《BL》転生令息は悪役よりも壁志望、もしくは天井でも可!

神谷レイン

文字の大きさ
97 / 180
第五章「告白は二人っきりで!」

1 護送中

しおりを挟む
 皆さん、こんにちは。いかがお過ごしですか?

 俺ことキトリー・ベル・ポブラットは馬車に揺られて、神聖国へ輸送されてます。誘拐犯と言う犯罪者として――。


 ……オーマイガッ!! アイアム、ノット、ギルティィィっ!


 ――――それは遡る事、三日前の出来事だった。
 神聖国の神官がやってくるなり、俺をアシュカの誘拐犯だと言って身柄を確保したのだ。当然俺は無実であると主張し、アシュカはすでに帰ったと告げたが『聖人であるランネット様の指示』らしく、神官達では覆せないらしい。

 という事で、俺は身の潔白を証明する為に神官達の手厚い護送により、神聖国へと向かう事になった。付添人をひとりだけ付けて。



 ◇◇



「はぁー、まだつかねーのかなぁ~」

 昼も過ぎた頃。俺は馬車の中、ごろんっと寝転がってだらしない格好で呟いた。走る馬車は揺れるが、持ってきたクッションのおかげで多少マシになっている。
 そしてそんなだらしない俺を見て、向かいに座る奴は。

「馬車の中だからってお行儀が悪いですよ」

 付添人として一緒に来たレノが呆れた顔で俺に言った。

「だってよー、もう三日目よ? 馬車旅も飽きたぁー!」

 俺は小さな子供の様にブーブーと駄々をこねる。なので、そんな俺にレノは小さなため息を吐いた。

「気持ちはわかりますが、我慢してください」

 そうレノは俺に言った。
 二回も俺にディープなキッスを見舞ったのに、いつもと態度が変わらない。あんなキスをしたのだから、もうちょっと恥じらってくれてもいいのに。
 と思いつつ、俺の方が恥ずかしくて、ちょっと頬が熱くなる。

 ……でも、二回目された時も別に嫌じゃなかったんだよな。それってもしかして?

 俺はチラッとレノを見る。

「どうかしましたか?」
「……いや」

 レノに尋ねられて俺はすぐさま目を逸らす。

 ……うーん、俺自身の気持ちがわからん。でも俺ってば、自分がなるより壁か天井になって見守ってたいんだけど。ふぅっ。

「キトリー様」
「ん?」
「町が見えてきましたよ」

 レノは窓の外を見て言い、俺はすぐさま体を起こして同じように窓の外を見る。
 そこには神聖国の街並みが広がり、少し離れた小高い丘には白亜の大神殿が町を見下ろすように建っていた。

 ……おー、いかにも宗教国家って感じ! 神聖国って来た事ないから、ちょっとテンション上がるなー!

 俺は窓の外を見て、少しうきうきする。けれどレノは違った。

「早くアシュカ様に会って、誤解を解いてもらわなければ」

 珍しく少しピリピリしているレノ。
 だから俺はそんなレノを横目で見ながら、その緊張をほぐすように「そうだなー」と軽く返事をしておいた。



 だが、この時の俺はまだ知らなかった。
 神聖国で巻き起こる事件に関わることになろうとは――。



 ◇◇◇◇



 ――――それから俺達は大神殿に到着し、馬車を下りた。そして部屋に案内されて、待つこと数十分後。

「キトリーッ、こんなに早く出会えるなんて!」

 アシュカは駆け寄ってくるなり、俺に抱き着こうとした。しかしその首根っこをデンゼルさんがしっかりと捕まえる。グッジョブ、デンゼルさん!

「何しようとしているんですか。アナタは!」
「ちょっとデンちゃーん。今のは感動の再会シーンでしょ」

 アシュカはぷくっと頬を膨らませた。けれどデンゼルさんは俺達を見て、頭を深々と下げる。

「重ね重ね、キトリー様にはご迷惑をおかけして申し訳ございません。まさか連絡の行き違いがあったとは。こちらまでご足労おかけし、謝罪の言葉もありません」

 デンゼルさんはきっと俺が誘拐犯として連行されたことを先程聞いたのだろう。申し訳なさそうに、眉が見事なまで八の字に下がっていた。別にデンゼルさんのせいじゃないのに。

「いや、間違いとわかって良かったです。まさか誘拐犯と言われるとは思いませんでしたけど」
「僕はキトリーが誘拐してくれるなら、どこでも付いていくよ?」

 アシュカが呑気に言うものだからデンゼルさんはキッとアシュカを睨んだ。

「アナタ様は黙っていてください!」

 デンゼルさんが怒りの雷を落とすと、さすがのアシュカも「はいはい」と大人しく口を閉じる。けれどお怒りのデンゼルさんにレノが尋ねた。

「では、誤解も解けたようですし、我々は帰っていいという事ですね?」

 レノが言うとデンゼルさんはすぐに少し気まずそうな表情を見せた。

「それが……」
「何か問題でも?」
「実は……ランネット様がキトリー様にお会いしたいと」
「俺に?」

 おずおずと答えるデンゼルさんに俺は尋ねた。

 ランネット様と言うのはアシュカと同じ聖人様の一人である。
 ランネット様には治癒能力があり、彼女が祈りを唱えると軽い怪我なら傷が治ったり、大怪我や病気でも治りが良くなるそうだ。まあ、勿論死んだ人間を蘇らせたり、失くした腕を元通りに戻すなんて事は出来ないみたいだが。
 
 ……ま、そんな事ができたら、もうそれは神様の領域だよね。

 でもそう言った理由でランネット様は"癒しのランネット"とも呼ばれている。
 そしてそして、噂ではランネット様はすんごい美女らしく、年齢は三十代手前の色っぽいお姉さんという話だ。

 ……すんごい美女なんて、これは一度お目通り願いたいでしょッ! 美女が嫌いな男なんていないもんね!!

「坊ちゃん?」
「ひょ!?」

 ……心を読まれた?! 違う、これは好奇心なだけであってだな!!

 レノに呼びかけられ、俺は慌てて心の中で言い訳をする。しかしレノが俺を呼んだのは別の用だった。

「何を一人で慌てているんですか。……ランネット様にお会いしましたら、すぐに屋敷に戻りますよ。いいですね?」
「え、あ、うん」

 責められると思っていた俺はレノの言葉にちょっと拍子抜けする。

「デンゼル様、我々はランネット様にご面会頂いた後はすぐに帰国いたしますので、そのように手配をしていただいても?」
「勿論です。こちらの不手際でお呼びしてしまったのですから、すぐに手配いたしましょう。けれど長旅でお疲れなのでは? 折角ですから、こちらで数日ゆっくりされていかれては……」
「いいえ。家の者も心配しているでしょうし、キトリー様にも仕事がございますので」

 レノはハッキリと断った。俺としては折角来たのだから、二日ぐらい、ゆっくりしたい。……だが。

 ……まぁみんな、心配してたもんなぁ。確かに早く帰った方がいいかも。

 俺は屋敷で待つ家人達を思い浮かべる。

「デンゼルさん、申し訳ないけど帰る手配をお願いします」

 俺が頼めば、眉を八の字に下げたままのデンゼルさんは「畏まりました」と了承した。

 そして、それから俺達はデンゼルさんが呼んだ別の神官に連れられて、ランネット様の元へ向かう事となった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

腐男子♥異世界転生

よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

処理中です...