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7. スキルの得方
しおりを挟む朝の日が昇った。
小鳥たちがさえずってる音や花が咲いてることを見ながら朝を迎えるというのは、思ってたより爽快な気分だ。
人どうしで殺しあう世界というのが少し残念だけど、そんなの薄汚い地下世界に比べれば大したことでもない。
コーヒでもなんでも、飲み物を持ってきたらよかったのに。
「それで?今からどこに行くつもりですか?」
朝の身ごしらえは女の子の必須項目と散々時間を引っ張ったレイヴェル・スカーレットが近づいてくる。
何がどこに行くつもりですか?だ、このガキ。確かに火力はとんでもなかったけど、スキルを使った直後に気絶してしまっては役に立たない。
だから今日は、彼女に新しいスキルを学ばせるつもりだ。
数は少なかったけどすぐ学べる実戦用のスキルがあった。
「お前、動物は好きか?」
「動物?いきなりなんですか動物って。」
「好きかって聞いてるんだよ。」
「そりゃ好きですよ。ウサギとか猫とか。あ!ポメラニアもいいですね!」
「ならこいつを使わせてもらう。」
ナイフを投げてここから少し離れているシカの首を当てる。
隣にいた子鹿がびっくりし、ナイフに当てられたシカも急いでそこから逃げる。
「え?ええ?!」
「ボーとするな。追うぞ。」
地面に付いた血を追って森の中を走る。後ろから説明を要求する声を無視しながら走り続けると、結構広い花畑が出てきた。
予想通り遠くまでは逃げられなかったシカはその花畑の中央に倒れていた。
同じ方向に逃げてたのか子鹿がそんな親シカの傷を必死になめていた。
ついてきたレイヴェルが「あ……」と小さく息を吐く。
「やだ…… あんなの見ちゃったら食べづらくなるんですよね……」
「別に食べるつもりで刺したんじゃねえよ。」
「……え?じゃなんで刺したんですか?」
ゆっくりとシカたちに近づいた。こっちに気づいた小鹿は再び俺から逃げたけど、首を刺されたシカは目だけを大きくするだけで立ち上がれない。
「お前動物好きって言ったよな?」
「は?」
「じゃあこいつを治してみろ。こいつの首に手を乗せて治したいと祈るんだ。」
「何言ってるんですか!そんなので治るわけないでしょ?!まさか、そんなバカなことをさせるために食べる気もない動物を刺したんですか?」
「そうだ。」
俺の返事に、彼女が不快そうに目先を釣り上げた。
「いくら動物でも、何のわけもなしにそんなことをされる理由はありません。」
「素晴らしいヒューマニズムだな。いいからやってみろ。協力し合うって決めたなら、少しは俺を信じてみろよ。」
しばらくの間お互いの目をにらみながら睨めっこする。そして「くっ……」と不信がいっぱい込まれたうめきを出して、俺の言う通りシカの前に座って手を乗せる。
目をつぶって一生懸命祈りをささげた。その風景は、まるで童話に出る森の女神が死んでいく動物に最後の慈悲を下すかのように尊い。
だが、特別な変化は起きなかった。シカの苦しそうな息声だけがどんどん小さくなっていくだけだ。
5分くらいその状態を維持していたレイヴェルは、もう一度顔を上げてさらに濃くなった不信の視線を俺に向けた。
「次は聖水でもかけましょうか?」
皮肉を言う彼女に顎さすことで答える。
俺がさした方向にはさっきの小鹿が俺たちを見ていた。
怖くて近づくことはできず、だからと言って死んでいく親を置いて逃げることもできずにいた。
それを見たレイヴェルは、歯を食いしばって深く深呼吸した。
「ごめんなさい……」
シカの首に刺さったナイフを抜き取る。暴れようとするやつをやさしく押さえて、もう一度傷に手を乗せて祈りを続けた。
すると、今度は変化が起きた。
優しい色の炎が彼女の手に宿り、シカの傷を覆う。
「……!」
オレンジ色の炎に包まれた傷が、ゆっくりと癒されていく。気づいた時には傷口が完全にふさがれて、シカも体を起こせるようになった。
急いで小鹿と一緒に俺たちから逃げていく。それをボーと眺めていたレイヴェルは、火が消えた自分の手を見下ろした。
「何……?」
「何が何だよ。スキルにきまってんだろ。」
「……!」
癒しの炎という医療用のスキルだった。書かれていたテクストによれば細胞の再生を促進させて傷をいやすらしい。
負傷が必ずついてくるこのディスゲームで医療用のスキルは大きな利点ともいえるはずだ。
昨日彼女に言ったとおり、このゲームは喧嘩に強ければ勝てるってわけじゃないからな。
「なんですか?どうやったんですか?わ、わかっててさせたんでしょ?!どうしてスキルの得方が分かったんですか?!」
声まで震えながら今までの中で一番驚いていた。
無理もない。たとえ同じ神と契約したとしても得られるスキル、得られる方法は、人によって千差万別となる。
だから普通自分たちの神と契約するオリジンの子供たちも家門の先代たちからスキルを得る方法を伝授されることはできない。
ネリエルと契約した俺だけが、それを見ることができる。
もちろんそれを正直に話すつもりはない。
何にしろ根リエルという神はあまりにもユニークすぎて、言ったらどんな面倒なことに巻き込まれるかわからないからだ。
彼女には昨日用意しておいた紙を見せてあげた。
「なんですかそれ?」
「お前と出会う前に、ギャスパー家門出身の男を殺して奪ったんだ。これを使えばその人にぴったりな訓練方法を提示してくれるらしい。俺はそこに書かれていた通りやってみただけだ。」
「そんなのがあるんですか?!」
ギャスパーとはオリジンの家門の一つであり発明を特技とする家門である。
よくはしらないけど、当主のヘファイス・ギャスパーが建てたギャスパー財団は人類の科学文明を500年も早めたといわれるほどすごい科学力を持っているらしい。
そんな家門の奴が持っていたものを奪ったといっておけば、説得力は十分になるはずだ。
「いくらギャスパー家門でも、どうしてこんなすごいものをディスゲームに参加したばかりのアドベンチャーなんかが……」
「さあな。偉大なるオリジン様たちの事情なんて、尻毛ほど興味ない。ただすごいものを得たから活用するだけだ。」
いささか不審に思われたけど、納得した彼女は不思議そうに紙のあっちこっちを見てみた。
「なんでそれを今言ったのか、は置いといて。癒しの炎を得る方法以外にももう一つありますね。サラマンダーを、切れ?」
【炎柱の太刀】
能力 : 持っている刃物の熱を上げて攻撃力を極度に上げる。
獲得条件 : スキルを使う刃物でサラマンダーを54匹以上切ること。
彼女が解禁できる唯一の攻撃スキルだ。いくら回復能力がよくても、攻撃できなければ勝てないので書いておいた。
知ってる限りサラマンダーはどの世界にも存在する、とてもありふれたモンスターだ。
ただし、この世界のどこに生息しているかはわからないので困る。
「サラマンダーを探さなければダメそうだな…… 火山地帯にいるっていうのは聞いたけど、その火山がどこにあるのやら。」
「地図あります!乳母に持っていきなさいって言われたんですけど、こんな風に役立つとは思いませんでした。」
……お前こそなんでそんな重要なものを今になって言うんだ。
さすがオリジンだった。大したものではないというかもしれないけど、小さくてもほかの世界についての情報を持ったまま始めるってところが、俺たちとは違うって感じがした。
彼女が現在位置に見える森から、西にある火山地域をさした。運がいいことにここからそう遠くない。
「じゃあまずはここを目的地にします?」
「ああ。」
「え?本当にいいんですか?ジンさんもその紙使いましたよね?自分のスキルとか成長させなくても大丈夫何ですか?」
「俺のは今すぐどうにかできるもんじゃねえからいいんだ。」
「どんなのが書かれていたんですか?」
「見せるわけねえだろ。」
「…… 私のは見ておいて自分のは見せないなんて、不公平と思いませんか?協力関係だから信じろって言ったのはあなたじゃないですか。」
「それを見せてあげたのがそもそも俺だ。それにお前が成長できるように手伝うこと事態が協力関係だからだろうが。」
「……ケチ。」
「あん?」
栄養のない話をかわしながら、森の外に向かって歩いた。
昨日から思ってたけどこの女、人の神経を掻く能力が相当なものだった。スカーレット家門のお嬢様と地下都市のごろつきだから仕方ないといえば仕方ないけど、それとは別格に性格がいいとは言えない。
今なら敵の気配も感じられないし、並んで歩く彼女をちらっと見て言った。
「こんな森の中を歩いていると、昔聞いた話を思い出すな。」
「なんですかいきなり。下品な話でもしたら殴りますよ?」
「怪談てやつだ。今みたいに樹木が多い森の中を歩いた、二人の男の実話。」
ビクンと眉が反応した。少しだけど彼女の体に力が入るのを確認して、話を続ける。
「ある町に住んでいた一人の男は幽霊という存在にとても興味が多かった。ある日、裏山の森の中につるで覆われた廃家があることに気づいた男は友達を説得してその建物を調べようとしたんだ。
みんな怖いからって断ったけど、普段から幽霊が見れるって言ってた友達だけが心配だとついていくことにした。
フラッシュライトを用意した二人だったけど、何故か不作動で月明かりを頼りにしながら森の中を歩くことになったんだ。
その時男は夜の森がこんなに暗くて静かってことをその日初めて知った。」
「…………」
「廃家に着くと奇妙なことにもフラッシュライトがつけるようになった。でもそれと同時に、二人の耳には何かの音が聞こえてきたんだ。」
彼女がびくびく訊いた。
「お、音って……」
「どこかからギスギスと鋸を引く音が聞こえてきたんだ。」
「………… うぅ。」
「音がどこからしてるのか確かめようとするのに、男が木の枝を踏んで大きな音がすると鋸を引く音も急に止まった。
息苦しい沈黙が流れた瞬間、幽霊を見る友達が男の手を引きながら急いで外へと走ったんだ。あまりにも必死に走るから男が訊いたよ。」
『おい!さっきのあれなんだ?幽霊か?!』
『違う。幽霊は全く感じられなかった。多分そこにはいないはずだよ。』
『はあ?じゃなんでこんなに必死こいて逃げてんだよ!』
「振り向くこともできず真っ青になった友達は、走りながら言った。」
『こんな時間に幽霊でもないのに、あんな暗いところでのこを引いてるなんて…… 幽霊なんかよりずっとおかしい。』
「あ…… え…… えっ……?!うぅ…… ううっ……」
焦る視線を何度も瞬きながら、こそこそこちらの袖をぎゅっとつかむ。
その姿を見て、いい気味だと思いながら言った。
「怖いか?」
「……は!そ、そんなわけないでしょ?バカな話ですね。これはその、いつ敵が現れるかわからないから。ま、万が一を考えているだけです!」
「そうか。ところであの廃家は何だ?あんなのあったのか?」
「………………………ええっ!?」
真っ青になって皿ほど大きくなった赤眼がほかのところを見るのを見ては、足元に落ちていた木の枝をパサッ!音が出るように踏んだ。
ひい……っ?!ひい……!いい…… と俺の腕にへばりつく。見た目もそうだったけど、結構いいものを持っている。
そのざまを見て鼻で笑うとぶるぶる震えていた彼女が、やっとからかいに気づき真っ赤になった顔で叫んだ。
「わ、わざとですよね!?」
「わざとだけど?」
激憤した彼女が俺の肩をたたきながらウルウル声を上げた。
「この!変態!変態!!変態!!!無礼者っ!!!まじで許さないんだからお前!」
「医大なスカーレット家門のお嬢様でも、こんな子供だましみたいな話にビビるんだな。」
「ビビってません!!」
「小便までは漏らしてないといいんだが。」
「漏らすわけないでしょ!!」
こんだけ騒がしたのにも、俺たちは誰とも出会うことなく平和に火山地域までつくことができた。
思ったより太い皮を持っていたサラマンダーたちに手こずったけど、偃月刀という重い武器とオリジンのステータスを持ったレイヴェルは成功的に54匹の首を切ることに成功した。
妙にサラマンダーたちに好かれていたのでそっちの趣味かって聞くと、下品な言葉もうやめてもらえません?!とまた大声を出した。
その日の夜の放送によれば、あと残った人員は900人程度らしい。
前の日より減る数が二倍以上に膨らんだんだけど、おそらく明日の夜ころには500人になってクエストが終わるはずだ。
明日からは俺たちも本格的に数減らしに参ると決めて、ここでの最後の夜を送った。
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