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ネコとバレンタイン
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2月になると寒さも一段と和らいだ。
相変わらず息は出るが、もう寒さに体が縮こまることもなくなり、マフラーを巻く必要のない天気になった。
夏休みだからといって家でドラマばかり観る生活も一週間経つと少し飽きてきた。ずっとゴロゴロしていたからか体もだるい感じがして、カメラのカバンを取って家を出た。
晴れてはないけど、だからといってそれほど曇ってもいない曖昧な空。 もう冬から春に変わる曖昧な時期であることを表しているようだった。
ニカが好きなカフェを通り過ぎ、
二人で時々散歩に出かける公園を過ぎると、
それぞれの店が集まっている路地にたどり着く。
「今日はいないのか…。」
この町にはニカに似た野良猫がいる。
普通の猫のように澄まし顔をしといて、近づくと「ニャー」と知ったかぶりをしてくれるし、親しくふるまう黄色い猫。
特に名前はつけていないからネコと呼んでいる。
今日はせっかくカメラも持ってきたし、チュールも持って来たから必ず会うことを願ったけど、ネコとはいくら仲良くなっても待ち合わせをすることができないのはちょっと残念だ。
猫に会うのは諦めて、路地の隅々の店を通り過ぎながら写真を残す他の被写体を探すことにした。
ショコラティエが運営するという小さなチョコレートカフェの前のボードを見ると、すでにバレンタインデーのイベントをしているようだった。
そういえばもうすぐバレンタインデーだ。
去年はニカがどっからチョコレートの噴水を借りてきて、二人で果物やマシュマロに飽きるまでチョコレートをつけて食べた。 その噴水がまたすごかったのは、まだ肌寒い2月の天気に窓を開けておいて換気をさせても一日中家の中のチョコレートの香りは抜けず、しばらくチョコレートという文字だけ見ても飽きる感じがした。
今考えてみてもあの噴水を持ってくる考えはどうやって思いついたのか、いったいどこで手に入れてきたのかが予想も付かない。 でもそのおかげで一生忘れられないバレンタインデーを過ごすことはできたとも思う。
今年は何をしながら過ごすか悩んでいたところ、嬉しくて黄色い形がカフェの前を通り過ぎることに気づいた。
「ネコ!」と呼ぶと、「ニャー」と答えてくれることに感心した。
丸い頭から尻尾の直前までそっと撫でる内、今日はチュールを持ってきたのが思い出し、素早く剥いて猫に差し出した。
「おいしいでしょう?」
小さな舌を忙しく動かす奴を見ていると、やっぱり持ってきて良かったという気がした。 食べ終わった後には満足したのか、横になって左右にゴロゴロし始める。
その姿を撮ろうとカメラを持ち上げ、焦点を合わせてシャッターを押そうとしたところだった。
「ナオ!ここで何してるの?」
うちの黄色い猫がどこからか現れた。
「ニカこそなんでそこから出てくるの?」
「え…?」
どう答えればいいのか分からないという顔で、間抜けな声を出すニカのことがなんかちょっと面白くて笑いが出た。
-
ニカと繋いだ手を気持ちよく前後に振りながら家に帰る。
「今年のバレンタインデーになんかやりたいことってある?」
「ふーん。とにかくチョコレートの噴水はダメだと思う…。」
「それは俺もそう思ってるよ。」
去年の噴水事件を思い出しながら、今年はどう過ごすかニカと悩んでみる。
実はただチョコレートだけ食べてもいいと思っている。 記念になる写真でも何枚か撮って··· ちょっと待って、
「ああ、ネコ···!」
相変わらず息は出るが、もう寒さに体が縮こまることもなくなり、マフラーを巻く必要のない天気になった。
夏休みだからといって家でドラマばかり観る生活も一週間経つと少し飽きてきた。ずっとゴロゴロしていたからか体もだるい感じがして、カメラのカバンを取って家を出た。
晴れてはないけど、だからといってそれほど曇ってもいない曖昧な空。 もう冬から春に変わる曖昧な時期であることを表しているようだった。
ニカが好きなカフェを通り過ぎ、
二人で時々散歩に出かける公園を過ぎると、
それぞれの店が集まっている路地にたどり着く。
「今日はいないのか…。」
この町にはニカに似た野良猫がいる。
普通の猫のように澄まし顔をしといて、近づくと「ニャー」と知ったかぶりをしてくれるし、親しくふるまう黄色い猫。
特に名前はつけていないからネコと呼んでいる。
今日はせっかくカメラも持ってきたし、チュールも持って来たから必ず会うことを願ったけど、ネコとはいくら仲良くなっても待ち合わせをすることができないのはちょっと残念だ。
猫に会うのは諦めて、路地の隅々の店を通り過ぎながら写真を残す他の被写体を探すことにした。
ショコラティエが運営するという小さなチョコレートカフェの前のボードを見ると、すでにバレンタインデーのイベントをしているようだった。
そういえばもうすぐバレンタインデーだ。
去年はニカがどっからチョコレートの噴水を借りてきて、二人で果物やマシュマロに飽きるまでチョコレートをつけて食べた。 その噴水がまたすごかったのは、まだ肌寒い2月の天気に窓を開けておいて換気をさせても一日中家の中のチョコレートの香りは抜けず、しばらくチョコレートという文字だけ見ても飽きる感じがした。
今考えてみてもあの噴水を持ってくる考えはどうやって思いついたのか、いったいどこで手に入れてきたのかが予想も付かない。 でもそのおかげで一生忘れられないバレンタインデーを過ごすことはできたとも思う。
今年は何をしながら過ごすか悩んでいたところ、嬉しくて黄色い形がカフェの前を通り過ぎることに気づいた。
「ネコ!」と呼ぶと、「ニャー」と答えてくれることに感心した。
丸い頭から尻尾の直前までそっと撫でる内、今日はチュールを持ってきたのが思い出し、素早く剥いて猫に差し出した。
「おいしいでしょう?」
小さな舌を忙しく動かす奴を見ていると、やっぱり持ってきて良かったという気がした。 食べ終わった後には満足したのか、横になって左右にゴロゴロし始める。
その姿を撮ろうとカメラを持ち上げ、焦点を合わせてシャッターを押そうとしたところだった。
「ナオ!ここで何してるの?」
うちの黄色い猫がどこからか現れた。
「ニカこそなんでそこから出てくるの?」
「え…?」
どう答えればいいのか分からないという顔で、間抜けな声を出すニカのことがなんかちょっと面白くて笑いが出た。
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ニカと繋いだ手を気持ちよく前後に振りながら家に帰る。
「今年のバレンタインデーになんかやりたいことってある?」
「ふーん。とにかくチョコレートの噴水はダメだと思う…。」
「それは俺もそう思ってるよ。」
去年の噴水事件を思い出しながら、今年はどう過ごすかニカと悩んでみる。
実はただチョコレートだけ食べてもいいと思っている。 記念になる写真でも何枚か撮って··· ちょっと待って、
「ああ、ネコ···!」
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