勇者だって魔王だってホームに入るモン

第一章 勇者も魔王も老人ホーム

No.4

日当たりのいい角部屋にヴァルグリムはシアンに連れられてやってきた。
シアン「ここですよ。今日からヴァルグリムさんのお部屋になります。」
奥様「あら、広いお部屋ですね。」

シンプルにも整えられた部屋。大きな窓からはスパークリッジ
そこには大きめの介護ベッド、小さなテーブル、小さな冷蔵庫、タンスが備えられていた。
そしてトイレと洗面台。
入居の時に少し追加で資金はかかるものの施設側で用意する事が可能な物たちだ。
体格も大きい人たちように部屋もS,M,L,BIGと4種類用意されておりこの部屋はBIGサイズになる。

シアン「お荷物などは後ほど到着すると伺っております。こちらは他に施設側で用意が可能なもののリストです。都度ご相談していただけますので保管お願いします。」
奥様「わかりました。あなた。私は持ってきた衣類などをしまっておきますね。」
ヴァルグリム「頼んだ」
シアン「ヴァルグリムさん、施設の中をご案内します。歩くのが辛いようでしたら車椅子をお持ちしますよ？」
歩くときに杖をつくが大きい体を支えるのも大変で歩行が少し不安定なのを見逃さなかった。
ヴァルグリム「⋯い、いや大丈夫だ」
シアン「わかりました。辛かったらいつでも仰ってくださいね。」

そして施設の中を一緒にゆっくり周る。
先程入居している方々がゆっくりしていたホール、ホールの横には食堂。職員用の事務所。
そして廊下を進むと男女に分かれた入浴室。
入浴室の隣に2箇所。その隣には休憩室も兼ねた事務所がもう1つ。
部屋とは別にトイレも4箇所ある。
そして医療ルーム。
常に医者看護師が常駐しており24時間対応が可能だ。
リハビリルームもあり身体の機能を維持するため回復するために専門の職員もいる。
身体をだけで無く記憶などが衰えないように週に2度専門の医師、講師によるトレーニングも行われてる。
都市最大の施設ともあり設備は充実している。
そして各種族の職員が多数働いており各階80名。
6階建ての大施設だ。

ヴァルグリム「なかなかに広いな」
シアン「はい。広くて歩くだけで疲れちゃいますよね。」
ヴァルグリム「大事ない。リハビリには丁度いいだろう」
シアン「エレベーターを降りて1階には小さな売店とカフェなるものがございます。この都市で美味しいと有名の飲み物が飲めますよ。」
ヴァルグリム「そうか」
シアン「⋯さみしいですか？」
ヴァルグリム「なに？」
シアン「セドリックさんです。」
ヴァルグリム「!!!」
シアン「私新米なので聞いた話なのですが、少し前まではご自分で車椅子を漕いだりもしてカフェに行ってたと聞きます。」
ヴァルグリム「⋯⋯⋯」
シアン「99歳の誕生日を境に、家族の事、職員の事、ご自身の事でさえ忘れてしまわれることが増えてしまったと。」
ヴァルグリム「人間の抗えない寿命というやつか」
シアン「そうかもしれません。でも、時々先ほどの様に思い出されお話してくれるんですよ。何度も聞きました。魔王と私は友だと。」
ヴァルグリム「っ⋯!」
シアン「なので、たくさんセドリックさんとお話してください。きっと喜びますセドリックさん。きっとヴァルグリムさんも嬉しいと思います。」
ヴァルグリム「⋯⋯そう⋯だな。」

ゆっくり周り休み話しながら施設内を歩き部屋に戻った。