57 / 180
第三章「キスは不意打ちに!」
15 現行犯逮捕
しおりを挟む
俺の叫び声と共にクローゼットのドアが開き、お爺が飛び出してくる。突然の登場におばさんは声を上げるが、お爺は華麗なる手つきでおばさんの腕を後ろ手に捕まえた。
「失礼します」
「ちょ、ちょっと何なのッ!? 誰かーっ! 誰か―っ!」
おばさんは大声で騒ぎ、すぐさま城を守る近衛騎士と陛下、そして父様もその場に駆けつけた。
……よーし、役者は全員揃ったな。
「誰か、この爺さんを捕まえて頂戴!」
「すみませんが、あまり手荒な事はしたくないので少々大人しくしてもらえますかな?」
お爺はいつも通りのトーンで話す。だが今日は妙にその声が怖い。
……うう、ちびっちゃいそう。やっぱり今後ともお爺には逆らわないでおこう。
俺は心の中で強く思う。だが、困惑顔の陛下が一番に声を上げた。
「エヴァンス、これはどういうことだ?!」
何も知らず父様に連れられてきたであろう陛下は尋ねた。
「陛下、詳しい事はキトリーにお聞きください」
「キトリーに?」
父様に言われた陛下は俺を見て、そして同じく何が起こっているのかわからないジェレミーは不思議そうな顔で俺を見た。
「キトリー、一体どういうことなの?」
「今からみんなに説明する。その前にちょっと待って」
俺はそう言うと椅子から下り、とことこっとお爺に捕まったおばさんの元へと歩く。
「な、何よ!?」
「ちょぉっと失礼しますよー」
俺は一言断りを入れるが遠慮なしにおばさんのドレスのポケットに手を突っ込んだ。
「ちょっ、やだ! 止めて! 止めなさいッ!!」
おばさんはバタバタと暴れるがお爺はしっかりと捕まえ、俺はスカートのポケットに入っていた小瓶を手に取る。
「さ、これは何かな?」
俺がおばさんに尋ねると顔を青ざめさせた。
「そ、それはっ! べ、別に何でもないわ!」
……この期に及んでまだ否定するつもりなのか。やれやれ。
おばさんの解答に俺は小さくため息を吐き、そしてその小瓶を陛下の元へと持って行く。
「陛下、こちらを」
「これは一体? なんだと言うんだ?」
陛下は怪訝な顔をしながらも俺が差し出した小瓶を受け取った。中には水色の液体が入っている。そしてそれが何なのか俺は知っていた。
「それは毒です」
俺の告白に陛下は勿論、そこにいた騎士やジェレミーさえ驚いた。
「毒!? どうして毒など」
「それがジェレミーが時折具合を悪くする原因です。ミス・ラナーはジェレミーに定期的に毒を飲ませていたんです」
「何だとッ?!」
陛下は驚きから怒りを瞳に宿し、おばさんを見つめた。だがおばさんは罰悪そうな顔をし、視線を逸らす。
「キトリーよ、それは本当の事なのか? しかし今まで医者に見せてきたが毒の反応など」
「体に残らないよう少しずつ摂取させていたのでしょう。恐らく半年前から。調べたところ、ジェレミーがよく体調を崩すようになったのはそれぐらいからのようですから」
「半年前からずっとだとッ?!」
陛下は信じられないと言う顔をしたが俺はハッキリと告げる。
「そうです。彼女はずっとジェレミーに毒を飲ませていた。その小瓶に入った毒をね。……大方、毒を使ってジェレミーを亡き者にした後、陛下にすり寄って王妃の座に収まろうとしたのでしょう」
「ジェレミーを亡き者に?」
陛下は怒りと信じられない思いから声を震わせた。そしてじっと小瓶に入った液体を見つめる。だがおばさんは嘘を吐いた。
「へ、陛下! そんな話、でたらめですわ! 私が毒なんて!」
自身のスカートのポケットから出てきたのにおばさんは認めようとしなかった。なので、俺の心に火が点く。
「えぇい! この期に及んで、まだ己が非を認めぬ気か! あまつさえ幼子に毒を盛り、亡き者にしようとした鬼のような所業。その上、嘘を吐くとはなんという恥知らず!」
俺が腰に手を当てて言うと、おばさんは肩をびくりと震わせつつ反論した。
「な、なんなの!? だ、大体私が飲ませたっていう証拠がどこにあるのよ!? 証拠もないのに濡れ衣だわ!」
おばさんはそれでも食い下がり、俺は小さく息を吐いてレノに視線を向ける。
「証拠ならある。レノ」
「はい、こちらに」
そう言うとレノは自分が使ったティーカップを持ってきた。そこにはまだ三分の一、紅茶が残っている。
「これが証拠だ。この紅茶を調べれば毒が検出されるだろう。なぜなら貴方が使用人に呼ばれている間、俺がジェレミーとレノのティーカップを入れ替えたからな」
俺が告げるとおばさんは目を見開いた。
「な、そんな事! ……じゃ、どうしてその子は平気な顔をしてるのよ?! 毒が入っていたなら具合が悪くなるものでしょ!?」
「あの毒は遅効性のものだ、症状はすぐに出ない。それにレノは」
「私は蛇獣人なので、毒には耐性があるんです」
レノは合いの手を打つように答え、にこりと笑った。
「と言う事だ。それにクローゼットに隠れて見ていたお爺が証人だ」
「しっかりと見させていただきました」
お爺が答えるとおばさんは奥歯をギリと噛みしめた。
「こ、こんなのおかしいわ! 陛下、この子達がグルになってわたくしを貶めようとしているのですわ!」
証拠も証人も揃っていると言うのに、まだ罪を認めないおばさん。
しかし、そこへ待ち人がやってきた。
「失礼します」
「ちょ、ちょっと何なのッ!? 誰かーっ! 誰か―っ!」
おばさんは大声で騒ぎ、すぐさま城を守る近衛騎士と陛下、そして父様もその場に駆けつけた。
……よーし、役者は全員揃ったな。
「誰か、この爺さんを捕まえて頂戴!」
「すみませんが、あまり手荒な事はしたくないので少々大人しくしてもらえますかな?」
お爺はいつも通りのトーンで話す。だが今日は妙にその声が怖い。
……うう、ちびっちゃいそう。やっぱり今後ともお爺には逆らわないでおこう。
俺は心の中で強く思う。だが、困惑顔の陛下が一番に声を上げた。
「エヴァンス、これはどういうことだ?!」
何も知らず父様に連れられてきたであろう陛下は尋ねた。
「陛下、詳しい事はキトリーにお聞きください」
「キトリーに?」
父様に言われた陛下は俺を見て、そして同じく何が起こっているのかわからないジェレミーは不思議そうな顔で俺を見た。
「キトリー、一体どういうことなの?」
「今からみんなに説明する。その前にちょっと待って」
俺はそう言うと椅子から下り、とことこっとお爺に捕まったおばさんの元へと歩く。
「な、何よ!?」
「ちょぉっと失礼しますよー」
俺は一言断りを入れるが遠慮なしにおばさんのドレスのポケットに手を突っ込んだ。
「ちょっ、やだ! 止めて! 止めなさいッ!!」
おばさんはバタバタと暴れるがお爺はしっかりと捕まえ、俺はスカートのポケットに入っていた小瓶を手に取る。
「さ、これは何かな?」
俺がおばさんに尋ねると顔を青ざめさせた。
「そ、それはっ! べ、別に何でもないわ!」
……この期に及んでまだ否定するつもりなのか。やれやれ。
おばさんの解答に俺は小さくため息を吐き、そしてその小瓶を陛下の元へと持って行く。
「陛下、こちらを」
「これは一体? なんだと言うんだ?」
陛下は怪訝な顔をしながらも俺が差し出した小瓶を受け取った。中には水色の液体が入っている。そしてそれが何なのか俺は知っていた。
「それは毒です」
俺の告白に陛下は勿論、そこにいた騎士やジェレミーさえ驚いた。
「毒!? どうして毒など」
「それがジェレミーが時折具合を悪くする原因です。ミス・ラナーはジェレミーに定期的に毒を飲ませていたんです」
「何だとッ?!」
陛下は驚きから怒りを瞳に宿し、おばさんを見つめた。だがおばさんは罰悪そうな顔をし、視線を逸らす。
「キトリーよ、それは本当の事なのか? しかし今まで医者に見せてきたが毒の反応など」
「体に残らないよう少しずつ摂取させていたのでしょう。恐らく半年前から。調べたところ、ジェレミーがよく体調を崩すようになったのはそれぐらいからのようですから」
「半年前からずっとだとッ?!」
陛下は信じられないと言う顔をしたが俺はハッキリと告げる。
「そうです。彼女はずっとジェレミーに毒を飲ませていた。その小瓶に入った毒をね。……大方、毒を使ってジェレミーを亡き者にした後、陛下にすり寄って王妃の座に収まろうとしたのでしょう」
「ジェレミーを亡き者に?」
陛下は怒りと信じられない思いから声を震わせた。そしてじっと小瓶に入った液体を見つめる。だがおばさんは嘘を吐いた。
「へ、陛下! そんな話、でたらめですわ! 私が毒なんて!」
自身のスカートのポケットから出てきたのにおばさんは認めようとしなかった。なので、俺の心に火が点く。
「えぇい! この期に及んで、まだ己が非を認めぬ気か! あまつさえ幼子に毒を盛り、亡き者にしようとした鬼のような所業。その上、嘘を吐くとはなんという恥知らず!」
俺が腰に手を当てて言うと、おばさんは肩をびくりと震わせつつ反論した。
「な、なんなの!? だ、大体私が飲ませたっていう証拠がどこにあるのよ!? 証拠もないのに濡れ衣だわ!」
おばさんはそれでも食い下がり、俺は小さく息を吐いてレノに視線を向ける。
「証拠ならある。レノ」
「はい、こちらに」
そう言うとレノは自分が使ったティーカップを持ってきた。そこにはまだ三分の一、紅茶が残っている。
「これが証拠だ。この紅茶を調べれば毒が検出されるだろう。なぜなら貴方が使用人に呼ばれている間、俺がジェレミーとレノのティーカップを入れ替えたからな」
俺が告げるとおばさんは目を見開いた。
「な、そんな事! ……じゃ、どうしてその子は平気な顔をしてるのよ?! 毒が入っていたなら具合が悪くなるものでしょ!?」
「あの毒は遅効性のものだ、症状はすぐに出ない。それにレノは」
「私は蛇獣人なので、毒には耐性があるんです」
レノは合いの手を打つように答え、にこりと笑った。
「と言う事だ。それにクローゼットに隠れて見ていたお爺が証人だ」
「しっかりと見させていただきました」
お爺が答えるとおばさんは奥歯をギリと噛みしめた。
「こ、こんなのおかしいわ! 陛下、この子達がグルになってわたくしを貶めようとしているのですわ!」
証拠も証人も揃っていると言うのに、まだ罪を認めないおばさん。
しかし、そこへ待ち人がやってきた。
49
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
腐男子♥異世界転生
よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。
目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。
トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる