悪役令嬢は救国したいだけなのに、いつの間にか攻略対象と皇帝に溺愛されてました

みゅー

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第百七十四話 アルメリア救出班

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 アルメリアは審問官に声をかけようとしたが、先を急ぐペルシックがそれを遮りアルメリアを書類保管庫へ連れていった。

 孤児院へつながる地下通路への入り口が開けてあり、その横にリカオンが立っており思わず微笑む。

「リカオン、貴方まで!」

「お嬢様、その反応はとても嬉しいのですが……今は感動の再開を喜んでいる暇はありません。他のものに見つからないよう、早く降りましょう」

 ここから外へ逃げようということなのだろう。アルメリアは促されるまま、慌てて地下に続く梯子を降りた。

 ペルシックが地下道に置いてあるランプに火をいれると、辺りを照らしながらリカオンに訊いた。

「どちらに向かえばよろしいですか?」

「城内に向かうのはこちらの道です」

 アルメリアは驚いてリカオンの顔を見た。

「え? 城内? この道は城内に続いてますの?」

 リカオンは微笑むと答える。

「そうです。以前僕が境界線へ潜入したとき、教会本部よりまだ先に地下道が続いているのが気になったんです。それで思い出したのですが、あの人質事件では人質を逃がすと共に兵士が一斉に攻撃を仕掛けています。逃げ惑う人質をよけながら敵を攻撃するなど、この狭い地下道でできると思いますか?」

「では、城内とも繋がっていたということですの?」

「その通りです。流石お嬢様、少しの説明で理解してくださるので助かります。その通りでこの先は城壁内部へと繋がっていました。それでいつか教皇たちを捕らえることがあるなら利用しようと思っていたのですが、まさかこういった使い方をするとは思ってもみませんでした」

 そう言って苦笑した。リカオンがそんなことまで考えていたとは思いもよらず、驚きながらもペルシックに急かされ城壁内へ急いで歩いた。

 三十分ほど歩いたところで、地下道は行き止まりとなりその手前に梯子があった。
 リカオンはアルメリアに先に登るように言った。

「とても登りにくい梯子なので、もしも足を滑らせたら僕が守ります。ゆっくり登って下さい」

 ドレスの中を見られるかもしれないなど言っていられない状況だったので、アルメリアは素直にリカオンに従いその梯子を登った。
 上を見上げると日が差さない暗い城壁内は、最初なにも見えなかったが登って行くにつれ誰かが手を差しのべていることに気がついた。
 アルメリアはその手を掴むと一気に上に引き上げられ、誰かの胸の上に着地した。
 慌てて上体を起こすと、そこにはスパルタカスがいた。アルメリアは自分がスパルタカスの上に乗っていることに気づくと、すぐに横に降りた。

「スパルタカスごめんなさい、重かったですわよね」

「いいえ、そんなことはありません。それに私にとっては幸運なことでした」

 そう言って苦笑する。と、その横にはルーカスもいた。ルーカスはアルメリアと目が合うと、心配そうに訊いた。

「教会で酷いことはされませんでしたか? お体は大丈夫ですか?」

「心配ありませんわ、そんなに酷い扱いは受けていませんもの」

 そんなやり取りをしていると、あとから梯子を登ってきたペルシックが声をかける。

「申し訳ございません。あまりお時間がないようです」

 すると、ペルシックの横に立っていたリカオンがアルメリアの前に跪く。

「お嬢様、失礼いたします」

 そしてアルメリアを横抱きに抱き上げた。ヒールで三十分も歩きにくい地下道を歩いていたアルメリアは、正直にこれを有り難く思った。

 ペルシックはスパルタカスに向きなおる。

「スパルタカス様、道案内をよろしくお願いいたします」

 スパルタカスは慌てて立ち上がり頷いて、先を案内し始めた。

「殿下からはこちらを通るように仰せつかっています。暗いので足元に気を付けて下さい」

 リカオンの首に必死にすがりながら、アルメリアは尋ねる。

「どこへ向かっていますの? わたくしの執務室ではありませんわよね?」

 リカオンは前方を見ながら答える。

「王宮です。今のところあそこが一番安全ですからね」

 そう言うとアルメリアに微笑んだ。

 城壁を出ると、眩しい朝日に照らされ、思わず目を細目た。目がなれると、周囲から完全に死角になっている通路を通る。あれだけ毎日城内へ通い、毎日見回りをしていたアルメリアにもそこがどこだかわからなかった。

「どうぞ!」

 兵士のフランクが扉を開けてスパルタカスを誘導する。
 そうして王宮内に入り、しばらく進んだところでやっとリカオンはアルメリアをおろした。

「メイドたちに身支度を整えてもらいましょう」

 アルメリアはなにがなんだかわからぬまま、とにかく王宮のメイドたちに任せることにした。

「お嬢様、本日の舞踏会でお召しになるドレスが見つからなかったとのことで、こちらのドレスをお召しになっていただきます」

 そう言われて見せられたドレスは、薄紫色のとても上品で品のあるドレスだった。ラバティン・カラーで派手すぎず袖口にレースがあしらわれ、前方から見るとなにも装飾がないように見えるが、腰の辺りから後ろにかけて流れるように布でできた薔薇とレース編みの装飾が施されている。布やレースには小さな宝石や真珠が刺繍とともに縫いこまれていた。

 とても気に入ったが、ドレスの色にアルメリアは少なからずドキリとした。

「これは……」

「殿下がお嬢様のために準備していたものです。さぁ、湯浴みをしましょう。丸一日部屋に閉じ込められていらしたんですから、綺麗にしなくては」

 メイドはそう微笑むと、アルメリアを浴室へ誘導した。





 全身のオイルマッサージから髪の毛のパック、はては爪の手入れまで、王宮のおそらくはロベリア国で一番の腕を持つものたちに念入りに準備をしてもらい、アルメリアは今までの緊張が解きほぐされたように感じた。
 身支度を整えると、ドレスの揃いで作られた大粒のタンザナイトのネックレスを身に付けた。
 こうしてすべての準備が整ったところである部屋へ案内された。

 その部屋にはムスカリ、アドニスにリアム、リカオンやスパルタカスにルーカスもいた。

 アルメリアを見て開口一番にムスカリが言った。

「思っていた通り美しい。私はあまりドレスに興味はないが……、今の君を見ればドレスや装飾品が美しいものを引き立てるために、どれだけ大切なのかわかる」
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