手の届く存在

スカーレット

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本編

大輝編29話~長い夜~

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「何か退屈じゃない?」

睦月がおもむろに言う。
こういうことを言い出す時、睦月は大体ロクでもないことを考えている。

「まぁ、暇だよね。ワイドショー見てても同じ様なニュースばっかりだし」

夏休みだからって、今は平日の昼間なんだから、そりゃ変わったニュースばかりってわけにもいかないだろう。
これ以上睦月が物騒なことを言い出さないうちに、俺は部屋を出ようとした。

「大輝、どこ行くの?」

こいつ、俺のことに関して敏感すぎんだろ……。
てか女同士で楽しくお喋りでもしといてくれ。
今度ロヴンさんと女子会やるの、知ってるんだからな。

「あー…何か飲み物でも買いに行こうかと」
「冷蔵庫に、一通りあるから。大輝の好きなのもあるはずだよ」
「あ、うん……」

俺の企みは見事に看破されてしまった様で、仕方なく冷蔵庫を開ける。
本当に用意周到で出来の良い彼女だ。
桜子はそんなやりとりを見てニヤニヤしていた。

「そういえばさ、大輝くんて常識人だよね」
「あ?何を今更……」
「だって、愛美さんとかみたいな言葉遣いあんまりしないし、下ネタもほとんど言わないし」
「ああ、そういえばそうかも。大輝から汚い言葉とか出てきたら、ちょっと興奮しちゃいそう」
「おい、それあたしのこと遠まわしにディスってないか?」
「相手が女の子だから敢えて言わない様にしてるってのはあるけどな。でもまぁ、確かにあんまり言わないかもしれない」
「ちょっと聞いてみたくない?」

朋美が悪乗りしてとんでもないことを言い出す。
睦月やノルンさんがいるところで、そんなこと言ったら……。

「じゃあ、ちょっと言わせてみようよ」

ほらきた。
しかもこいつらのことだから……。

「どうせだから、もう少し凝った感じにしたいね。普段とは正反対の態度しか取れない様にしちゃうとか。あ、でも意識だけ今のままとか面白そう」

やっぱりな。
俺がそんな態度、みんなに見せたら……しかも意識だけはあるって、どんな拷問だよ。
俺、みんなに殺されたりしないだろうか。

みんなの興が乗ってきたとのことで、俺は睦月とノルンさんから有無を言わさず力を行使される。
言葉を制限するってことは、言語中枢に直接作用させるんだと思うのだが……そんなことして大丈夫だろうか。
今後の人生に影響とか出なければ別に構わないのだが。

「大輝、今日は少し暇が出来たから寄ってみたぞ」

なんて間の悪さで現れるんだろう、この人。
今の状態でこの人と会話なんてしたら、この人引きこもったりしないだろうか。
みんなもやばい、という顔をしていたので、ロヴンさんは不思議な顔をして俺を見た。

「どうしたんだ?何か都合悪かったか?」

ど、どう答えればいいんだ。

「いや?暇でしたよ。こんなところまではるばる来れるなんて、相当暇なんですね。友達とかいないんですか?」
「えっ」
「そこに転がってる阿婆擦あばずれどもでさえ、友達(笑)とか言ってるのと遊びに出かけたりするのに」
「あば……」
「ずれ……」
「た、大輝……」

あ、これは俺死んだ。
もうわかる。
これは俺の死亡エンドへの序章だ。

「何て顔してるんですか。元々大したことない顔ですけど、本当、ブスいですよね」

俺の口は、俺が閉じようとしても閉じることはなく、勝手に言葉を紡いでいく。
そこに俺の意思などは介在しない。

「た、大輝、私のこと……そんな風に……」
「ああ、鬱陶しいから泣いたりとかやめてくださいね。泣けば済むと思ってる女とか本当に気持ち悪いんで」

ロヴンさんの目から光が消え、みんなの俺を見る目が冷ややかになった。
元はといえば睦月とノルンさん、それに朋美の悪乗りが原因じゃなかったか、これ。

「大輝、さすがに言いすぎ……」
「何言ってんだよこのサイコパスが。お前が悪乗りしたから、そこの蜘蛛の巣女がこうなったんだろうが」
「さ、サイコパス!?誰のことよ!!」
「自覚ねぇのかよ、本当めんどくせぇ女だな……」

ちょっと待て、これ力の調整間違ってないか?
もうただの悪口になりつつあるんだが……。

「あったまきた!!もういっぺん言ってみなさいよ!!」
「何だ、聞こえなかったのか?耳まで悪くなっちまったとはなぁ、サイコパスって大変なんだな」

ロヴンさんと朋美以外のメンバーの表情が引きつる。
朋美は俯いてプルプルしている。

「ほら、どうした?いつもみたいにガツンとやってみせろよ、ガツーンとよ?」

何で煽る様な事を……。
言ってるのも俺なんだが、もう生きてここを出られる自信はなかった。
睦月は自分に火の粉が飛んでこないので、我関せずと言った様子だ。

「おい、そこの駄女神。お前だよ、脳筋駄女神。何自分は関係ないみたいな顔してんの?」
「は……?私のこと……?……あっ」
「そーだよ、お前がかけた力のせいで今の惨状……がっ!?」

後ろから朋美にハンマーナックルをくらった俺は、気絶までいかないまでも目をチカチカさせながらよろけた。
これはさすがに効く……。

「大輝……遺言はそんなのでいいの?」
「待て朋美、落ち着け!!」

和歌さんが朋美を取り押さえにかかる。

「あら、関わっちゃって大丈夫なんですか?カマトト一号さん」
「か、カマトトだと!?」
「その歳まで男日照りが続いたから下ネタ一つ言えやしない、逆に恥ずかしい大人になっちゃったわけですし、ぴったりじゃないですか」

ああ、もうやめてくれ……。
和歌さんが顔真っ赤にしてわなわなしてる……。
ちなみに二号はきっとロヴンさんになるんだろうが、茫然自失といった様子で俺たちのやり取りなど目に入っていない。

どうやら今回のこの能力、俺の目に入った相手を罵倒していくものの様だ。
ならば見なければ大丈夫。

「おい、貧乳チビ」

でもなかった。

「それはどっちのことかな、大輝」

ニコニコしながらノルンさんが言う。
いや、目が完全に笑っていない。

「まさか、私のこと……?」

言いだしっぺの桜子だが、まさか自分が言われてここまで傷つくとは思っていなかったのだろう。
もう既に泣きそうだ。

「ま、どっちでもいいですよ、どっちも貧乳だし。考えてみたらうちはバラエティ豊かだなぁ」
「ほう、そりゃどういう意味なのか、教えてもらおうじゃねぇか」

やばい、愛美さんはやばい。
頼むから口を閉じろ、俺!!

「まず、脳筋駄女神に貧乳二人。サイコパスにカマトト二人。色魔しきまが一人。お堅い逆レイプ魔が一人」
「……色魔、ってのがあたしなんだな?」
「おー、さすがサイコパスと違って自覚はあるみたいですね」

ちなみに逆レイプ魔は桜子もだろう、なんて思ったがそれどころじゃない。
据わった目をして愛美さんが近寄ってくる。
なのに体は全然動いてくれない。

「逃げないのか、立派なことだ」
「逃げる必要はないでしょ。たかが色魔に何が出来る……ぶふぉ」

愛美さんに強烈なボディブロウを食らって、俺はそのまま意識を失った。


「……あれ。あー…いてて……あ、ちゃんと喋れる……」
「あ、目を覚ました」

俺は睦月の部屋で寝かされていた。
おそらく愛美さんはあの惨状を見ていられなかったのだろう。
気絶でもさせてその隙に力を解除させる、という様な考えだったのではないかと思う。

「大輝、女の子にブスとか言ったらダメだと思う」
「どの口がそれ言うんだ?言わせてたのはほとんどお前の能力だろうが……」

おかげでマジで死ぬかと思った。
みんなのあの目、表情。
トラウマになりそうだ。

「ところで、みんなは?」
「ロヴンは説明したら何とか。でも、ちょっとショックが強かったみたい。桜子は……なんか今牛乳買いに行ってる。朋美は宗教でも入ろうかな、とか言ってた」
「…………」
「明日香は、そこまで大輝を傷つけてたなんて、って落ち込んでて、和歌さんはネットで下ネタについて検索してる。愛美さんはもうお酒飲み始めてるね」
「そ、そうか……」

あれは別に俺の本音じゃなかったんだけどな。
おそらくは記憶に基づいて悪いとこだけオートでピックアップして悪意をもって喋らされるみたいな、そういうものだったんじゃないかと思う。

「あれ、大輝の本音じゃ……ないよね?」

睦月は少し沈んだ表情で俺に尋ねる。
こいつ、自分で仕掛けておいて……。
仕方ないやつだな。

「睦月……ほら」

俺は寝そべったまま、睦月に向かって両手を広げた。
はっとした顔になって一瞬フリーズした睦月だったが、俺の意図がわかったのか俺の胸に飛び込んでくる。

「本気であんなこと言ってたんだったら、こんなことしないだろ?」
「そうだよね、ごめん。辛かったよね、大輝の性格的に」
「ま、まぁ……辛くなかったって言ったら嘘になるか」

問題はみんなのケアだ。
全員に必要かはわからないが、できることはやっておく必要があるだろう。
みんなに会うのがちょっと……いやかなり怖いが、俺は睦月の頭を撫でて手を離し、起き上がった。

「ちょっと、みんなに会ってくる」
「あ、うん……気をつけて」

気をつけて?
どういう意味かわからないが、ますます不安が募る。

「おお、起きてきたか」

和歌さんが、パソコンから目を離して俺を見た。
その顔はかなり赤い。
何を見てるんです?なんていう質問は地雷だろう。

「あ、あの和歌さん、俺……」
「いいんだ……目の覚める思いだったよ。この歳にもなって下ネタの一つも言えないのは、確かに恥ずかしいからな」
「そ、そんなことないですって!和歌さんは十分魅力的で……」
「止めないでくれ、大輝。それよりこれを見てくれ。下ネタというのは奥が深いな。普段の会話に盛り込める下ネタなんて言うのも……」
「す、ストップ。俺、和歌さんから頻繁に下ネタなんか聞いたら卒倒しちゃうかもしれないから」
「そうか?私がもう少し胸が大きければ、パイズリなんて言うのも……」

ああ、もう手遅れだった。
その努力が何だか涙ぐましく感じて、俺は和歌さんの頭を撫でて、他のメンバーのところへ。

「あ、大輝くん……私……」
「あのな、明日香。俺、本当に気にしてないから」
「でも、私大輝くんに一生消えない傷を……」
「そんなものはないから。大丈夫だから。何ならあの時結構気持ちよかったから」
「えっ……大輝くん、ああいうプレイが好きになったの?」
「違う!でも、気に病むことないよってこと。いつもどおりにしててくれよ、じゃなきゃ調子狂うから」
「大輝くん……」

まだちょっと納得いかない様子の明日香にキスをして、俺は次のメンバーのところへ。

「あ、大輝……あのね、今からでも私、胸大きく出来るよ?」
「ノルンさん、あれは俺の本音ってわけじゃないんですよ。でも、あれはかなりの暴言だったと思うので、ごめんなさい」
「今のままでいいの?本当に?」
「いいんですって……そんなことに力使わないでください」
「私、大輝の為なら別にそれくらい苦だなんて思わないよ?」
「大丈夫ですって。俺はそのままのノルンさんが好きですよ」
「大輝がそういうなら……私も一緒になって悪ふざけが過ぎたよね。ごめんね」
「それこそ気にしないでください。俺は特に傷ついてませんから」

痛い思いはしたけどな、という言葉を飲み込んで、次のメンバーのところへ。

「あ……ろ、ロヴンさん」
「大輝……」

何だろう、明かりはちゃんとついてるのに、やたら暗く感じる。
かなり重傷の様だ。

「大輝、私みたいなブスに何十回も……あんなことさせられて迷惑だっただろう……」
「あの……ブスだなんて思ってないです、本当に」
「だって……」

ああ、何でこの人がこんな罪の意識持ってんの……。
一番の被害者はこの人なんじゃないだろうか。
せっかく会いにきてくれたのに開口一番罵詈雑言。
そりゃ心も折れるよな。

「ロヴンさん、聞いてください」
「…………」
「俺、ブスだなんて思ってないし、それどころか普通に綺麗だと思ってます。あんな状態だったから、何というか間が悪かったんですけど。ただ、仮にですよ?」
「…………」
「もし仮に、ロヴンさんがブスだったとしても、俺は同じことしてたと思います」
「正面切ってブスって言ってたっていうことか?」
「そっちじゃないですよ……」
「…………」

元々少しヒネたところがある人ではあったが、今はそれが更にひどいことになっている。
それもこれも、あの罵詈雑言のせいなのだと思うと胸が痛む。

「ロヴンさん、あのですね」
「大輝、私は……私には、大輝しかいないんだ」
「は、はい?」
「だから、捨てないでほしい……泣いたりしないし、ちゃんと綺麗でいる様頑張るから……!」
「あの、いや、だからあれは……」
「大輝が望むなら何だってするから!野外プレイでも羞恥プレイでも何でも!!だから!!」
「わ、わかりました。大丈夫、捨てたりなんかしませんって!」
「ほ、本当か?」
「当たり前でしょう……」
「私はみんなと違って、頻繁には会えないが……」
「それでいいって、言ったじゃないですか」

このままだと埒があかない。
そして内容が重い。
なので、手っ取り早くロヴンさんを抱きしめた。

「た、大輝!?」
「嫌ってるんだったら、こんなことしませんから。大丈夫ですから、安心してください」

余計かと思ったが、これまたキスをして別のメンバーのところへ。

ここから先は魔境だ。
出かけている桜子を覗いたら、どっちも俺には地獄の入り口に見える。
そんなことを考えていたら、玄関からドアの開く音がした。

「あ、桜子……」
「大輝くん……」

玄関で立ち話になってしまうが、この際少しでも魔境に行く時間は遅らせておきたい。

「あのな、桜子……」
「ごめんね、ぺったんこで。私、牛乳とか嫌いだから胸がおっきくならないのかなって」
「違うんだ、桜子」
「え、じゃあ豆乳だったってこと?」
「そうじゃない。あと、買いなおしに行かなくていい」

大体ぺったんこというが、そこまでぺったんこでもない。
Bに近いくらいのAじゃないかと思う。
世間ではそれをぺったんこというのかもしれないが、俺はそれに不満なんてない。

「だって、私……ノルンさんと違って不思議な力もないから、え、エッチの時も……あんまり役に立ててないなって……」

少し顔を赤らめて俯く桜子。
何この可愛い生き物。
こいつ、こんなに可愛いやつだったっけ。
何だか少し、興奮する。

「俺はな、別に胸がどうなんて思ったことないぞ」
「嘘だ。おっぱい大好きじゃん。おっきい人の、ずっと触ってるもん」
「そ、それは……」
「いいの、わかってるから……だからね、もう少しだけ、私のもこう……揉んだり……とか」

両手でジェスチャーを加えて、説明する桜子。
親父くさいからやめなさい、JKなのに……。

「揉んだら大きくなるって言うし……」

恥じらいながらそんなことを言われると、何だかおかしな気分になってきてしまう。
気づいたら俺は、桜子をトイレに連れ込んでいた。

「え、大輝くん……」
「ダメだ、あんな顔であんなこと言われたら、もう……」


桜子を残してトイレを出る。
色々な意味ですっきりして、いよいよ魔境へと旅立たなくてはならない。


「おー、待ってたぞ、大輝ぃ」
「大輝……」

何でこの二人が一緒にいる……。

「まぁ、座れよ」
「え、えっと」
「何だ、色魔と一緒に座るのは嫌か」
「し、失礼します」

愛美さんに促されて座るも、そこにいる三人、誰も一言も言葉を発することがない。
沈黙が肌に刺さって痛い。

「大輝よぅ……お前が本音であんなこと言ったんじゃないってのは、よくわかってるつもりだ、あたしはな」

五分ほどしてから、愛美さんが口を開いた。
朋美は相変わらずの沈黙っぷりで、俺の方を見ようともしない。

「例の力で、言わされてたんだよな?」
「ええ、それで合ってます。ていうか、その場にいましたよね、愛美さん」
「まぁな。いや、あれが本音だったんじゃないか、って朋美がな」
「…………」

結局、最後の難関は朋美だったということか。

「大輝からちゃんと聞くまでは、って言うからさ」
「な、なるほど」
「…………」

朋美だって、ノリノリで俺の汚い言葉を聞いてみたいとか言ってたくせに。
しかも、ハンマーナックルで俺を殴打したのも朋美だったはずだ。

「大輝、ちゃんと言ってやれ。朋美のこと、どう思ってるのかって」

朋美を見ると、一瞬朋美もこっちを見た。
だが、すぐに目を逸らして体育座りをした。
小学生かよ……。

「あーっと、朋美?」
「何……サイコパスって呼ばないの?」
「朋美……」
「あのなぁ……あれは睦月とノルンさんの力であって……俺の本音とかじゃないって、さっきも言ってたの聞いたろ?」
「…………」

謝ろうかなと思って近づいたらいきなり先制パンチをくらった気分。
何となく謝ろうかなっていう気持ちが削がれる。
ぶっちゃけると、サイコパスっていうのはあながち間違っているとも思えない俺がいた。

ただいじけているだけなのかもしれない、とも思う。
何でだろう、朋美に関しては正直に可愛いやつだなぁ、とか今回は思えない。
殴られたからか?
それなら愛美さんへの態度もおかしいことになってしまう。

「なぁ、そんないじけるなよ……悪かったから。俺の意思じゃないけど、言っちゃったことは事実だし」
「いじけてないもん……私のことなんて、どうせ大輝は暴力女とか思ってるんでしょ」

それをいじけてると言わずして何と言うのか。

「暴力女な……まぁ、否定しきれない部分はあるし、それは朋美だって自覚してるんじゃないか?」
「そうだけど……」
「ただ、さっき言ったことに関しては謝るよ、ごめん。あんなこと言われたら誰だって傷つくよな」
「…………」

愛美さんは、缶チューハイを煽っている。
あとでこの人にも謝らないと。

「なぁ朋美よ、さっきの聞いて傷ついたのはわかる。けど、大輝のこと嫌いになったわけじゃないんだろ?」
「それは……当たり前じゃないですか」
「ならさ、大輝が本位じゃなかったって言ってるんだからもう許してやれって」
「朋美、どうしたら許してくれる?」

何か釈然としない部分はあるが、こうなったら朋美は納得しない限り機嫌を直さないだろう。
仕方ない、歩みよるか。

「朋美、何でも言ってくれていいんだぞ?」
「じゃあ……私にもキスしてくれる?……さっき桜子にしてたみたいに」
「な、何故それを……」
「お前、あんなでかい声で喘いでたらさすがに聞こえるだろ……」

それ、キスだけじゃ済んでないのバレバレなんじゃ……。

「当然、キスだけで済ませるつもりはないけど」
「で、ですよね」
「あたしも混ぜてもらうけど」
「ですよね……」

衝動に任せて物事を行うと、こういうしっぺ返しが来ることもある。
このあと結局みんな加わって、長い夜は更けて行った。
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