《BL》転生令息は悪役よりも壁志望、もしくは天井でも可!

神谷レイン

文字の大きさ
81 / 180
第四章「ディープな関係!?」

11 無邪気な子狐達

しおりを挟む
 ――しかし一時間後。
 ヒューゴのお弁当をたらふく食べ終えた俺は。

「うー、食べ過ぎた。お腹いっぱーい」

 俺はポンポコリンに膨らんだお腹を擦って呟いた。ヒューゴのお弁当がおいしくて欲張りすぎた。

「はは、スイカはもうちょっとしてから食べましょうね」

 ヒューゴは笑って言い、俺は「うん」と答える。お腹は一杯だが、スイカは絶対食べたい。湖で冷やしてるスイカなんて美味いに決まってる。

 ……まあ、少し時間を置いたら食べられるだろ。スイカは別腹だからな!

 俺はお腹を擦りながら思う。でも段々おトイレに行きたくなってきた。なので俺はすくっと立ち上がる。するとすかさずザックが尋ねてきた。

「キトリー様、どこに行くんですか?」
「キトリー?」

 ザックの後にアシュカも俺に声をかける。しかし、ありのまま『用を足しに行ってくる』と言うのも品がないので。

「ちょっとお花摘みに行ってくるわー。おほほほっ」

 そう言い残して俺はそそくさと森の奥に向かった。アシュカは「お花摘み?」と首を傾げていたが、隣に座るフェルナンドがこそっと意味を教えていた。

「坊ちゃん、あんまり遠くに行っちゃダメですからね~」

 ヒューゴは遠ざかる俺に大きな声で叫び、俺は小さな子供かッ! と思うが「わかってる~っ」と一応返事をしておく。ヒューゴからしたら俺なんて、まだまだ子供みたいなものなのだろう。俺が子供の時分から知ってるしな。

 でもま、俺の精神年齢は大人ですケドネッ!

 しかし俺はある程度離れたところまで来ると、キョロキョロと辺りを見回した。周りは木々が生え、程よく雑草が茂っている。そしてヒューゴ達からは見えない。

 ……ここら辺ならいいかな?

 俺は茂みに隠れ、ゴソゴソとズボンの前を開ける。そして立ったまま放水開始。

「はふ~」

 ……青い空、白い雲。開放的だな~。

 俺は空を見上げながら、ポケーっとそんな事を思う。だが気持ちよく用を足していたら、どこからともなくガサゴソと森をかき分け、こちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。

 ……え、なんだッ?! 動物か!?

 ドキッとしながら音のする方を見れば、茂みの向こう、森の奥から十歳ぐらいの子供達が三人やってくる。白銀狐の子獣人だ。白い獣耳にモフモフの尻尾がふりふりと揺れている。

 ……あ、あいつらなんでここに!

 そう思えば、向こうも俺に気がついた。

「あ、キトリーだ!」
「あっ、ほんとだ!」
「キトリー!」

 まだ十歳ほどの子供達は無邪気な顔をして尻尾を振りながら、俺に向かって走ってきた。だが、俺のミスターは未だ外で放水中だ。

 ……キャーッ! 止めてぇ!! まだ俺のミスターを仕舞ってないからぁぁっ!!

「待て待て待てッ! そこで待てぇーいッ!」

 俺は叫ぶが子供達は人の話を聞かずにキャハハハッと笑いながらこっちに突っ込んでくる。

 ……ヒエエェェェッ! ヤバい!!

 俺はなんとか放水しきり、ミスターをチャックに挟みそうになりながらも慌ててズボンの中に納めた。おかげで、なんとか子供達の目に触れる前にズボンを閉められたが、マジで危なかった。

 ……公然わいせつ罪で変態さん(アウト)になるところだった。フゥ。

 だが子供達は不思議そうな顔をして。

「キトリー、どうしたの?」

 なんて俺に聞くから、俺は思わず心の中で叫んだ。


 ……お前らも人の話を聞けッ!!




 ◇◇




「坊ちゃん。その子達、どうしたんですか?」

 お花摘みから戻ってきた俺を見たフェルナンドは驚いた顔で言った。

 ……まあ、そうなるよね。

 なにせ、俺の後ろにはどこからともなく現れた子供達がいるからだ。そしてザックは子供達を見て声を上げた。

「ジェイクにケルビン、コリンじゃないか!」
「あ、ザック兄~!」

 ザックが名前を呼ぶと三人はニコニコしながら、ザックの周りを取り囲んだ。三人はザックが住んでいる村の子らなのだ。

「お前ら、どうしてここに?!」
「湖に泳ぎに来たんだ~」

 子供達はニシシと笑って言った。湖から村は歩いて三十分と近い場所にある。だから子供達だけで来たのだろう。しかしザックは真面目な顔をして叱った。

「駄目だろ! 子供達だけで来たら!!」
「わかってるよ~。でもノエル兄に聞いたら、今日、ザック兄が湖に行くって聞いたからさ~」

 ケルビンと呼ばれた少年が笑いながら答えた。どうやら確信犯でやって来たようだ。

「だからってなぁ。それでも子供だけで森に入るのは駄目だと言われてるだろ! 何かあったらどうする!?」

 ザックは真面目に怒るが子供達はどこ吹く風だ。

「何にもなかったよー?」
「オレ達だけでも大丈夫だよなー」

 ジェイクとコリンは顔を合わせてけろっとした顔で言う。そんな子供達にザックは頭を抱える。なので、ここは本物の大人の登場だ。

「お前達、ザックの言う通りだぞ。子供達だけで来るのはいけないことだ」

 ヒューゴが腰に手を当てて、低い声で言う。滅多に見れないお叱りモードのヒューゴだ。そして本物の大人であるヒューゴに叱られて、三人は身を竦める。
 しかし、三人の中でも勝気なケルビンが声を上げた。

「で、でもここに来るまでの道、俺、覚えてるしぃ」
「道を覚えていたとしても駄目だ。森では何があるかわからない。今回は運が良かったが、途中で獣にでもあったらどうする? 途中で誰かが怪我をしたら? もしも道に迷ったら、お前達だけでどうにかできるのか? 何かあったら、森を彷徨い、もう二度と家族に会えなくなるかもしれないんだぞ? 森と言うのはそれだけ怖い所なんだ」

 ヒューゴはなぜしてはいけないのかを懇切丁寧に子供達に言い聞かせる。そしてもう一人の大人であるフェルナンドも子供達に声をかけた。

「三人とも。大人達が森に入ってはいけない、と言うのは、なにも君達に嫌がらせをしているわけじゃない。ちゃんとした理由があるからだよ。だから二度と子供だけで入っちゃダメだよ? 湖に来たかったら、大人を誰か一人でも連れてくること、いいね?」

 フェルナンドが優しく諭すと、子供達は大人しく「はぁい」と答えた。これだけ言われれば、きっともう二度と子供だけで森に入ることはないだろう。

 ……うーん、さすがヒューゴとフェルナンド。大人だわ~っ。

 俺は腕を組みながら、うんうんっと頷く。しかし、そんな俺をヒューゴは指さした。

「うちの坊ちゃんでさえ、こうして三人も大人を連れてきてるんだからな?」

 ヒューゴが言えば、子供達は俺をじっと見る。

 ……ちょっとぉぉ! これじゃ俺がめっちゃ子供みたいじゃん!

 そう思うけれど、ここで反論すれば折角のヒューゴの説得が泡になってしまう。なので。

「そ、そうそう。俺なんか三人も付いてきてもらってるんだからな。アハハハ」

 ……いや、俺だって一人で湖に来れますけどね?! ま、護衛を必ずつけろってお爺やレノに言われて、今まで一人で来たことないけど。

「そうだぞ。キトリー様だって一人で来てないんだから! 三人ともヒューゴさんとフェルナンドさんのいう事、よくわかったな?」

 ザックまで俺をダシにする。……まあ、いいけどよ。

「わかった。今度から大人と一緒に来る」
「「ごめんなさい」」

 ケルビンの後にジェイクとコリンが謝り、ザックは三人の頭をぽんぽんぽんっと撫でた。

「わかってくれたらいいんだ」

 ザックはそう言うと俺とアシュカに視線を向けた。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

腐男子♥異世界転生

よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

処理中です...