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16 それから
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―――それから聡介はヒートが明けて家に戻り、後日鬼崎が改めて両親に挨拶に来ることになった。それは勿論、番となった聡介との今後を話す為に。
しかし挨拶が終わった後、帰る鬼崎を見送ろうと聡介はこてつを連れて駅まで一緒に向かうが……。
「はぁ。……聡介君のお父さん、怖かった。それに王司のやつも」
聡介がててててっと前を歩くこてつのリードを引きながら歩いていると、隣を歩くスーツ姿の鬼崎がしみじみと呟いた。そして聡介は鬼崎がそう言ってしまうのも無理はないと思った。
なにせ普段は穏やかで優しい父が、今日はむっすりとした顔で鬼崎を威圧していたからだ。そしてその隣には話を聞いて急遽同席した樹もいて同じようにむっすりとし、穏やかだったのは母親の真里だけだった。
……鬼崎さんの言う事もわかるけど、まあ父さんが怒るのも無理もないよな。お見合い当日に俺達、番っちゃったし。父さんだけじゃなく樹兄ちゃんもすごく驚いて。突然の事だったとはいえ親心的に怒るのも無理はないかも。樹兄ちゃん、俺の事を弟みたいに想ってくれてるし。まあ、その矛先は鬼崎さんに向かっちゃったけど。
「すみません、お父さんがあんな態度で。樹兄ちゃんも俺の事を本当に弟みたいに大事にしてくれてるから」
「謝らなくていいよ。あの態度が普通だと思うし、実際俺は大事な息子さんに手を出したんだから」
「でも、それは俺の同意あっての事で」
「それでも、だよ」
鬼崎は笑いながらそう答えた。そんな鬼崎を見て聡介は改めて大人だな、と思う。だからこそ、余計に聡介は責任を負わせてしまったような気がして謝らずにはいられなかった。
「ごめんなさい」
聡介が謝ると鬼崎はフッと笑った。
「聡介君が謝ることないよ。それにこういう時は謝られるよりお礼を言われる方が嬉しいな?」
鬼崎に言われて、聡介はその優しさに胸がじんっとする。そして言われた通りに言い直した。
「ありがとう、仁さん」
お礼と名前を言えば、鬼崎は満足そうに微笑んだ。その顔を見るだけで聡介の胸はドキドキする。けれど、そんな聡介に鬼崎は何かを思い出したように「あ」と声を上げた。
なんだろう? と聡介が思えば、鬼崎は立ち止まってスーツのポケットを探ってあるものを取り出した。
「渡すのを忘れるところだった」
鬼崎はそう言うと聡介にあるものを差し出した。それを見て聡介は目を丸くする。
「カギ?」
「そう家の鍵。聡介君に持ってて貰おうと思ってね」
「仁さんの?!」
「昨日、家に来たから場所はわかるだろう?」
鬼崎は言いながら聡介の手に鍵を渡した。実は昨日、聡介は今日の顔合わせの話をする為に鬼崎が住む家にお邪魔していたのだ。まあ、初めて訪ねた鬼崎の家で結局いちゃいちゃしてしまって話どころではなかったけれど。
しかし、その家の合鍵を突然渡されて聡介は驚いてしまう。
「場所はわかりますけど、いいんですか?」
「勿論。むしろ、この鍵を使って会いに来てくれたら嬉しいよ。聡介君が大学を卒業するまでは一緒に暮らせないからね」
鬼崎は少し寂しそうな顔をしながら言った。実は先程、両親を交えた話し合いで二人が一緒に暮らすのも結婚するのも聡介が大学をきちんと卒業をしてからと言う事に決まってしまったからだ。
まあ、この事は昨日の内に二人で決め、両親はそれに同意しただけの形だったが。
……仁さん、俺が卒業するまで待つって言ってくれたんだよな。勝手に番ってしまったから他のところではちゃんとしたいって言って。俺が噛んでって頼んだのに。
けれど、そういう真面目で優しいところを好きになったから聡介は何も言わなかった。本当は一緒に住みたいし、今すぐにでも結婚もしたいと思っていても。
……まあ二年、待てばいいだけの話だから。でも、その前に合鍵を貰えるなんて。
「ありがとうございます。お邪魔する時は連絡しますね!」
聡介は貰った合鍵を大事そうにぎゅっと握りしめて言った。でもそんな聡介を見て、鬼崎は「はぁー」と大きなため息を吐いた。
「仁さん?」
「あー、もう。やっぱり結婚は卒業してからなんて言うんじゃなかったな。もう家に連れて帰りたい」
鬼崎が寂し気に言い、聡介はすぐに嬉しさが胸に広がる。一緒にいたいのは自分だけじゃないのだとわかるから。
「俺も一緒に帰りたいです」
「聡介君、我慢してる俺を無邪気に煽らないで」
鬼崎は困った風に言い、聡介はそんな鬼崎を見るのが楽しくてついフフッと笑う。けれど、そんな聡介に鬼崎はこう言った。
「ふぅ……辛いけどちゃんと二年待つよ。それまでしっかり家族の時間を過ごしておいで。二年経ったら、迎えに行くから。その時、俺と結婚したくないって言っても、もう離してあげれないからね?」
鬼崎はきゅっと聡介の手を握って宣言するように言った。だから聡介も言い返す。
「仁さんこそ。二年の間に気が変わっても離しませんから」
「俺は大丈夫。今からもう聡介君との楽しい未来計画しか考えてないから」
鬼崎の言葉に、聡介も二人のこれからの未来をふと思い浮かべる。幸せな二人の未来を。
そして聡介は二年後に挙げるだろう結婚式を思い描いて、鬼崎にある事を告げた。
「仁さん」
「ん?」
「あの、少し前に俺に夢はあるのか聞いてくれましたよね?」
聡介がおもむろに尋ねると鬼崎は思い出したように「ああ、洋服を買いに行った時だよね?」と答えた。
「俺ね。あの時、言い出せなかったんですけど、本当はずっと前から叶えたい夢があったんです」
「叶えたい夢?」
唐突な聡介の告白に対し、鬼崎はなんだろうという顔をして尋ね返した。だから聡介は胸に抱えていた夢を鬼崎に教えることにした。それは鬼崎となら、きっと叶えられる夢だから。
「あのね、仁さん。俺……」
聡介はこてつにしか言った事のない、誰にも告げる事のできなかった夢を初めて口にし、その夢の内容を聞いた鬼崎は微笑んだ。
そして、その夢が無事叶えられたかと言うと―――?
**************
明日はいよいよ最終話!(^-^)
しかし挨拶が終わった後、帰る鬼崎を見送ろうと聡介はこてつを連れて駅まで一緒に向かうが……。
「はぁ。……聡介君のお父さん、怖かった。それに王司のやつも」
聡介がててててっと前を歩くこてつのリードを引きながら歩いていると、隣を歩くスーツ姿の鬼崎がしみじみと呟いた。そして聡介は鬼崎がそう言ってしまうのも無理はないと思った。
なにせ普段は穏やかで優しい父が、今日はむっすりとした顔で鬼崎を威圧していたからだ。そしてその隣には話を聞いて急遽同席した樹もいて同じようにむっすりとし、穏やかだったのは母親の真里だけだった。
……鬼崎さんの言う事もわかるけど、まあ父さんが怒るのも無理もないよな。お見合い当日に俺達、番っちゃったし。父さんだけじゃなく樹兄ちゃんもすごく驚いて。突然の事だったとはいえ親心的に怒るのも無理はないかも。樹兄ちゃん、俺の事を弟みたいに想ってくれてるし。まあ、その矛先は鬼崎さんに向かっちゃったけど。
「すみません、お父さんがあんな態度で。樹兄ちゃんも俺の事を本当に弟みたいに大事にしてくれてるから」
「謝らなくていいよ。あの態度が普通だと思うし、実際俺は大事な息子さんに手を出したんだから」
「でも、それは俺の同意あっての事で」
「それでも、だよ」
鬼崎は笑いながらそう答えた。そんな鬼崎を見て聡介は改めて大人だな、と思う。だからこそ、余計に聡介は責任を負わせてしまったような気がして謝らずにはいられなかった。
「ごめんなさい」
聡介が謝ると鬼崎はフッと笑った。
「聡介君が謝ることないよ。それにこういう時は謝られるよりお礼を言われる方が嬉しいな?」
鬼崎に言われて、聡介はその優しさに胸がじんっとする。そして言われた通りに言い直した。
「ありがとう、仁さん」
お礼と名前を言えば、鬼崎は満足そうに微笑んだ。その顔を見るだけで聡介の胸はドキドキする。けれど、そんな聡介に鬼崎は何かを思い出したように「あ」と声を上げた。
なんだろう? と聡介が思えば、鬼崎は立ち止まってスーツのポケットを探ってあるものを取り出した。
「渡すのを忘れるところだった」
鬼崎はそう言うと聡介にあるものを差し出した。それを見て聡介は目を丸くする。
「カギ?」
「そう家の鍵。聡介君に持ってて貰おうと思ってね」
「仁さんの?!」
「昨日、家に来たから場所はわかるだろう?」
鬼崎は言いながら聡介の手に鍵を渡した。実は昨日、聡介は今日の顔合わせの話をする為に鬼崎が住む家にお邪魔していたのだ。まあ、初めて訪ねた鬼崎の家で結局いちゃいちゃしてしまって話どころではなかったけれど。
しかし、その家の合鍵を突然渡されて聡介は驚いてしまう。
「場所はわかりますけど、いいんですか?」
「勿論。むしろ、この鍵を使って会いに来てくれたら嬉しいよ。聡介君が大学を卒業するまでは一緒に暮らせないからね」
鬼崎は少し寂しそうな顔をしながら言った。実は先程、両親を交えた話し合いで二人が一緒に暮らすのも結婚するのも聡介が大学をきちんと卒業をしてからと言う事に決まってしまったからだ。
まあ、この事は昨日の内に二人で決め、両親はそれに同意しただけの形だったが。
……仁さん、俺が卒業するまで待つって言ってくれたんだよな。勝手に番ってしまったから他のところではちゃんとしたいって言って。俺が噛んでって頼んだのに。
けれど、そういう真面目で優しいところを好きになったから聡介は何も言わなかった。本当は一緒に住みたいし、今すぐにでも結婚もしたいと思っていても。
……まあ二年、待てばいいだけの話だから。でも、その前に合鍵を貰えるなんて。
「ありがとうございます。お邪魔する時は連絡しますね!」
聡介は貰った合鍵を大事そうにぎゅっと握りしめて言った。でもそんな聡介を見て、鬼崎は「はぁー」と大きなため息を吐いた。
「仁さん?」
「あー、もう。やっぱり結婚は卒業してからなんて言うんじゃなかったな。もう家に連れて帰りたい」
鬼崎が寂し気に言い、聡介はすぐに嬉しさが胸に広がる。一緒にいたいのは自分だけじゃないのだとわかるから。
「俺も一緒に帰りたいです」
「聡介君、我慢してる俺を無邪気に煽らないで」
鬼崎は困った風に言い、聡介はそんな鬼崎を見るのが楽しくてついフフッと笑う。けれど、そんな聡介に鬼崎はこう言った。
「ふぅ……辛いけどちゃんと二年待つよ。それまでしっかり家族の時間を過ごしておいで。二年経ったら、迎えに行くから。その時、俺と結婚したくないって言っても、もう離してあげれないからね?」
鬼崎はきゅっと聡介の手を握って宣言するように言った。だから聡介も言い返す。
「仁さんこそ。二年の間に気が変わっても離しませんから」
「俺は大丈夫。今からもう聡介君との楽しい未来計画しか考えてないから」
鬼崎の言葉に、聡介も二人のこれからの未来をふと思い浮かべる。幸せな二人の未来を。
そして聡介は二年後に挙げるだろう結婚式を思い描いて、鬼崎にある事を告げた。
「仁さん」
「ん?」
「あの、少し前に俺に夢はあるのか聞いてくれましたよね?」
聡介がおもむろに尋ねると鬼崎は思い出したように「ああ、洋服を買いに行った時だよね?」と答えた。
「俺ね。あの時、言い出せなかったんですけど、本当はずっと前から叶えたい夢があったんです」
「叶えたい夢?」
唐突な聡介の告白に対し、鬼崎はなんだろうという顔をして尋ね返した。だから聡介は胸に抱えていた夢を鬼崎に教えることにした。それは鬼崎となら、きっと叶えられる夢だから。
「あのね、仁さん。俺……」
聡介はこてつにしか言った事のない、誰にも告げる事のできなかった夢を初めて口にし、その夢の内容を聞いた鬼崎は微笑んだ。
そして、その夢が無事叶えられたかと言うと―――?
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明日はいよいよ最終話!(^-^)
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