【完結】異世界に転生したら、元カレが敵みたいですが、溺愛騎士様がいるので大丈夫です。

マゼランの気持ち

　医師マゼランは、帰り際にハッチと会った。

ハッチは目を背けていたが、ぼくはそんなの構わない。

彼女の方に歩いていき、壁に追いやる。

「ぼくを捨てたのは騎士様の奥様になるためかい？」

「……まぁ、そうね。医者より騎士団長様の方が稼ぎもいいし、国の行政にも関われるもの」

マゼランは、ハッチの顔すれすれまで近づき、キスができそうな距離まで近づいた。

あまりの近さに、恥ずかしがるハッチ。

「ハッチ、覚えておけ。お前は誰にもやらない。俺の嫁なんだからな！！」

と捨て台詞を吐いていった。ハッチは、あんな強引なマゼランを見たことがなくて

心臓がバクバクしていた。

マゼランとは親同士が決めた許嫁だった。だから、昔から一緒に遊んでいた。

いつからか私が悪いことをすると、注射するぞーというお医者様ごっこも

流行っていた。仲が良かった。私も当然彼と結婚するものだと思っていたが、

騎士団長様の奥様の話が出た瞬間、うちの父は地位が欲しいため、マゼランとの

婚約を解消し、この話に乗った。私自身カイン様はかっこいいと評判だったし、

何よりもお父様の役に立てるのが嬉しかったので、指示に従った。

なのに、こんなことされてしまったら、心が揺らぐじゃない。

ハッチは、顔を真っ赤にしながら歩いていた。すると、メイドが話しているのを

聞いてしまう。

「アズサ様妊娠しているらしいわよ。でも、マゼラン氏が内密にとのことだから、あんた誰にも言っちゃだめよ」

「とか言って、あんたも言っちゃってるじゃない。ハハハ」

ハッチは、良いことを聞いたと、ルンルンした足取りで部屋に戻った。

そして、先日のことを謝りたいと手紙を書き、アズサに渡すようにメイドに頼んだ。

　メイドがアズサに手紙を持ってきた。誰からだろう。

手紙を読むと、ハッチからだった。あの紙のことを謝りたいとのことだった。

やっぱり、悪い子ではなかったのね。ごめん。勝手に悪役令嬢に決めてて。

そうして、明日以降でしたら可能ですとお返事を書いた。

　試験の結果が発表された。

「1位満点のセラム。2位７０点ハッチ、3位６５点アズサ」

と国王様が言った。

「この結果を見る限り、セラム以外は僅差のようだ。明日の自己アピールで互いに頑張るのじゃな。セラム、よくやった」

国王様は、孫好きのただのおじいちゃんのような顔になっていた。

セラムは、うざったそうに、部屋へ帰っていった。

ハッチは、結果に喜んでいた。今までの最高得点じゃないの。私はやっぱりできる女なんだわ。

よし、この勢いを借りて、アズサに例の件を話して脅しましょう。

「アズサ、今夜空いてるかしら？」

「え？はい。空いています」

「ならお部屋に伺ってもよろしい？」

「大丈夫ですよ。では待っています」

ハッチは、心の中でガッツポーズをした。これで私が勝ったも同然だわ。

アズサは、謝罪に来てくれるのだろうと思い、部屋で待つことにした。