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『人間と関わるな』
それは律が幼い頃から、養父に言い聞かされた言葉である。
何故、今そんなことを思い出すのかといえば。
山中を流れる川。その川縁に倒れた男を見つけたからであった。
律は草木の影から目を凝らす。
(また死体か?)
しばらく様子を伺っていたが、男はぴくりともしない。
最近、やたらとこの辺りに人間の死体が流れ着くので、きっと今回もそうに違いない。
律は持っていた水桶を河原に置くと、ゆっくりと男に近づき、その顔を覗き込んだ。
(角はないか)
ということは、やはり人間である。
その時、男の手がぴくりと動いた。
「!」
おもわず、後ろに飛び跳ねる。
(まだ生きてる)
養父以外の人を見るのはこれが初めてのことで、律の瞳が好奇心に満ちる。
とはいえ、今はまだ冬があけたばかり。
昼間であっても山の気温は低く、川の水は凍えるような冷たさだ。その証拠に男の顔は真っ青だった。
(放っておけば死んでしまう)
言いつけは守るべきだと頭ではわかっている。
だが、見捨てるのはあまりにも夢見が悪い。
それに養父といえば、旅に出ると言ってここ数年家に帰ってきていない。きっと今日もそうだろう。
(よし、決めた)
律は、自分の背丈よりも大きな男を軽々担ぐと、我が家へと足を向けるのだった。
それは律が幼い頃から、養父に言い聞かされた言葉である。
何故、今そんなことを思い出すのかといえば。
山中を流れる川。その川縁に倒れた男を見つけたからであった。
律は草木の影から目を凝らす。
(また死体か?)
しばらく様子を伺っていたが、男はぴくりともしない。
最近、やたらとこの辺りに人間の死体が流れ着くので、きっと今回もそうに違いない。
律は持っていた水桶を河原に置くと、ゆっくりと男に近づき、その顔を覗き込んだ。
(角はないか)
ということは、やはり人間である。
その時、男の手がぴくりと動いた。
「!」
おもわず、後ろに飛び跳ねる。
(まだ生きてる)
養父以外の人を見るのはこれが初めてのことで、律の瞳が好奇心に満ちる。
とはいえ、今はまだ冬があけたばかり。
昼間であっても山の気温は低く、川の水は凍えるような冷たさだ。その証拠に男の顔は真っ青だった。
(放っておけば死んでしまう)
言いつけは守るべきだと頭ではわかっている。
だが、見捨てるのはあまりにも夢見が悪い。
それに養父といえば、旅に出ると言ってここ数年家に帰ってきていない。きっと今日もそうだろう。
(よし、決めた)
律は、自分の背丈よりも大きな男を軽々担ぐと、我が家へと足を向けるのだった。
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