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第三章「兄と弟」
2「デート」
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「じゃあ気をつけて行ってくるのよ。義明、ちゃんと義行の事、見ておくのよ!」
「義行、知らない人に付いて行っちゃダメだからな? それと何か欲しいものがあったら、義明に言いなさい。義明にお金を預けているから」
「はーい! じゃあ、行ってきます!」
玄関先で両親に見送られて兄貴は元気に声を出し、隣に立つ俺の手をぎゅっと握った。
「さ、義明、行こ!」
「はいはい、じゃ行ってくるから」
俺は適当に返事をし、兄貴を見送る両親に言った。両親はよろしく頼んだぞ! と言った目で俺を見たが、俺は何も言わず両親に背中を向けて兄貴の手を引きながら歩き始めた。
兄貴は何度か振り返って見送る両親に手を振ったが、家の角を曲がり両親の姿が見えなくなると、早速俺に質問を浴びせてきた。
「ね、ね、これからどこに行くの? どこで待ち合わせ?」
兄貴はわくわく、と言った効果音が見えそうなぐらい楽し気な顔で俺に聞き、俺は面倒くさいと思いながら答えた。
「これから駅に行く。その後、本屋で待ち合わせ」
「ふーん、そっか。それにしても夏海ちゃん、楽しみだなぁ!」
俺が簡潔に答えたにも関わらず兄貴はにこにこ笑顔で言った。どうやら頭には夏海の事しかないようだ。一体どうしてこんなに会いたがるのか。俺の彼女だからか? と思いつつも、あんまり会わせたくないなぁ、とも思った。
しかし不図、心の中で立ち止まり、自分に問いかける。どうして兄貴を夏海に会わせたくないのか? その理由がわからなかった。
なんでだろう? と首を捻りつつも、その答えは出ない。そんな事を考えていると「義明、神妙な顔をしてどうしたの?」と兄貴が俺の顔を覗いて尋ねてきた。
俺は何となく答えられなくて誤魔化す様に「何でもない」と言い、先を急ぐように兄貴の手を引く。けれど今度は改めて握りしめた手が幼くて心の中で少し動揺した。
あれ? 兄貴の手って、こんなに小さかったか?
そう思うと兄貴に「どうしたの? 今度は不思議そうな顔をして」とまた尋ねられた。
俺は「何でもないよ」ともう一度言って、駅に足早に向かった。けれど、大人と子供の足幅は当然違う。兄貴はこけそうになり、俺は思わず兄貴を支えた。その身の軽さ。
兄貴ってこんなに軽かったのか?
その事に俺はまたも驚く。兄貴は支えた俺の手を握りながら体制を直し「ありがとう」と言った。でも俺はそんな兄貴を見てやっと思い出した。
兄貴は子供で、そして俺は大人になったんだと。
兄貴の手が小さくなったわけじゃない、兄貴が軽くなったわけじゃない。ただ単に俺がでかくなっただけだと。
その事に気が付いて、俺は「ごめん、ゆっくり歩くよ」と兄貴に言った。兄貴はそんな俺の言葉を聞いて「ありがとう」ともう一度言った。
その後、無事に駅に着き、切符売り場で俺は大人用の、兄貴には子供用の切符を買った。
けれど買う場面を横で見ていた兄貴にすぐさま怒られた。
「えー!? どうして義明だけ大人用なのー!? 僕の方がお兄ちゃんなのに!」
「いや、そうだろうけど……」
だからと言って、十一歳の兄貴に大人用の切符は必要ない。でも、俺には大人用の切符が必要だ。だって、もう見た目も年齢も大人だから。そして駄々をこねても仕方ないと兄貴も思ったのか、不貞腐れながらも俺が差し出した切符を手に取った。
「まあ、仕方ないよね。義明はもうおっさんだし!」
兄貴は頬を膨らましながら言い、俺はおっさんと言う言葉を聞き流した。それから二人で改札を抜け、駅構内のホームに降りた。
「切符、落とすなよ」
俺が言うと、兄貴は「落とさないよ! 子供じゃないんだから」と反論した。でも、どこからどうみても子供だ。兄貴は俺に反論した後、電車が来るのを今か今かと楽し気に待っている。これのどこが子供じゃないと言うんだろう、と思っていると兄貴が話しかけてきた。
「電車、まだかな?」
「ん? あと五分ぐらいで来るだろ」
俺は電光掲示板を見て言った。
「あと五分かー。待ち遠しいなぁ。僕、電車乗るの初めてなんだ!」
兄貴は楽し気に言い、俺はその言葉に軽く衝撃を受ける。兄貴が生きている内に、電車に乗った事がなかったことに。
思えば兄貴はいつも病院にいて、病院から出る時も車だった。公共の乗り物と言うものに乗った事がないのだろう。俺はそんな事も知らなかったのか、と思いながら、楽し気な兄貴の後姿を眺めた。
俺はその後ろ姿を見ながら、この四日間、ただ兄貴に楽しく過ごしてほしいと心から願った。
それから電車は目的地に着き、俺は兄貴と共に駅のホームに向かった。
すると、すぐに駅のホームに夏海の姿を見つけた。俺は事前に夏海に連絡を取り、事情を知った夏海が気を利かせて待ち合わせの場所を駅のホームに変えてくれたからだ。
電車を降りた他の人達と混じりながら歩いていると、夏海もその中に俺の姿を見つけて軽く手を振ってくれた。それを見た兄貴は「あの人が義行の彼女?」とにまっとした顔で聞いてきた。
俺は少し恥ずかしい思いを感じながら「そうだよ」と答えて、そのまま夏海の方に足を向けた。
「夏海」
俺は夏海の近くまで歩み寄って声をかけた。
「おはよう、義明」
「待ったか?」
「ううん」
夏海はそう言って首を振り、そして俺の傍に立っている兄貴に視線を下した。
「こんにちは! 初めまして、僕は義明の兄の義行ですっ!」
兄貴は礼儀正しく自己紹介をし、頭を下げた。夏海には事前に帰生した兄貴が一緒だと連絡していたので驚くこともなく、夏海は兄貴に挨拶を返した。
「初めまして、沖野夏海と言います。よろしくね」
「よろしく。僕の事は義行って呼んで下さい。あの、夏海お姉さんって、呼んでいい?」
「勿論!」
夏海が笑顔で答えると兄貴はホッとしたように顔を緩ませた。そんなやり取りを横目に俺は夏海に話しかけた。
「今日は突然で悪いな。すまないけど、一日付き合ってくれるか?」
「全然、私は構わないよ。折角、お兄さんが帰生しているんだから」
夏海はそう言い、その優しさに俺は笑顔になる。だが、不意に下に視線を向ければ兄貴がにやけた顔で俺を見るので、俺は緩んだ口元をむむっと引き締めた。
「それより。この後、映画を見に行く予定だったけど、どうする?」
夏海が言うと兄貴は「え、映画見に行くの!? 僕、映画観たーい!!」と声を上げた。俺も夏海も元々その予定だったから、俺達はそのまま映画館に行くことに。
映画館は駅から徒歩で十分程度歩いたところにあるので、すぐに俺達はビルの中にある映画館に着いた。
兄貴は初めての映画館にも少し興奮気味で、俺と夏海は当初見る予定だったミステリー系の洋画を変更してアニメーションの映画を見ることにした。
さすがに子供の兄貴にミステリー系の洋画はつまらないだろう、という夏海の提案だった。まあ、俺もをそれには反論はなかったし、映画はまた今度の機会に見ればいい話だ。
なので、俺は三人分の映画のチケットを買って、売店で売っているポップコーンを興味深そうに見ていた兄貴に買ってやった。案の定、兄貴は目をキラキラさせて喜び、その後俺達は会場に入って並んで座った。
俺と夏海の間に兄貴が座ったことだが、ちょっと残念だったがまあ仕方がないだろう。そうこうしている内に映画は始まり、俺は少し眠気を感じながらも映画を最後まで見きった。
終わった後、アニメーションの映画に変更した判断が正しかったようで、兄貴は映画の内容を終わってからもずっと楽しげに夏海に話していた。なんで、俺じゃなくて夏海なんだ? と思いながらも、その後は街中をぶらつき、色んな店に立ち寄って買い物をしたり、昼食は夏海が行きたがっていた洋食のレストランに行ってみたりもした。
兄貴はただ俺達についてくる、という感じだったが、何でも楽しいのか始終ご機嫌だった。その様子を見ながら、俺はまあ無理もない、とただ思った。
兄貴はほとんどを家と病院で過ごしていた。街を歩くなんて、なかったに等しい。だから、こうして歩き回れるのが嬉しいのだろう。
……けれど、どうしてだろうか。
今の兄貴は子供だからしょうがないのに、夏海と仲良くしている姿を見るとどうしてかイラっとする。こんなことを思っても仕方がないのに。なので俺は努めてそんな感情を胸の奥にしまい込んだ。大人だから。
だが昼食も取り、夏海に新しい財布をプレゼントされた後、腹ごなしに俺達は紅葉に暮れる公園を歩くことになったが……。昨日も仕事でまだ疲れが取れきれていなかった俺は早々にバテてしまい、公園内にあるベンチに座ることを提案した。こういう時、無駄に年を取ったと痛感する。
「もー、義明ってば、疲れちゃったの?」
無邪気な顔をして兄貴はベンチに座る俺の目の前に立って言った。
「仕方ないだろ? 昨日も俺は仕事だったんだ。それよか、ほら、お金やるから、あそこの自販機でジュースでも買ってきて。ついでに俺らの分も頼む。俺はブラックコーヒー、夏海は?」
俺は財布を取り出して千円を兄貴に差し出し、隣に座っている夏海に尋ねた。だが夏海は「ジュース買いに行くなら私が行くよ」と持ち前の人の好さを発揮してベンチから立ち上がった。
けど、そんな夏海をベンチに座らせたのは俺から千円札を受け取った兄貴だった。
「いいよ、夏海お姉さん。僕が買いに行くから、ここで義明と待ってて」
兄貴が笑顔で言うと、夏海も「そう?」と言ってベンチに座りなおした。
「夏海お姉さんは何がいいかな?」
「じゃあ、ストレートの紅茶をお願いしていい?」
「わかった! 二人ともちょっと待ってて」
兄貴はそう言うと、駆け足でベンチから少し離れた自動販売機に枯れ葉を踏みしめて走っていった。
その後ろ姿を見ながら、兄貴って走れたんだな、と思わず感心してしまった。
兄貴は病気のせいで、病院や家から出ることも叶わなかった上に、走ることさえも許されなかった。もし、少しでも走れば誰かが必ず止めたからだ。心臓病を患っていた兄貴は胸に爆弾を抱えているのも同然だったから。
だからだろうか、なんとなく感慨深く思っていると、隣に座っていた夏海に声をかけられた。
「お兄さんのことが心配?」
夏海に聞かれて、俺ははっとずっと兄貴に視線を向けていたことに気が付いた。
「いや、まあ心配というか、兄貴が走ってるの、初めて見るなっと思って」
「そうなんだ」
そう言って夏海も兄貴に視線を向けた。身長の低い兄貴にとって自動販売機のボタンは少し高いのか、一生懸命背伸びをしてボタンを押そうとしている姿が見える。
「帰ってきた四日間、楽しんでくれるといいね」
夏海は微笑んでいい、俺はこの優しい人が自分の彼女であることに感謝しながら「ああ」と頷いた。でも、そんな俺達の前にいつの間にかジュースを買ってきた兄貴が立っていた。
「二人ってラブラブだねぇ」
にやにやしながら兄貴は言い、俺は思わず照れくささを隠すように手を差し出した。
「うるさい、コーヒー」
「義明ってば照れちゃって、ふふふ」
兄貴は笑いながらも、俺にホットコーヒーを渡した。でも、俺はそれ以上何も言えなくて、缶を開けてコーヒーを飲むしかなかった。
しかし時間というものは、あっという間に過ぎていくもので、五時を過ぎた頃になると周りは夕暮れ始め、俺も夏海も明日から仕事だし、兄貴もいるという事で、俺達はそれぞれ帰ることになった。
夏海とは駅で別れ、俺は兄貴と一緒に電車にまた乗り、家路を二人で並んで歩いた。
道路にできる二つの影が揺れる。
「夏海お姉さんって義明にはもったいないぐらい、素敵な人だね」
兄貴は俺の横を歩きながら唐突に言った。
「なんだよ、急に」
「だって今日一緒にいて、そう思ったんだもん! ねえ、義明は夏海お姉さんと結婚するの?」
兄貴は首を傾げて俺に聞いた。でも俺は何も答えずに歩く。こういうことをぺらぺらと喋るのは性じゃない。でもそんな俺を無視するように兄貴はずけずけと尋ねる。
「ねーねー、結婚しないのー? ねー、義明。それともしないつもりなのー? ねーねー」
兄貴は俺の手を掴んで、ぶんぶん引っ張りながら言った。
「うるさいな、どっちでもいいだろ?」
俺は少々ぶっきら棒に言ったが、兄貴には全く効果がなかった。
「どっちでもいい訳ないだろー? 義明のお嫁さんだぞ! それに夏海お姉さん、すごく素敵な人だから、早く捕まえておかないと逃げられちゃうぞ!」
兄貴はふんっと鼻を鳴らして言い、俺は頭を抱えながらしょうがなく答えた。もし、これで答えなければずっと問いかけられることが目に見えたからだ。
「結婚するつもりだよ。来年になったらな」
「それってプロポーズを来年するってこと? なんで来年なの?」
「そうだよ。夏海は一月が誕生日なんだ。それにそのぐらいから一緒に暮らすつもりだから。わかったら、ちょっと静かにしてろ」
「へぇーーーーっ」
兄貴はにやにやした顔をして俺を見たが、俺は妙に気恥ずかしくて顔を合わせられなかった。しかし、そんなことを話している内に家に着いた。
家に帰ると、俺の誕生日という事と兄貴が帰ってきたという事で母さんがすき焼きを、父さんがケーキを買って待っていてくれていた。我が家では祝い事の席は必ずすき焼きと決まっている。
ケーキはまあ、俺というより兄貴の為だろう……。
俺達はテーブルを久しぶりに家族全員で囲い、兄貴は至極楽しそうにご飯を食べ、今日あった事を両親に話しかけていた。そんな兄貴に両親は常に笑顔で、俺は話す事もなく、黙々とビールと共にすき焼きを食べた。
でも、どうしてか楽しいはずの家族団欒の食事が、俺の胸にちくりと針を刺す。昔も同じような痛みを感じたことがある、疎外感という名の痛みだ。両親の目は兄貴だけで向かっている。
その事が俺の胸に痛みを与えた。
何を馬鹿な、俺はもう二十七にもなったんだぞ?
そう自分に問いかけて、俺はただ黙々とすき焼きを口の中に入れ、ケーキも食べる。でもその後、俺はなんだか耐えきれなくなって、そそくさと自分の部屋に戻った。
途端、急に疲れがどっと襲い、俺はばたっとベッドに横になって見慣れた天井を見上げた。
階下から明るい笑い声と話し声が聞こえてくる。こんな明るい声が聞こえてくるのは久しぶりだ。兄貴がいるとこの家はいつでも明るくなった。兄貴さえいれば。
じわりと幼い頃に負った軽い心のやけどがひりひりと痛む。
それを何とか誤魔化そうと俺は起き上がって、気分転換に風呂に入ることにした。引っ越したばかりでタンスに入れていない、服とパンツを段ボールから引っ張り出し、部屋を出ようとした時。
コンコンッと誰かがノックし、ドアが開いた。
「義明、ちょっといい?」
ドアからひょこっと顔を出したのは兄貴だった。
「なに?」
俺が尋ねると兄貴は俺の部屋におずおずと入ってきた。両手を後ろに回し何かを隠してる。なんだ? と俺が思った時に、兄貴はそれを俺に差し出した。
「誕生日おめでとう! これ、僕からの誕生日プレゼント。今の義明にはいらないかもしれないけど、僕があげれるものはこれぐらいしかないから」
兄貴がそう言って差し出したのは、俺達が幼い頃に流行っていた戦隊もののフィギュアだった。俺も昔、欲しいとねだったことがあってそれを覚えていた。それは少し色褪せていたが、新品同様に綺麗だった。
兄貴は生きていた頃、このフィギュアを大切にしていたし、死んでからは両親が大切に保管していたのだろう。懐かしさがにわかに香る。
「やっぱり、いらない……かな?」
兄貴が悲しげに言い、俺はすぐにそれを受け取った。
「いや、もらうよ。ありがとう」
俺が言うと兄貴は暗くした顔を一変させて、「へへ!」と嬉しそうに笑った。そして、俺が風呂に入ろうとしていることに気が付いたのか、兄貴は「義明、お風呂に入るの? 僕も一緒に入る!」と言ってきた。
まさかこの年になって兄弟と風呂を一緒に入るとは思っていなかった俺は「え!?」と戸惑ったが、兄貴は俺をそっちのけでさっさと一階に降りていた。
勝手な、と思いつつも悪い気がしないのだから兄弟ってのは不思議だ。俺は手にしたフィギュアを中学から使っている勉強机に置き、まさか数年も経って兄貴から貰うことになるなんてな、と心の中で呟いた。さっきまで確かにあった心のやけどが息を潜める。
「兄貴のおかげ、だな」
俺は呟いて、服とパンツを持って一階に降りた。一階では、兄貴が母さんに服を用意してもらっていた。
それから十数年ぶりに兄貴と一緒に風呂に入り、兄貴の頭を洗わされ、二人で狭い風呂につかった。そして風呂の中に入ってから数秒も経たない内に兄貴は昔のアニソンを歌い始め「ほら、義明も歌って!」とつき合わされた。二十七にもなってアニソンを風呂場で熱唱する日がくるとは……。
風呂を出た後は、子供の兄貴の体を先に拭き、服を着た後はドライヤーを片手に兄貴の頭を乾かした。これじゃ、兄弟というよりか親子って感じだ、と思いながら俺は鏡に映る自分たちに目を向けた。そこに映るのはどう見ても子供の兄貴と大人の俺。
親子だな、これは。と心の中で呟きながら、俺は兄貴の髪を乾かした。
その後、脱衣所から出た俺は自室に、兄貴は両親の寝室に別れた。なんでも今日は両親と一緒に寝るらしい。兄貴は嬉しそうに「義明、おやすみー!」と言って親父と一緒に寝室に消え、俺は自分の部屋に戻って、早々にベッドに入った。明日からはまた仕事だ。
ポカポカした体でベッドに入った俺はすぐに睡魔に襲われた。だが暗い部屋の中、俺はうとうとしながら、ある大事なことを兄貴に聞きそびれてしまったことに気が付いた。
そういや兄貴、どうして今になって戻ってきたんだろう?
そう考えている内に、俺はすっかり眠りについてしまった。
「義行、知らない人に付いて行っちゃダメだからな? それと何か欲しいものがあったら、義明に言いなさい。義明にお金を預けているから」
「はーい! じゃあ、行ってきます!」
玄関先で両親に見送られて兄貴は元気に声を出し、隣に立つ俺の手をぎゅっと握った。
「さ、義明、行こ!」
「はいはい、じゃ行ってくるから」
俺は適当に返事をし、兄貴を見送る両親に言った。両親はよろしく頼んだぞ! と言った目で俺を見たが、俺は何も言わず両親に背中を向けて兄貴の手を引きながら歩き始めた。
兄貴は何度か振り返って見送る両親に手を振ったが、家の角を曲がり両親の姿が見えなくなると、早速俺に質問を浴びせてきた。
「ね、ね、これからどこに行くの? どこで待ち合わせ?」
兄貴はわくわく、と言った効果音が見えそうなぐらい楽し気な顔で俺に聞き、俺は面倒くさいと思いながら答えた。
「これから駅に行く。その後、本屋で待ち合わせ」
「ふーん、そっか。それにしても夏海ちゃん、楽しみだなぁ!」
俺が簡潔に答えたにも関わらず兄貴はにこにこ笑顔で言った。どうやら頭には夏海の事しかないようだ。一体どうしてこんなに会いたがるのか。俺の彼女だからか? と思いつつも、あんまり会わせたくないなぁ、とも思った。
しかし不図、心の中で立ち止まり、自分に問いかける。どうして兄貴を夏海に会わせたくないのか? その理由がわからなかった。
なんでだろう? と首を捻りつつも、その答えは出ない。そんな事を考えていると「義明、神妙な顔をしてどうしたの?」と兄貴が俺の顔を覗いて尋ねてきた。
俺は何となく答えられなくて誤魔化す様に「何でもない」と言い、先を急ぐように兄貴の手を引く。けれど今度は改めて握りしめた手が幼くて心の中で少し動揺した。
あれ? 兄貴の手って、こんなに小さかったか?
そう思うと兄貴に「どうしたの? 今度は不思議そうな顔をして」とまた尋ねられた。
俺は「何でもないよ」ともう一度言って、駅に足早に向かった。けれど、大人と子供の足幅は当然違う。兄貴はこけそうになり、俺は思わず兄貴を支えた。その身の軽さ。
兄貴ってこんなに軽かったのか?
その事に俺はまたも驚く。兄貴は支えた俺の手を握りながら体制を直し「ありがとう」と言った。でも俺はそんな兄貴を見てやっと思い出した。
兄貴は子供で、そして俺は大人になったんだと。
兄貴の手が小さくなったわけじゃない、兄貴が軽くなったわけじゃない。ただ単に俺がでかくなっただけだと。
その事に気が付いて、俺は「ごめん、ゆっくり歩くよ」と兄貴に言った。兄貴はそんな俺の言葉を聞いて「ありがとう」ともう一度言った。
その後、無事に駅に着き、切符売り場で俺は大人用の、兄貴には子供用の切符を買った。
けれど買う場面を横で見ていた兄貴にすぐさま怒られた。
「えー!? どうして義明だけ大人用なのー!? 僕の方がお兄ちゃんなのに!」
「いや、そうだろうけど……」
だからと言って、十一歳の兄貴に大人用の切符は必要ない。でも、俺には大人用の切符が必要だ。だって、もう見た目も年齢も大人だから。そして駄々をこねても仕方ないと兄貴も思ったのか、不貞腐れながらも俺が差し出した切符を手に取った。
「まあ、仕方ないよね。義明はもうおっさんだし!」
兄貴は頬を膨らましながら言い、俺はおっさんと言う言葉を聞き流した。それから二人で改札を抜け、駅構内のホームに降りた。
「切符、落とすなよ」
俺が言うと、兄貴は「落とさないよ! 子供じゃないんだから」と反論した。でも、どこからどうみても子供だ。兄貴は俺に反論した後、電車が来るのを今か今かと楽し気に待っている。これのどこが子供じゃないと言うんだろう、と思っていると兄貴が話しかけてきた。
「電車、まだかな?」
「ん? あと五分ぐらいで来るだろ」
俺は電光掲示板を見て言った。
「あと五分かー。待ち遠しいなぁ。僕、電車乗るの初めてなんだ!」
兄貴は楽し気に言い、俺はその言葉に軽く衝撃を受ける。兄貴が生きている内に、電車に乗った事がなかったことに。
思えば兄貴はいつも病院にいて、病院から出る時も車だった。公共の乗り物と言うものに乗った事がないのだろう。俺はそんな事も知らなかったのか、と思いながら、楽し気な兄貴の後姿を眺めた。
俺はその後ろ姿を見ながら、この四日間、ただ兄貴に楽しく過ごしてほしいと心から願った。
それから電車は目的地に着き、俺は兄貴と共に駅のホームに向かった。
すると、すぐに駅のホームに夏海の姿を見つけた。俺は事前に夏海に連絡を取り、事情を知った夏海が気を利かせて待ち合わせの場所を駅のホームに変えてくれたからだ。
電車を降りた他の人達と混じりながら歩いていると、夏海もその中に俺の姿を見つけて軽く手を振ってくれた。それを見た兄貴は「あの人が義行の彼女?」とにまっとした顔で聞いてきた。
俺は少し恥ずかしい思いを感じながら「そうだよ」と答えて、そのまま夏海の方に足を向けた。
「夏海」
俺は夏海の近くまで歩み寄って声をかけた。
「おはよう、義明」
「待ったか?」
「ううん」
夏海はそう言って首を振り、そして俺の傍に立っている兄貴に視線を下した。
「こんにちは! 初めまして、僕は義明の兄の義行ですっ!」
兄貴は礼儀正しく自己紹介をし、頭を下げた。夏海には事前に帰生した兄貴が一緒だと連絡していたので驚くこともなく、夏海は兄貴に挨拶を返した。
「初めまして、沖野夏海と言います。よろしくね」
「よろしく。僕の事は義行って呼んで下さい。あの、夏海お姉さんって、呼んでいい?」
「勿論!」
夏海が笑顔で答えると兄貴はホッとしたように顔を緩ませた。そんなやり取りを横目に俺は夏海に話しかけた。
「今日は突然で悪いな。すまないけど、一日付き合ってくれるか?」
「全然、私は構わないよ。折角、お兄さんが帰生しているんだから」
夏海はそう言い、その優しさに俺は笑顔になる。だが、不意に下に視線を向ければ兄貴がにやけた顔で俺を見るので、俺は緩んだ口元をむむっと引き締めた。
「それより。この後、映画を見に行く予定だったけど、どうする?」
夏海が言うと兄貴は「え、映画見に行くの!? 僕、映画観たーい!!」と声を上げた。俺も夏海も元々その予定だったから、俺達はそのまま映画館に行くことに。
映画館は駅から徒歩で十分程度歩いたところにあるので、すぐに俺達はビルの中にある映画館に着いた。
兄貴は初めての映画館にも少し興奮気味で、俺と夏海は当初見る予定だったミステリー系の洋画を変更してアニメーションの映画を見ることにした。
さすがに子供の兄貴にミステリー系の洋画はつまらないだろう、という夏海の提案だった。まあ、俺もをそれには反論はなかったし、映画はまた今度の機会に見ればいい話だ。
なので、俺は三人分の映画のチケットを買って、売店で売っているポップコーンを興味深そうに見ていた兄貴に買ってやった。案の定、兄貴は目をキラキラさせて喜び、その後俺達は会場に入って並んで座った。
俺と夏海の間に兄貴が座ったことだが、ちょっと残念だったがまあ仕方がないだろう。そうこうしている内に映画は始まり、俺は少し眠気を感じながらも映画を最後まで見きった。
終わった後、アニメーションの映画に変更した判断が正しかったようで、兄貴は映画の内容を終わってからもずっと楽しげに夏海に話していた。なんで、俺じゃなくて夏海なんだ? と思いながらも、その後は街中をぶらつき、色んな店に立ち寄って買い物をしたり、昼食は夏海が行きたがっていた洋食のレストランに行ってみたりもした。
兄貴はただ俺達についてくる、という感じだったが、何でも楽しいのか始終ご機嫌だった。その様子を見ながら、俺はまあ無理もない、とただ思った。
兄貴はほとんどを家と病院で過ごしていた。街を歩くなんて、なかったに等しい。だから、こうして歩き回れるのが嬉しいのだろう。
……けれど、どうしてだろうか。
今の兄貴は子供だからしょうがないのに、夏海と仲良くしている姿を見るとどうしてかイラっとする。こんなことを思っても仕方がないのに。なので俺は努めてそんな感情を胸の奥にしまい込んだ。大人だから。
だが昼食も取り、夏海に新しい財布をプレゼントされた後、腹ごなしに俺達は紅葉に暮れる公園を歩くことになったが……。昨日も仕事でまだ疲れが取れきれていなかった俺は早々にバテてしまい、公園内にあるベンチに座ることを提案した。こういう時、無駄に年を取ったと痛感する。
「もー、義明ってば、疲れちゃったの?」
無邪気な顔をして兄貴はベンチに座る俺の目の前に立って言った。
「仕方ないだろ? 昨日も俺は仕事だったんだ。それよか、ほら、お金やるから、あそこの自販機でジュースでも買ってきて。ついでに俺らの分も頼む。俺はブラックコーヒー、夏海は?」
俺は財布を取り出して千円を兄貴に差し出し、隣に座っている夏海に尋ねた。だが夏海は「ジュース買いに行くなら私が行くよ」と持ち前の人の好さを発揮してベンチから立ち上がった。
けど、そんな夏海をベンチに座らせたのは俺から千円札を受け取った兄貴だった。
「いいよ、夏海お姉さん。僕が買いに行くから、ここで義明と待ってて」
兄貴が笑顔で言うと、夏海も「そう?」と言ってベンチに座りなおした。
「夏海お姉さんは何がいいかな?」
「じゃあ、ストレートの紅茶をお願いしていい?」
「わかった! 二人ともちょっと待ってて」
兄貴はそう言うと、駆け足でベンチから少し離れた自動販売機に枯れ葉を踏みしめて走っていった。
その後ろ姿を見ながら、兄貴って走れたんだな、と思わず感心してしまった。
兄貴は病気のせいで、病院や家から出ることも叶わなかった上に、走ることさえも許されなかった。もし、少しでも走れば誰かが必ず止めたからだ。心臓病を患っていた兄貴は胸に爆弾を抱えているのも同然だったから。
だからだろうか、なんとなく感慨深く思っていると、隣に座っていた夏海に声をかけられた。
「お兄さんのことが心配?」
夏海に聞かれて、俺ははっとずっと兄貴に視線を向けていたことに気が付いた。
「いや、まあ心配というか、兄貴が走ってるの、初めて見るなっと思って」
「そうなんだ」
そう言って夏海も兄貴に視線を向けた。身長の低い兄貴にとって自動販売機のボタンは少し高いのか、一生懸命背伸びをしてボタンを押そうとしている姿が見える。
「帰ってきた四日間、楽しんでくれるといいね」
夏海は微笑んでいい、俺はこの優しい人が自分の彼女であることに感謝しながら「ああ」と頷いた。でも、そんな俺達の前にいつの間にかジュースを買ってきた兄貴が立っていた。
「二人ってラブラブだねぇ」
にやにやしながら兄貴は言い、俺は思わず照れくささを隠すように手を差し出した。
「うるさい、コーヒー」
「義明ってば照れちゃって、ふふふ」
兄貴は笑いながらも、俺にホットコーヒーを渡した。でも、俺はそれ以上何も言えなくて、缶を開けてコーヒーを飲むしかなかった。
しかし時間というものは、あっという間に過ぎていくもので、五時を過ぎた頃になると周りは夕暮れ始め、俺も夏海も明日から仕事だし、兄貴もいるという事で、俺達はそれぞれ帰ることになった。
夏海とは駅で別れ、俺は兄貴と一緒に電車にまた乗り、家路を二人で並んで歩いた。
道路にできる二つの影が揺れる。
「夏海お姉さんって義明にはもったいないぐらい、素敵な人だね」
兄貴は俺の横を歩きながら唐突に言った。
「なんだよ、急に」
「だって今日一緒にいて、そう思ったんだもん! ねえ、義明は夏海お姉さんと結婚するの?」
兄貴は首を傾げて俺に聞いた。でも俺は何も答えずに歩く。こういうことをぺらぺらと喋るのは性じゃない。でもそんな俺を無視するように兄貴はずけずけと尋ねる。
「ねーねー、結婚しないのー? ねー、義明。それともしないつもりなのー? ねーねー」
兄貴は俺の手を掴んで、ぶんぶん引っ張りながら言った。
「うるさいな、どっちでもいいだろ?」
俺は少々ぶっきら棒に言ったが、兄貴には全く効果がなかった。
「どっちでもいい訳ないだろー? 義明のお嫁さんだぞ! それに夏海お姉さん、すごく素敵な人だから、早く捕まえておかないと逃げられちゃうぞ!」
兄貴はふんっと鼻を鳴らして言い、俺は頭を抱えながらしょうがなく答えた。もし、これで答えなければずっと問いかけられることが目に見えたからだ。
「結婚するつもりだよ。来年になったらな」
「それってプロポーズを来年するってこと? なんで来年なの?」
「そうだよ。夏海は一月が誕生日なんだ。それにそのぐらいから一緒に暮らすつもりだから。わかったら、ちょっと静かにしてろ」
「へぇーーーーっ」
兄貴はにやにやした顔をして俺を見たが、俺は妙に気恥ずかしくて顔を合わせられなかった。しかし、そんなことを話している内に家に着いた。
家に帰ると、俺の誕生日という事と兄貴が帰ってきたという事で母さんがすき焼きを、父さんがケーキを買って待っていてくれていた。我が家では祝い事の席は必ずすき焼きと決まっている。
ケーキはまあ、俺というより兄貴の為だろう……。
俺達はテーブルを久しぶりに家族全員で囲い、兄貴は至極楽しそうにご飯を食べ、今日あった事を両親に話しかけていた。そんな兄貴に両親は常に笑顔で、俺は話す事もなく、黙々とビールと共にすき焼きを食べた。
でも、どうしてか楽しいはずの家族団欒の食事が、俺の胸にちくりと針を刺す。昔も同じような痛みを感じたことがある、疎外感という名の痛みだ。両親の目は兄貴だけで向かっている。
その事が俺の胸に痛みを与えた。
何を馬鹿な、俺はもう二十七にもなったんだぞ?
そう自分に問いかけて、俺はただ黙々とすき焼きを口の中に入れ、ケーキも食べる。でもその後、俺はなんだか耐えきれなくなって、そそくさと自分の部屋に戻った。
途端、急に疲れがどっと襲い、俺はばたっとベッドに横になって見慣れた天井を見上げた。
階下から明るい笑い声と話し声が聞こえてくる。こんな明るい声が聞こえてくるのは久しぶりだ。兄貴がいるとこの家はいつでも明るくなった。兄貴さえいれば。
じわりと幼い頃に負った軽い心のやけどがひりひりと痛む。
それを何とか誤魔化そうと俺は起き上がって、気分転換に風呂に入ることにした。引っ越したばかりでタンスに入れていない、服とパンツを段ボールから引っ張り出し、部屋を出ようとした時。
コンコンッと誰かがノックし、ドアが開いた。
「義明、ちょっといい?」
ドアからひょこっと顔を出したのは兄貴だった。
「なに?」
俺が尋ねると兄貴は俺の部屋におずおずと入ってきた。両手を後ろに回し何かを隠してる。なんだ? と俺が思った時に、兄貴はそれを俺に差し出した。
「誕生日おめでとう! これ、僕からの誕生日プレゼント。今の義明にはいらないかもしれないけど、僕があげれるものはこれぐらいしかないから」
兄貴がそう言って差し出したのは、俺達が幼い頃に流行っていた戦隊もののフィギュアだった。俺も昔、欲しいとねだったことがあってそれを覚えていた。それは少し色褪せていたが、新品同様に綺麗だった。
兄貴は生きていた頃、このフィギュアを大切にしていたし、死んでからは両親が大切に保管していたのだろう。懐かしさがにわかに香る。
「やっぱり、いらない……かな?」
兄貴が悲しげに言い、俺はすぐにそれを受け取った。
「いや、もらうよ。ありがとう」
俺が言うと兄貴は暗くした顔を一変させて、「へへ!」と嬉しそうに笑った。そして、俺が風呂に入ろうとしていることに気が付いたのか、兄貴は「義明、お風呂に入るの? 僕も一緒に入る!」と言ってきた。
まさかこの年になって兄弟と風呂を一緒に入るとは思っていなかった俺は「え!?」と戸惑ったが、兄貴は俺をそっちのけでさっさと一階に降りていた。
勝手な、と思いつつも悪い気がしないのだから兄弟ってのは不思議だ。俺は手にしたフィギュアを中学から使っている勉強机に置き、まさか数年も経って兄貴から貰うことになるなんてな、と心の中で呟いた。さっきまで確かにあった心のやけどが息を潜める。
「兄貴のおかげ、だな」
俺は呟いて、服とパンツを持って一階に降りた。一階では、兄貴が母さんに服を用意してもらっていた。
それから十数年ぶりに兄貴と一緒に風呂に入り、兄貴の頭を洗わされ、二人で狭い風呂につかった。そして風呂の中に入ってから数秒も経たない内に兄貴は昔のアニソンを歌い始め「ほら、義明も歌って!」とつき合わされた。二十七にもなってアニソンを風呂場で熱唱する日がくるとは……。
風呂を出た後は、子供の兄貴の体を先に拭き、服を着た後はドライヤーを片手に兄貴の頭を乾かした。これじゃ、兄弟というよりか親子って感じだ、と思いながら俺は鏡に映る自分たちに目を向けた。そこに映るのはどう見ても子供の兄貴と大人の俺。
親子だな、これは。と心の中で呟きながら、俺は兄貴の髪を乾かした。
その後、脱衣所から出た俺は自室に、兄貴は両親の寝室に別れた。なんでも今日は両親と一緒に寝るらしい。兄貴は嬉しそうに「義明、おやすみー!」と言って親父と一緒に寝室に消え、俺は自分の部屋に戻って、早々にベッドに入った。明日からはまた仕事だ。
ポカポカした体でベッドに入った俺はすぐに睡魔に襲われた。だが暗い部屋の中、俺はうとうとしながら、ある大事なことを兄貴に聞きそびれてしまったことに気が付いた。
そういや兄貴、どうして今になって戻ってきたんだろう?
そう考えている内に、俺はすっかり眠りについてしまった。
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