《BL》転生令息は悪役よりも壁志望、もしくは天井でも可!

神谷レイン

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第四章「ディープな関係!?」

12 聖人様?

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「キトリー様、アシュカ様。すみませんが、帰りは寄り道をしてもよろしいでしょうか?」

 ザックは申し訳なさそうに言った。でも子供達だけでこの森から帰すことはできないのは明白だ。

「勿論だ。アシュカ、すまないが、帰りは子供達を村に送って帰るってことで」
「うん、僕は全然構わないよ」

 アシュカはにこっと笑って承諾してくれた。そして子供達の視線は初めて会う、アシュカに釘付けだ。なので、俺はさくっと子供達に紹介しておく。

「この人は俺の友達のアシュカだ。アシュカ、この子らはザックと同じ村に住んでいるケルビンとジェイク、コリンだ。うちに運ばれてくる野菜を作ってくれてる家の子なんだ」
「そうなんだね。初めまして、僕はアシュカ。一昨日からキトリーのところでお世話になっているけれど、いつも美味しい野菜を頂いているよ。ありがとう」

 アシュカが笑って言うと、子供達はアシュカをいい人認定したのか、すぐに周りを取り囲んだ。

「俺、ケルビン!」
「オレ、ジェイク!」
「僕はコリンだよ!」

 三人はそれぞれ自己紹介をした。そしてジェイクが素朴な疑問を投げかける。

「キトリーの友達って事は、アシュカさんも貴族なの?」
「僕が? 違うよー」

 アシュカは笑って答えた。でも、俺はその回答にちょっと呆れる。

 ……貴族じゃないけど、聖人様って教えたらこいつらビックリするだろうな~。

 俺は子供達を見ながら思う。なにせ聖人様と言うのは、なんとかライダーとかなんとかレンジャーに匹敵する、みんなのヒーロー的存在なのだ。
 まあ、神様から与えられた力で魔獣を倒すので、ヒーローには違いないんだが。

 なのでアシュカを含め、今まで存在した聖人様のお話は劇になったり、伝記本になったり。
 ちなみに本屋を営むアントニオ曰く、一番の売れ筋は神聖国を建国した聖女様の本だとか。つまりそれほど人々の中で圧倒的な存在、……なので。

「アシュカって聖人様と同じ名前」

 コリンがボソッと呟いた。

 ……コリン、なんて勘のいい子ッ!

「アシュカ様と同じ。頭に布巻いてる、茶色の髪の毛」

 コリンはじぃっとアシュカを見て言う。その目は鋭い。そしてとうとうコリンは尋ねた。

「聖人様?」

 コリンが純粋な瞳で尋ねると、アシュカは答えにくそうな表情を見せた。なので、俺が代わりに答える。

「そうそう、コリン。アシュカは聖人様で俺の友達。すごいだろ~!」

 俺は大袈裟に笑って言う。するとケルビンとジェイクが眉間に皺を寄せた。

「おい、コリン。こんなど田舎に聖人様がくるわけないだろ?」
「そうだよ。しかもキトリーの友達が聖人様なんて、きっと嘘だよ」

 ジェイクが俺をちらちら見ながら言うと、ケルビンも同意する様に頷いた。そしてコリンまで「確かに」とか呟いてる。

 ……おいおい、お前らの中の俺ってどうなってんのよ? まあ、予想通りの反応をしてくれて良かったけど。

「なんでだよ? 俺と聖人様が友達でもおかしくないだろ?」

 俺がダメ押しで言うとケルビンはますます怪しげな顔を見せる。

「あんなに言うなんて逆におかしいだろ。俺達を騙そうとしてるんだ。後で『嘘ぴょーん』とか言うに決まってんだ」

 ケルビンの言葉にジェイクは頷き、コリンも俺を怪し気に見る。だから俺はにっこりと笑ってやった。そうすれば、コリンは俺の言葉を嘘だと思ったようだ。

「やっぱり違うみたい。勘違いしてごめんなさい」

 コリンはアシュカに謝り、謝られたアシュカは「あ、いや」と困った返答をしていた。

 ……俺の目論見通り勘違いしてくれたのは嬉しいけど、俺ってどう思われてんのさ。『嘘ぴょーん』って本当に言ってやろうか(怒)

 俺はちょっと納得いかない気持ちになるが、アシュカが本物(まじもん)の聖人様だとバレたら大変なので俺はぐっと堪える。

「それよりお前達、湖に来たって事は泳ぎに来たんだろ? 泳がなくていいのか?」

 ザックに言われて、子供達はそれぞれの顔を見合わせる。そして三人同時「「「泳ぐ!」」」と答えるなり、ぽぽいっと服を脱ぎ始めるとパンツ一枚になって湖へと走った。そして水飛沫を上げて、湖の中へ入って行く。

 ……元気いっぱいとはこの事か。しっかし気持ちよさそぉ~。

 俺は楽しそうに湖の中で遊ぶ子供達をちょっと羨ましげに見る。だが、今日は泳ぐ予定はないのだ……しかし。

「アシュカ、俺達も足ぐらいは湖につけて涼もうぜ」

 俺が誘うとアシュカは嬉しそうに「うん」と頷いた。






 ――だがその頃、屋敷に残ったレノと言えば。
 キトリーの執務室にある机をゴシゴシと布で拭いて磨いていた。しかしドアが開き、レノが視線を上げればそこにはお爺が。

「レノ、こちらにいましたか」
「執事長……。何か御用ですか?」

 レノが尋ねると、お爺はレノの顔を見て少し苦笑した。

「ほっほっほっ、大抵のことは何でもこなしてしまうレノでも、気が散るという事があるんですね」

 お爺はレノの手元を見て言った。なのでレノが手元を見ると、机を拭いていた布は調度品を拭く用の布だった。

「……すみません」
「いやいや、それが普通の反応です」

 お爺は微笑ましい表情でレノを見た。

「ほっほっ。今頃、坊ちゃん達は湖で涼んでいる頃ですかねぇ」

 お爺は窓の外を眺めて呟き、レノも同じように外に視線を向けた。キトリー達がいるであろう湖の方を。

 ……アシュカ様に何もされなければいいですが。はぁ、心配ですね。

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