38 / 38
番外編
エピローグ
しおりを挟む『―――――という訳で。異国の地で慣れない事もありますが、こちらではとても楽しく過ごさせていただいております。そろそろ竜国でも季節の変わり目かと思いますので、エルマン様、二コラ様も体調を崩されないようご自愛ください。イサールより』
そう手紙は締めくくられていた。
「……イサール殿は元気そうですね。なによりだ」
イサールからの手紙を読み終えたエルマンは微笑んで呟いた。
……イサール殿も色々と辛い時期がおありだったからな。ルーク殿と別れ離れになり、傍にいられず。その上、文が届いた時には黙っていた事を頭を下げて謝られた。真面目な方だったから、言わない事は逆に辛かっただろう。あの時は、申し訳ないことをした。……だが、それを全て乗り越え、今はとても楽しそうだ。本来ならば、先々代の王配として煌びやかな生活をしてもおかしくない方だというのに。
エルマンはくすっと笑って、もう一度手紙を見つめた。
手紙にはルイとシャボン玉を作って遊んだり、ルイとルークと一緒に竜になって遠くに飛んだり、レイに竜国の料理を直々に教えたりして、何かと楽しく過ごしていることが書かれていた。
でもきっと手紙には書ききれない事もいっぱいあるのだろう。
「やれやれ、今度、遊びに行かないといけないかもしれませんね」
エルマンがそう呟いた時、突然ばばーんっとドアが開いた。
「エルマン!」
大きな声でエルマンを呼んだのは現国王の二コラだった。
「二コラ様。そんな大声を出して、はしたないですよ」
エルマンはそう注意したが、二コラは何のそのだ。
「えー? ルークは元気があっていいな、って言ってくれたよー?」
「ルーク殿の言う事を信じちゃ駄目です」
そう言ったが、そんなエルマンの口に二コラは問答無用でむぐっと焼き菓子を突っ込んだ。
「むっ!」
「へへー、マフィンを作ったんだ! 一緒に食べよう!」
……一緒に食べようと聞かれている以前に口に突っ込まれているんですが。強引なところは父親譲りですね。いや、王族譲りってところですかね?
エルマンはそう思いつつ、二コラの父でルークの異母兄、そして伴侶だったニールを思い出した。
だが、口に入れられたマフィンをもぐもぐと食べていると、とてもおいしい。何かの実が入っているようだ。でも、何の実だろうか?
エルマンは疑問に思いながらもごっくんと飲み込んで、感想待ちの二コラに視線を向けた。
「このマフィン、とてもおいしいですね。何の実が入ってるんですか? 何か、見慣れない味ですが」
エルマンが率直に言うと二コラはパァッと目を輝かせた。
「ねー、おいしいでしょう?! これね、今の時期にだけ取れるリリンカの乾燥した実を入れてるんだ!」
「リリンカの実ですか。あまりぱっとしな味ですが、マフィンに入れると味が引き立ちますね。乾燥してるのもいいのかもしれない」
エルマンは言いながら無言でもう一個催促すると二コラはニコニコ笑顔で、お皿に乗っているマフィンをもう一つを差し出した。
「ね? それでエルマン。僕ね、考えたんだけど、乾燥したリリンカの実を国外に売ったら、売れるんじゃないかなーって思うんだけど、どう思う? リリンカってうちにしかない果樹だし、乾燥した実だったら長期保存が利くし!」
エルマンは口にいれようとしていたマフィンを危うく落としそうになった。まさか二コラが商売も考えて作っているとは思っていなかったからだ。しかも、なかなかにいい案だ。
「二コラ……あなた。よくそんな発想を思いつきましたね」
「へへー、実はレイがここにいた時にね。リリンカの実をおいしそうに食べてたの思い出してさー。レイが好きなら人間も好きな味なんだろうなーって思って。魔草以外にも輸出できるものがあれば、もしも魔草の産出量が少ない時は代わりになると思って」
「さすが、国王陛下ですね」
「ふふ、そうでしょ?」
二コラはえへんと腰に手を当てて言った。そう言うところは、まだ子供らしい。
でも、エルマンは知っている。子供というのはすぐにあっという間に大きくなって、目を離した隙に一人前になっている事を。
「あ、二コラ様! ここにいたのですね、もうお客様がお着きですよ。応接間にお越しください」
二コラを探していた侍従が声をかけると、二コラはスッと顔色を変えた。
「ああ、わかった。僕が行くまでお客様にはお茶とお菓子をお出ししておいて。すぐに向かう」
そう二コラはすぐにテキパキと侍従に伝えた。その顔つきはすっかり大人びたものだ。
その姿を見て、エルマンは誇らしく思うと同時にちょっと寂しいが、この国の未来は安泰だとも思えた。
「じゃあ、僕行くね。また後でリリンカの話をしようね、エルマン」
「ええ」
エルマンが答えると、二コラはにこっと笑って手を振って出て行った。
……あの子もすっかり大人になって。将来、一体どんな人を連れてくるんでしょうかねぇ。
エルマンは空を眺めながら、楽しみに思った。
だが、そのエルマンの思いは意外にも早く叶う事になる。
ファウント王国に久しぶりに視察に行った二コラがコールソン書店に足を運び、そこでポールの弟で常連客のリックに一目惚れをしてしまうからだ。
でもエルマンは、まだその未来を知らなかったーーーー。
おわり
******************
番外編はここまで!
イサールのお話はどうでしたか?
読んで楽しかったなら嬉しいです。
そして、お気に入り、いいね、エール(動画を見てくれた)方々。
再度になりますが、本当にありがとうございます!(^O^)/センキューーーッ!
(また、もし良かったら他の作品も読んでみてね。ただいま「俺様騎士は魔法使いがお好き!」も毎日投稿で連載中です( ・ω・)マ、キガムイタラネ)
129
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ぽて と むーちゃんの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
デコボコな僕ら
天渡清華
BL
スター文具入社2年目の宮本樹は、小柄・顔に自信がない・交際経験なしでコンプレックスだらけ。高身長・イケメン・実家がセレブ(?)でその上優しい同期の大沼清文に内定式で一目惚れしたが、コンプレックスゆえに仲のいい同期以上になれずにいた。
そんな2人がグズグズしながらもくっつくまでのお話です。
別れたはずの元彼に口説かれています
水無月にいち
BL
高三の佐倉天は一歳下の松橋和馬に一目惚れをして告白をする。お世話をするという条件の元、付き合えることになった。
なにかと世話を焼いていたが、和馬と距離が縮まらないことに焦っている。
キスを強請った以降和馬とギクシャクしてしまい、別れを告げる。
だが別れたのに和馬は何度も会いに来てーー?
「やっぱりアレがだめだった?」
アレってなに?
別れてから始まる二人の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
素敵な数々の作品、楽しく、時に切ない気持ちになりながら読ませていただいています。
ありがとうございます!
作中に出てくるキャラクターの面々がとても愛らしく描かれていて、魅力的です。
とくに幼少期の子供たちのキャラクターが可愛さが爆発していて、ぎゅっと抱きしめたい気持ちを堪えるのに大変です(笑)
これからも今後の作品を楽しみにしています😊
ご感想ありがとうございます。
他の作品も読んで頂き、また子供たちのキャラクターが可愛いと言ってもらえて嬉しいです(*´꒳`*)
今後もまだまだ書きたいお話がありますので、ぜひお楽しみに〜!
コメント失礼します。
一気読みさせて頂きました…!最初から最後までルークのレイに対する愛をめいっぱい感じられてもうすごくニヤニヤ読んでました…
イーサンの正体が分かったところですごく鳥肌が立ちました!!かっこいい方ですね
とっても素敵なお話を読ませて下さり、ありがとうございました🙏😊
ご感想ありがとうございます。
そしてお礼が遅れてしまって申し訳ないです(汗)
今作は数年前に書いたものなのですが、楽しんで読んで頂けたならとっても嬉しいです(^ω^)
またもう一通頂いたご感想ですが、名前が間違っていたぐらい全然大丈夫ですよ~!!
感想を送っていただいた事の方が何倍も嬉しいので、わざわざお詫び頂き恐縮なぐらいです。
自分なんか作品の中で誤字脱字しまくってて、そっちの方が皆様に申し訳ないほどで……。
という訳ですので、あまり気になさらないで下さいね。
引き続き、番外編の方も楽しんで読んでくださ~い(^o^)丿
(もう一通の方は承認しなくていいとの事でしたので、却下しておきます)