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本編
大輝編31話~嫉妬~
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俺の中に巣食う黒い渦。
このうちの一つ、嫉妬。
今回はこの渦を鎮めなくてはならない。
事の発端は、愛美さんの一言だった。
「親が最近さ、うるさくなってきたんだよ。孫がどうとか」
「それって、結婚しろっていう話ですか?」
「そう。何か見合い写真とか送ってきてさ」
そう言って取り出してきたのは、一冊の立派な装丁の写真が入ったもの。
イケメン……と言えるかは微妙なところだが、立派なスーツに身を包んではにかむ一人の男性だった。
「正直好みじゃねぇんだよなぁ。まぁ、顔で選ぶわけないけどさ」
「愛美さん、結婚したいんですか?」
「いや、あたしは正直結婚とかどうでもいいんだよな。子どもはいずれほしいけど」
馬鹿馬鹿しい、と言いたげな顔でぽいっと写真が入った冊子をテーブルに投げる。
結婚。
俺の歳では当然まだできないし、仮に愛美さんが強制的に結婚、ということになったら俺では止める術はない。
いや、神の力を使ってどうにかできないこともないが、それは何だか違う気がする。
「結婚ですか……私たちの年齢になると、意識しててもおかしくない歳ではありますね」
和歌さんも写真を見て呟いた。
確かに二人ともいい年齢ではある。
今俺に付き合わせていることによって、二人の未来を奪ってしまっているのではないか。
そんな考えが俺の頭を支配する。
その一方で彼女たちが他の男と結婚する、というビジョンを想像してみる。
「あっぐ……」
急遽酷く頭が痛み、頭を抱えてしまう。
まさかこんなにも、強い衝動が襲ってくるとは想定外だった。
「おい、大輝?」
「どうした?」
「い、いえ……」
二人が心配して、俺を見る。
俺は大丈夫だと二人に言って、水を飲もうと席を立った。
普通に立ち上がれたはずなのに足から力が抜けて、膝から崩れ落ちた。
「どうしたんだ、本当に……」
「いえ、何か足から力が……もう大丈夫です」
「全然、そんな風に見えないぞ……顔色も悪い。少し休むか?」
「いえ、本当大丈夫ですから」
そう言って今度はちゃんと水を飲む。
少しだけ落ち着いた気がするが、油断はできない。
愛美さんが結婚するなんて一言も言ってないのにこれだ。
俺の独占欲の強さに吐き気がする。
そもそも愛美さんの人生は元々愛美さんのものであって、俺のものではない。
彼女には彼女の人生があって、それを謳歌する権利が彼女にはあるのだ。
それに対して、俺ごときが何を言えるのか。
そう思うはずなのに、心が納得していない。
「大輝、もしかして……ヤキモチか?」
「えっ?」
「愛美さんに、男の影、とか」
「いや……」
「おいおい大輝、そんな中二病みたいな真似してまであたしの気を引かなくても、大丈夫だから。さっきも言ったろ?結婚なんてどうでもいいって」
「ちゅ、中二病って……」
「ぐっ……鎮まれ……!とかやってたじゃん」
「いや、やってませんけど……」
「大輝は欲張りだからなぁ」
言葉とは裏腹に、優しげな視線を向ける愛美さん。
和歌さんも微笑みながら二人を見る。
こんなにも簡単に見透かされてしまうなんて、俺もまだまだ甘いということか。
「愛美さん、俺……」
「そんな大輝に、ちょっとお願いがあるんだ。聞いてくれるか?」
場所は愛美さんのマンション。
愛美さんは普段着だが、俺は何故かスーツを着せられている。
「馬子にも衣装っていうけど、まぁまぁ似合うんじゃないか?」
「そ、そうですか……」
愛美さんの母親が今日、愛美さんに会いに来るということでマンションに連れてこられた。
どうやら、俺を彼氏として紹介するつもりの様だ。
「あの、本当に俺ここにいていいんですか?」
「お前じゃなきゃダメだ。しゃんとしとけよな」
何だか落ち着かない。
頭痛はとりあえず薬を飲んで抑えているが、時間が迫るごとに気分は段々と落ち着かなくなってくる。
そんなことを考えている内、玄関のチャイムが鳴った。
桜子と明日香が初めてここに来た時のことを連想してしまって、ちょっとした恐怖が蘇る。
「きたな。ここで待ってろ」
愛美さんが玄関へ行き、母親を迎える。
「あら、可愛らしい彼氏さんね」
愛美さんの母親が俺を見て開口一番に放った言葉がこれだった。
嘘でも渋い彼氏ね、とか言ってくれたら俺も少し喜べるのに。
「あ、宇堂大輝と言います。この度は、遠路はるばる……」
「そんな堅い挨拶はしなくてもいいよ。愛美が世話になってます、母親の良子です」
「母さん、茶でも飲む?」
愛美さんが手早くお茶を用意し、それぞれの前に置いた。
俺は緊張の面持ちで母親を見つめる。
見た目は……目元とか愛美さんに似てる気がする。
声は年齢よりも若いと感じた。
気が強そうなところとか、愛美さんと似てるところかもしれない。
対する母親……良子さんは、俺を品定めしている様だった。
今日の今日で連れてこられてさすがに準備期間もなく、みすぼらしいなんて思われてるんじゃないだろうか。
「君、本当に男の子?」
「え?は、はぁ」
「女の子みたいな顔してるね……」
「よ、よく言われますけど……生まれた時から男です」
女にもなれます、なんてことは言わない。
「母さん、いきなり失礼だろ?大輝も困ってるじゃん」
「ああ、ごめんね。あまりにも可愛らしい子だから……で、何回ヤったの?」
「ぶは!!」
思いもかけない爆弾に、茶を噴出してしまう。
器官に入ってしまって、ひどくむせた。
「ああ、ごめんね、直接的な表現が過ぎたかな」
「何回って、そんなんいちいち数えてたらマニアックじゃね?」
「見かけによらないんだねぇ」
「まぁ、最近は少し減ってるけどね、回数」
「どうして?飽きられたの?」
「違う。大輝はそもそもあたし一人と付き合ってるんじゃねーし」
「え?」
「え?」
親よりもでっかい、特大の爆弾を落として平然としている愛美さん。
俺は全身から血の気が引いて、良子さんはフリーズして俺を見つめている。
「こいつ、こう見えてすげーんだぜ。あたしのほかにも七人、女いっから」
「七……人……」
「あ、あの」
「それをほぼ均等に相手して、一人はヤクザの親分の娘なんだけど、そいつにも認めさせたほどなんだから」
「愛美?」
「何だよ」
「それ、妄想とかじゃなくて本当の話なの?」
うち三人は神です、なんて言える雰囲気ではない。
まぁ言ったところで信じたりはしないんだろうけど。
「本当だよ。てか、寧ろあたしがその中に割り込んだみたいなもんだし」
「大輝くん、本当なの?」
「え、ええ……」
全身にびっしょりと汗をかきながら答える。
どういうつもりでこんなこと……。
「愛美、結婚できないって言ったのは、こういうことなんだね?」
「そうだよ。子どもはほしいけど、このヤリチン大魔王ならそんなん余裕だろ」
余裕じゃないし!
そもそもヤリチン大魔王じゃなくて、ヤリチン女神だもん!
なんて言えるはずもなく、俺は黙る。
「そんなに女囲って、世間に顔向けできるの?」
「世間なぁ……あたしとしては、考えがあるんだよ」
「へぇ、どんな?」
愛美さんは良子さんを見て、ドヤ顔をする。
「問題は、問題にしねぇ限り問題にならねぇ」
呆れた顔で良子さんが愛美さんを見る。
「余裕っていうのは?この子が実はすごい稼いでるとか?」
「いんや?今まだ学生だし、アルバイトはしてるけど」
「じゃあ、何で余裕なの?」
「大輝、見せてやれ」
「は?」
いきなりの無茶振りに、さすがに戸惑いを隠せない。
見せろ、って、何を?
まさか相棒を出せとか言うのだろうか。
「ああ、違う違う。お前の力をだよ」
「え?」
まさか、愛美さんの前で良子さんを抱け、というのだろうか。
「お前が考えてることはわかるけど、違うってことくらいはわかるよな?」
「え、ええ」
もしかして。
「あれですか?」
「そうだよ。ほら、早く」
女神になれと言っている。
「何を見せてくれるのかな?」
何故か良子さんはわくわくしている様だった。
覚悟を決めて、俺は意識を集中させる。
何度かやっていることではあるので、大分慣れてきたものではあった。
睦月の変身と違って、俺のは風ではなく熱が一瞬噴出す程度のもので、部屋のものが飛んだりということはなかった。
「え……え?大輝くん、やっぱり女の子だったの?」
そうくるとは思っていた。
わかってはいたが、否定できないのが悲しい。
「話すと長いんですが……」
「まぁ、事情はいいよ。とりあえず、簡単に言っとくと……」
「魔法少女?魔法少女なのね!?」
「は?」
思いもかけない返しに、俺と愛美さんが固まる。
「すごいよ!魔法少女はいるのね!!キュ○べぇはいないの!?ねぇ!!」
予想以上の食いつきだ。
ベクトルは全然別方向だが。
「落ち着けよ母さん……魔法少女に羽なんて生えてるか?」
「アルティメットま○かには羽が……」
「そうきたか……」
俺の姿を眺め、ほー、とかはー、とか言いながら羽を触ったりする良子さん。
羽をさわられると、何だかくすぐったい。
「キュ○べぇはいませんし、魔法少女ではないですが……こういうことができます」
あんまりやってはいけない気がするが、良子さんの目の前に金塊を一個生成する。
ごとん、と音がしてテーブルに落ちる。
「な……すごい手品ね」
「いや、手品ってわけじゃ……」
目の前の現実が信じられないと言った様子の良子さん。
そりゃそうだろう。
俺が良子さんならまず信じられない。
「これ、触ってみてもいいの?」
「もちろんどうぞ」
つついたり手で持ってくるくる回したりして、触感を確かめている様だ。
この人、魔法少女が好きなのか。
それなら。
「金塊を渡しちゃうわけにはいかないんですけど、こういうのなら……」
俺はキュ○べぇのぬいぐるみを生成する。
「きゃあああ!!すっごい!!可愛い!!」
「…………」
愛美さんがドン引きで良子さんを見る。
いい歳して何やってんだ、と顔に書いてある。
「そ、それあげますから」
「いいの?本当に!?」
「か、母さん……」
良子さんがぬいぐるみに夢中になっている間に、金塊を消し去る。
残しといたら何か問題になりそうだ。
結局、俺が何でもありの神みたいな存在であることを良子さんは認めた。
みたいというか、神なんだが良子さんはとりあえず信じてくれた様なのでそれでいいか、ということに。
「また、魔法見せてね!」
去り際にそんなことを言っていた。
何だか気に入られた様で、また来ると言い残し、良子さんは去って行った。
「さて、これでわかったか?あたしは結婚なんかするつもりはない。お前といられれば別に、形なんかどうだっていいんだよ」
「でも……俺、愛美さんの未来を奪ってしまってるんじゃないかって思うんですよ」
「奪ってるっていうなら、ちゃんと返してくれればそれでいいだろ。それとも、奪いっぱなしにするのか?」
「いや、そんなつもりは……」
「あたしの知ってる大輝は、そういうのちゃんとしてるやつだと思ってる。だから、あたしもお前を信じて、未来を『預けて』るんだ」
目の覚める様な思いだった。
預けてくれている。
そんな発想はなかった。
だが、愛美さんはそう考えていてくれた。
それなのに下らなく嫉妬を……嫉妬?
「どうだ、もやもや、消えたか?」
「愛美さん、知ってたんですか?」
「睦月が前に、お前にある黒い渦の話してくれたんだよ。それで、見える様にしてくれた」
「そうでしたか……心配かけました」
「心配すんのなんか当たり前だよ。それより、あと二つの渦はどうするんだ?」
「それなんですけど……発生条件がわからないので、今はどうしようもないんですよね」
「そっか……なら、とりあえず戻っとく?」
こうして一つの問題を解決し、俺たちは睦月のマンションへ戻る。
残り二つ。
憤怒と強欲については、正直発生条件が不明だが心当たりがある。
今度こそ、俺一人で解決を。
そう心に決めて俺たちは睦月のマンションへ戻った。
このうちの一つ、嫉妬。
今回はこの渦を鎮めなくてはならない。
事の発端は、愛美さんの一言だった。
「親が最近さ、うるさくなってきたんだよ。孫がどうとか」
「それって、結婚しろっていう話ですか?」
「そう。何か見合い写真とか送ってきてさ」
そう言って取り出してきたのは、一冊の立派な装丁の写真が入ったもの。
イケメン……と言えるかは微妙なところだが、立派なスーツに身を包んではにかむ一人の男性だった。
「正直好みじゃねぇんだよなぁ。まぁ、顔で選ぶわけないけどさ」
「愛美さん、結婚したいんですか?」
「いや、あたしは正直結婚とかどうでもいいんだよな。子どもはいずれほしいけど」
馬鹿馬鹿しい、と言いたげな顔でぽいっと写真が入った冊子をテーブルに投げる。
結婚。
俺の歳では当然まだできないし、仮に愛美さんが強制的に結婚、ということになったら俺では止める術はない。
いや、神の力を使ってどうにかできないこともないが、それは何だか違う気がする。
「結婚ですか……私たちの年齢になると、意識しててもおかしくない歳ではありますね」
和歌さんも写真を見て呟いた。
確かに二人ともいい年齢ではある。
今俺に付き合わせていることによって、二人の未来を奪ってしまっているのではないか。
そんな考えが俺の頭を支配する。
その一方で彼女たちが他の男と結婚する、というビジョンを想像してみる。
「あっぐ……」
急遽酷く頭が痛み、頭を抱えてしまう。
まさかこんなにも、強い衝動が襲ってくるとは想定外だった。
「おい、大輝?」
「どうした?」
「い、いえ……」
二人が心配して、俺を見る。
俺は大丈夫だと二人に言って、水を飲もうと席を立った。
普通に立ち上がれたはずなのに足から力が抜けて、膝から崩れ落ちた。
「どうしたんだ、本当に……」
「いえ、何か足から力が……もう大丈夫です」
「全然、そんな風に見えないぞ……顔色も悪い。少し休むか?」
「いえ、本当大丈夫ですから」
そう言って今度はちゃんと水を飲む。
少しだけ落ち着いた気がするが、油断はできない。
愛美さんが結婚するなんて一言も言ってないのにこれだ。
俺の独占欲の強さに吐き気がする。
そもそも愛美さんの人生は元々愛美さんのものであって、俺のものではない。
彼女には彼女の人生があって、それを謳歌する権利が彼女にはあるのだ。
それに対して、俺ごときが何を言えるのか。
そう思うはずなのに、心が納得していない。
「大輝、もしかして……ヤキモチか?」
「えっ?」
「愛美さんに、男の影、とか」
「いや……」
「おいおい大輝、そんな中二病みたいな真似してまであたしの気を引かなくても、大丈夫だから。さっきも言ったろ?結婚なんてどうでもいいって」
「ちゅ、中二病って……」
「ぐっ……鎮まれ……!とかやってたじゃん」
「いや、やってませんけど……」
「大輝は欲張りだからなぁ」
言葉とは裏腹に、優しげな視線を向ける愛美さん。
和歌さんも微笑みながら二人を見る。
こんなにも簡単に見透かされてしまうなんて、俺もまだまだ甘いということか。
「愛美さん、俺……」
「そんな大輝に、ちょっとお願いがあるんだ。聞いてくれるか?」
場所は愛美さんのマンション。
愛美さんは普段着だが、俺は何故かスーツを着せられている。
「馬子にも衣装っていうけど、まぁまぁ似合うんじゃないか?」
「そ、そうですか……」
愛美さんの母親が今日、愛美さんに会いに来るということでマンションに連れてこられた。
どうやら、俺を彼氏として紹介するつもりの様だ。
「あの、本当に俺ここにいていいんですか?」
「お前じゃなきゃダメだ。しゃんとしとけよな」
何だか落ち着かない。
頭痛はとりあえず薬を飲んで抑えているが、時間が迫るごとに気分は段々と落ち着かなくなってくる。
そんなことを考えている内、玄関のチャイムが鳴った。
桜子と明日香が初めてここに来た時のことを連想してしまって、ちょっとした恐怖が蘇る。
「きたな。ここで待ってろ」
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「あら、可愛らしい彼氏さんね」
愛美さんの母親が俺を見て開口一番に放った言葉がこれだった。
嘘でも渋い彼氏ね、とか言ってくれたら俺も少し喜べるのに。
「あ、宇堂大輝と言います。この度は、遠路はるばる……」
「そんな堅い挨拶はしなくてもいいよ。愛美が世話になってます、母親の良子です」
「母さん、茶でも飲む?」
愛美さんが手早くお茶を用意し、それぞれの前に置いた。
俺は緊張の面持ちで母親を見つめる。
見た目は……目元とか愛美さんに似てる気がする。
声は年齢よりも若いと感じた。
気が強そうなところとか、愛美さんと似てるところかもしれない。
対する母親……良子さんは、俺を品定めしている様だった。
今日の今日で連れてこられてさすがに準備期間もなく、みすぼらしいなんて思われてるんじゃないだろうか。
「君、本当に男の子?」
「え?は、はぁ」
「女の子みたいな顔してるね……」
「よ、よく言われますけど……生まれた時から男です」
女にもなれます、なんてことは言わない。
「母さん、いきなり失礼だろ?大輝も困ってるじゃん」
「ああ、ごめんね。あまりにも可愛らしい子だから……で、何回ヤったの?」
「ぶは!!」
思いもかけない爆弾に、茶を噴出してしまう。
器官に入ってしまって、ひどくむせた。
「ああ、ごめんね、直接的な表現が過ぎたかな」
「何回って、そんなんいちいち数えてたらマニアックじゃね?」
「見かけによらないんだねぇ」
「まぁ、最近は少し減ってるけどね、回数」
「どうして?飽きられたの?」
「違う。大輝はそもそもあたし一人と付き合ってるんじゃねーし」
「え?」
「え?」
親よりもでっかい、特大の爆弾を落として平然としている愛美さん。
俺は全身から血の気が引いて、良子さんはフリーズして俺を見つめている。
「こいつ、こう見えてすげーんだぜ。あたしのほかにも七人、女いっから」
「七……人……」
「あ、あの」
「それをほぼ均等に相手して、一人はヤクザの親分の娘なんだけど、そいつにも認めさせたほどなんだから」
「愛美?」
「何だよ」
「それ、妄想とかじゃなくて本当の話なの?」
うち三人は神です、なんて言える雰囲気ではない。
まぁ言ったところで信じたりはしないんだろうけど。
「本当だよ。てか、寧ろあたしがその中に割り込んだみたいなもんだし」
「大輝くん、本当なの?」
「え、ええ……」
全身にびっしょりと汗をかきながら答える。
どういうつもりでこんなこと……。
「愛美、結婚できないって言ったのは、こういうことなんだね?」
「そうだよ。子どもはほしいけど、このヤリチン大魔王ならそんなん余裕だろ」
余裕じゃないし!
そもそもヤリチン大魔王じゃなくて、ヤリチン女神だもん!
なんて言えるはずもなく、俺は黙る。
「そんなに女囲って、世間に顔向けできるの?」
「世間なぁ……あたしとしては、考えがあるんだよ」
「へぇ、どんな?」
愛美さんは良子さんを見て、ドヤ顔をする。
「問題は、問題にしねぇ限り問題にならねぇ」
呆れた顔で良子さんが愛美さんを見る。
「余裕っていうのは?この子が実はすごい稼いでるとか?」
「いんや?今まだ学生だし、アルバイトはしてるけど」
「じゃあ、何で余裕なの?」
「大輝、見せてやれ」
「は?」
いきなりの無茶振りに、さすがに戸惑いを隠せない。
見せろ、って、何を?
まさか相棒を出せとか言うのだろうか。
「ああ、違う違う。お前の力をだよ」
「え?」
まさか、愛美さんの前で良子さんを抱け、というのだろうか。
「お前が考えてることはわかるけど、違うってことくらいはわかるよな?」
「え、ええ」
もしかして。
「あれですか?」
「そうだよ。ほら、早く」
女神になれと言っている。
「何を見せてくれるのかな?」
何故か良子さんはわくわくしている様だった。
覚悟を決めて、俺は意識を集中させる。
何度かやっていることではあるので、大分慣れてきたものではあった。
睦月の変身と違って、俺のは風ではなく熱が一瞬噴出す程度のもので、部屋のものが飛んだりということはなかった。
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「まぁ、事情はいいよ。とりあえず、簡単に言っとくと……」
「魔法少女?魔法少女なのね!?」
「は?」
思いもかけない返しに、俺と愛美さんが固まる。
「すごいよ!魔法少女はいるのね!!キュ○べぇはいないの!?ねぇ!!」
予想以上の食いつきだ。
ベクトルは全然別方向だが。
「落ち着けよ母さん……魔法少女に羽なんて生えてるか?」
「アルティメットま○かには羽が……」
「そうきたか……」
俺の姿を眺め、ほー、とかはー、とか言いながら羽を触ったりする良子さん。
羽をさわられると、何だかくすぐったい。
「キュ○べぇはいませんし、魔法少女ではないですが……こういうことができます」
あんまりやってはいけない気がするが、良子さんの目の前に金塊を一個生成する。
ごとん、と音がしてテーブルに落ちる。
「な……すごい手品ね」
「いや、手品ってわけじゃ……」
目の前の現実が信じられないと言った様子の良子さん。
そりゃそうだろう。
俺が良子さんならまず信じられない。
「これ、触ってみてもいいの?」
「もちろんどうぞ」
つついたり手で持ってくるくる回したりして、触感を確かめている様だ。
この人、魔法少女が好きなのか。
それなら。
「金塊を渡しちゃうわけにはいかないんですけど、こういうのなら……」
俺はキュ○べぇのぬいぐるみを生成する。
「きゃあああ!!すっごい!!可愛い!!」
「…………」
愛美さんがドン引きで良子さんを見る。
いい歳して何やってんだ、と顔に書いてある。
「そ、それあげますから」
「いいの?本当に!?」
「か、母さん……」
良子さんがぬいぐるみに夢中になっている間に、金塊を消し去る。
残しといたら何か問題になりそうだ。
結局、俺が何でもありの神みたいな存在であることを良子さんは認めた。
みたいというか、神なんだが良子さんはとりあえず信じてくれた様なのでそれでいいか、ということに。
「また、魔法見せてね!」
去り際にそんなことを言っていた。
何だか気に入られた様で、また来ると言い残し、良子さんは去って行った。
「さて、これでわかったか?あたしは結婚なんかするつもりはない。お前といられれば別に、形なんかどうだっていいんだよ」
「でも……俺、愛美さんの未来を奪ってしまってるんじゃないかって思うんですよ」
「奪ってるっていうなら、ちゃんと返してくれればそれでいいだろ。それとも、奪いっぱなしにするのか?」
「いや、そんなつもりは……」
「あたしの知ってる大輝は、そういうのちゃんとしてるやつだと思ってる。だから、あたしもお前を信じて、未来を『預けて』るんだ」
目の覚める様な思いだった。
預けてくれている。
そんな発想はなかった。
だが、愛美さんはそう考えていてくれた。
それなのに下らなく嫉妬を……嫉妬?
「どうだ、もやもや、消えたか?」
「愛美さん、知ってたんですか?」
「睦月が前に、お前にある黒い渦の話してくれたんだよ。それで、見える様にしてくれた」
「そうでしたか……心配かけました」
「心配すんのなんか当たり前だよ。それより、あと二つの渦はどうするんだ?」
「それなんですけど……発生条件がわからないので、今はどうしようもないんですよね」
「そっか……なら、とりあえず戻っとく?」
こうして一つの問題を解決し、俺たちは睦月のマンションへ戻る。
残り二つ。
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今度こそ、俺一人で解決を。
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