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12 パフッ
しおりを挟む「何、そんなに落ち込んでるんだよー? さっきの俺の言葉を気にしてるのか?」
俺が用意した服を着たシュリは風呂上がりの後、項垂れてソファに座っている俺に声をかけた。
俺の服を貸したので小柄なシュリにはワンピースの様になっている。
「一人でさっさと風呂場を出ちゃうし。……男はちんこが大きい方がいいんだろ? なんで落ち込んでるんだ?」
シュリは俺の隣に座り、あけすけに聞いてくる。でも何も答えない俺にシュリは不安げな顔をした。
「エルサルが男はちんこが大きい方がいいって言ってたけど、もしかして違うのか? 俺、あんな大きなの見たことなかったから、つい言っちゃったんだ。だって本当にアレクシスのちんこ、おおっもごっ!」
シュリが言い終わる前に俺はシュリの口をパフッと手で押さえた。恥ずかしくて聞いていられない。
「少し黙ってくれ」
俺はきっと真っ赤な顔をしているだろう。でもシュリは俺の言葉を聞いて、こくっと頷いた。俺はそれを見て、シュリの口を塞いでいた手をそっと離す。
「ごめん、怒ったのか? 嫌だったか?」
シュリは心配そうに俺を見る。だが、そんな顔をされると俺の方がシュリをいじめている気分になる。俺は「はぁ」と小さく息を吐いてシュリに告げた。
「大丈夫だ。それに怒ってない。ただな、あんまり人前でそういう話はするな」
俺はそう言ったのだが、シュリはきょとんっとしている。
「人前って、ここには俺とアレクシスしかいないじゃん」
「だとしてもだ!」
俺の言葉に、シュリは首を傾げる。
「人前は駄目って……エルサルは俺に色々話してくれたけどな。ちんこが大きいと女の人が喜ぶとか、あ、でも男同士でも喜ぶって言って、もごっ!」
俺はもう一度シュリの口をパフリッと塞いだ。
……一体、大魔術師エルサルは弟になんて話をしてるんだ。全く!
俺は会った事もないエルサルに恨み言を心の中で呟いた。そしてシュリに視線を向けた。
「シュリ、そう言う話もダメだ。いいな?」
俺が言うと、シュリはなんで? という目を向けてきた。けれど俺はじっと顔を寄せて「い・い・な?」と言い聞かせた。するとようやく俺の凄みに負けたのかシュリはこくこくっと頷いた。
俺はほっと息を吐き、そっとシュリから手を離す。けど、やっぱりシュリは納得していない顔をしている。
「なあ、もう話さないけど……なんで駄目なんだ?」
「なんでって、駄目なものは駄目だ」
「それじゃわかんないよ」
シュリは子供みたいにむすっと顔を膨らませ、俺はため息をつきたくなってきた。
……なんで俺がこんなことを教えなきゃならないんだ。
「シュリ。そう言うのは好きな人と話すものだ。特別な相手と、わかったか?」
「好きな人とか?」
シュリに尋ねられて、俺は言っておきながらはたと考え直す。
……確かに好きな相手と話すものか? こういう事。……いや、どっちにしろ。
「ともかく俺に話しちゃダメ!」
「ええー? でもぉ」
言いかけるシュリに俺は無言でじろっと視線を向けた。
するとシュリはこれ以上言えば、俺が怒るのがわかったのか慌てて「わかった!」と答えた。その答えを聞いて俺ははぁーっと息を吐いて頭を抱えた。
やはり魔人の子守りは大変かもしれない、と俺は今更ながらに思い直し。そしてこの日の夜、俺は早速思い知らされるのだった。
◇◇◇◇
そしてそれから翌日の午前中。
朝早くに俺はシュリと共にルサディア陛下の元へ訪れた。……けれど俺はすっかり寝不足だった。
なぜなら昨晩、シュリが俺と一緒に寝る事を譲らなかったからだ。
俺はソファで寝ると言ったのに、シュリが『ベッドで一緒に寝たらいいだろー? 一緒に寝よ?』と言って聞かなかった。だから俺は仕方なく一緒に寝た。とはいっても、シュリの傍でぐーすか寝られるほど図太い神経はしていないので、シュリが寝た後にそっとソファに移動しようと思っていた。
だから疲れてすぐにすぴすぴっと眠ったシュリからそっと離れようとしたのだが。
俺が離れようとした瞬間、シュリはしゅばっと手を伸ばすと俺の尻尾をむぎゅっと掴み、俺の尻尾を抱きしめた。
……ぐおっ?! ま、まさか起きてるのか?
俺は振り返ってみたが、シュリはすぴーっと気持ちよさそうに眠っていた。
そしてその後、自分の尻尾をシュリから離そうとあれやこれやしてみたが、シュリは絶対に離してはくれなかった。なので結局俺はシュリの傍から離れられず、眠れない夜を過ごしたという訳だ。
獣人である俺はたった一日の徹夜なんて屁でもないが、傍に眠るシュリが気になって俺は体力、というよりも精神をごっそりすり減らされていた。
……エルサードが隣に寝ていても何も思った事はないのに……。今日はなんとしても別々で寝なければ!
「アレクシス、なんだか顔色悪いな。どうしたんだ?」
俺が決意する横で、俺の寝不足の原因を作ったシュリは心配げな視線を向けてきた。
昨晩、眠れない俺が夜目を利かせてじっくりと眺めた顔に一瞬ドキッとする。
「なんでもない、前を見てろ」
俺は少しぶっきら棒に言い、そして顔を逸らしつつ横目でちらりとシュリの格好を盗み見た。
今日、シュリは騎士の制服を着ていた。元々着ていた服は洗いに出しているからだ。
……シュリの服、どこかで調達しなければな。
俺はそう思いつつ、王座の間にようやく陛下がやってきた。
「遅くなってすまないな、二人とも。おはよう、今日もいい天気だな」
そう陛下はにこやかに挨拶をした。
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