《BL》転生令息は悪役よりも壁志望、もしくは天井でも可!

神谷レイン

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第二章「デートはお手柔らかに!」

最終話 アントニオの贈り物

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 翌日の朝、とうとう別邸へと帰る日が来てしまった。

「あっという間の三日間だったな~」

 俺はのんびりと呟き、部屋で馬車が来るのを待っていた。

 ……短かったけど、なかなか濃い三日間だったな~。

 そう思いながら屋台やエランディールの一件、アントニオの事を振り返る。だが同時にレノにデコチューされた事を思い出して、顔が少し熱くなる。
 未だおでこにレノの柔らかい唇の感触が残っている。

「うーむ」

 ……あいつと二人っきり。俺、大丈夫だろうか。

 俺は眉間に皺を寄せながらおでこをさすさすと撫でた。

「熱でもあるんですか?」
「わひっ!」

 驚いて振り返れば、そこにはいつのまにか気配なくレノが立っていた。どうやら荷物を纏めてやってきたようだ。

「おはようございます、キトリー様」

 レノはにっこりと笑って言った。その顔は涼し気だ、まるで一昨日の夜の事は何もなかったかのように。

 ……気にしてるの俺だけってか? む。

「おはよ」

 俺は思わずぶすっとした顔で返事をした。

「おや? ご機嫌ナナメですね。昨夜は夜更かしでもしましたか?」
「フン、ぐっすり寝ました! お前がいなくても余裕なんだからな」

 俺は腕を組み、プイとそっぽ向いて答える。でも本当は昨晩も考え込んでしまってぐっすり眠れていなかった。そして、そういう事にレノは目敏かった。

「嘘ですね。熟睡していないでしょう、目の下にうっすらとクマができてますよ」

 レノは流れるような動作で俺の顎を掴んで、じっと俺の顔を覗き込んだ。すぐ近くにレノの煌めく赤い瞳が見え、ドアップ顔に俺は小さく悲鳴を上げる。
 その上、俺があげたラベンダーの石鹸の香りがして……。

「ぷぎゃ!」
「夜更かしはいけませんよ、キトリー様」

 レノはにっこりと笑ったが、俺は慌ててレノの胸を押して離れた。

 ……危ない! 油断すると何をされるかわからん!!

 俺はドキドキしつつ、シャーッ! と毛を逆立てさせて警戒した。だがそんな俺にレノは笑ってみせた。

「そんなに警戒しなくても何もしませんよ。今は仕事中ですから」
「本当かよ?」
「勿論、坊ちゃんがして欲しいって言うなら構いますが?」

 レノはキラキラした笑顔を俺に向けて言った。誰が頼むかっつーんだ!

「結構デス!」

 ……レノの奴め、いつも通りの態度を取りおって。これじゃ気にしてる俺が馬鹿みたいじゃん。

 そしてそんな俺の気持ちを読んだかのか、レノはくすくすっと笑った。

「ようやく私の事を意識し始めたみたいですね? 嬉しいです」
「な、別に意識なんてしてないし!」
「またデートに行きましょうね、坊ちゃん」

 レノがあんまりにも楽し気に言うものだから、俺は何も言い返せなくなる。実際一緒にバス専門店や屋台をウロウロと回った時、レノはいつもよりずっと楽しそうだった。それに俺も楽しかったし……。

「……気が向いたらな」

 俺は素っ気なく答えた。でもレノは短い一言で十分だったようだ。

「はい」

 そう嬉しそうな顔で俺に言った。

 ……ぐぅっ! イケメンの笑顔は眩しいんだから、ちょっと光量を落とせ!!

 俺はレノのキラキラと輝く笑顔に目を細める。
 だが、そこへ誰かが部屋をノックした。誰だろ? と思いつつ「どうぞ」と声をかけるとセリーナが部屋に入ってきた。

「セリーナ、馬車がもう来た?」

 思ったより早かったわね、と思うとセリーナは「いえ」と否定し、俺に一つの紙袋を渡した。

「実はアントニオから預かってきたものがありまして。こちらをキトリー様に渡して欲しいと」
「アントニオが? なんだろ?」

 ……まさかローズ・クラウン先生関係のもの!?
 
 俺はちょっとうきうきワクワクしながら紙袋の中身を見た。だがそこに入っていたのは小さな鈴に、内側にクッションが付いている赤い首輪ひとつ。そして一枚のメモが添えられていた。

『レノさんと楽しめよ! アントニオより』

 ……これって某タヌキ、いやネコのマシンと同じ首輪! いや、てか首輪って! アントニオォォッ!!

「坊ちゃん、何が入っていたんですか?」

 レノに尋ねられ、俺は咄嗟に後ろに隠す。

「い、いやぁ~? 何でもないよぉ~?」

 ……やばい、レノに見つかったらいつかマジで使われる! アントニオの奴、何考えてんだーッ!

 心の中で叫びつつ、アントニオが肩を震わせて笑う姿が目に浮かぶ。

「ほぅ? 気になりますね。中を見せてください」
「いや、なんでもないってば!」

 俺は近づいてくるレノとは反対に一歩二歩と後退る。

「何でもないなら、見せていただいても?」
「それは駄目!」

 俺はブンブンッと首を横に振って断った。しかしレノはズンズンッと俺に近づいてくる。

「坊ちゃん、さあ」
「何でもないったらなんでもないってばぁー!」

 俺はちょっと大きな声で言った。しかしレノの歩みは止まらない。
 そしてそんな俺達を見てセリーナは微笑ましく微笑んでいる。大方、『二人とも仲良しね』ぐらいに思っているのだろう。

 ……違うんだ、セリーナ! こんなのをレノに使われた日には、きっと俺のお尻が血祭りにッ! ひえぇぇっ!!

 なのにレノは「坊ちゃん?」と手を差し出して俺に詰め寄る。もう壁はすぐそこだ。そうなれば逃げ場はない。

 ……誰かお助けーッ!

 そう思った時だった。突然、部屋のドアが豪快にバーンッと開き、ある人物が部屋に飛び込んできた。そしてその人物は駆け寄ってくると、俺にがばっと抱き着いた。

「キトリーッ!」
「んぁっ!? な、なんでここに!?」

 俺は突然のことに驚き、声を上げた。でも問いかけには答えてもらえず、俺は次の言葉を聞いて驚愕することになる。

「キトリー! 俺、ジェレミーと婚約破棄するーッ!」

 そう言ったのは我が友・ディエリゴだった、そして。

「な、なんだってぇぇえええええっ!?」

 叫んだ俺の声が屋敷に響いたのだった――――。






 第三章「キスは不意打ちに……」に続く!!



* * * * * * * 

第二章はいかがでしたか?
今回はちょっと二人の仲が進展しました(笑)

次回はディエリゴとジェレミーが絡んできます。第三章もお楽しみに!(*´ω`*)
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