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前編『絆魂光(はんこんこう)』
第二十話『真相・後編』
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――その様子を水星は崖下から見ていた。
「あいつ、あんなところに! どうやってあそこまで行った!?」
「待て、あそこに行くにはこっちのルートじゃない! こっちの上へ行く道から行かないと」
千春の言葉に、水星は彼女が指さした方向へ駆け出した。跳躍で行ける距離ではない。千春は彼の後を追う。水星の背中を狙った妖を千春はハンマーで弾き飛ばした。
頭上では、焔尽が音の魔気を放つと、赤い炎が竜を縛り上げる。竜が咆哮し、瘴気が爆発的に広がるが、焔尽は炎をさらに強く燃やし、竜を焼き尽くそうとする。
だが、魔気の使用で彼の体が軋み、包帯から血が滴り、白い髪が風に乱れる。水星が、「焔尽、やめろ!」と叫ぶ。
しかし、焔尽が崖上から炎で足止めし、「水星、来るな!」と叫び返す。
「バカ野郎! 今、火の國の名前を出せば、お前が狙われるんだぞ!?」
水星の言葉に対し、焔尽は何も答えなかった。いや、彼は頭が痛むのか、額を片手で抑える。包帯で包んだ手が血で真っ赤に染まっていた。
――もう、傷口が開いたのか。いくらなんでも、治りが遅すぎる。
水星は水の魔気を込め、彼の放った炎を剣でかき消した。千春も後を追いかけて来た。瘴気から溢れて来た妖をハンマーで飛ばし、岩にのめり込ませていた。
「焔尽! 戻りなさい!」
千春も大きな声をあげる。焔尽は指先に魔気を込めて、音を奏で始めた。わざと見せないようにした彼の魔気が暴れまわる竜にまとわりつく。事情を知らない者から見れば、彼が竜を操っているように見えるだろう。魔気が竜を包み込むと、竜が怒り狂ったように、崖に体をこすりつけた。ガンッと崖を削り、瓦礫から人々が逃げ纏う。
「あいつを殺せ! 早く動きを止めさせるんだ」
妖払いたちが焔尽に向け、弓を構える。
「あいつら!」
水星が妖払いの元へ走ろうとするが、ふと、咳が響く。焔尽を振り返れば、手のひらで口を抑えていた。
水星は目を見開く。彼の口元から血が溢れて、ぼたぼたと谷底へ血を落としていた。
「焔尽!」
「水星、貴方も深追いは……! 妖払いたちに指示をしなきゃいけないのに!」
千春が声をあげる。しかし、彼女は水星に襲い掛かろうとした妖をハンマーでたたき、そして、次の妖の攻撃を受け止めた。彼女は押されながら、駆けだした水星を見て目を見開いた。
「水星!」
千春の声を無視し、水星は剣を握り締めた。崖を蹴り、大きく跳躍した。頭上で暴れまわる竜の高さまで飛び、竜を踏んだ。そして、竜を蹴り、水星は焔尽の傍に飛ぶ。大きく目を見開く焔尽の腕を掴もうとした。しかし、彼は火の魔気を飛ばし、水星は魔気でそれをいなす。それでもと、届かない手を伸ばす水星だったが、焔尽は彼から逃げるように距離を取る。
すぐに音を奏でだした。火の魔気が辺りを紐のように足場を作り出す。その上に水星が乗る。熱くはない。その事に驚き、水星は焔尽を睨みつけた。
「俺を助けるのか、やっつけるのか。どっちだ!? この分からず屋め! 早く術を止めろ!」
「煩い……」
焔尽はぽつりと呟く。指先が宙を奏でる度に、彼の魔気が竜を固定化していく。下の方では、竜がまるで糸に絡まった魚のように暴れまわっていた。
再び水星が宙を蹴り、焔尽を捕まえようとする。しかし、彼はするりと交わして、今度は妖払いの前へ行き、彼らの前に火を放った。悲鳴が上がる中、水星は「やめろ!」と彼の腕を取った。
「千春さんは……」
横目で探せば、千春の姿は大量の妖に足止めされていた。舌打ちをし、「やめろ! こいつに手を出すな!」と水星が大きな声で妖払いたちに声をかけた。しかし、彼は「ですが! 彼は火の國の!」と声を荒げた。
――千春さんじゃなきゃダメだ。援護に――いや、こいつを護らないと……。
やっと掴んだと思えば、焔尽から足払いされ、水星は転びかける。手が離れ、また彼はするりと逃げ出した。
「水星様!」
妖払いたちが声をあげる。水星は舌打ちをした。
――このままでは、焔尽を守れなくなる。見てる人が多すぎる。なぜ、あいつはわざと暴れる?
ゆっくりと焔紐の上で起き上がってみれば、焔尽は不適にほほ笑んでいた。水星にはわかる。彼がわざとあくどい笑みを浮かべていることに。
「水の國の力も落ちたものだな」
「抜かせ!」
焔尽がわざとらしく、水星へ言う。下手くそな演技を見る気になれず、水星が再び彼に向って飛び出した。彼の手を掴み、二人は取っ組み合いとなる。
血を吐いて、手は血だらけ。それなのに、彼は演技を続ける。もう、ふらふらだろうに、と水星は思った。
「なぜ、こんなことをした!?」
「剣はどうした? 腰の剣はお飾りか?」
「質問に質問で答えるな!」
焔尽が音で水星を弾く。弾かれた水星は彼の作った糸の足場に飛ばされた。その様子を見てから、焔尽は再び音を奏で、竜を固定化する。彼の手が燃え上がるように、魔気を込めた時だ。
竜の姿が発火し、ぼうぼうと瘴気ごと焼き尽くしていく。暴れる竜のウロコが剥がれ落ち、黒い瘴気を巻き散らしながら、苦しみだす。
――この竜も、あの時の蛇や人形と同じだ。人の手によって作られたものだ……!
「いっ」
ふと、悲鳴が聞こえた。焔尽の声だった。
そんな中、水星は気が付く。焔尽の指もまた人形の関節のように一つ離れたことを。それは谷底へ落ちて消えていった。
すぐに焔尽は指を袖の隠した。
「お前――」
「流石、水星様。この俺を負かすとはね」
焔尽の手が、腕が、不自然に震える。剣を抜かない姿に水星の胸に疑念が走る。
「お前……その指は何だ? 手の動き……まさか」
水星の言葉に焔尽はにへらと笑った。あの時の、本当に嫌いな笑みだった。手をひらひらとさせれば、他の指も、人形のように崩れて、落ちていった。
竜が黒い瘴気なら、焔尽は白い霧のようなものを放ち、指は溶けるように消えていった。
「焔尽」
焔尽は答えなかった。
彼の手が限界なのか、カタカタと手が動き、水星はそれが彼の答えだと物語っているようだった。
「嘘だ」と水星は呟く。
「やっぱり、水星は勘が良い。そうだよ。俺は俺自身が作った人形だ。人間そっくりな完成品だぞ? ずっと、お前を騙していたんだ」
そう言い放った焔尽の表情は、安らかな微笑をしていた。
「あいつ、あんなところに! どうやってあそこまで行った!?」
「待て、あそこに行くにはこっちのルートじゃない! こっちの上へ行く道から行かないと」
千春の言葉に、水星は彼女が指さした方向へ駆け出した。跳躍で行ける距離ではない。千春は彼の後を追う。水星の背中を狙った妖を千春はハンマーで弾き飛ばした。
頭上では、焔尽が音の魔気を放つと、赤い炎が竜を縛り上げる。竜が咆哮し、瘴気が爆発的に広がるが、焔尽は炎をさらに強く燃やし、竜を焼き尽くそうとする。
だが、魔気の使用で彼の体が軋み、包帯から血が滴り、白い髪が風に乱れる。水星が、「焔尽、やめろ!」と叫ぶ。
しかし、焔尽が崖上から炎で足止めし、「水星、来るな!」と叫び返す。
「バカ野郎! 今、火の國の名前を出せば、お前が狙われるんだぞ!?」
水星の言葉に対し、焔尽は何も答えなかった。いや、彼は頭が痛むのか、額を片手で抑える。包帯で包んだ手が血で真っ赤に染まっていた。
――もう、傷口が開いたのか。いくらなんでも、治りが遅すぎる。
水星は水の魔気を込め、彼の放った炎を剣でかき消した。千春も後を追いかけて来た。瘴気から溢れて来た妖をハンマーで飛ばし、岩にのめり込ませていた。
「焔尽! 戻りなさい!」
千春も大きな声をあげる。焔尽は指先に魔気を込めて、音を奏で始めた。わざと見せないようにした彼の魔気が暴れまわる竜にまとわりつく。事情を知らない者から見れば、彼が竜を操っているように見えるだろう。魔気が竜を包み込むと、竜が怒り狂ったように、崖に体をこすりつけた。ガンッと崖を削り、瓦礫から人々が逃げ纏う。
「あいつを殺せ! 早く動きを止めさせるんだ」
妖払いたちが焔尽に向け、弓を構える。
「あいつら!」
水星が妖払いの元へ走ろうとするが、ふと、咳が響く。焔尽を振り返れば、手のひらで口を抑えていた。
水星は目を見開く。彼の口元から血が溢れて、ぼたぼたと谷底へ血を落としていた。
「焔尽!」
「水星、貴方も深追いは……! 妖払いたちに指示をしなきゃいけないのに!」
千春が声をあげる。しかし、彼女は水星に襲い掛かろうとした妖をハンマーでたたき、そして、次の妖の攻撃を受け止めた。彼女は押されながら、駆けだした水星を見て目を見開いた。
「水星!」
千春の声を無視し、水星は剣を握り締めた。崖を蹴り、大きく跳躍した。頭上で暴れまわる竜の高さまで飛び、竜を踏んだ。そして、竜を蹴り、水星は焔尽の傍に飛ぶ。大きく目を見開く焔尽の腕を掴もうとした。しかし、彼は火の魔気を飛ばし、水星は魔気でそれをいなす。それでもと、届かない手を伸ばす水星だったが、焔尽は彼から逃げるように距離を取る。
すぐに音を奏でだした。火の魔気が辺りを紐のように足場を作り出す。その上に水星が乗る。熱くはない。その事に驚き、水星は焔尽を睨みつけた。
「俺を助けるのか、やっつけるのか。どっちだ!? この分からず屋め! 早く術を止めろ!」
「煩い……」
焔尽はぽつりと呟く。指先が宙を奏でる度に、彼の魔気が竜を固定化していく。下の方では、竜がまるで糸に絡まった魚のように暴れまわっていた。
再び水星が宙を蹴り、焔尽を捕まえようとする。しかし、彼はするりと交わして、今度は妖払いの前へ行き、彼らの前に火を放った。悲鳴が上がる中、水星は「やめろ!」と彼の腕を取った。
「千春さんは……」
横目で探せば、千春の姿は大量の妖に足止めされていた。舌打ちをし、「やめろ! こいつに手を出すな!」と水星が大きな声で妖払いたちに声をかけた。しかし、彼は「ですが! 彼は火の國の!」と声を荒げた。
――千春さんじゃなきゃダメだ。援護に――いや、こいつを護らないと……。
やっと掴んだと思えば、焔尽から足払いされ、水星は転びかける。手が離れ、また彼はするりと逃げ出した。
「水星様!」
妖払いたちが声をあげる。水星は舌打ちをした。
――このままでは、焔尽を守れなくなる。見てる人が多すぎる。なぜ、あいつはわざと暴れる?
ゆっくりと焔紐の上で起き上がってみれば、焔尽は不適にほほ笑んでいた。水星にはわかる。彼がわざとあくどい笑みを浮かべていることに。
「水の國の力も落ちたものだな」
「抜かせ!」
焔尽がわざとらしく、水星へ言う。下手くそな演技を見る気になれず、水星が再び彼に向って飛び出した。彼の手を掴み、二人は取っ組み合いとなる。
血を吐いて、手は血だらけ。それなのに、彼は演技を続ける。もう、ふらふらだろうに、と水星は思った。
「なぜ、こんなことをした!?」
「剣はどうした? 腰の剣はお飾りか?」
「質問に質問で答えるな!」
焔尽が音で水星を弾く。弾かれた水星は彼の作った糸の足場に飛ばされた。その様子を見てから、焔尽は再び音を奏で、竜を固定化する。彼の手が燃え上がるように、魔気を込めた時だ。
竜の姿が発火し、ぼうぼうと瘴気ごと焼き尽くしていく。暴れる竜のウロコが剥がれ落ち、黒い瘴気を巻き散らしながら、苦しみだす。
――この竜も、あの時の蛇や人形と同じだ。人の手によって作られたものだ……!
「いっ」
ふと、悲鳴が聞こえた。焔尽の声だった。
そんな中、水星は気が付く。焔尽の指もまた人形の関節のように一つ離れたことを。それは谷底へ落ちて消えていった。
すぐに焔尽は指を袖の隠した。
「お前――」
「流石、水星様。この俺を負かすとはね」
焔尽の手が、腕が、不自然に震える。剣を抜かない姿に水星の胸に疑念が走る。
「お前……その指は何だ? 手の動き……まさか」
水星の言葉に焔尽はにへらと笑った。あの時の、本当に嫌いな笑みだった。手をひらひらとさせれば、他の指も、人形のように崩れて、落ちていった。
竜が黒い瘴気なら、焔尽は白い霧のようなものを放ち、指は溶けるように消えていった。
「焔尽」
焔尽は答えなかった。
彼の手が限界なのか、カタカタと手が動き、水星はそれが彼の答えだと物語っているようだった。
「嘘だ」と水星は呟く。
「やっぱり、水星は勘が良い。そうだよ。俺は俺自身が作った人形だ。人間そっくりな完成品だぞ? ずっと、お前を騙していたんだ」
そう言い放った焔尽の表情は、安らかな微笑をしていた。
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