四季、折々、戀

くるっ🐤ぽ

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 姉の花織かおりは美しい人だった。肌は白く滑らかで、薄紅色に色づいた頰が輝くようだった。切れ長の目はしっとりと濡れていて、雲の向こうにある青空の色を映すように透き通っていた。父が醜い妹娘よりも、美しい姉娘の方を慈しみ、愛したのも当然だろう。美津江も花織のことを愛し、その美しさに憧れた。
 花織は父の先妻の忘れ形見なのである。その後、父は親戚に仕組まれた縁談で美津江の母と再婚した。父は美津江の母のことも、美津江のことも、決してうとんじはしなかったが、花織を愛するようには二人を愛せなかったようだ。それだけ、花織の母を愛していたという証左しょうさでもあっただろう。花織は父には似ていなかった。きっと、花織の母に似たのだろう。父は花織を通して、美しい妻に会っていたことだろう。花屋で老夫婦が話していた、加納という人がそうであったように。
 美津江は、父の容姿と母の容姿を少しずつ受け継いだ。女学校に上がるまでは、姉のように美しい娘になるのだと期待を込めて、毎日のように裏にあざみ模様が彫られた手鏡を覗いていた。小学生の頃は姉の着物と同じものを着れば姉のように美しくなることを信じて、姉の古い着物や帯を奪い去るように身に纏った。小学校に上がる前は、晴れた空をじっと見上げていれば姉のように美しい目を手に入れられると信じて、眩しいのを堪えて青空を見上げた。しかし、どれだけ歳を重ねても、どれだけ夢を見ても、朝起きて鏡を覗けば、そこには黒髪ばかり豊かな、醜い美津江の顔が映っている。美津江はいつの頃からか、鏡を覗いて悲しむのをやめた。
 美津江の母は、花織を嫌った。美津江の母は、美津江ほどではないにしろ、決して美しいとはいえない女だった。父の見ていないところで、花織をいじめた。花織が父から土産の簪やリボンを貰い、それが美津江のものより上等なものだと見ると、まぁ、よろしいこと、と言って花織が父が自分の為に買ってきた小物を美津江の小物と交換しなければならないように仕向けた。花織は、継母ままははのそういった仕打ちを、父に訴えたのだろうか。継母の花織に対する仕打ちは、一向に改まることはなかった。花織が年頃になり、いっそう美しく成長すると、母の継子ままこへの感情は、「嫌い」から「憎い」に変わっていった。持ち物は、何でも美津江の方が上等でなければ我慢ならないようになった。花織の頰を打つことすらあった。頰を打たれると、花織は唇を噛み締めて、泣くのを堪える表情だった。花織が打たれるのを見ると、美津江は辛かった。
 しかし、花織は異母妹いぼまいである美津江に優しかった。花織の母の形見だという櫛で、美津江の髪を丁寧にいてくれた。美津江の顔は醜いが、髪が美しいのは花織が梳いてくれたから、花織の手を通して、花織の母の血が通ったのだと、美津江は信じている。
「みっちゃんの髪は綺麗ね」
 花織のその言葉を、美津江は今も、宝物のように胸に抱いている。
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