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最初からずっと
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友情と恋心を区分してくれるのは一体何だろうか?
恋人と疑われる友人関係があるかと思えば、逆に友人と信じて疑わない恋人関係もある。
俺は俺たちがむやみに定義されない日が来ることを切に願う。
-
「…ナオ、俺も一緒に入ってもいい?」
宇宙入浴剤で有名だというバスボムを溶かしたお風呂は青い海のようで奥ゆかしい天の川のようだった。
その中で愛らしい恋人がいっぱい浸かっている。 浸かっているのは体だけではないのか、彼の目元にも水気がついていた。
普段なら笑って許してくれたはずなのに、今日は静かな空気の中にたまに水の音だけが聞こえた。
浴槽から流れ出た水がズボンの裾を濡らした。
「さっきさ…··· なんで、彼氏って言ったの?」
“...”
応じてくれないってことは、もしかしたら、ナオさえ予想できなかった行動だったのかもしれない。
「いや、嫌じゃなかったけど、ただちょっと…意外だったから、」
-
昼間故障したヒーターを直しに来た修理技師は喋るのが好きな人だった。
初めて会う人なのになかなか気兼ねがなく、この仕事が好きな理由、たまに会うクレーマーの話、今週末に家族旅行に行くということまでささやかに話す姿は本当に楽しそうだった。
そうしているうちに話の話題が俺たちに移ってきて、3年も一緒に暮らしているなんて、仲深く見えて羨ましい」って言った。
3年間一緒に暮らしたことも、仲が深いことも全て事実だから否定する理由はなかった。
そこで終わったら、ただ不思議で面白い人として思い出せたのに、一言が多かった。
「友達と一緒に住むと楽しいですが、家に恋人を連れてきて遊ぶのは難しそうですね。」
その一言で私たちの関係は勝手に友情になり、それが普通の視線だった。
二度と会わない人だから、ただ笑って済まそうつもりだった。 いつものように。
「…友達じゃないです。 彼氏です。」
修理技師は気づかなかっただろうが、私はその時、普段より1トーン高いナオの声も、微細な震えも感じられた。
本当に近いと思う関係でなければ明らかにすることを避けてきたナオが初めて会うる人に俺たちと自身を表わしたのは、3年間ナオを見守ってきた俺も全く予想できなかったことだった。
修理技師はしばらく黙ってから、あ··· という反応を示すだけで、
以前まで身軽だった姿はどこに行ったのか何も言わずに作業を終えた後、形式的な案内をして帰ってきた。
きっとナオはその言葉を消化できず、食もたれしたのだろう。
-
浴槽の外から手を伸ばしてナオの髪を洗う。 前にレモンの香りのシャンプーを使うと、いつもよりすっきりする感じだと言ってた。
指先に少し力を入れながらも柔らかく、頭皮をマッサージしながら話す。
「たとえ俺たちが友情の形で会ったとしても、ナオのことが大好きだろうと思う」
今度は小さくもうなずいてくれる。 視線は相変わらず青いお風呂に向かったまま。
-
大きなバスタオルを全身に巻き、濡れた足の裏でドア前のマットを踏む。
憂鬱は水溶性だから、水で洗い流せると言ったか。 確かに少しはすっきりしたようだ。
先に洗って出かけたニカは、俺を待つうちに眠ってしまったのか、ソファにもたれかかったまま寝ている。
じっと眠っている明るい髪をなでて、そのまま髪の毛の端まで撫でると少し濡れている。 乾かして寝ろって言ったのに。
ねえ、ニカ。
俺はニカに初めて会ったその日も、君と友達でいたいとは思わなかったよ。
最初から俺はずっと···。
恋人と疑われる友人関係があるかと思えば、逆に友人と信じて疑わない恋人関係もある。
俺は俺たちがむやみに定義されない日が来ることを切に願う。
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「…ナオ、俺も一緒に入ってもいい?」
宇宙入浴剤で有名だというバスボムを溶かしたお風呂は青い海のようで奥ゆかしい天の川のようだった。
その中で愛らしい恋人がいっぱい浸かっている。 浸かっているのは体だけではないのか、彼の目元にも水気がついていた。
普段なら笑って許してくれたはずなのに、今日は静かな空気の中にたまに水の音だけが聞こえた。
浴槽から流れ出た水がズボンの裾を濡らした。
「さっきさ…··· なんで、彼氏って言ったの?」
“...”
応じてくれないってことは、もしかしたら、ナオさえ予想できなかった行動だったのかもしれない。
「いや、嫌じゃなかったけど、ただちょっと…意外だったから、」
-
昼間故障したヒーターを直しに来た修理技師は喋るのが好きな人だった。
初めて会う人なのになかなか気兼ねがなく、この仕事が好きな理由、たまに会うクレーマーの話、今週末に家族旅行に行くということまでささやかに話す姿は本当に楽しそうだった。
そうしているうちに話の話題が俺たちに移ってきて、3年も一緒に暮らしているなんて、仲深く見えて羨ましい」って言った。
3年間一緒に暮らしたことも、仲が深いことも全て事実だから否定する理由はなかった。
そこで終わったら、ただ不思議で面白い人として思い出せたのに、一言が多かった。
「友達と一緒に住むと楽しいですが、家に恋人を連れてきて遊ぶのは難しそうですね。」
その一言で私たちの関係は勝手に友情になり、それが普通の視線だった。
二度と会わない人だから、ただ笑って済まそうつもりだった。 いつものように。
「…友達じゃないです。 彼氏です。」
修理技師は気づかなかっただろうが、私はその時、普段より1トーン高いナオの声も、微細な震えも感じられた。
本当に近いと思う関係でなければ明らかにすることを避けてきたナオが初めて会うる人に俺たちと自身を表わしたのは、3年間ナオを見守ってきた俺も全く予想できなかったことだった。
修理技師はしばらく黙ってから、あ··· という反応を示すだけで、
以前まで身軽だった姿はどこに行ったのか何も言わずに作業を終えた後、形式的な案内をして帰ってきた。
きっとナオはその言葉を消化できず、食もたれしたのだろう。
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浴槽の外から手を伸ばしてナオの髪を洗う。 前にレモンの香りのシャンプーを使うと、いつもよりすっきりする感じだと言ってた。
指先に少し力を入れながらも柔らかく、頭皮をマッサージしながら話す。
「たとえ俺たちが友情の形で会ったとしても、ナオのことが大好きだろうと思う」
今度は小さくもうなずいてくれる。 視線は相変わらず青いお風呂に向かったまま。
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大きなバスタオルを全身に巻き、濡れた足の裏でドア前のマットを踏む。
憂鬱は水溶性だから、水で洗い流せると言ったか。 確かに少しはすっきりしたようだ。
先に洗って出かけたニカは、俺を待つうちに眠ってしまったのか、ソファにもたれかかったまま寝ている。
じっと眠っている明るい髪をなでて、そのまま髪の毛の端まで撫でると少し濡れている。 乾かして寝ろって言ったのに。
ねえ、ニカ。
俺はニカに初めて会ったその日も、君と友達でいたいとは思わなかったよ。
最初から俺はずっと···。
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