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第五章「告白は二人っきりで!」
4 オ・ネ・ガ・イ
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「でもそこまでわかってたならどうして今になって……。って、ちょっと待って。もしかしてアシュカの誘拐犯扱いはもしかして俺をここに連れてくる為!?」
俺がハッとして尋ねると姉ちゃんはニコッと笑った。
「だって、そーしないとりっちゃんと一生会えないと思って」
「いや、それなら手紙を送ってくれたら」
「拝啓前世の姉よりって? それでりっちゃん、ここまで来てくれた?」
姉ちゃんに尋ねられて俺はうっと口を閉じる。手紙を貰ったからといって、こんな風にすぐにはこれなかっただろう。公爵家令息と言う手前、他国に行くなら俺も色々と手続きを踏まないといけないからな。
「それは、その通りだけど」
「この本を通じてりっちゃんの事を調べたら、今はお隣さんのえらーい貴族さんの息子になってて。だから、こうでもしなきゃ会えないって思ったの。でも無理やりに連れてきたことは本当にごめんなさい、謝るわ」
姉ちゃんは申し訳なさそうにしゅんっと肩を落として俺に謝った。
「いや、その……誘拐犯っていうのは驚いたけど、姉ちゃんに会えたのは普通に嬉しいし。その、気にしないで」
俺が声をかけると姉ちゃんは微笑む。
「相変わらず、優しいのね~。あの彼にも、こんな風に優しくしてるの?」
……オイ、さっきのしおらしさはどこに行ったッ!?
「別に普通デス!」
俺が答えると姉ちゃんは何も言わずにニマニマする。もー、何なのッ!
「ふふ、ごめんごめん。でも、りっちゃんが元気そうにしてて本当に良かったわ。会えて嬉しい」
姉ちゃんが真面目な顔をして言うものだから俺はなんだか照れ臭くなる。
「そんなの……俺だって。でも、まさか聖人様に生まれ変わってるなんて思いもしなかったけど」
「やっぱり日頃の行いかしらね?」
「自分で言う? それ」
「あら、お姉ちゃん。悪いことはしてなかったでしょ?」
「それはそうだけど」
そんな会話しつつ前世と変わらないやり取りに、俺達は思わず顔を見合わせてプッと笑う。生まれた場所も生まれた時期も、産んでくれた両親も違うけれど、やっぱりこの人は俺の姉だ。
……まさか転生先で姉ちゃんに会うなんてなぁ。なんだか不思議。これも星の巡り合わせっていうやつだろうか。うーん。
俺はしみじみとそんな事を思う。でも俺が感慨深く思っていると姉ちゃんはにっこり笑顔で爆弾を投下した。
「ね、りっちゃん。ところでお姉ちゃん、お願いがあるの」
「オ・ネ・ガ・イ?!」
俺はギクッと体を揺らす。だって姉ちゃんが俺にお願いする時、それは決まって面倒事ばかりだったからだ。
「い、嫌だ! お願いは聞かない!」
「どーしてぇ? お姉ちゃんのお願い聞いてよー!」
「ヤダよ! 姉ちゃんのお願い聞いて、ロクな目に遭った事ないんだからな!」
「そんなことないでしょー? きっとお姉ちゃんのお願いを聞いて徳を積んだから、今世は貴族の坊ちゃんに生まれたのよ~!」
……どんだけ湾曲した解釈だ!
「ねー、りっちゃーん。お願い、お姉ちゃんの頼み、聞いて?」
姉ちゃんは両手を合わせて小首を傾げる。いつも俺に頼む時にするお願いポーズだ。
「ぜぇーったい、ヤダ! 無理! 拒否! ……というか、まさか俺を呼び寄せたのは、俺に会いたいからじゃなくてお願い事を頼む為じゃ」
俺がハッとして気がつくと、姉ちゃんはニタッと笑った。その笑みはとても聖人には見えない顔で。どっちかというと悪だくみしてる小悪魔的笑みだった。
そしてこういう時の姉ちゃんの頼み事は質が悪いと相場が決まっている。
「帰る! 俺、もう帰ります!」
俺は逃れるようにドアへと向かおうとするが、姉ちゃんはガシッと俺の肩を掴んで離さない。ギャアアアッ!!
「りっちゃん、お願いよ。これはりっちゃんにしか頼めないことなの。もしもりっちゃんがお姉ちゃんの頼みを聞いてくれたら、いいものをあげるから。ネ?」
「いーやっ、結構です! 何にも要らないから、俺を帰して!」
「まあまあ、お待ちなさいってばぁ~」
姉ちゃんは笑いながら俺を離さない。もう、もはやホラーに近い。ひぇぇっ。
でも俺が拒否っている間に姉ちゃんはさっき本を出した引き出しから、もう一冊、本を取り出した。
「りっちゃん、今回協力してくれたらコレ、あげるわ」
姉ちゃんは俺に本を差し出す。それは少しくたびれていて、薄い本だった。しかしその表紙を見て、俺は声をあげる。
「これ! ローズ・クラウン先生が初期に書いた『短編版・騎士と魔法使い』!!」
そこにあったのは、俺のお気に入りBL小説『騎士と魔法使い』がシリーズ化される前の、初期に書かれた短編版。それは千部しか発行されていない幻の一冊!
……どうしてこれを!!
「りっちゃんを調べた時にこれを探してるって耳にしてね? そーいえば私、持ってるなぁって。……りっちゃん、私のお願いを聞いてくれたら、この本、あげる。どう?」
姉ちゃんは悪い顔をして俺に尋ねる。
……す、すんごい欲しいっ。でも姉ちゃんのお願いはいつも面倒臭いしっ。ぐぅぅっ。
俺は心の中で葛藤する。だって、この機を逃したらきっともう二度と手に入らない。でもっ、でもなぁーっ。
「そう言えば、りっちゃんの今のお母さんって結構信心深い方なんだっけ? 若い頃は神聖国にもよくいらっしゃったとか」
姉ちゃんはおもむろに母様の事を言い出し始めた。そして姉ちゃんの言う通り、母様は信心深い。俺が子供の頃はよく帝都にある神殿に連れてってもらったし、母様の出身国であるリトロール王国は元々信心深い人が多く、週に一度は神殿にお祈りをしにいくほどだ。
いや、まあ帝都もそれなりに神殿があってみんな祈ったりしてるけどね?
……けど、母様が信心深いと何っていうだろう。
「それが何?」
「りっちゃん、いいのかな? 私のお願いを断って。私、一応聖人様なんだけど?」
姉ちゃんはにこっと笑いながら俺に言った。つまり訳はこうだ。
『聖人である私のお願いを断ったって、りっちゃんの今のお母さんが聞いたらどうなるかな? りっちゃん、怒られるんじゃないのかなー?』
「げっ。そ、それはっ」
……聖人様は神様に選ばれた人、つまりその願いを断るという事は神様のお願いを断ると同義と解釈される。てことは、もしも母様がこの事を知ったら。
『キトリー、アナタって子は!!』
母様が怒る姿が目に浮かぶ。そしてその後は絶対にお説教コースが待っている。つまり俺に残された道は一つという訳で……。
「うぅっ、引き受けますよぉーっ! 引き受けたらいいんでしょぉーっ!」
「昔と変わらず優しいりっちゃんがお姉ちゃんは大好きよ」
姉ちゃんは嬉しそうに言った。
……ぐぅぅぅっ、結局いつもこうなっちゃうんだよなぁ。姉ちゃんの思惑通りに動かされると言うか、何と言うか。
俺はガックシ肩を落として思う。
「まあまあ、この本もあげるから。ね?」
姉ちゃんは俺の肩をポンポンッと叩いて言った。だが俺はハッとする、まだどんなお願いなのか聞いていないことに気がついたから。
「で、お願いごとって何? 俺にできる事なの?」
俺はちろっと姉ちゃんを見て尋ねる。あんまり聞きたくない気もするが、聞かなければ何も始まらない。
「勿論、りっちゃんにできる事よ。お姉ちゃん、無理難題を押しつけた事なんてないでしょ?」
にこやかに言うものだから、ますます俺は疑いの目を向ける。こういう時の姉ちゃんほど怪しいものはないのだ。マジで。
「あー、お姉ちゃんを疑ってるでしょ? ひっどーい。大丈夫、大丈夫。りっちゃんならできるから! ……とりあえずね、この神聖国で今起こってるゴタゴタをどうにかして欲しいの」
「……は? ゴタゴタ??」
あまりにもお願い事がふんわりし過ぎてて、俺は眉間に皺を寄せる。
でもそんな俺に姉ちゃんは「そ、ゴタゴタ」と言って、この後お願い事の詳細を俺に告げたのだった。
はぁ~。
俺がハッとして尋ねると姉ちゃんはニコッと笑った。
「だって、そーしないとりっちゃんと一生会えないと思って」
「いや、それなら手紙を送ってくれたら」
「拝啓前世の姉よりって? それでりっちゃん、ここまで来てくれた?」
姉ちゃんに尋ねられて俺はうっと口を閉じる。手紙を貰ったからといって、こんな風にすぐにはこれなかっただろう。公爵家令息と言う手前、他国に行くなら俺も色々と手続きを踏まないといけないからな。
「それは、その通りだけど」
「この本を通じてりっちゃんの事を調べたら、今はお隣さんのえらーい貴族さんの息子になってて。だから、こうでもしなきゃ会えないって思ったの。でも無理やりに連れてきたことは本当にごめんなさい、謝るわ」
姉ちゃんは申し訳なさそうにしゅんっと肩を落として俺に謝った。
「いや、その……誘拐犯っていうのは驚いたけど、姉ちゃんに会えたのは普通に嬉しいし。その、気にしないで」
俺が声をかけると姉ちゃんは微笑む。
「相変わらず、優しいのね~。あの彼にも、こんな風に優しくしてるの?」
……オイ、さっきのしおらしさはどこに行ったッ!?
「別に普通デス!」
俺が答えると姉ちゃんは何も言わずにニマニマする。もー、何なのッ!
「ふふ、ごめんごめん。でも、りっちゃんが元気そうにしてて本当に良かったわ。会えて嬉しい」
姉ちゃんが真面目な顔をして言うものだから俺はなんだか照れ臭くなる。
「そんなの……俺だって。でも、まさか聖人様に生まれ変わってるなんて思いもしなかったけど」
「やっぱり日頃の行いかしらね?」
「自分で言う? それ」
「あら、お姉ちゃん。悪いことはしてなかったでしょ?」
「それはそうだけど」
そんな会話しつつ前世と変わらないやり取りに、俺達は思わず顔を見合わせてプッと笑う。生まれた場所も生まれた時期も、産んでくれた両親も違うけれど、やっぱりこの人は俺の姉だ。
……まさか転生先で姉ちゃんに会うなんてなぁ。なんだか不思議。これも星の巡り合わせっていうやつだろうか。うーん。
俺はしみじみとそんな事を思う。でも俺が感慨深く思っていると姉ちゃんはにっこり笑顔で爆弾を投下した。
「ね、りっちゃん。ところでお姉ちゃん、お願いがあるの」
「オ・ネ・ガ・イ?!」
俺はギクッと体を揺らす。だって姉ちゃんが俺にお願いする時、それは決まって面倒事ばかりだったからだ。
「い、嫌だ! お願いは聞かない!」
「どーしてぇ? お姉ちゃんのお願い聞いてよー!」
「ヤダよ! 姉ちゃんのお願い聞いて、ロクな目に遭った事ないんだからな!」
「そんなことないでしょー? きっとお姉ちゃんのお願いを聞いて徳を積んだから、今世は貴族の坊ちゃんに生まれたのよ~!」
……どんだけ湾曲した解釈だ!
「ねー、りっちゃーん。お願い、お姉ちゃんの頼み、聞いて?」
姉ちゃんは両手を合わせて小首を傾げる。いつも俺に頼む時にするお願いポーズだ。
「ぜぇーったい、ヤダ! 無理! 拒否! ……というか、まさか俺を呼び寄せたのは、俺に会いたいからじゃなくてお願い事を頼む為じゃ」
俺がハッとして気がつくと、姉ちゃんはニタッと笑った。その笑みはとても聖人には見えない顔で。どっちかというと悪だくみしてる小悪魔的笑みだった。
そしてこういう時の姉ちゃんの頼み事は質が悪いと相場が決まっている。
「帰る! 俺、もう帰ります!」
俺は逃れるようにドアへと向かおうとするが、姉ちゃんはガシッと俺の肩を掴んで離さない。ギャアアアッ!!
「りっちゃん、お願いよ。これはりっちゃんにしか頼めないことなの。もしもりっちゃんがお姉ちゃんの頼みを聞いてくれたら、いいものをあげるから。ネ?」
「いーやっ、結構です! 何にも要らないから、俺を帰して!」
「まあまあ、お待ちなさいってばぁ~」
姉ちゃんは笑いながら俺を離さない。もう、もはやホラーに近い。ひぇぇっ。
でも俺が拒否っている間に姉ちゃんはさっき本を出した引き出しから、もう一冊、本を取り出した。
「りっちゃん、今回協力してくれたらコレ、あげるわ」
姉ちゃんは俺に本を差し出す。それは少しくたびれていて、薄い本だった。しかしその表紙を見て、俺は声をあげる。
「これ! ローズ・クラウン先生が初期に書いた『短編版・騎士と魔法使い』!!」
そこにあったのは、俺のお気に入りBL小説『騎士と魔法使い』がシリーズ化される前の、初期に書かれた短編版。それは千部しか発行されていない幻の一冊!
……どうしてこれを!!
「りっちゃんを調べた時にこれを探してるって耳にしてね? そーいえば私、持ってるなぁって。……りっちゃん、私のお願いを聞いてくれたら、この本、あげる。どう?」
姉ちゃんは悪い顔をして俺に尋ねる。
……す、すんごい欲しいっ。でも姉ちゃんのお願いはいつも面倒臭いしっ。ぐぅぅっ。
俺は心の中で葛藤する。だって、この機を逃したらきっともう二度と手に入らない。でもっ、でもなぁーっ。
「そう言えば、りっちゃんの今のお母さんって結構信心深い方なんだっけ? 若い頃は神聖国にもよくいらっしゃったとか」
姉ちゃんはおもむろに母様の事を言い出し始めた。そして姉ちゃんの言う通り、母様は信心深い。俺が子供の頃はよく帝都にある神殿に連れてってもらったし、母様の出身国であるリトロール王国は元々信心深い人が多く、週に一度は神殿にお祈りをしにいくほどだ。
いや、まあ帝都もそれなりに神殿があってみんな祈ったりしてるけどね?
……けど、母様が信心深いと何っていうだろう。
「それが何?」
「りっちゃん、いいのかな? 私のお願いを断って。私、一応聖人様なんだけど?」
姉ちゃんはにこっと笑いながら俺に言った。つまり訳はこうだ。
『聖人である私のお願いを断ったって、りっちゃんの今のお母さんが聞いたらどうなるかな? りっちゃん、怒られるんじゃないのかなー?』
「げっ。そ、それはっ」
……聖人様は神様に選ばれた人、つまりその願いを断るという事は神様のお願いを断ると同義と解釈される。てことは、もしも母様がこの事を知ったら。
『キトリー、アナタって子は!!』
母様が怒る姿が目に浮かぶ。そしてその後は絶対にお説教コースが待っている。つまり俺に残された道は一つという訳で……。
「うぅっ、引き受けますよぉーっ! 引き受けたらいいんでしょぉーっ!」
「昔と変わらず優しいりっちゃんがお姉ちゃんは大好きよ」
姉ちゃんは嬉しそうに言った。
……ぐぅぅぅっ、結局いつもこうなっちゃうんだよなぁ。姉ちゃんの思惑通りに動かされると言うか、何と言うか。
俺はガックシ肩を落として思う。
「まあまあ、この本もあげるから。ね?」
姉ちゃんは俺の肩をポンポンッと叩いて言った。だが俺はハッとする、まだどんなお願いなのか聞いていないことに気がついたから。
「で、お願いごとって何? 俺にできる事なの?」
俺はちろっと姉ちゃんを見て尋ねる。あんまり聞きたくない気もするが、聞かなければ何も始まらない。
「勿論、りっちゃんにできる事よ。お姉ちゃん、無理難題を押しつけた事なんてないでしょ?」
にこやかに言うものだから、ますます俺は疑いの目を向ける。こういう時の姉ちゃんほど怪しいものはないのだ。マジで。
「あー、お姉ちゃんを疑ってるでしょ? ひっどーい。大丈夫、大丈夫。りっちゃんならできるから! ……とりあえずね、この神聖国で今起こってるゴタゴタをどうにかして欲しいの」
「……は? ゴタゴタ??」
あまりにもお願い事がふんわりし過ぎてて、俺は眉間に皺を寄せる。
でもそんな俺に姉ちゃんは「そ、ゴタゴタ」と言って、この後お願い事の詳細を俺に告げたのだった。
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