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8 翌日
しおりを挟む『……ねぇねぇ、レイ』
『ん? どうした、ルーク』
『レイ。ボクがおっきくなったら、結婚しよう!』
いつの日か、まだ小さなルークがくいくいっと服の袖を引っ張り、大きな目をキラキラと輝かせて言った。だが裏庭の小さな物干し場で、洗濯物を干していたレイは何にも考えずに能天気に笑って答えた。
『ルークと結婚かぁ。お前が俺を養ってくれたらしてもいいぞ~。まあその頃には俺はもっとおじさんになってるけどなぁ、はははっ』
笑ってレイは言ったが、ルークの瞳は嬉しそうに輝いた。
『ホントに?! ボク、レイをやしなう!』
ルークはレイにぎゅっと抱きついた。
レイはそんな可愛い息子の頭を撫でた。養うという意味もわかっていないだろうに、と思いながら。
『ま、その前にルークが俺よりおっきくならないとだけどな』
『ボク、早くおっきくなる! だからゼッタイだよ?』
水色の瞳をキラキラさせながら見つめられれば、断ることなどできない。
俺達は親子だから無理だ、なんて無粋な事も言えない。
『はいはい、わかった、わかった。絶対な?』
レイはそう適当に返事をした。
でもレイはこの時、そう答えた自分をぶん殴ってやりたかった。
◇◇◇◇
ピーチチチ、と鳴く鳥と朝日の光でレイはぱちっと目を覚ました。
目を覚ますには清々しい朝だ。そして今日のレイはなんだか目覚めが良かった。
「んーっ。もう朝か」
レイはベッドの上で起き上がると背伸びをして、呟いた。
……なんか、今日は目覚めがいいなぁー。体が軽くてスッキリしてる……なんでだろ?
そう思い返して、昨日の事を思い出す。夕飯も風呂も済ませて、早く寝ようとしてフェインに貰った小瓶を飲み、体が火照っていくのを我慢できず、自慰しているところをルークに見つかって……それから。
思い出した途端、ぼんっとレイの顔がゆでだこのように真っ赤に染まる。
……え、あれって夢だよな!? 現実じゃないよな!?
レイは現実逃避して夢という事にしようとしたが、書き物机の上にはフェインから貰った小瓶がしっかり置いてあるし、ルークに触られた感触も体にしっかりと残っていた。
……う、嘘だろ。俺……ルークになんてことさせちゃったんだ!!
レイは自分の痴態と行いを思い出し顔を青ざめさせた。
女のように声を上げ、乱れに乱れて、最後にはルークに精液を飲ませて、いや、飲まれてしまった。
……俺、る、る、ルークに精液ををををぉぉぉぉっっ!!!
レイは頭を抱え、ベッドの上で一人悶えたが、ふと、ある事を思い出した。
……でも、昨日……ルークのも勃ってたな。
レイはルークに触られている間、密着してたお尻にルークの膨らんだ股間がしっかりと当たっていた事を思い出した。そしてぐいぐいっとお尻に意図的に押し付けられた事も。
その後、自分に覆いかぶさったルークの股間がしっかり膨らんでいるのも視線の端で見えた。でも恥ずかしくて、見ないようにしていた。なんとなく、恥ずかしくて。
……俺相手にルークは欲情したのか?! こんなおっさんなのに。でも……お、お、俺の……俺のちんこ……しゃぶって、た、し……。
心で呟き、途端にいやらしく自分の性器を口に咥えていたルークの姿を思い出した。勿論、その時のルークの口の温かさと湿り具合、舌の滑らかさも。
……は、は、は、は、恥ずかしいぃぃぃぃぃ!!……お、俺、ルークにどんな顔して会えばいいんだよーーーっ!
声にならない叫び声を朝っぱらから上げてゴロゴロとベッドの上で悶えたが、レイの体は正直だった。
昨晩の事を思い出したレイの性器はむくっと起き、下穿きと下着を押し上げていた。レイがちらりと下着を捲って中を見ると、ひょっこりと頭が出ていた。
……ううぅっ。
正直で元気な体を見て、レイは恥ずかしさと情けなさを感じつつ、そのままでいる事もできなくて朝っぱらからトイレに籠る事になった。
◇◇
「お前……また何があった?」
芝生が広がる城の庭の端にルークとポールは立っていた。そして朝から今まで見たことがないぐらいご機嫌のルークを見てポールは尋ねた。
「何? 聞きたいか?」
にこにこ笑顔で言われて、女の子ならときめくところだが、逆にポールは顔を引きつらせた。まるで不気味なものをみるような目で。
「いや、いい。どうせ、ロクな事じゃないだろ」
そう言ってポールは聞かなかったが、ルークは終始鼻歌でも歌いだしそうな顔だ。その表情を見てポールは不安になる。
「まさかお前、おじさんを押し倒したりなんかしてないだろうな? 無理やりはダメだぞ」
ポールは尋ねるがルークは何も答えない。
「お、おい、ルーク」
「失礼だな、無理やりなんてしてな……いや、無理やりだったかな?」
「ルーク、まさか……同意を得ずに……!」
ポールは顔を引きつらせながら尋ねたが、ルークは何も答えない。
「おい、ルーク!」
ポールは真相を聞き出そうと声をかけたが、そんな折、二人の後ろから声がかかった。
「随分と楽しそうに話をしているな」
声の主に振り返り、二人はすぐにその場に立礼した。そこに立っていたのは、ファウント王国第一王子のシオン。黒髪に緑の瞳を持つ、二人と年の変わらない青年だ。
「相変わらず仲がいいな、お前達は」
シオンは笑いながら言ったが、ルークはすぐに「殿下、ご冗談を」と答えた。その回答にポールはむっとする。だが何も言わずにいるとシオンはポールに声をかけた。
「ポールも久しぶりだな。同じ城の中にいても中々、会えないものだ」
シオンは気さくにポールに言った。実は二人は学校を卒業するまで仲のいい同級生だったからだ。しかし、今では身分があまりにも違いすぎて、その上、ポールは勤務中だ。
だからポールは臣下としての対応をした。
「はっ、お久しぶりです。殿下」
その返事にシオンは少しばかりしょんぼりと、寂しそうな顔をした。それに気が付いたルークは、この鈍感男め、と心の中でポールを文句を言いつつ、気を利かせてシオンに尋ねた。
「殿下、我々に何が御用でしたでしょうか? それともお庭に? 申し訳ありませんが、庭はしばらくご利用できませんが」
ルークが聞くと、シオンは「違う違う。僕も彼らを見に来たんだ。そろそろ来る頃だと思ってね」と答え、空を見上げた。
すると、シオンが言ったそばから空に轟音が響く。何かが飛んでくる音だ。その音に、その場にいた者全員が空を見上げた。そして赤い何かが飛翔してくる。
「竜国からのおいでだ!」
団長が声を上げ、ルーク達や同じように庭の警備に当たっていた騎士達は敬礼をした。
そして三頭の赤竜は大きな翼を広げて、空から芝生の広がる庭に降り立つ。その風圧に木々や花は吹き飛ばされそうに揺れたが、ピタリッと風が止み、竜が降り立ったその場所にいつの間にか三人の男が立っていた。
どの男も美形ぞろいだ。だが三人の内、二人は制服を着て、残ったもう一人は正装していた。
年齢は三十代後半、長い赤髪と相反するような、青の瞳が印象的な男だった。そして彼こそが今回の来賓、竜国のエルマン宰相だ。
「ようこそおいで下さいました、宰相閣下。長旅、お疲れ様でした」
団長が挨拶がてら長旅を労うと、エルマンは物腰柔らかににっこりと笑った。
「いえ、出迎えありがとうございます」
「こちらへどうぞ。陛下が応接間でお待ちです」
団長の案内にエルマンは頷き、護衛と共について団長について行く。
……あれが竜国の宰相。
ルークはちらりと視線を向け、心の中で呟く。だが内心、ルークはあまり関わりたくないと思っていた。しかし視線を向けたルークの目にエルマンの視線がばちりと合う。
そしてエルマンはルークを見て、微笑んだ。その笑みにルークは嫌な予感しかしなかった。
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