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第二章 錬金術師と赤い竜 ~秘密遺言~
橋の上の公示鳥
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一先ずはリーゼがいたであろう
ヘルマンの工房を目指すため、
ルロイはレッジョ中心部を貫く
ピカーニ通りを北へ向かっていた。
そう言えば、いつもより人通りが多い。
ルロイは人混みをかき分けて、
市街の中央を南北に貫くメリーダ河に
架かるマイラーノ大橋に差し掛かる。
けたたましいベルが鳴る音が
したかと思うや、
耳をつんざくような管楽器の、
ファンファーレが高らかに
ルロイの頭上に鳴り響く。
「おわっ!」
ルロイが見上げると、
ベルのめり込んだ奇怪な胴体から、
嫌にでかいトランペットを
頭に生やした公示鳥が、
マイラーノ大橋の梁に鎮座し
橋を行き交う人々を見下ろしている。
≪いざ、聞くがよい!
善良なる市民並びに、
勇敢なる冒険者たちよ≫
よく響くがやや芝居がかった
テノールの男声が、
頭部のトランペットから群衆の頭上へと
降り注いでゆく。
≪ダンジョン管理ギルドの名において
本日より、武器・防具の商用持ち込み
に際し、関税を原価の2割から4割へ
と引き上げること。並びに――――≫
朗々と録音された声を読み上げる
公示鳥をよそに、
何事かと足を止めていた数人の通行人も、
いつものギルドのお偉方の決定通達かと、
興味なさげに再び一人、
また一人と歩き始めたのだった。
そんな中で公示鳥を睨み上げていた、
行商人風の若い男が腹立ちまぎれに、
小石を公示鳥に投げつけた。
「うるせぇ、ラッパ頭が!」
男は悪態めいた言葉を吐きつけ、
そのままふて腐れたように
ルロイとは反対方向へ、
往来の中を歩き始め消えていった。
おそらくは他の街からやってきた
交易商の類だろう。
冒険者に限らずレッジョに来る人間は
血の気が多い。
ああした地元の商人を保護するため
輸入品の関税引き上げや、
あとはダンジョンの
探索権・入場料金・発見した、
アイテムの買い取り料金の
上がり下がりを告げるのも、
今やあの公示鳥が担っている。
投石を食らった公示鳥はというと、
キンと金属的な音を立てると
何事もなかったかのように
口上を述べ終わり、
また同じ内容を市民と冒険者に
公示するため、
往来の多い近くの四つ辻へと
飛び去ったのだった。
「あのパウル氏の作品ですからねぇ」
公示鳥の頑丈さにルロイは嘆息する。
ヘルマン氏の息子パウルは特許を応用し、
冒険者用の便利道具の特許を取得し
今や名士の中の名士である。
街中を飛び回っている
ヘルマン氏の発明品、
公示鳥を公示人の代わり使うよう
レッジョの市参事会に勧めて、
商品として特許申請したのも
彼の発案である。
人間が公示人をしていた時代であれば、
公示人が先ほどのように増税などの、
市民や冒険者たちに
嬉しくないお知らせをすると同時、
血の気の多い冒険者から
乱暴狼藉をもって、
熱烈に歓迎されることはレッジョでは
日常的な光景であった。
投石を食らわすなどまだ紳士的な方で、
頭のネジが外れたアホ勇者どもから、
剣や斧でメタメタに叩き斬られ、
命を落とした哀れな公示人も珍しくない。
やがて、公示人になりたがる人手は
いなくなり、
行政を司る市参事会も頭を悩ませていた。
そこで、パウル氏が父の発明品である
鳥形の魔法生物を、
公示人の代わりとして使ってはどうか
と持ち掛けたのだった。
で、効果はてきめん。
魔法生物で頑丈な公示鳥は
アホ勇者どもの剣や斧、
魔法による攻撃でさえも容易に壊れず、
こうして使命を全うし続けている。
鳥の形をしているためいざ
危なくなっても空へ逃げればよし。
それ以上に、
空を飛んで迅速に移動できるため、
人間の公示人よりも短時間で
より多くの人々に、
重要なニュースを伝達できる高い能力が、
レッジョの各方々で大いに
評価されたのであった。
今や市参事会はもちろんの事、
公示鳥を商品の宣伝に使いたい
街の商人や、
仲間やギルドへの伝令代わりに使いたい
冒険者などから、
公示鳥は広く活用されている。
ちなみにベル内蔵の胴体に、
トランペットの頭といういかにも
機械じみたあのフォルムを、
発案したのもパウルで公示鳥が
より自らの仕事を、
効率的に行うための大胆な改良案に
基づいてなされたものである。
ついさっきルロイが見かけた公示鳥は、
ヘルマン氏の発明したものと区別するため
「後期型公示鳥」と呼ばれている。
ヘルマンの工房を目指すため、
ルロイはレッジョ中心部を貫く
ピカーニ通りを北へ向かっていた。
そう言えば、いつもより人通りが多い。
ルロイは人混みをかき分けて、
市街の中央を南北に貫くメリーダ河に
架かるマイラーノ大橋に差し掛かる。
けたたましいベルが鳴る音が
したかと思うや、
耳をつんざくような管楽器の、
ファンファーレが高らかに
ルロイの頭上に鳴り響く。
「おわっ!」
ルロイが見上げると、
ベルのめり込んだ奇怪な胴体から、
嫌にでかいトランペットを
頭に生やした公示鳥が、
マイラーノ大橋の梁に鎮座し
橋を行き交う人々を見下ろしている。
≪いざ、聞くがよい!
善良なる市民並びに、
勇敢なる冒険者たちよ≫
よく響くがやや芝居がかった
テノールの男声が、
頭部のトランペットから群衆の頭上へと
降り注いでゆく。
≪ダンジョン管理ギルドの名において
本日より、武器・防具の商用持ち込み
に際し、関税を原価の2割から4割へ
と引き上げること。並びに――――≫
朗々と録音された声を読み上げる
公示鳥をよそに、
何事かと足を止めていた数人の通行人も、
いつものギルドのお偉方の決定通達かと、
興味なさげに再び一人、
また一人と歩き始めたのだった。
そんな中で公示鳥を睨み上げていた、
行商人風の若い男が腹立ちまぎれに、
小石を公示鳥に投げつけた。
「うるせぇ、ラッパ頭が!」
男は悪態めいた言葉を吐きつけ、
そのままふて腐れたように
ルロイとは反対方向へ、
往来の中を歩き始め消えていった。
おそらくは他の街からやってきた
交易商の類だろう。
冒険者に限らずレッジョに来る人間は
血の気が多い。
ああした地元の商人を保護するため
輸入品の関税引き上げや、
あとはダンジョンの
探索権・入場料金・発見した、
アイテムの買い取り料金の
上がり下がりを告げるのも、
今やあの公示鳥が担っている。
投石を食らった公示鳥はというと、
キンと金属的な音を立てると
何事もなかったかのように
口上を述べ終わり、
また同じ内容を市民と冒険者に
公示するため、
往来の多い近くの四つ辻へと
飛び去ったのだった。
「あのパウル氏の作品ですからねぇ」
公示鳥の頑丈さにルロイは嘆息する。
ヘルマン氏の息子パウルは特許を応用し、
冒険者用の便利道具の特許を取得し
今や名士の中の名士である。
街中を飛び回っている
ヘルマン氏の発明品、
公示鳥を公示人の代わり使うよう
レッジョの市参事会に勧めて、
商品として特許申請したのも
彼の発案である。
人間が公示人をしていた時代であれば、
公示人が先ほどのように増税などの、
市民や冒険者たちに
嬉しくないお知らせをすると同時、
血の気の多い冒険者から
乱暴狼藉をもって、
熱烈に歓迎されることはレッジョでは
日常的な光景であった。
投石を食らわすなどまだ紳士的な方で、
頭のネジが外れたアホ勇者どもから、
剣や斧でメタメタに叩き斬られ、
命を落とした哀れな公示人も珍しくない。
やがて、公示人になりたがる人手は
いなくなり、
行政を司る市参事会も頭を悩ませていた。
そこで、パウル氏が父の発明品である
鳥形の魔法生物を、
公示人の代わりとして使ってはどうか
と持ち掛けたのだった。
で、効果はてきめん。
魔法生物で頑丈な公示鳥は
アホ勇者どもの剣や斧、
魔法による攻撃でさえも容易に壊れず、
こうして使命を全うし続けている。
鳥の形をしているためいざ
危なくなっても空へ逃げればよし。
それ以上に、
空を飛んで迅速に移動できるため、
人間の公示人よりも短時間で
より多くの人々に、
重要なニュースを伝達できる高い能力が、
レッジョの各方々で大いに
評価されたのであった。
今や市参事会はもちろんの事、
公示鳥を商品の宣伝に使いたい
街の商人や、
仲間やギルドへの伝令代わりに使いたい
冒険者などから、
公示鳥は広く活用されている。
ちなみにベル内蔵の胴体に、
トランペットの頭といういかにも
機械じみたあのフォルムを、
発案したのもパウルで公示鳥が
より自らの仕事を、
効率的に行うための大胆な改良案に
基づいてなされたものである。
ついさっきルロイが見かけた公示鳥は、
ヘルマン氏の発明したものと区別するため
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