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本編
Girls side23話~睦月の困惑~
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今日は本格的に暇になった。
昨夜大輝に抱かれて、わかっていたことだが睦月が処女だったことを確認し、大輝を散々悦ばせて私もひーひー言わされて。
大輝があっち方面でかなりの成長をしていることを確認できた。
だが、今日はおそらく大輝と望月さんがデートに行くはずだった。
まだ約束はしていないと思うが、時間の問題だろう。
学校が終わって大輝から連絡がきて、それが確信に変わる。
こんなことなら、前もって大輝のアレをマシンガン仕様にでもしといてあげるんだった。
……いや、そんなことしたら大輝は怒り狂って、今度は私を激しく……それもいいかもしれない。
部屋に戻って、私は簡単に家族の遺品の整理をすることにした。
桜子から連絡があり、こっちにきていいかと言うので了承する。
遺品の整理を手伝ってくれるというので、こちらとしても願ってもない話だった。
女三人で会うのも悪くない。
「きたよー!」
桜子がインターホンに向かって叫んでいるのを、明日香が恥ずかしそうに嗜める。
軽く笑ってドアを開け、二人を招きいれた。
「ごめんなさいね、突然。邪魔じゃなかった?」
「大丈夫だよ。柏木さんはいいの?」
「今日は大輝くんと望月がデートだから、それを伝えたら、今日は一人で過ごすって言ってたわ」
正直に伝えたのか、やるなぁ。
睦月になってからはまだ柏木さんに会ってないが、会うのはちょっと楽しみだ。
今回の大輝の成長……あっちもこっちも、精神的にも。
それらに欠かせない、重要人物だ。
柏木さんの存在なしに、今の大輝はあり得ないとさえ言える。
三人で、まず両親の部屋から整理を始める。
二人は部屋に入る前に一度、手を合わせた。
一応私もそれに倣っておく。
必要そうな書類関係はまとめてダンボールに入れ、衣類はとりあえずそのままにしておく。
何かのときに使えるかもしれないし。
「これ、家族写真だね」
桜子がなにやら見つけたらしく、私たちに見せてくる。
四人の家族が、何処か旅行でも行ったのだろうか。
睦月は言うまでもなく真っ黒な装いで、カメラからは視線を外している。
弟は至って普通の格好をしている。
父親は母親と弟の肩に手を載せ、母親は弟の肩に手を……ん?
「この写真……」
「どうかしたの?」
「睦月だけ、何かハブられてない?」
「……そう見えなくもないけど、反抗期とかそういうのもあるんじゃない?」
反抗期……中二病だったということもあるのか、ハブられてるのとは違う……のか?
「何か、睦月と他の家族に距離みたいなのがあるっていうか…」
私は何となくその違和感を拭いきれなかった。
「ねぇ、そういえば」
明日香が口を開く。
「睦月って確か姫沢さんと誕生日が同じだったのよね?」
「そうだね……ん?」
頭の中で、何かが形作られる。
もしかして、睦月は所謂養子だったのではないか。
先日もらった戸籍謄本、何処にやったっけ。
「ちょっと待ってて」
二人を残し、両親の部屋を出る。
確か、この辺に……。
睦月の部屋で机を漁る。
何枚かの書類の中から、叔父さんが送ってくれた戸籍謄本は、出てきた。
「ちょっときて、二人とも」
そこに書かれている内容。
私の考えが正しかったことを表してくれている。
「養子……」
「ってことは、睦月だけ血が繋がってない家族だったってこと?」
「そうなるんじゃないかしら」
だとしたら、あの写真の様子も少し納得がいく。
何らかの要因によって、睦月がその事実を知っていたという可能性は高い。
「もし姫沢さんと睦月が双子だったとして……だとしたら、姫沢さんの両親はどうして睦月を養子に出したのかしら」
そこなんだよね。
理由がいまいちわからない。
ただ、これだけ似た容姿をしていて、誕生日も同じで他人です、っていうのはいささか無理がある。
私はそう思い始めていた。
それからまた少し片付けが進んで、不要そうなものは大体揃った。
「ねぇ睦月、これ……」
明日香が何か見つけたのか、私を呼ぶ。
ゴミ袋を縛っていた桜子も手を止めて明日香の下へ。
「姫沢……春喜?パパじゃん」
「やぱりそうよね?じゃあやっぱり……」
「ほぼ確定でしょ、これ」
決め付けるのは早計だが、疑う要素はもうほぼない。
明日香が見つけたメモ紙に書かれていたのはパパの連絡先の様だが、かなり古いものだと推測される。
「だとすると、あとはいつ行くか、だよね」
「私の素性も明かさないといけなくなるか。あんまり知られない様にしときたかったけど……」
「さすがに避けて通れるものでもなさそうね」
「まぁほら睦月もそうだけど、ご両親も隠し事してたわけだし。お互い様ってことで……ねぇ?」
「そう簡単に行くものかしら……」
「んー…とりあえず、片付けよっか。今考えても仕方ないし。パパたちのところに行く理由は、これではっきりしたからね」
証拠になるものは大体揃った。
あのパパやママが、すっとぼけるとも思えない。
その時がきたら、私も全てをあの両親に語ろう。
そして弟の部屋に入る。
元々荷物はそんなに多くなく、学校のプリントやら教科書の類がほとんど。
あれ、そういえば……。
「弟さんって、友達いなかったのかしら」
私が思ったことを、明日香が代弁してくれる。
これまで一度も、弟の関係者というか友達は尋ねてきたことがなかった。
何でだろうか。
「この辺のことはもしかしたら、あの子が教えてくれるかもしれない」
「あの子?」
「神界の親友って言うのかな。ちょっと待ってね」
私は意識を少しだけ、集中させる。
「ノルン、聞こえてるよね?」
「ノルン?」
「って……北欧神話に出てくる、運命の女神の名前じゃなかったかしら……」
「どしたのスルーズ?」
ノルンの声が響いてきた。
「ちょっとさ、聞きたいことあるんだけどいい?」
「構わないけど……その子たちにも私の声聞かせて大丈夫なの?」
「もう大体知ってるから」
「まぁ、今のところ特に問題になってる様子もないし、大丈夫か。じゃあちょっとそっち行くよ」
そう言うのと同時に、ノルンがこの部屋に姿を現した。
「い!?」
桜子がその姿を見て驚きの声を上げる。
「この人が……ノルン……」
「明日香、よく知ってたね」
「お二人とも、様子は時々拝見してたよ。私はノルン。運命の女神だけど、今は観測者のサポートみたいなことやってます。よろしくね」
あまりにもあっけらかんとした様子に、二人は呆気にとられていた。
「ノルン、睦月の弟についてなんだけど、何か知ってることない?」
「弟くんかぁ……そうだねぇ、私が見た限りの話だから少し偏見混じるよ?」
「それでもいいので、教えてもらえませんか?」
「わかった。まず、弟くんは……というより椎名家は、って言った方がいいか。少し変わった家だったみたい」
それは何となく察していた。
いくらなんでも、家族の関係者が誰も葬儀の後になっても現れないというのはおかしい。
「どうも、近所付き合いというか人間関係をほとんど断絶した状態で生活してた節があってね」
これはまた常軌を逸した家族だと思わざるを得ない。
「理由とかきっかけはわからない。そこまで遡ってみることが出来ないから。けど、そのせいもあって睦月や弟くんは、人間関係でかなり苦労してたっぽい」
「ふむ……」
「弟くんに友達がいないっぽい、って思ったんだよね?多分その認識で合ってる。その原因は、この家の両親だね」
「弟さんに、人付き合いを許さなかったとか?」
「どっちかっていうと、寄ってくる人間を片っ端から排除してった、みたいなイメージかな」
「弟には手を汚させず、両親が盾になってた、ってとこか」
理由が不明である以上、これ以上の情報は出てこないか。
家族の誰一人、関係者が現れなかった理由そのものは合点がいった。
そういえば隣のおばちゃんも葬儀の前日に会って以降遭遇してすらいない様な。
「他に聞きたいことはないかな?」
ノルンが私たちを見回して言う。
私はとりあえずないが、明日香は少し考えている。
「あの、一ついいですか?」
桜子が口を開く。
ちょっと嫌な予感。
「野口桜子さん、だったっけ。どうぞどうぞ」
「ノルンさんは、こっちのスルーズさんみたいに彼氏とか作ったりしないんですか?」
「あっ……」
思わず声が漏れた。
「…………」
ノルンは黙り込んで、少し震えている。
桜子……いきなり地雷を踏み抜くなんて……恐ろしい子っ!
「あ、あれ……?どうか……しました?私、聞いちゃいけないこと聞いちゃったかな…」
「い、いいんだよ…子どもの言うことだし……」
わなわなと肩を震わせながら、俯いて言うノルン。
「で、出来ないんじゃなくて、作らないだけだから!私ほら、忙しいし!?か、彼氏とか作ってる暇ないっていうか!?」
後半は涙目の涙声になってた。
桜子がやらかした、という顔になって黙る。
「さ、桜子……謝っておいた方がいいんじゃない?」
「そ、そうだよね。あの、ノルンさん、すみませんでした。つい私ってば突っ込んだことを……」
「ふ、ふふ、大丈夫……同情なんかいらないから……」
「あ、そ、そうだ、今度大輝くん紹介しましょうか?」
「桜子!?」
つい私も慌ててしまう。
神が二人も、一人の男にくっつくなんてこと……いやダメって決まってはないけど……。
「ほ、本当?」
ノルンが食いつく。
あー……こりゃあとでやっぱなしとか言える雰囲気じゃなくなった。
まさかここで本人不在のまま神の相手をすることが決まってしまうなんて、大輝も想像すらしていなかっただろう。
「ねぇスルーズ、本当に紹介してくれる?」
「あー……まぁ、こうなったら仕方ない……」
「いいの?」
「止むを得ないでしょ」
もうここまできたらなる様にしかならないだろう。
「ノルン、仕事は手放しでも出来るの?遠隔とか?」
「出来るよ。非常事態とかになったらすぐ対応できる様にもなってるし。今も現にほぼオート状態だから」
なるほど、だからこないだ買い物行ってたわけね。
「まぁ、ノルンのことは何とかしてあげたいって常々思ってたから……安直な方法だとは思うけど、大輝に頼ろうか」
ノルンは直接会話したことはないはずだけど、ちょっと楽しみにしているみたいだった。
明日香はやや複雑そうな顔をしているものの、異を唱えることはなかった。
私はもっと複雑なんだけど。
そのあと、少し片付けてノルンは神界に帰っていった。
とてもウキウキした様子になっていて、先ほどの悲壮感は何処にもない。
明日香も、明日朝が早いとかで先に帰り、桜子は晩御飯を食べて帰宅していった。
ああ、大輝に何て説明しよう……。
昨夜大輝に抱かれて、わかっていたことだが睦月が処女だったことを確認し、大輝を散々悦ばせて私もひーひー言わされて。
大輝があっち方面でかなりの成長をしていることを確認できた。
だが、今日はおそらく大輝と望月さんがデートに行くはずだった。
まだ約束はしていないと思うが、時間の問題だろう。
学校が終わって大輝から連絡がきて、それが確信に変わる。
こんなことなら、前もって大輝のアレをマシンガン仕様にでもしといてあげるんだった。
……いや、そんなことしたら大輝は怒り狂って、今度は私を激しく……それもいいかもしれない。
部屋に戻って、私は簡単に家族の遺品の整理をすることにした。
桜子から連絡があり、こっちにきていいかと言うので了承する。
遺品の整理を手伝ってくれるというので、こちらとしても願ってもない話だった。
女三人で会うのも悪くない。
「きたよー!」
桜子がインターホンに向かって叫んでいるのを、明日香が恥ずかしそうに嗜める。
軽く笑ってドアを開け、二人を招きいれた。
「ごめんなさいね、突然。邪魔じゃなかった?」
「大丈夫だよ。柏木さんはいいの?」
「今日は大輝くんと望月がデートだから、それを伝えたら、今日は一人で過ごすって言ってたわ」
正直に伝えたのか、やるなぁ。
睦月になってからはまだ柏木さんに会ってないが、会うのはちょっと楽しみだ。
今回の大輝の成長……あっちもこっちも、精神的にも。
それらに欠かせない、重要人物だ。
柏木さんの存在なしに、今の大輝はあり得ないとさえ言える。
三人で、まず両親の部屋から整理を始める。
二人は部屋に入る前に一度、手を合わせた。
一応私もそれに倣っておく。
必要そうな書類関係はまとめてダンボールに入れ、衣類はとりあえずそのままにしておく。
何かのときに使えるかもしれないし。
「これ、家族写真だね」
桜子がなにやら見つけたらしく、私たちに見せてくる。
四人の家族が、何処か旅行でも行ったのだろうか。
睦月は言うまでもなく真っ黒な装いで、カメラからは視線を外している。
弟は至って普通の格好をしている。
父親は母親と弟の肩に手を載せ、母親は弟の肩に手を……ん?
「この写真……」
「どうかしたの?」
「睦月だけ、何かハブられてない?」
「……そう見えなくもないけど、反抗期とかそういうのもあるんじゃない?」
反抗期……中二病だったということもあるのか、ハブられてるのとは違う……のか?
「何か、睦月と他の家族に距離みたいなのがあるっていうか…」
私は何となくその違和感を拭いきれなかった。
「ねぇ、そういえば」
明日香が口を開く。
「睦月って確か姫沢さんと誕生日が同じだったのよね?」
「そうだね……ん?」
頭の中で、何かが形作られる。
もしかして、睦月は所謂養子だったのではないか。
先日もらった戸籍謄本、何処にやったっけ。
「ちょっと待ってて」
二人を残し、両親の部屋を出る。
確か、この辺に……。
睦月の部屋で机を漁る。
何枚かの書類の中から、叔父さんが送ってくれた戸籍謄本は、出てきた。
「ちょっときて、二人とも」
そこに書かれている内容。
私の考えが正しかったことを表してくれている。
「養子……」
「ってことは、睦月だけ血が繋がってない家族だったってこと?」
「そうなるんじゃないかしら」
だとしたら、あの写真の様子も少し納得がいく。
何らかの要因によって、睦月がその事実を知っていたという可能性は高い。
「もし姫沢さんと睦月が双子だったとして……だとしたら、姫沢さんの両親はどうして睦月を養子に出したのかしら」
そこなんだよね。
理由がいまいちわからない。
ただ、これだけ似た容姿をしていて、誕生日も同じで他人です、っていうのはいささか無理がある。
私はそう思い始めていた。
それからまた少し片付けが進んで、不要そうなものは大体揃った。
「ねぇ睦月、これ……」
明日香が何か見つけたのか、私を呼ぶ。
ゴミ袋を縛っていた桜子も手を止めて明日香の下へ。
「姫沢……春喜?パパじゃん」
「やぱりそうよね?じゃあやっぱり……」
「ほぼ確定でしょ、これ」
決め付けるのは早計だが、疑う要素はもうほぼない。
明日香が見つけたメモ紙に書かれていたのはパパの連絡先の様だが、かなり古いものだと推測される。
「だとすると、あとはいつ行くか、だよね」
「私の素性も明かさないといけなくなるか。あんまり知られない様にしときたかったけど……」
「さすがに避けて通れるものでもなさそうね」
「まぁほら睦月もそうだけど、ご両親も隠し事してたわけだし。お互い様ってことで……ねぇ?」
「そう簡単に行くものかしら……」
「んー…とりあえず、片付けよっか。今考えても仕方ないし。パパたちのところに行く理由は、これではっきりしたからね」
証拠になるものは大体揃った。
あのパパやママが、すっとぼけるとも思えない。
その時がきたら、私も全てをあの両親に語ろう。
そして弟の部屋に入る。
元々荷物はそんなに多くなく、学校のプリントやら教科書の類がほとんど。
あれ、そういえば……。
「弟さんって、友達いなかったのかしら」
私が思ったことを、明日香が代弁してくれる。
これまで一度も、弟の関係者というか友達は尋ねてきたことがなかった。
何でだろうか。
「この辺のことはもしかしたら、あの子が教えてくれるかもしれない」
「あの子?」
「神界の親友って言うのかな。ちょっと待ってね」
私は意識を少しだけ、集中させる。
「ノルン、聞こえてるよね?」
「ノルン?」
「って……北欧神話に出てくる、運命の女神の名前じゃなかったかしら……」
「どしたのスルーズ?」
ノルンの声が響いてきた。
「ちょっとさ、聞きたいことあるんだけどいい?」
「構わないけど……その子たちにも私の声聞かせて大丈夫なの?」
「もう大体知ってるから」
「まぁ、今のところ特に問題になってる様子もないし、大丈夫か。じゃあちょっとそっち行くよ」
そう言うのと同時に、ノルンがこの部屋に姿を現した。
「い!?」
桜子がその姿を見て驚きの声を上げる。
「この人が……ノルン……」
「明日香、よく知ってたね」
「お二人とも、様子は時々拝見してたよ。私はノルン。運命の女神だけど、今は観測者のサポートみたいなことやってます。よろしくね」
あまりにもあっけらかんとした様子に、二人は呆気にとられていた。
「ノルン、睦月の弟についてなんだけど、何か知ってることない?」
「弟くんかぁ……そうだねぇ、私が見た限りの話だから少し偏見混じるよ?」
「それでもいいので、教えてもらえませんか?」
「わかった。まず、弟くんは……というより椎名家は、って言った方がいいか。少し変わった家だったみたい」
それは何となく察していた。
いくらなんでも、家族の関係者が誰も葬儀の後になっても現れないというのはおかしい。
「どうも、近所付き合いというか人間関係をほとんど断絶した状態で生活してた節があってね」
これはまた常軌を逸した家族だと思わざるを得ない。
「理由とかきっかけはわからない。そこまで遡ってみることが出来ないから。けど、そのせいもあって睦月や弟くんは、人間関係でかなり苦労してたっぽい」
「ふむ……」
「弟くんに友達がいないっぽい、って思ったんだよね?多分その認識で合ってる。その原因は、この家の両親だね」
「弟さんに、人付き合いを許さなかったとか?」
「どっちかっていうと、寄ってくる人間を片っ端から排除してった、みたいなイメージかな」
「弟には手を汚させず、両親が盾になってた、ってとこか」
理由が不明である以上、これ以上の情報は出てこないか。
家族の誰一人、関係者が現れなかった理由そのものは合点がいった。
そういえば隣のおばちゃんも葬儀の前日に会って以降遭遇してすらいない様な。
「他に聞きたいことはないかな?」
ノルンが私たちを見回して言う。
私はとりあえずないが、明日香は少し考えている。
「あの、一ついいですか?」
桜子が口を開く。
ちょっと嫌な予感。
「野口桜子さん、だったっけ。どうぞどうぞ」
「ノルンさんは、こっちのスルーズさんみたいに彼氏とか作ったりしないんですか?」
「あっ……」
思わず声が漏れた。
「…………」
ノルンは黙り込んで、少し震えている。
桜子……いきなり地雷を踏み抜くなんて……恐ろしい子っ!
「あ、あれ……?どうか……しました?私、聞いちゃいけないこと聞いちゃったかな…」
「い、いいんだよ…子どもの言うことだし……」
わなわなと肩を震わせながら、俯いて言うノルン。
「で、出来ないんじゃなくて、作らないだけだから!私ほら、忙しいし!?か、彼氏とか作ってる暇ないっていうか!?」
後半は涙目の涙声になってた。
桜子がやらかした、という顔になって黙る。
「さ、桜子……謝っておいた方がいいんじゃない?」
「そ、そうだよね。あの、ノルンさん、すみませんでした。つい私ってば突っ込んだことを……」
「ふ、ふふ、大丈夫……同情なんかいらないから……」
「あ、そ、そうだ、今度大輝くん紹介しましょうか?」
「桜子!?」
つい私も慌ててしまう。
神が二人も、一人の男にくっつくなんてこと……いやダメって決まってはないけど……。
「ほ、本当?」
ノルンが食いつく。
あー……こりゃあとでやっぱなしとか言える雰囲気じゃなくなった。
まさかここで本人不在のまま神の相手をすることが決まってしまうなんて、大輝も想像すらしていなかっただろう。
「ねぇスルーズ、本当に紹介してくれる?」
「あー……まぁ、こうなったら仕方ない……」
「いいの?」
「止むを得ないでしょ」
もうここまできたらなる様にしかならないだろう。
「ノルン、仕事は手放しでも出来るの?遠隔とか?」
「出来るよ。非常事態とかになったらすぐ対応できる様にもなってるし。今も現にほぼオート状態だから」
なるほど、だからこないだ買い物行ってたわけね。
「まぁ、ノルンのことは何とかしてあげたいって常々思ってたから……安直な方法だとは思うけど、大輝に頼ろうか」
ノルンは直接会話したことはないはずだけど、ちょっと楽しみにしているみたいだった。
明日香はやや複雑そうな顔をしているものの、異を唱えることはなかった。
私はもっと複雑なんだけど。
そのあと、少し片付けてノルンは神界に帰っていった。
とてもウキウキした様子になっていて、先ほどの悲壮感は何処にもない。
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