気が付いたけど、人間を襲う必要ってあるのかな?

来佳

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12話

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地面が揺れて目が覚める。どうやらボスが揺らしたようだ。僕はすっと窓から外を見る。空は少し明るくて、作戦が成功したことを僕に告げてくれる。ぐいっと体を伸ばしてあくびをする。勝利のあくびはすごく心地のいいものだ。

「起こしちゃったか」

にゃぁと答える。

「ごめんな。俺は仕事に行かないといけないから行ってくるな。ここでいい子にしてるんだぞ」

首を横に振ってにゃぁという。ベッドは気持ちよいが、部屋がなんとも狭すぎる。それにできることが多いに越したことはない。飛んだり跳ねたりできる場所があるなら、もらえた方が嬉しい。

「いやそうだな。でもなあ、どうすればいいか」

悩んでるボスに近づき鼻を付ける。友愛の印を送って僕を信じてくれと伝える。

「ん-まあ。昨日みんなには扉を閉めるように言ったし。ある程度なら大丈夫か。でも外に入っちゃだめだぞ?お嬢様が悲しむからな」

にゃぁと了解の意を示す。ここはご飯も食べれるし寒くもない。出てけと言われるまでは居てやると初日にきめたのだ。安心してほしいと追加で鳴く。

「よしよし偉いぞ。じゃあ開けてやるけどあんまりはしゃぎすぎないようにな」

ボスはそう言って扉を開けて僕を解放してくれた。そのお礼に僕は風呂まで行くらしいボスを途中までエスコートすることにした。最後まで行かないのは勘違いで僕も洗われるのを防ぐためだ。
にゃぁと別れの挨拶をすると、手を振ってこたえてくれる。これで義理はこれで返したので、僕は来た道を戻り何をしようかなと考えた。
少し考えてそうだと名案が考え付く。いまボスは風呂だ。昨日の入ってはいけない部屋に入ろう。邪魔する人間はいないぞと人間には聞こえない鼻歌を歌いながら歩き出す。僕の大冒険の始まりだ。
場所は覚えてるのですぐにつく。ここは僕のためといっていいようにできていて。ドアノブがあるタイプの扉ではなく、力をかけて押せば開くタイプなのだ。食堂を開けた時のようにグイッと押す。ここは食堂より軽いらしく、すっと開いていく。隙間からいい匂いが流れてきて、僕は理解する。どうやらここは食料保管庫らしい。だから僕に入るなと言ったのだ。
だがそれがわかれば入らないわけにはいかない。さっさと入って少し齧ったってわからないだろう。にゃぁと渾身の力で最後のひと押しをいれて中に入る。

中はなかなかに綺麗で、床は風呂場のようなタイルだ。すこし冷たい。銀色のいろいろな機材がたくさん並んでいて、背の高い机に様々なものが置かれている。
ぺたぺたと歩いて散策しようとすると少し誤算があった。
まだ早い時間なので誰もいないだろうと思ったが、どうやら人間がいるみたいだ。なにやらトントンやらバンバンやら色々な音を奏でている。
バレないようにそーっと歩く、目標は食糧庫だ。だがどうしてもその人間が目に入ってしまう。背丈はお嬢様と同じくらいか少し大きいくらいで、白い服に前掛けを着けている。長い髪が後ろでくくられてゆらゆらと揺れている。
きっと揺れてるあいつのせいだと見当がつくが、こればっかりは魔物の習性なのでどうにもできない。ついここに来た理由を忘れて是非触らないとと思ってしまう。ここは我慢だ我慢だと自分に言い聞かせる。

だがしかし、そんな我慢など習性の前には無意味だった。にゃぁと後ろ足で立ち前足で髪をわしゃわしゃとする。途端にキャーと高い声でなく。そして少し走ってこちらを見る。

「ねこ?この子が噂の」

また猫と言われたがまあそれはいい。つい欲望に負けてしまった。どうするかと少し考える。とりあえず目の前の人間は目をきょろきょろさせているし僕の敵ではない。
だがさっきの声で何人か起きて様子を見に来る可能性がある。ここは逃げるが得策か、だがどうせ僕のことは目の前の人間が打ち明けてバレてしまうだろう。そうすれば罰を受けるかもしれない。
色々考えるととりあえず今得して後のことはあとに考える方がいいだろうと思う。
とりあえず高い所に上って食べれる物を探すことにする。ぴょんと台に飛び乗ろうとすると。

「ちょ、まってえ」

目のまえの人間が大声と共に空中の僕を捕まえた。かなり強い力だ。さきほどのぼーっとした様子からは想像の付かない。これまでかと少し脱力すると、その声で急いできたのか、はたまた近くにいたのかボスが現れた。

「どうした」

こちらも大声をあげる。だが僕を見てすぐに笑ったような何とも言えない顔になる。

「ラクエルさん。この子が調理中に入ってきたものだから、つい声を上げてしまいました」

「仕方ないですよ。私が連れ出して、言い聞かせます。手数をかけさせてしまってすみません」

そう言ってボスは僕を受け取りそのまま僕を連れ出してしまった。注意を受けて数分なので少し具合が悪い。にゃぁとすこし寂しそうになく。

「入っちゃダメだって昨日俺がいったろ?探検したかったのか?それともお腹が空いて匂いにつられたのか?」

その両方だとにゃぁと答える。それに対して頭を撫でてくれる。

「とりあえず、入っちゃだめだからな。わかったか?」

それにもにゃぁと答えるとよしよしといってまた頭を撫でてくれた。
これで僕の大冒険は終わったのだった。
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