105 / 180
第五章「告白は二人っきりで!」
9 むちゅっ
しおりを挟む―――それから部屋に戻った俺は手紙を書き、ノアさんに別邸へと送ってもらうように頼んだ。そして部屋に運ばれた夕食を頂き、俺は部屋に備え付けの風呂に入った。
おかげでさっぱり、向こうが用意してくれた寝巻もちょうどのサイズで、あとは寝るだけだ。
「はぁ~。なんか今頃どっしり疲れてきたぁ~」
俺はシングルのベッドに寝っ転がり、ぼやく。もう一歩も動けない。
「キトリー様、髪を乾かさないと」
「んー、もうそんな元気ないー」
……明日にはエンキ様に会わないといけないし、継承問題も色々と調べないといけないし。明日も忙しくなりそうだな~。はぁ。俺ののんびりライフはいずこへ。
俺はベッドに寝転がりながら思う。けれどそんな俺にレノは優しく声をかけた。
「起きて下さい。髪の毛、拭いてあげますから」
そう言われたら体を起こさない訳にはいかない。俺はむくりと起きて、ベッド脇に座る。そうすればレノがタオルで俺の頭をわしわしっと拭いてくれる。
……あー、人に頭拭いてもらうの楽ち~ん。しかもちょっとマッサージされてるみたいで気持ちぃ~。
俺は程よい力加減で頭を拭いてくれるレノの大きな手についついうっとりする。だが目を瞑って任せていた俺は目の前にいる奴がどんな奴か、すっかり忘れていた。
――――――むちゅっ。
「ん?」
唇に柔らかい感触があって俺は目を開ける。
そうすれば目の前にはレノの赤い瞳が俺を見つめていた。それで俺はレノにチュウされている事に気がつく。
「ワギャッ!」
「あんまり無防備だとこのまま食べちゃいますよ、坊ちゃん」
俺が慌てて離れれば、レノは色っぽい眼差しで俺を見つめた。おかげで眠りかけていた脳みそが一気に覚醒する。
「お、おまっ!!」
……人のプリチーな唇に、なにさらしとんじゃい!
俺はレノからのけ反って離れる。
「あんまり無防備なので、キス待ちかと」
「んなわきゃねーだろ!」
俺は唇を抑え、頬を熱くする。でもそんな俺をレノは楽し気に見つめた。なので、なんだか胸の奥がムズムズ、キュンキュンしてしまう。
……なんか、この前から俺の心臓、変だ。
「それに坊ちゃんにこれからはキスしますと言いましたでしょ?」
「だ、だからってなぁ!」
俺はじろっとレノを睨むが、全然俺の睨みは効かない。俺ばっかりが恥ずかしい。だからその恥ずかしさを隠すように俺はくるっと布団に包まった。The芋虫。
「もー、俺は寝るから! お前もさっさと風呂に入ってこい!」
「ふふっ、そうですね。私もお風呂に入ってきます。私がいない間に部屋を出て行ったりしないでくださいよ?」
「わかってるから、はよ行け!」
「はいはい」
レノは少し呆れたような、ちょっと楽しそうな声で返事をして、洗面所があるドアへと向かって行った。そしてパタンっとドアが閉まり、俺はのそっと体を起こす。未だ頬が熱い。
……もー、あいつってばなんでいつも急なわけ!? キスするなら俺に許可とれよな! ……いや、とったとしてキスさせないけど!!
俺は頬に手を当てて冷ましながら思う。でも、不思議とレノとのキスは嫌じゃないから困ったものだ。
……くそぅ。あー、もう早く寝て、さっさと忘れよう!!
俺は再び毛布に包まって、芋虫になった。
そして、すぐに寝付けないかと思いきや、レノがお風呂から出て来た頃には、俺はすっかり夢の中へ旅立っていたのだった。
「すぴーっすぴーっ」
「……この人には危機感と言うものがないんですかね」
レノは風呂上がり、すやすやと寝ているキトリーを見て呆れたように呟いた。そして隣にある自分のベッドに腰掛ける。
……本当なら一つのベッドで一緒に眠りたいですが、致し方がないですね。まあ、一緒のベッドに寝たら我慢するのも大変ですから、離れている方が私にとってもいいかもしれませんが。
レノは隣のベッドで気持ちよさそうに眠っているキトリーの寝顔を見ながら苦笑した。
けれど寝顔を眺めている内に、キトリーとランネットの関係に疑問を持つ。
……二人きりで話した後、二人の距離感ががらりと変わっていた。一体、何の話をしたのか。……ランネット様もこの継承問題を任せるほど坊ちゃんをなぜか信頼しているようでしたし。二人は初対面のはずですが……私の知らないところで繋がりでも?
不思議に思いつつも、まさか二人が前世での姉弟という答えに、さすがのレノも辿り着けなかったのだった。
47
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
腐男子♥異世界転生
よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。
目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。
トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる