竜人息子の溺愛!

神谷レイン

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番外編

エピローグ

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『―――――という訳で。異国の地で慣れない事もありますが、こちらではとても楽しく過ごさせていただいております。そろそろ竜国でも季節の変わり目かと思いますので、エルマン様、二コラ様も体調を崩されないようご自愛ください。イサールより』

 そう手紙は締めくくられていた。

「……イサール殿は元気そうですね。なによりだ」

 イサールからの手紙を読み終えたエルマンは微笑んで呟いた。

 ……イサール殿も色々と辛い時期がおありだったからな。ルーク殿と別れ離れになり、傍にいられず。その上、文が届いた時には黙っていた事を頭を下げて謝られた。真面目な方だったから、言わない事は逆に辛かっただろう。あの時は、申し訳ないことをした。……だが、それを全て乗り越え、今はとても楽しそうだ。本来ならば、先々代の王配として煌びやかな生活をしてもおかしくない方だというのに。

 エルマンはくすっと笑って、もう一度手紙を見つめた。
 手紙にはルイとシャボン玉を作って遊んだり、ルイとルークと一緒に竜になって遠くに飛んだり、レイに竜国の料理を直々に教えたりして、何かと楽しく過ごしていることが書かれていた。
 でもきっと手紙には書ききれない事もいっぱいあるのだろう。

「やれやれ、今度、遊びに行かないといけないかもしれませんね」

 エルマンがそう呟いた時、突然ばばーんっとドアが開いた。

「エルマン!」

 大きな声でエルマンを呼んだのは現国王の二コラだった。

「二コラ様。そんな大声を出して、はしたないですよ」

 エルマンはそう注意したが、二コラは何のそのだ。

「えー? ルークは元気があっていいな、って言ってくれたよー?」
「ルーク殿の言う事を信じちゃ駄目です」

 そう言ったが、そんなエルマンの口に二コラは問答無用でむぐっと焼き菓子を突っ込んだ。

「むっ!」
「へへー、マフィンを作ったんだ! 一緒に食べよう!」

 ……一緒に食べようと聞かれている以前に口に突っ込まれているんですが。強引なところは父親譲りですね。いや、王族譲りってところですかね?

 エルマンはそう思いつつ、二コラの父でルークの異母兄、そして伴侶だったニールを思い出した。
 だが、口に入れられたマフィンをもぐもぐと食べていると、とてもおいしい。何かの実が入っているようだ。でも、何の実だろうか?

 エルマンは疑問に思いながらもごっくんと飲み込んで、感想待ちの二コラに視線を向けた。

「このマフィン、とてもおいしいですね。何の実が入ってるんですか? 何か、見慣れない味ですが」

 エルマンが率直に言うと二コラはパァッと目を輝かせた。

「ねー、おいしいでしょう?! これね、今の時期にだけ取れるリリンカの乾燥した実を入れてるんだ!」
「リリンカの実ですか。あまりぱっとしな味ですが、マフィンに入れると味が引き立ちますね。乾燥してるのもいいのかもしれない」

 エルマンは言いながら無言でもう一個催促すると二コラはニコニコ笑顔で、お皿に乗っているマフィンをもう一つを差し出した。

「ね? それでエルマン。僕ね、考えたんだけど、乾燥したリリンカの実を国外に売ったら、売れるんじゃないかなーって思うんだけど、どう思う? リリンカってうちにしかない果樹だし、乾燥した実だったら長期保存が利くし!」

 エルマンは口にいれようとしていたマフィンを危うく落としそうになった。まさか二コラが商売も考えて作っているとは思っていなかったからだ。しかも、なかなかにいい案だ。

「二コラ……あなた。よくそんな発想を思いつきましたね」
「へへー、実はレイがここにいた時にね。リリンカの実をおいしそうに食べてたの思い出してさー。レイが好きなら人間も好きな味なんだろうなーって思って。魔草以外にも輸出できるものがあれば、もしも魔草の産出量が少ない時は代わりになると思って」
「さすが、国王陛下ですね」
「ふふ、そうでしょ?」

 二コラはえへんと腰に手を当てて言った。そう言うところは、まだ子供らしい。
 でも、エルマンは知っている。子供というのはすぐにあっという間に大きくなって、目を離した隙に一人前になっている事を。

「あ、二コラ様! ここにいたのですね、もうお客様がお着きですよ。応接間にお越しください」

 二コラを探していた侍従が声をかけると、二コラはスッと顔色を変えた。

「ああ、わかった。僕が行くまでお客様にはお茶とお菓子をお出ししておいて。すぐに向かう」

 そう二コラはすぐにテキパキと侍従に伝えた。その顔つきはすっかり大人びたものだ。
 その姿を見て、エルマンは誇らしく思うと同時にちょっと寂しいが、この国の未来は安泰だとも思えた。

「じゃあ、僕行くね。また後でリリンカの話をしようね、エルマン」
「ええ」

 エルマンが答えると、二コラはにこっと笑って手を振って出て行った。

 ……あの子もすっかり大人になって。将来、一体どんな人を連れてくるんでしょうかねぇ。

 エルマンは空を眺めながら、楽しみに思った。






 だが、そのエルマンの思いは意外にも早く叶う事になる。
 ファウント王国に久しぶりに視察に行った二コラがコールソン書店に足を運び、そこでポールの弟で常連客のリックに一目惚れをしてしまうからだ。

 でもエルマンは、まだその未来を知らなかったーーーー。




 おわり



******************

番外編はここまで!
イサールのお話はどうでしたか?
読んで楽しかったなら嬉しいです。

そして、お気に入り、いいね、エール(動画を見てくれた)方々。
再度になりますが、本当にありがとうございます!(^O^)/センキューーーッ!


(また、もし良かったら他の作品も読んでみてね。ただいま「俺様騎士は魔法使いがお好き!」も毎日投稿で連載中です( ・ω・)マ、キガムイタラネ)
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感想 2

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みんなの感想(2件)

milkys
2024.10.22 milkys

素敵な数々の作品、楽しく、時に切ない気持ちになりながら読ませていただいています。
ありがとうございます!
作中に出てくるキャラクターの面々がとても愛らしく描かれていて、魅力的です。
とくに幼少期の子供たちのキャラクターが可愛さが爆発していて、ぎゅっと抱きしめたい気持ちを堪えるのに大変です(笑)
これからも今後の作品を楽しみにしています😊

2024.10.23 神谷レイン

ご感想ありがとうございます。
他の作品も読んで頂き、また子供たちのキャラクターが可愛いと言ってもらえて嬉しいです(*´꒳`*)
今後もまだまだ書きたいお話がありますので、ぜひお楽しみに〜!

解除
センサン
2024.10.15 センサン

コメント失礼します。
一気読みさせて頂きました…!最初から最後までルークのレイに対する愛をめいっぱい感じられてもうすごくニヤニヤ読んでました…
イーサンの正体が分かったところですごく鳥肌が立ちました!!かっこいい方ですね
とっても素敵なお話を読ませて下さり、ありがとうございました🙏😊

2024.10.17 神谷レイン

ご感想ありがとうございます。
そしてお礼が遅れてしまって申し訳ないです(汗)
今作は数年前に書いたものなのですが、楽しんで読んで頂けたならとっても嬉しいです(^ω^)

またもう一通頂いたご感想ですが、名前が間違っていたぐらい全然大丈夫ですよ~!!
感想を送っていただいた事の方が何倍も嬉しいので、わざわざお詫び頂き恐縮なぐらいです。
自分なんか作品の中で誤字脱字しまくってて、そっちの方が皆様に申し訳ないほどで……。
という訳ですので、あまり気になさらないで下さいね。

引き続き、番外編の方も楽しんで読んでくださ~い(^o^)丿
(もう一通の方は承認しなくていいとの事でしたので、却下しておきます)

解除

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