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本編
大輝編38話~告白~
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スポットライトに照らされ、睦月が登場する。
その登場にあわせて、会場には歓声が溢れる。
すっかり人気者なんだな、睦月……。
「えっと……一曲しか持ち歌ないのに、メインとかちょっと恥ずかしいけど」
睦月がマイクを持って、会場を見渡す。
「全員が私のファンだとは思わないけど、それでも、こんなに沢山の人が集まってくれて、とても嬉しい気持ちでいっぱいです」
一瞬、睦月と目が合った気がした。
気のせいかもしれないが。
隣の社長さんを見ると、何やら耳栓をつけている様だ。
どういうことだ?
「今日は、集まってくれて、本当にありがとう!では聞いてください!!クリスマスキャンドル!!」
睦月が叫ぶ。
会場が更に湧く。
ドラムのビートが、高速で刻まれる。
何だこれ……アイドルの曲かほんとに……。
めちゃくちゃなハイテンポの曲とともに、睦月はマイクをスタッフに渡してインカムの様なものをつけた。
ワイヤレスのやつか、踊りながらでも歌える様に。
先ほどまでのアイドルグループは音源の再生にあわせて歌っていたのだが、睦月は何とバックバンド付きの生演奏だ。
これから始まる Deathクリスマス
聖なる夜を 悪夢に変える
今夜はカップル 各地でギシる
スプリンクラーの誤作動でも おきてしまえばいいのに
雪が降る 血の雨が降る
白く染まる地を 血の赤で染める
あの細い首 今日色々危険日
さぁ カタストロフの始まり
キャンドルを あなたに垂らす(Yeah!!)
赤いキャンドルが 私を濡らす(Yeah!!)
大事なもの全て 引き換えにして
クリスマスは誰かの 誕生日なんかじゃなく
破滅を知らせる 合図の始まり
だから叫ぶの Love is destruction!!
なんつー歌詞だ……。
よくこんなの事務所がゴーサイン出したな。
この歌詞を、曲に載せて踊りながら睦月が叫ぶ様に歌う。
観客は皆ノリノリだ。
すごい熱気の中、睦月はその曲を歌い切った。
「どうも、ありがとう。ここに来ている全員に、感謝を。このイベントを企画してくれて、ここまでのものにしてくれたスタッフの人にも、感謝を」
息を整えて、睦月が言う。
こっちは息が整わない。
どんなタイミングで行けというのか。
というか、朋美の言った通り……この体で何が出来るというのか。
「そして、みんなに紹介したい人がいます。この人がいたから、私はここまで頑張ってこれました!」
……は?
誰のことだ?
まさかとは思うが、他に男なんて……。
先ほどまでよりも、鼓動が早くなる。
周りの歓声が、先ほどよりも大きくなっているはずなのに俺の耳から遠ざかっていく様な感覚。
やめてくれ、聞きたくない。
睦月、お前の口から他の男の名前なんて……。
「皆さんご存知!!せーの!!」
「宇堂大輝ー!!!」
何が起きたのか、全くわからなかった。
何でオーディエンスが俺の名前を知っている?
何だ、皆さんご存知って。
会場にいる全員の視線が俺に注がれる。
「大輝!!いるのはわかってるんだからね!!」
睦月がこっちを見ながら叫ぶ。
え、何で俺いきなりさらし者になってんの?
全くもって訳がわからない。
「ビビってんの、大輝!!みんな!力を貸してー!!」
睦月が叫ぶや、両脇に居た社長さんが俺の脇を持ち上げた。
「え?え?」
「いやぁ、悪いね大輝くん。君のことは知ってたんだ」
「は?」
「そして、彼女の希望だ。坂崎さん、行きましょう」
「ええ」
坂崎と呼ばれた左側のおじさんも、ノリノリで社長さんに歩幅を合わせる。
風邪で弱っている俺なんかは、抵抗もむなしく観客の波の上に放り投げられてしまう。
ほとんどが男で構成された観客だったが、何故かこいつらダイブ慣れしてやがる。
俺は波に乗せられたまま、会場を一周させられてしまった。
「あっはっは!面白いことになってる!!」
睦月がマイクを使って笑っている。
笑い事かこれ。
そして波の終着点。
睦月のいるステージの上に放り投げられた。
「むぎゃ!!」
「おお……大輝、大丈夫?」
「な、何だこれ……どういうことだよ……」
「あれ?HP見てない?」
「は?見てねぇよ……」
「大輝、もう有名人だよ」
「んな!?」
バックスクリーンに、HPが映し出される。
そこには睦月のプロフィールが書いてあって……大事な人がいます。と書いてある。
そこには俺のフルネーム……だと……。
丁寧に顔写真まで。
睦月は俺の元へ来て俺の顔を覗きこむ様にしゃがみこんだ。
「それに、テレビでも大輝のこと色々言ってたんだけど……もしかしてふてくされて見てなかったとか?」
「…………」
テレビに出ていた睦月は、余所行きというか、何か俺の中では違う、と断じていたのは認める。
そして、確かに上の空で見ていた気がして、何を話していたのかとか、そういうのは全然頭に入っていなかった。
「じゃあ、これも知らないかな?」
睦月が立ち上がって、観客を見る。
「みんなー!!知ってると思うけど、私今日でまた普通の女の子に戻りまーす!!!」
「やだー!!やめないでー!!」
歓声が一気に悲鳴に変わる。
睦月は一体何を言ってるのだろうか。
今日で普通の女の子に戻る?
お前大体普通じゃねぇじゃん。
「わからないって顔してるね。だって、私大輝に会えないの嫌だもん。大輝に会えないなら、アイドルなんかしてたくないし」
「だ、だからってお前……」
俺も立ち上がろうとするが、足に力が入らない。
舞台袖で、先ほどまで華麗に踊っていたアイドルグループやスタッフが俺たちを見守っているのが見えた。
「どれだけ会いたかったかわかる?でも今は無理って色々な人に言われて……散々わがまま言って、それで出した結論がこれなの」
今までの会話には、全部マイクが通っている。
睦月の発言に涙する者、笑っている者と様々だ。
「彼氏もちの、一日限りのシンデレラ、っていうのがキャッチコピーなんだよ?見たこと無かった?」
「……見てないかもしれない」
「もう!!大輝は私に、会いたくなかったの!?」
千人くらいの観客が見ている前でこんなことを言い出す。
本当にとんでもないやつだ。
だが、俺もここまでされては応えないわけにいかない。
それまでお膳立てをしてくれた仲間、ここにくるまで手を、力を貸してくれた様々な名前も知らない人々。
そういう人たちの思いに応えるために。
「……会いたかったよ!!死ぬほど!!だけどお前が、自分からやりたいって言い出したことだから!!全力で応援しようって思った!!」
俺は睦月からマイクを奪い取って、残る力を振り絞って叫んだ。
「だけど、そんなの建前だって気づかされた!!お前がいないと、俺は俺でいられなかった!!お前は俺のものだ!!だから、帰ってきてくれよ!!!」
叫び終えて、眩暈がしてその場にへたり込む。
「お前がいない生活なんか、俺には考えられないんだよ……」
マイクを置いたまま、呟く。
言うことは言った。
もう、俺に出来ることはない……というか気力もない。
「大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!」
観客の一人が叫びだす。
そちらを見ると、春喜さんが叫んでいるのが見えた。
秀美さんも一緒になって手拍子している。
会場が、少しずつ大輝コールを始める。
何だこれ、究極に恥ずかしい。
熱のせいもあって、マジで死ねる気がする。
「大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!」
止むことの無い大輝コール。
睦月は笑顔で俺に手を差し伸べた。
俺はその手を取り、フラフラしながら立ち上がる。
「ねぇみんなー!!風邪を移すには、どうしたらいいと思うー!?」
睦月が叫ぶ。
何言ってんのこいつ……。
まさか……。
「「「キッスー!!!」」」
会場が一体となっていた。
舞台袖のアイドルたちも一緒になって叫んでいる。
「キース!!キース!!キース!!」
会場が今度はキスコールに沸く。
「だってさ、大輝。覚悟決めてよね」
「な、おい、ちょっと待て、マジでやるつもりか?」
「やらないの?ここで私に恥かかせる羞恥プレイか何か?」
「ば、お前……マイク入って……」
「嫌なら押し返していいよ」
睦月が俺の顎に手を添える。
「おおおおー!!!」
会場が更に沸き立つ。
もう、睦月を押し返すだけの力なんかあるわけが無い。
俺は自分にそう言い訳をして、睦月のキスを受けた。
緊張と恥ずかしさと熱とで、俺はそのまま倒れ伏した。
「大丈夫?」
「無茶苦茶するな、お前……」
俺は睦月の控え室に寝かされている。
あのあと、惜しまれながら睦月は俺をお姫様抱っこして舞台袖にはけた。
何故か先ほどのノリノリなアイドルたちもいる。
「君が大輝くんかぁ、実物可愛いねぇ」
アイドルの一人が、俺の顔を見て言う。
「睦月ちゃん、ずっと君の話ばっかしてたからね。羨ましいなぁ、ってずっと思ってたよー」
そんなに俺のことばっか言ってたのか、こいつ……。
仕事に集中しろよな。
「何でこんなボロボロになってまできてくれたの?」
「半分はお前とお前のファンのせいだけどな」
「答えてくれないの?もう一回くらいキスしとく?」
「答えるよ!答えるからこっちくんな!」
とんでもない女を追っかけてしまったと思った。
しかも、まだ見物人が十人単位でいるというのに。
「何でってそりゃ……会いたかったからだよ」
「誰に?」
「お前、わかってて言うのずるくね?」
「じゃあ何で会いたかったの?」
「さっき、大勢の前で言っただろ……」
「そういう風に逃げるの、男らしくないなぁ」
意地悪く睦月は笑う。
もちろん伝わってるんだろう。
だが、もう一度聞かせろ、と目が言っている。
「お前がいないなんて、もう俺には耐えられない。だから、戻ってきてほしかった。……だまし討ちされたみたいで癪だけどな」
「騙すつもりなんかこれっぽっちもなかったのに。公式HPでも今日まで、って書いてあったんだよ?」
「それはまぁ……俺の確認不足だけど」
「でも、そのおかげで……私、嬉しいよ」
多分みんな、知ってたんだろうな。
知っててこんなことを……だからみんな必死で俺を止めたのか。
「ちなみに、さっき電車で幼女と戯れてたでしょ」
「……え?何で知って……いや戯れてたって、普通に話してただけだけど」
「あれ、桜子だから」
「……は?」
睦月が耳元で囁く。
あの目、見覚えあると思ったら……そうか、あのでかい目はやっぱり……。
「ノルンが力であの子を幼児化させたの。んで、母親は明日香だから。明日香も少しだけ見た目年齢操作したらしいよ」
「な……え?あ、あれが明日香と桜子?」
「冷えピタくれた人いたでしょ?あれ朋美ね」
「う、嘘だろ?」
「あれは力じゃなくて愛美さんがメイクで少し印象変えただけだけどね。声でわからなかった?」
「…………」
メイクこええ……。
何だよ、マジで。
女って本当魔物だな。
結局心配になって見に来たってとこか。
「さて、大輝……これからどうする?二人で何処かシケ込む?」
「下品だなお前……もう少しオブラートに包めよ」
「取り繕っても仕方ないじゃない。それに……」
睦月はみんなを見る。
アイドル勢が手を振って、控え室から出た。
「私は、大輝の手の届く存在に戻れたんだから」
それから少しして、俺と睦月はとあるホテルの一室に案内される。
睦月の所属……していた事務所の社長さんが気を利かせてくれて、部屋を取ってくれたとのことだった。
だが肝心の俺は風邪で……。
「ねぇ、何で女神化しなかったの?そしたらすぐ治ったんだよ?」
「……忘れてた……」
「ほんと、そんなことまで忘れちゃうくらい一生懸命私のこと考えてくれてたんだね」
ちなみに、睦月の契約解除に当たっては色々と弊害はあったらしい。
それはまぁ当然と言える。
だが、睦月はシングルが売れたらその売り上げは全部会社に寄付する、と言った。
売れる見込みも話題性も抜群だったし、実際かなり売れているらしい。
なので、違約金なんかと相殺してもおつりがくるはず、と社長さんは言っていた。
「今から女神化したら、大輝耐えられないかもしれないね。ちょっと待ってて」
いつもの様に集中して、睦月は俺の頭に手を載せた。
「これでよし。だるくなくなった?」
「あ、ああ。ほんと、何かごめん。俺がバカだったわ」
「ほんとバカ。でも、気づいてくれたのは嬉しかった。一生懸命になってくれたことも」
「そ、そりゃ……一生懸命にもなるだろ……」
空回ったことも恥ずかしいし、あんなことあんな大勢の前で言わされて……全てが夢だったんじゃないかとさえ思える。
それでも、俺はこうして睦月と一緒にいられている。
「大輝、明日イブだね」
「ああ……明日一旦戻らないとな。みんな何か用意してくれてるだろうし」
「だと思うけど……今はみんなより、私を見てくれるんじゃないの?」
珍しく睦月が甘えてくる。
こういうのも久しぶりで、何だかドギマギしてしまう。
「ねぇ、アイドルを……元だけど。好きにしてみたくない?」
「え?」
「見てこれ」
睦月が先ほどのステージ衣装を取り出した。
持ってきちゃったの?
てか大丈夫なのかそれ……。
「社長がくれたの。向こう向いてて」
言われた通り、後ろを向いて睦月が着替えるのを待つ。
衣擦れの音が何となくエロい。
「いいよ」
声がかかって、振り返る。
そこには先ほどまで叫んで踊ってしていたアイドルがいた。
ステージで見るのとまた違って、可愛らしい。
スカートこんなに短かったんだっけ。
「やっぱりそこに目行くよね?私も最初短いなぁって思ったけど、まぁこれのおかげで売れたと思えばね」
ピラっと睦月がスカートをめくり上げる。
見慣れているはずの、睦月の下着なのだが……何だろうこの気持ち。
目が離せない。
「もう、したくなっちゃった?」
「こっち、きてくれよ」
我慢できない。
久しぶりということもあるのだろうが、この衝動に俺は抗えなかった。
「まだお風呂入ってないよ……?」
「いい。今のままのお前を抱きたい」
衝動に流されるままに、本能が赴くままに、俺は睦月の唇を貪った。
睦月も相当に我慢していたのか、それに応える。
「ずっと、ずっと……大輝とこうしたかった」
「そんなの、俺だってそうだ……」
お互いに迷うことも恥じらうこともなく、お互いを求めあう。
声も音も、誰のことも気にかける必要はない。
やっとこの手に、大事な人を取り戻すことが出来た。
それだけで俺は、上り詰めてくる何かを感じる。
睦月もいつも以上に盛り上がっているらしく、病み上がりにも関わらず俺は睦月の恰好の餌となったのだった。
「完全回復したとは言え、病み上がりなのに頑張らせすぎちゃった?」
八回目の絶頂を迎え、ぐったりした俺に睦月が言う。
今更だろ、と思うが言葉にならない。
「しばらくそうして休んでて」
睦月はそのままベッドを出て、浴室へ行った。
正直なことを言えば、盛り上がりすぎたと言う気持ちはある。
だが、お互いにシンクロした部分があったから仕方ないのかなとも。
物凄い量の汗をかいた。
水がほしい。
生まれたての小鹿の様になりながら俺は立ち上がって、冷蔵庫にある水を取り出す。
多めに払ってあるから、と社長さんが言ってたので、遠慮なく……というのが水というのは遠慮してるよな、やっぱ。
ポカリにでもしたら良かったか。
「大輝もシャワー、浴びてきたら?」
睦月が上がってきて、俺に向かって手を伸ばす。
俺の飲んでいた水を奪い取って、手をひらひらさせた。
のんびりとシャワーを浴びながら考える。
――そんなことは、当日考えたらいいんだよ。
当日って。
今日じゃないか、もう日付変わってるし。
人数分のプレゼントについて思いをめぐらせる。
明日、睦月と一緒に買って帰ったらいいか。
今夜はもう何回か頑張らないと多分寝かせてもらえないんだろうな、と思いながらシャワーを終えて、俺は猛獣の元へ戻ることにした。
その登場にあわせて、会場には歓声が溢れる。
すっかり人気者なんだな、睦月……。
「えっと……一曲しか持ち歌ないのに、メインとかちょっと恥ずかしいけど」
睦月がマイクを持って、会場を見渡す。
「全員が私のファンだとは思わないけど、それでも、こんなに沢山の人が集まってくれて、とても嬉しい気持ちでいっぱいです」
一瞬、睦月と目が合った気がした。
気のせいかもしれないが。
隣の社長さんを見ると、何やら耳栓をつけている様だ。
どういうことだ?
「今日は、集まってくれて、本当にありがとう!では聞いてください!!クリスマスキャンドル!!」
睦月が叫ぶ。
会場が更に湧く。
ドラムのビートが、高速で刻まれる。
何だこれ……アイドルの曲かほんとに……。
めちゃくちゃなハイテンポの曲とともに、睦月はマイクをスタッフに渡してインカムの様なものをつけた。
ワイヤレスのやつか、踊りながらでも歌える様に。
先ほどまでのアイドルグループは音源の再生にあわせて歌っていたのだが、睦月は何とバックバンド付きの生演奏だ。
これから始まる Deathクリスマス
聖なる夜を 悪夢に変える
今夜はカップル 各地でギシる
スプリンクラーの誤作動でも おきてしまえばいいのに
雪が降る 血の雨が降る
白く染まる地を 血の赤で染める
あの細い首 今日色々危険日
さぁ カタストロフの始まり
キャンドルを あなたに垂らす(Yeah!!)
赤いキャンドルが 私を濡らす(Yeah!!)
大事なもの全て 引き換えにして
クリスマスは誰かの 誕生日なんかじゃなく
破滅を知らせる 合図の始まり
だから叫ぶの Love is destruction!!
なんつー歌詞だ……。
よくこんなの事務所がゴーサイン出したな。
この歌詞を、曲に載せて踊りながら睦月が叫ぶ様に歌う。
観客は皆ノリノリだ。
すごい熱気の中、睦月はその曲を歌い切った。
「どうも、ありがとう。ここに来ている全員に、感謝を。このイベントを企画してくれて、ここまでのものにしてくれたスタッフの人にも、感謝を」
息を整えて、睦月が言う。
こっちは息が整わない。
どんなタイミングで行けというのか。
というか、朋美の言った通り……この体で何が出来るというのか。
「そして、みんなに紹介したい人がいます。この人がいたから、私はここまで頑張ってこれました!」
……は?
誰のことだ?
まさかとは思うが、他に男なんて……。
先ほどまでよりも、鼓動が早くなる。
周りの歓声が、先ほどよりも大きくなっているはずなのに俺の耳から遠ざかっていく様な感覚。
やめてくれ、聞きたくない。
睦月、お前の口から他の男の名前なんて……。
「皆さんご存知!!せーの!!」
「宇堂大輝ー!!!」
何が起きたのか、全くわからなかった。
何でオーディエンスが俺の名前を知っている?
何だ、皆さんご存知って。
会場にいる全員の視線が俺に注がれる。
「大輝!!いるのはわかってるんだからね!!」
睦月がこっちを見ながら叫ぶ。
え、何で俺いきなりさらし者になってんの?
全くもって訳がわからない。
「ビビってんの、大輝!!みんな!力を貸してー!!」
睦月が叫ぶや、両脇に居た社長さんが俺の脇を持ち上げた。
「え?え?」
「いやぁ、悪いね大輝くん。君のことは知ってたんだ」
「は?」
「そして、彼女の希望だ。坂崎さん、行きましょう」
「ええ」
坂崎と呼ばれた左側のおじさんも、ノリノリで社長さんに歩幅を合わせる。
風邪で弱っている俺なんかは、抵抗もむなしく観客の波の上に放り投げられてしまう。
ほとんどが男で構成された観客だったが、何故かこいつらダイブ慣れしてやがる。
俺は波に乗せられたまま、会場を一周させられてしまった。
「あっはっは!面白いことになってる!!」
睦月がマイクを使って笑っている。
笑い事かこれ。
そして波の終着点。
睦月のいるステージの上に放り投げられた。
「むぎゃ!!」
「おお……大輝、大丈夫?」
「な、何だこれ……どういうことだよ……」
「あれ?HP見てない?」
「は?見てねぇよ……」
「大輝、もう有名人だよ」
「んな!?」
バックスクリーンに、HPが映し出される。
そこには睦月のプロフィールが書いてあって……大事な人がいます。と書いてある。
そこには俺のフルネーム……だと……。
丁寧に顔写真まで。
睦月は俺の元へ来て俺の顔を覗きこむ様にしゃがみこんだ。
「それに、テレビでも大輝のこと色々言ってたんだけど……もしかしてふてくされて見てなかったとか?」
「…………」
テレビに出ていた睦月は、余所行きというか、何か俺の中では違う、と断じていたのは認める。
そして、確かに上の空で見ていた気がして、何を話していたのかとか、そういうのは全然頭に入っていなかった。
「じゃあ、これも知らないかな?」
睦月が立ち上がって、観客を見る。
「みんなー!!知ってると思うけど、私今日でまた普通の女の子に戻りまーす!!!」
「やだー!!やめないでー!!」
歓声が一気に悲鳴に変わる。
睦月は一体何を言ってるのだろうか。
今日で普通の女の子に戻る?
お前大体普通じゃねぇじゃん。
「わからないって顔してるね。だって、私大輝に会えないの嫌だもん。大輝に会えないなら、アイドルなんかしてたくないし」
「だ、だからってお前……」
俺も立ち上がろうとするが、足に力が入らない。
舞台袖で、先ほどまで華麗に踊っていたアイドルグループやスタッフが俺たちを見守っているのが見えた。
「どれだけ会いたかったかわかる?でも今は無理って色々な人に言われて……散々わがまま言って、それで出した結論がこれなの」
今までの会話には、全部マイクが通っている。
睦月の発言に涙する者、笑っている者と様々だ。
「彼氏もちの、一日限りのシンデレラ、っていうのがキャッチコピーなんだよ?見たこと無かった?」
「……見てないかもしれない」
「もう!!大輝は私に、会いたくなかったの!?」
千人くらいの観客が見ている前でこんなことを言い出す。
本当にとんでもないやつだ。
だが、俺もここまでされては応えないわけにいかない。
それまでお膳立てをしてくれた仲間、ここにくるまで手を、力を貸してくれた様々な名前も知らない人々。
そういう人たちの思いに応えるために。
「……会いたかったよ!!死ぬほど!!だけどお前が、自分からやりたいって言い出したことだから!!全力で応援しようって思った!!」
俺は睦月からマイクを奪い取って、残る力を振り絞って叫んだ。
「だけど、そんなの建前だって気づかされた!!お前がいないと、俺は俺でいられなかった!!お前は俺のものだ!!だから、帰ってきてくれよ!!!」
叫び終えて、眩暈がしてその場にへたり込む。
「お前がいない生活なんか、俺には考えられないんだよ……」
マイクを置いたまま、呟く。
言うことは言った。
もう、俺に出来ることはない……というか気力もない。
「大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!」
観客の一人が叫びだす。
そちらを見ると、春喜さんが叫んでいるのが見えた。
秀美さんも一緒になって手拍子している。
会場が、少しずつ大輝コールを始める。
何だこれ、究極に恥ずかしい。
熱のせいもあって、マジで死ねる気がする。
「大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!大輝!」
止むことの無い大輝コール。
睦月は笑顔で俺に手を差し伸べた。
俺はその手を取り、フラフラしながら立ち上がる。
「ねぇみんなー!!風邪を移すには、どうしたらいいと思うー!?」
睦月が叫ぶ。
何言ってんのこいつ……。
まさか……。
「「「キッスー!!!」」」
会場が一体となっていた。
舞台袖のアイドルたちも一緒になって叫んでいる。
「キース!!キース!!キース!!」
会場が今度はキスコールに沸く。
「だってさ、大輝。覚悟決めてよね」
「な、おい、ちょっと待て、マジでやるつもりか?」
「やらないの?ここで私に恥かかせる羞恥プレイか何か?」
「ば、お前……マイク入って……」
「嫌なら押し返していいよ」
睦月が俺の顎に手を添える。
「おおおおー!!!」
会場が更に沸き立つ。
もう、睦月を押し返すだけの力なんかあるわけが無い。
俺は自分にそう言い訳をして、睦月のキスを受けた。
緊張と恥ずかしさと熱とで、俺はそのまま倒れ伏した。
「大丈夫?」
「無茶苦茶するな、お前……」
俺は睦月の控え室に寝かされている。
あのあと、惜しまれながら睦月は俺をお姫様抱っこして舞台袖にはけた。
何故か先ほどのノリノリなアイドルたちもいる。
「君が大輝くんかぁ、実物可愛いねぇ」
アイドルの一人が、俺の顔を見て言う。
「睦月ちゃん、ずっと君の話ばっかしてたからね。羨ましいなぁ、ってずっと思ってたよー」
そんなに俺のことばっか言ってたのか、こいつ……。
仕事に集中しろよな。
「何でこんなボロボロになってまできてくれたの?」
「半分はお前とお前のファンのせいだけどな」
「答えてくれないの?もう一回くらいキスしとく?」
「答えるよ!答えるからこっちくんな!」
とんでもない女を追っかけてしまったと思った。
しかも、まだ見物人が十人単位でいるというのに。
「何でってそりゃ……会いたかったからだよ」
「誰に?」
「お前、わかってて言うのずるくね?」
「じゃあ何で会いたかったの?」
「さっき、大勢の前で言っただろ……」
「そういう風に逃げるの、男らしくないなぁ」
意地悪く睦月は笑う。
もちろん伝わってるんだろう。
だが、もう一度聞かせろ、と目が言っている。
「お前がいないなんて、もう俺には耐えられない。だから、戻ってきてほしかった。……だまし討ちされたみたいで癪だけどな」
「騙すつもりなんかこれっぽっちもなかったのに。公式HPでも今日まで、って書いてあったんだよ?」
「それはまぁ……俺の確認不足だけど」
「でも、そのおかげで……私、嬉しいよ」
多分みんな、知ってたんだろうな。
知っててこんなことを……だからみんな必死で俺を止めたのか。
「ちなみに、さっき電車で幼女と戯れてたでしょ」
「……え?何で知って……いや戯れてたって、普通に話してただけだけど」
「あれ、桜子だから」
「……は?」
睦月が耳元で囁く。
あの目、見覚えあると思ったら……そうか、あのでかい目はやっぱり……。
「ノルンが力であの子を幼児化させたの。んで、母親は明日香だから。明日香も少しだけ見た目年齢操作したらしいよ」
「な……え?あ、あれが明日香と桜子?」
「冷えピタくれた人いたでしょ?あれ朋美ね」
「う、嘘だろ?」
「あれは力じゃなくて愛美さんがメイクで少し印象変えただけだけどね。声でわからなかった?」
「…………」
メイクこええ……。
何だよ、マジで。
女って本当魔物だな。
結局心配になって見に来たってとこか。
「さて、大輝……これからどうする?二人で何処かシケ込む?」
「下品だなお前……もう少しオブラートに包めよ」
「取り繕っても仕方ないじゃない。それに……」
睦月はみんなを見る。
アイドル勢が手を振って、控え室から出た。
「私は、大輝の手の届く存在に戻れたんだから」
それから少しして、俺と睦月はとあるホテルの一室に案内される。
睦月の所属……していた事務所の社長さんが気を利かせてくれて、部屋を取ってくれたとのことだった。
だが肝心の俺は風邪で……。
「ねぇ、何で女神化しなかったの?そしたらすぐ治ったんだよ?」
「……忘れてた……」
「ほんと、そんなことまで忘れちゃうくらい一生懸命私のこと考えてくれてたんだね」
ちなみに、睦月の契約解除に当たっては色々と弊害はあったらしい。
それはまぁ当然と言える。
だが、睦月はシングルが売れたらその売り上げは全部会社に寄付する、と言った。
売れる見込みも話題性も抜群だったし、実際かなり売れているらしい。
なので、違約金なんかと相殺してもおつりがくるはず、と社長さんは言っていた。
「今から女神化したら、大輝耐えられないかもしれないね。ちょっと待ってて」
いつもの様に集中して、睦月は俺の頭に手を載せた。
「これでよし。だるくなくなった?」
「あ、ああ。ほんと、何かごめん。俺がバカだったわ」
「ほんとバカ。でも、気づいてくれたのは嬉しかった。一生懸命になってくれたことも」
「そ、そりゃ……一生懸命にもなるだろ……」
空回ったことも恥ずかしいし、あんなことあんな大勢の前で言わされて……全てが夢だったんじゃないかとさえ思える。
それでも、俺はこうして睦月と一緒にいられている。
「大輝、明日イブだね」
「ああ……明日一旦戻らないとな。みんな何か用意してくれてるだろうし」
「だと思うけど……今はみんなより、私を見てくれるんじゃないの?」
珍しく睦月が甘えてくる。
こういうのも久しぶりで、何だかドギマギしてしまう。
「ねぇ、アイドルを……元だけど。好きにしてみたくない?」
「え?」
「見てこれ」
睦月が先ほどのステージ衣装を取り出した。
持ってきちゃったの?
てか大丈夫なのかそれ……。
「社長がくれたの。向こう向いてて」
言われた通り、後ろを向いて睦月が着替えるのを待つ。
衣擦れの音が何となくエロい。
「いいよ」
声がかかって、振り返る。
そこには先ほどまで叫んで踊ってしていたアイドルがいた。
ステージで見るのとまた違って、可愛らしい。
スカートこんなに短かったんだっけ。
「やっぱりそこに目行くよね?私も最初短いなぁって思ったけど、まぁこれのおかげで売れたと思えばね」
ピラっと睦月がスカートをめくり上げる。
見慣れているはずの、睦月の下着なのだが……何だろうこの気持ち。
目が離せない。
「もう、したくなっちゃった?」
「こっち、きてくれよ」
我慢できない。
久しぶりということもあるのだろうが、この衝動に俺は抗えなかった。
「まだお風呂入ってないよ……?」
「いい。今のままのお前を抱きたい」
衝動に流されるままに、本能が赴くままに、俺は睦月の唇を貪った。
睦月も相当に我慢していたのか、それに応える。
「ずっと、ずっと……大輝とこうしたかった」
「そんなの、俺だってそうだ……」
お互いに迷うことも恥じらうこともなく、お互いを求めあう。
声も音も、誰のことも気にかける必要はない。
やっとこの手に、大事な人を取り戻すことが出来た。
それだけで俺は、上り詰めてくる何かを感じる。
睦月もいつも以上に盛り上がっているらしく、病み上がりにも関わらず俺は睦月の恰好の餌となったのだった。
「完全回復したとは言え、病み上がりなのに頑張らせすぎちゃった?」
八回目の絶頂を迎え、ぐったりした俺に睦月が言う。
今更だろ、と思うが言葉にならない。
「しばらくそうして休んでて」
睦月はそのままベッドを出て、浴室へ行った。
正直なことを言えば、盛り上がりすぎたと言う気持ちはある。
だが、お互いにシンクロした部分があったから仕方ないのかなとも。
物凄い量の汗をかいた。
水がほしい。
生まれたての小鹿の様になりながら俺は立ち上がって、冷蔵庫にある水を取り出す。
多めに払ってあるから、と社長さんが言ってたので、遠慮なく……というのが水というのは遠慮してるよな、やっぱ。
ポカリにでもしたら良かったか。
「大輝もシャワー、浴びてきたら?」
睦月が上がってきて、俺に向かって手を伸ばす。
俺の飲んでいた水を奪い取って、手をひらひらさせた。
のんびりとシャワーを浴びながら考える。
――そんなことは、当日考えたらいいんだよ。
当日って。
今日じゃないか、もう日付変わってるし。
人数分のプレゼントについて思いをめぐらせる。
明日、睦月と一緒に買って帰ったらいいか。
今夜はもう何回か頑張らないと多分寝かせてもらえないんだろうな、と思いながらシャワーを終えて、俺は猛獣の元へ戻ることにした。
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