのよ!」
地面に転がる野菜達。
「すまない」
レオンが瞬時に野菜を集めて、怒る野菜売りの女性にお詫びのお金を渡している。
野菜売りの女性は、レオンの姿に頬を染めながら許してくれたようだった。
「リリィ、大丈夫?」
そして、レオンは迷惑をかけた私に全く怒っている様子もなく、私に優しく手をさしのべた。
私は、その手を取ることができなかった。
だって、私のせいでまたレオンに恥をかかせてしまった。
結局、どんなにレオンが愛してくれたところで私はやっぱりどんくさくて、どうしたらこのどんくささが直るのかすらわからなくて……。
やっぱり私はダメだ。愛してもらう資格なんてない。
私はレオンを拒むように背を向けて、その場を駆け出した。
「リリィ!!」
逃げ出したのだ。レオンからも、現状を変えることができない自分からも。
「リリィ!! 危ない!!」
こちらを追ってくるレオンの声が、荒っぽい叫びに変わる。
ヒヒィーンという馬の鳴き声がすぐそばで聞こえて顔を上げると、目の前に馬車が迫っていた。
やっぱり私はダメな人間だ。
思わず心のなかで毒づいて、私は自らの運命を瞬時に悟った。
同時に破裂音のような音と共に私は地面に叩きつけられた。
体はあちこち痛いが、どうやら生きているようだ。
「キャー、誰かぁー!!」
そのとき、頭上から聞こえた声に顔を上げる。
そして通行人が集まるなか、人々の視線が注がれる方を見て息を呑んだ。
「レオン!! レオン、どうして……」
私が無事だったのは、どうやらレオンが私をあの一瞬の間に庇ってくれていたかららしい。
レオンのそばには血だまりができていて、意識はすでに失われているようだった。
「どうして……。どうして私なんかを助けたりなんてしたのよ……」
やだ。嫌だ……!
「レオンーー!!」
「え……」
レオンの屋敷に来てから、外に出ることはなかった。
外出は許されていたが、その場合は誰かレオンの指名するお付きの者を連れていかないといけないため、面倒だったからだ。
「リリィ、ここに来てからずっと部屋に籠りきりだろう? たまには外の空気を吸った方がいいだろう」
「そうね」
乗り気ではなかったが、確かに私もそろそろ外に出たいと思っていたから素直に頷いてレオンの手を取った。
久しぶりの外は眩しい。
レオンに手を引かれて連れて来られたのは、近くの商店だった。
いろいろな料理やキラキラしたアクセサリーを売っているお店が立ち並んでいて、思わず目を奪われる。
しばらくいろいろ見ながら歩いていると、すごく好みのデザインのチョーカーが目に入った。
「可愛い! ……うわっ」
思わず目を奪われた方へ体を向けた時、私の体が大きくぐらついた。
さらに私の足に引っ掛かった物が私の足の動きと同時に移動して、私が地面に倒れるのと共に、ガッシャーンと耳を塞ぎたくなるような音が耳に届いた。
「ちょっと! 何してくれてるのよ!」
地面に転がる野菜達。
「すまない」
レオンが瞬時に野菜を集めて、怒る野菜売りの女性にお詫びのお金を渡している。
野菜売りの女性は、レオンの姿に頬を染めながら許してくれたようだった。
「リリィ、大丈夫?」
そして、レオンは迷惑をかけた私に全く怒っている様子もなく、私に優しく手をさしのべた。
私は、その手を取ることができなかった。
だって、私のせいでまたレオンに恥をかかせてしまった。
結局、どんなにレオンが愛してくれたところで私はやっぱりどんくさくて、どうしたらこのどんくささが直るのかすらわからなくて……。
やっぱり私はダメだ。愛してもらう資格なんてない。
私はレオンを拒むように背を向けて、その場を駆け出した。
「リリィ!!」
逃げ出したのだ。レオンからも、現状を変えることができない自分からも。
「リリィ!! 危ない!!」
こちらを追ってくるレオンの声が、荒っぽい叫びに変わる。
ヒヒィーンという馬の鳴き声がすぐそばで聞こえて顔を上げると、目の前に馬車が迫っていた。
やっぱり私はダメな人間だ。
思わず心のなかで毒づいて、私は自らの運命を瞬時に悟った。
同時に破裂音のような音と共に私は地面に叩きつけられた。
体はあちこち痛いが、どうやら生きているようだ。
「キャー、誰かぁー!!」
そのとき、頭上から聞こえた声に顔を上げる。
そして通行人が集まるなか、人々の視線が注がれる方を見て息を呑んだ。
「レオン!! レオン、どうして……」
私が無事だったのは、どうやらレオンが私をあの一瞬の間に庇ってくれていたかららしい。
レオンのそばには血だまりができていて、意識はすでに失われているようだった。
「どうして……。どうして私なんかを助けたりなんてしたのよ……」
やだ。嫌だ……!
「レオンーー!!」
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