《BL》転生令息は悪役よりも壁志望、もしくは天井でも可!

神谷レイン

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第三章「キスは不意打ちに!」

21 キスは不意打ちに

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『あれ?』

 目を覚ませば、懐かしい自分の部屋の天井が見える。勿論、それは現世ではなく前世の。

 ……ここ、日本の俺の家ッ!?

 俺は驚いて寝ていた所からガバリと起き上がる。そして見渡せば、そこは一人暮らしをしていた部屋のリビング。

『なんで俺、家に?』

 ……まさか、今までの事は夢だったのか?

 そう思い、自分の体を見てみる。そこにはいつものグレースーツに白シャツを着込んだ三十二歳の俺。

 ……この体、前の俺だ。

 俺は不可解な点に首を傾げる。でも頭を悩ませていると、テーブルに置かれた一冊の本が目に入った。その本はビニールがかかって、まだ誰も開けていない新刊。それも俺が予約して待ちに待っていたBL本だった!

 ……こ、これはぁぁぁぁあああっ!!

 俺はすぐに本を手にして、本に頬ずりする。

『あー、新刊のいいにほひぃ~ッ!』

 しかし新刊に頬ずりしながら、クンカクンカと匂いを嗅いでいると誰かが呼ぶ声が聞こえてきた。

(起きて下さい! キトリー様!)

 ……ん? この声はレノ!?

 俺はすぐに聞こえてきたのがレノの声だとわかり、辺りを見渡すがレノの姿はない。しかしレノは呼び続け、俺はこっちが夢だと気がつく。
 だが手元には俺が待ちに待った新刊!

『これを読まずして起きられるか―!』

 俺は新刊を抱き締めて目覚めるのを拒否したが、意識が覚醒し始める。

(キトリー様! 起きて下さいッ!!)

 ……折角、新刊があるのにーっ。夢でも読ませろぉぉぉーっ!!

 俺は新刊をぎゅっと抱き締める。しかし目覚めは近い。

 ……くそぉー、読みたかったのにぃっ!! 俺の新刊ちゃーんっ!

 あまりの名残惜しさに俺は泣きながら新刊の表紙にぶちゅっとキスをする。だが本なのに表紙がやけに柔らかい、プニプニしてる。

 ……あれ? なんでこんなにプニプニしてるんだ??

 そう思いつつ俺は現実世界に引き戻され、目覚める。そしてゆっくりと目を開ければ、目の前にはレノのキラキラと輝く赤い瞳。

 ……む? レノの瞳、やけに近くない? いや、しっかし綺麗な目ぇしてんな~。

 俺は目覚めたばかりのぽやぽやした頭で思う。だが、唇に何かが当たっている。

 ……なんか、プニプニしたもんに当たってる? む、これって……これってぇッ!?

「わあああああっ!!」

 俺はレノにキスしていると言う状況に気がつき、慌てて体を離した。

「朝から熱烈ですね、坊ちゃん」

 レノは少し頬を染め、恥ずかしそうにしながら唇に手を当てて呟いた。

「ななななっ、なんでレノがここに!」
「昨晩、私を離さなかったのはキトリー様の方ですよ?」
「ちょ、えっちな風に言うんじゃありません!」
「本当の事です。昨晩、私の手を離してくれませんでしたから」
「俺がいつレノの手をっ」

 そう言った後、俺は眠りに落ちる前、レノの冷たい手を思い出した。その手に頬を寄せ、離さないように握った事も。

「……記憶にゴザイマセン」

 俺はどこぞの政治家のように言うが、レノは俺をベッドに押し倒す。

「ヒャ!?」
「嘘はいけませんね? キトリー様。寝ぼけていたとはいえ、唇を奪った責任はしっかりと取って貰わないと」

 レノは色気たっぷりに俺に言う。幸い、ここが本邸だからか今日のレノはシャツを着ていたが、シャツの合間から見える肌がなんだかいやらしい。

 ……これがちらリズムと言うやつか!?

 なんて俺は思うが、レノに押し倒され貞操の危機ッ!!

「ちょ、レノ、ここ本邸な? それに爽やかな朝ダヨ?」
「それがどうかしましたか?」
「ほらぁ、もう起きて朝飯でもぉぉ~?」
「関係ありません」

 レノはそう言うとオス顔でゆっくりと顔を近づけてくる。

 ……キャァーーッ! 食べられるぅぅぅっ! 食べられちゃうぅぅっ!!

 俺はぎゅっと目を瞑って、身を固くする。ドキドキと心臓が耳元で鳴って煩い。けどそんな中で聞こえたのは、忍び笑いをするレノの声だった。

「くっ、くくくっ」

 ……おん?

 ちらりと片眼を開ければ、レノは笑っていた。そして俺を見た。

「可愛いですね、坊ちゃん」

 楽し気に言われて、俺はからかわれているのだと気がついた。

 ……俺の純情をからかったなぁっ?!(怒)

「無理やりする、なんて無作法はしませんよ。私の信条に反します」

 レノはそう言いながら体を起こした。だが、俺はそんなレノを睨む。

 ……なーにが無理やりしない、だッ! 人の部屋で寝るわ、デコチューだって無理やりだっただろーがッ!! ……いや、まあ唇チューは俺がしちゃいましたけどぉ。でも、さっきのは事故! 事故なのだ!!

 俺は心の中で言い訳をする。でもそんな俺にレノは微笑んだ。

「キトリー様がして欲しくなるまで待ちますよ」
「誰がして欲しくなるか!」
「きっとその内に」

 レノはまるで予言するように言った、しかも極上の微笑みを浮かべて。だから俺はちょっとドキッとしてしまう。

 ……俺がレノに? そんなの、そんなのって。

 俺はなんだか『ない』と言い切れなくて、目を彷徨わす。
 けれど不意にレノの股間が視界に入る。レノはシャツを着ていてもズボンは脱いでいて、下着だけだった。そしてそこは勃っちしていなかったが、もっこりしていた。ひっじょーにもっこりして……いや、やっぱ無理ィッ!!

「オラのおちりが」

 プルルッとお尻が震える。だが、レノは不思議そうな顔をして俺を見た。

「どうしました?」
「なんでもにゃい」
「そうですか。では私は朝の準備をして参ります」

 レノはそう言うと服を着込み始めた。貞操の危機は一応免れたようで俺はホッと息を吐く。しかし着込むレノの姿を見ながら、俺はレノの唇にちらりと視線を向ける。つるつるプルプルな唇。そこはとても柔らかそうだ。
 いや、実際柔らかかった。

 ……うーん、あの唇に俺がチューを。事故とは言え、なんだか恥ずかしい。

 俺は思い出して頬を染める。でもそんな俺に着替え終わったレノはずいっと顔を近づけた。

「ひゃ、な、ナニ!?」
「じっと見つめていたので。もしかして、もう一度キスしたいんですか? 坊ちゃん」

 上目遣い、その上間近で言われて俺は胸がドキッとする。

「だだだ、誰がするか!」
「そうですか? 私を見ていたようなので」
「見てません!」

 ……本当は見てたけど!!

「おや、残念です。でも」

 レノはそこまで言うと、俺の耳元に唇を寄せて甘く囁いた。

「坊ちゃんからならいつでもしていいですからね。我慢しないでイ(言)ってください?」

 糖度たっぷり、低めのイケボイスで囁かれて、俺の体はぞくぞくっと震える。

「なななななっ」

 ……なんちゅー恥ずかしい台詞をッ! 声だけで孕ませる気か!!

「では、私は失礼します」

 レノはにっこり笑うとそそくさと出て行った。しかし出て行った後、ドアを少しだけ開けてレノは俺に告げる。

「ただ次回は不意打ちではなく、ちゃんと確認を取ってください?」

 レノはにっこりと笑い、俺は枕をドアに投げつける。

「はよ行け!」

 ……何が次回はちゃんと確認しろ、だ! 次回なんかないんだからな―ッ!!

 俺はフーフーッと鼻息荒くしながら思ったが、しばらくドキドキが落ち着かなかったのだった。
 でも俺は知らなかった、出て行ったレノも顔を赤らめているなんて。

「はぁ……朝から刺激が強すぎましたね」

 口元に手を当ててレノは困ったように小さく呟いたのだった。

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