ふしぎな街

森 go太

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case1

ラヴドール・ラプソディ 前編

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 この街では、ちょっとだけ不思議なことが起こる。それは確かに、科学では証明できないことーーしかし怪奇現象と呼ぶには少し弱いーーそんな程度の不思議。
 しかしそんな程度の不思議だからこそ、今日も誰かが飲み込まれる。
 少しの非日常は、日常の隙間を埋めるのに最も都合が良いから。



 《case1:ラヴドール・ラプソディ》



 ーーたすけて。

 ゴミ捨て場から、そう声が聞こえた気がした。
 助けなんて、誰にも求められない人生だった。
 僕のような醜男の優しさは余計なお世話なのだと、小学生の頃に気付いた。
 だから誰とも関わらずに、独りで生きてきたーー
 なのに。

 「はッ…はッ…」
 僕は気付いた時には、ゴミ袋を掻き分けていた。
 甘ったるい腐臭が鼻孔をつくが、気にならなかった。それほどまでに夢中だった。
 こんな醜い僕でも、本当は誰かに必要とされたかったからーー

 「はッ…」
 ゴミ袋を掻き分けた先ーー
 そこには麗しい女性がいてーー
 その翡翠の瞳に、僕は一瞬にして虜になってしまった。

 「………。」
 僕は無言で彼女を抱えた。
 彼女は嫌がる素振りを全く見せなかった。ただ無抵抗で、僕に華奢な身体を委ねてくれた。

 運命だと思った。
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