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捜査一課の凸凹コンビ
富澤勝夫・志摩祐介②
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ーー死亡したのは【猫矢ノア】49歳。
これは仕事をする上での芸名のようなもので、本名は松木佳奈子。
現場となったこのマンションは、住居兼仕事場として使っており、一人暮らしだったようです。
独身で身寄りはなく、子供もいないという事ですが、現在連絡の取れる親族が居ないか調査中です。
通報があったのは、昨日の午後十時過ぎ、第一発見者は隣の部屋の住人です。
玄関ドアから血が流れ出ているのを不審に思い、覗いてみたところ、倒れている被害者を発見したそうです。
ドアに鍵は掛かっていませんでした。
検視官の所見では、死亡推定時刻は午後七時から九時の間。
死因は腹部を刃物で刺されたことによる出血性ショック死という見方が濃厚で、後ほど司法解剖が行われます。
なお、使用された凶器は持ち去られている模様です。
マンションのエントランスには監視カメラが設置されており、今日から映像の解析が行われます。
ちなみに、部屋のあるフロアにはカメラの設置はありませんでした。
室内はすでに見られたかと思いますが、特に荒らされた形跡はなく、現状では恨みによる犯行の可能性が高いというのが本部の見解です。
被害者の猫矢ノアは、一風変わったカウンセリングを行う事で有名で、最近は人気霊能力者としてたびたびメディアに取り上げられていました。
……そうそう、ちょうどこないだテレビに出てましたよね。
彼女のカウンセリングは予約制で、仕事場であるこの部屋へ客を招いて、奥の応接室で相手していたようです。
猫矢ノアのホームページがありましたので予約状況を調べたところ、昨日は午後三時の客を最後に七時半までは予約がありませんでした。
死亡推定時刻からみて七時半の予約客が事件に関与している可能性も考えられます。
現在ホームページの管理者へ連絡を取っており、予約を入れた客の名前や連絡先がわかるはずです。
殺人犯が凶器を持ったまま逃走中という事もあり、所轄署による見回りを強化するとともに、周辺の自治体へ警戒を呼び掛ける情報提供を行っています。
そこまで話したところで、志摩は黙って説明を聞いている富澤の様子を伺った。
相変わらず、眉間には深いしわを寄せている。
「被害者は恨みを買いそうな人間だったのか?」
「それはまだ何とも……現在、スマホから通話履歴を探っていますので、直近で連絡を取った人物が割り出せたら、事情聴取を要請します」
要するに、現時点では何も分かっていないという事だ。
鑑識作業によって犯人に繋がる遺留品や指紋など、重要な手掛かりが見つかれば話は別だが、富澤が見た限りでは犯人は部屋の中まで押し入ってはいない。
犯人は玄関を開けた被害者を刺し、すぐに立ち去ったものと考えられる。
そうなると、マンションや周辺住人への聞き込み、近隣の監視カメラの動画チェックなどを積み重ね、じわじわと容疑者を炙り出していく事になるだろう。
非常に地道で、根気のいる作業だ。
「そうか、分かった。よし、聞き込みを始める前に、一通り部屋を見て回るぞ」
これは仕事をする上での芸名のようなもので、本名は松木佳奈子。
現場となったこのマンションは、住居兼仕事場として使っており、一人暮らしだったようです。
独身で身寄りはなく、子供もいないという事ですが、現在連絡の取れる親族が居ないか調査中です。
通報があったのは、昨日の午後十時過ぎ、第一発見者は隣の部屋の住人です。
玄関ドアから血が流れ出ているのを不審に思い、覗いてみたところ、倒れている被害者を発見したそうです。
ドアに鍵は掛かっていませんでした。
検視官の所見では、死亡推定時刻は午後七時から九時の間。
死因は腹部を刃物で刺されたことによる出血性ショック死という見方が濃厚で、後ほど司法解剖が行われます。
なお、使用された凶器は持ち去られている模様です。
マンションのエントランスには監視カメラが設置されており、今日から映像の解析が行われます。
ちなみに、部屋のあるフロアにはカメラの設置はありませんでした。
室内はすでに見られたかと思いますが、特に荒らされた形跡はなく、現状では恨みによる犯行の可能性が高いというのが本部の見解です。
被害者の猫矢ノアは、一風変わったカウンセリングを行う事で有名で、最近は人気霊能力者としてたびたびメディアに取り上げられていました。
……そうそう、ちょうどこないだテレビに出てましたよね。
彼女のカウンセリングは予約制で、仕事場であるこの部屋へ客を招いて、奥の応接室で相手していたようです。
猫矢ノアのホームページがありましたので予約状況を調べたところ、昨日は午後三時の客を最後に七時半までは予約がありませんでした。
死亡推定時刻からみて七時半の予約客が事件に関与している可能性も考えられます。
現在ホームページの管理者へ連絡を取っており、予約を入れた客の名前や連絡先がわかるはずです。
殺人犯が凶器を持ったまま逃走中という事もあり、所轄署による見回りを強化するとともに、周辺の自治体へ警戒を呼び掛ける情報提供を行っています。
そこまで話したところで、志摩は黙って説明を聞いている富澤の様子を伺った。
相変わらず、眉間には深いしわを寄せている。
「被害者は恨みを買いそうな人間だったのか?」
「それはまだ何とも……現在、スマホから通話履歴を探っていますので、直近で連絡を取った人物が割り出せたら、事情聴取を要請します」
要するに、現時点では何も分かっていないという事だ。
鑑識作業によって犯人に繋がる遺留品や指紋など、重要な手掛かりが見つかれば話は別だが、富澤が見た限りでは犯人は部屋の中まで押し入ってはいない。
犯人は玄関を開けた被害者を刺し、すぐに立ち去ったものと考えられる。
そうなると、マンションや周辺住人への聞き込み、近隣の監視カメラの動画チェックなどを積み重ね、じわじわと容疑者を炙り出していく事になるだろう。
非常に地道で、根気のいる作業だ。
「そうか、分かった。よし、聞き込みを始める前に、一通り部屋を見て回るぞ」
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