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12話

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 その後は特に何もなく入口に付いた。入口は昔聞いた通りの黒い穴だった。穴の周りが歪んでいるように見える。しかし穴はかなり小さい。腕が1本入るかどうかといったところだ。

「うまくついたな。これが入り口だ。入ったときと違ってびっくりしたか?」

「ええ。聞いた通りですけど、これが通れて元の場所に戻れるなんて想像つかないです。それに奥もあるんですね」

「そうだ。ちなみにこっから奥にまっすぐ進んでも出口。まあつまり下の階層に行ける。ダンジョンは外みたいに平地じゃなくて、この石みたいにぐるぐる回れるんだ」

「そうなんですね」

「まあたまーに例外もあるがな」

 ミレティアは微笑みながら言う。

「どうする?いったん帰るか?」

「どうしますか?」

「私はもう少し残ろうかな。この階層なら1人でもやってけるだろうし、魔石1個じゃあなあ。ご飯代にもならないしな」

 ここで僕が残って一緒に居ても大した活躍はできないだろうし、僕自身お金はまだある。収入を無理に折半するより、今は1人で稼ぐ方がミレティアさんにもいいだろうとここまで思って、僕は帰ることを伝えた。

「なら僕は一旦戻ることにします。いつ頃帰りますか?」

「そうだなー。まあお昼時には戻るようにするよ。帰ってこなかったら明日またギルドの大部屋にきてくれ。たぶんそこにいるだろうからな」

「わかりました。じゃあ僕は昼頃まではギルドの訓練所で訓練でもしてます。それでは」

 僕はそう言って黒い穴に触れた。
 入った時と同様の感覚が体に走る。ふとこれは外から見たらどう見えるんだろうかと気になった。今度確認してみよう。2度目とあってそれくらい考える余裕のある入り口だった。
 外に出るとまださほど時間が経ってないように見えた。これもダンジョンの影響らしいが場所によってまちまちなので、どんなものかと思ったがここはかなり時間の進行が遅そうだ。
 これなら案外ミレティアさんが出てくるのも早いだろう。ギルドに戻るより少しここでボーっとしてた方が休憩になりそうだ。
 僕は少し離れた木陰で腰を下ろして休憩することにした。

 
 
 
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