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策謀の王都
食後の語らい
今日、ここに配属されてから、初めてゆっくりできたわ。
ラムスンさんと一緒に頂いたお夕飯。 美味しかった。 シチューも、なかなか美味でしたものね。 お腹も膨れたし、お茶してたの。 タンブラーにたっぷりの、薬草茶。 おばば様直伝のモノよ♪
まだまだ、猜疑心を剥き出しにしながらも、敵意は無くなったラムスンさん。 彼にも、この美味しいお茶を振舞ってあげたわ。
「……旨いな」
「おばば様の直伝だもの。 美味しくない筈はないわ。 ところで…… ちょっとお話を伺いたいの」
「……なんだ」
「今日みたいな事って、度々あるの?」
「……奴隷だからな」
「食事も…… あんな感じなの?」
「……奴隷だからな」
「寝床だって、着るモノだって…… 酷くない?」
「……奴隷だからな」
「もう! そうじゃなくて! 貴方はどう思うっているのかって事よ。 貴方に打ち込まれた 「奴隷紋」 が、行動と感情を制限して、制限を超える動きをしたら、【電撃】が与えられるのは、知ってる。 でも、制限内だったら、何を思っても、どう行動しても、問題は無いはずよね」
「だから、ここにいる。 この十三号棟にな」
「えっ?」
「ここは、反抗的な奴隷が入れられる場所。 同じように捕まった仲間たちは、早々に心が折れて、従順な飼い猫になった。 もっと条件のいい場所に居るんだろうな。 俺は…… 嫌だったんだ。 人族に媚び諂って生きる事にな」
「……それが、あなたの在り方なの?」
「お前が傷つけようとした、俺の矜持だ。 森の民、ジュバリアン王国の民の末裔たる、俺の矜持だ。 爺さん、父さんから伝え聞かされた話がある。 その伝説を、俺は信じている。 その伝説はきっと本当の事を言っていると信じているんだ」
「その…… 伝説って?」
「森の破壊と再生の伝説さ。 皆は童話だと笑うがな。 遠く昔にも、森が焼かれ穢れ果てた時代があった。 森の民の真摯な願いもむなしく、穢れた大地が残った森を侵食して行く。 神様と精霊様にも「森の再生」の願いは、聞き入れてもらえなかった、そんな時代があった」
森を焼き、穢れた大地が森を駆逐する…… 今の北の荒地と同じね。 フンフン、それで?
「荒野に一人の魔術師が降り立った。 男か女かわからない。 でも、魔術師には違いなかった。 荒れ果て穢れた大地を大いに憂い、渾身の力を籠め、一つの魔法を放った。 寸土…… ほんの狭い地面から、瘴気が抜けた。 穢れた土地が浄化された。 人の子の力では、それが限界…… 魔力を使い放たした魔術師は、懐から一粒の種を取り出し、その浄化された地面に植えた。 最後に残る魔力を使って水を注ぎ、そして、その場で死んだ」
何となく、その魔術師さんの気持ちがわかるのは、何でだろう? 荒野に緑を再生させるのは至難の業。 たった一粒の種は…… 容易には大きくならない。 だから、その種の側に倒れた…… 自らが、その種の揺り籠に成る為に…… そんな気がしたの。
「水と、魔術師の身体は、その種を眠りから覚まさせ、育み、そして、樹に成長させた。 それが、エント族 樹人パエシア一族の始まり。 大森林ジュノーの聖域の誕生聖話だ。 ただしな、これには補足的な話が付いて回る」
「補足的?」
「”そのもの緑の大地を踏みしめる者。 生きとし生けるの者に慈愛の心を捧げる者。 夜空の月光から織られた髪、昼の紺碧の空の様な瞳を持ちしその魔術師。 その到来を望むなら、神と精霊に真摯な祈りを、森の民の矜持をもって捧げるべし……” だ。 あの北の荒野を、森に戻してくれるのならば、俺は…… それが、たとえ人族であっても…… 森の民の矜持を持って、仕えるつもりだ。 いまだ、そのような者に逢った事はないがな。 伝説は明確に魔術師という。 魔族は魔法を使う者を魔導士と呼ぶ。 だから、人族か亜人族にしかいない。 でも、亜人族には、魔術師が極端に少ない。 魔力を扱う能力が、体を使う能力に比べて、圧倒的に少ないからな」
「だから…… 人族の魔術師なんだ」
「エルフ族に居るかもしれない。 こんなところに捕まっていては、なにも出来ないがな」
そっか。 ラムソンさん、その魔術師を探しているのか…… 伝説の魔術師。 私もあってみたいなぁ~ ラムソンさんの望みを叶えるためには…… ラムソンさんをここから出してあげなければならないのよね。 そうね…… どうしようかしら? 時間はあるだろうし、ちょっと色々と考えてみたなぁ~ ふと、疑問が湧いた。 思いついたことを聞いてみようかな。
「ラムソンさん、その魔術師…… 死んじゃってからは何もないの?」
「…………いや。 ある」
「伝説に?」
「ああ…… 魔術師は肉体をパエシア一族に捧げ友誼を結んだ。 それは、強く結びつき、霊体となっても魔術師はパエシア一族と共にあった。 そう言い伝えられている」
「そうなんだ。 パエシア一族が生きている限り、その魔術師さんは、ずっと共にあるって事ね」
「そうだ。 ただ、一族が消えれば…… 聖域が侵され、彼らが連環の理の向こう側に、旅立てば、かの魔術師ももうこの世には、存在し得なくなる。 かの者の魂は、強き肉体に生まれ変わり、そして……彼らを呼び戻す。 そう言い伝えにはある。 だから、俺は探したいんだ。 その魔術師を。 パエシア一族は、獅子王によって、焼かれそして、誰一人として残らなかった。 お前の中から出て来たパエシア一族の霊体は、魔法の杖の中に居る残滓だろ? パエシア一族の誰か枝を使った杖なら、俺に語り掛けて来たと理解できる。 森の民は……ジュバリアン王国の民は、皆等しく聖域の守護者だからな。 ……しかし、驚いた」
「そ、そうなんだ…… 確かに……わたしの持っている魔法の杖は…… そうね」
「とても貴重なモノだ。 大切に扱え。 他の人族には云うな。 見せるのもダメだ。 失われた一族の枝を使った魔法の杖…… 世界中の魔術師が狙う」
「……そうね。 わかったわ」
まぁ、予想してたけれど、シュトカーナを振り出すのは、絶対にやめようと思ったの。 相当に大変なモノを、おばば様は、私に授けて下さったんだと、改めて思ったわ。 おばば様…… ありがとうございます。
まったりとした時間が過ぎ、そろそろ、眠くなってきたの。 魔力を沢山使ったから、なんとなく怠いし。 お風呂入って眠ろうかな。 【施錠】はしたから、安全は確保できているだろうし、ラムソンさんがどうのこうのする事はなさそうだしね。
クンクン…… なんか、饐えた匂いがするね。
…………ラムソンさんからだね。 そういえば、お風呂どうするんだろ?
「ラムソンさん、もう一つ、ここについてですが、ご質問があります」
「なんだ?」
「お風呂は? 水浴びでもいいんですが……」
「無い。 そんなモノ、此処には、何処にも無い」
えぇぇぇぇぇ!!!! なんで無いの!!!
イヤァァァ!!!!
お風呂入って寝ようと思ってたのに~~~~!!!!
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