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本編
大輝編46話~少女~
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「大輝くん、将来結婚してあげるね」
「え?」
一応このセリフを言ったのは、桜子ではない。
もちろん明日香でも、他の面々でもない。
なら誰なのか。
事の発端は、今日の学校の帰り道。
先生に修学旅行での反省文を提出して、くどくどとお説教をくらい、その間に睦月やらは帰ってしまっている様だった。
夕方になってもまだ明るいこのあたりは、小学生が遊んでいたりと割と人が多く行き交う。
あいつら冷たいよなぁ、なんて考えながら道を歩いていると、一人の女の子が側溝に手を突っ込んで何やら探している様に見えた。
歳の頃は大体……十歳前後か?
小学校中学年くらい、というのが俺の見立てだった。
だが、助けるためとは言っても声をかけていいものかと少し躊躇われる。
なにしろ今の世知辛い世の中というのは、小学生の女の子に声をかけようものなら即通報、事案発生という様な時代なのだ。
防犯ブザーでも鳴らされてはたまらない。
「あ、そこのお兄さん……助けてくれませんか」
ガッデム……モタモタしてる間に、俺はその子から声をかけられてしまった。
しまった、さっさと立ち去っておくべきだったのだ。
泣きそうな顔をして、俺に助けを求める少女。
それを放置していったら、それはそれで俺が悪者にされそうな気がして、俺は仕方なく応えることにした。
「どうしたの?何か探してるの?」
「うん……おうちのカギ、ここに落っこっちゃって……」
見るとその側溝は本当に側溝か?というくらいに深い。
しかし幅がそこまでないので、いくらこの子が小さいからと言っても入っていける様なところではなかった。
確かに、一瞬光るものが見えた様な気がする。
あれか……遠いな。
「ふむ、じゃあお兄ちゃんがとってあげよう。ちょっとその棒貸して」
少女が手を突っ込んで一生懸命操っていたその棒を受け取って、俺は側溝に手を突っ込む。
制服が汚れたりしないかな、とか余計なことを考えるがあとで女神の力で汚れくらい何とでもなるだろう。
だが、悲しいかな。
俺の短い腕では、少女のそれより長いとは言っても少し長さが足りなかった様だ。
これは困った。
だが、取れない、なんて言ったら少女は泣いてしまうかもしれない。
そんなことになったら周辺住民に通報されたり、なんて……。
ここで使わずしていつ使うのか、俺の力。
ということで俺は女神化しなくても、ある程度なら使えるこの力を活用することにする。
棒の先の更に五センチほど先だろうか。
そこに、鍵はあった。
少女にわからない様に棒を動かしながら力を行使して、鍵を浮き上がらせる。
そしてさも偶然引っかかったかの様に、手ごたえあり、みたいな反応をしてみせた。
「と、取れそう?」
「おう、任せとけ!」
一分くらい、俺は鍵と格闘するフリをして見事鍵を引っかけたというフリをして、棒を引き上げる。
先端の少し曲がっているところに鍵が引っかかっている。
「わ、やったぁ!すごいよお兄ちゃん!」
「そ、そうか?」
俺、君のお兄ちゃんじゃないけどな、とか心の中で呟きながら、鍵についてしまっている泥を落とすべく公園を探す。
「あっちに公園、あったよ」
少女が俺を連れて公園へ。
というかもう、俺は用済みじゃないの?
公園の水道で少女のカギを洗って、ハンカチを取り出して拭いてあげると、少女は目を輝かせて喜んだ。
まぁ、喜んでもらえて何よりだ。
通報とかされなくてよかった。
「あれ、大輝?」
「へ?」
気づくと睦月と明日香、桜子が俺たちの後ろにいた。
何してたんだこいつら……俺がどれだけ苦労をしたと……。
「この公園でクレープ食べてたんだけど……その子誰?」
「えっと……」
「まさか、さらってきたとかじゃ……」
「バカ、人聞き悪いこと言うな!」
慌てて全否定する。
さらってきた、とかでかい声で騒がれて通報でもされたらどうするんだ。
「お兄ちゃんにひどいこと言わないで!」
そんなことを考えていた俺の前に、俺を庇う様にまだ名前も知らない少女が立ちはだかった。
「お兄ちゃんは私の落とした鍵を拾ってくれたんだもん!さらわれてなんかないもん!」
きょとんとした表情でその少女を見つめる三人。
一方の俺も、まさか味方をされるとは思ってなかったから、ちょっと驚いて少女を見る。
「そ、そうなんだ?……本当なの、大輝」
「ああ、合ってるけど……」
「お嬢ちゃん、お名前なんて言うの?」
「富沢絵里香」
「何歳かな?」
「九歳」
桜子の質問に淡々と答えていく少女、絵里香ちゃん。
何だか警戒されているのは、三人の様に見える。
「まぁ、そういう訳だ。俺は何もしてないぞ」
「そんなこと言ってないでしょ……」
「お兄ちゃんは?お名前なんて言うの?」
「あ、俺?う、宇堂大輝」
「何キョドってんの、キモ」
「キモいとか言うな……」
対抗心丸出しの睦月と、他二人。
小学生の知り合いなんて……施設にはいるけど最近話してないな、そういえば。
「大輝くんっていうんだ。私、大輝くん好き」
「え、あ、そ、そうか。う、うれしいなぁ、ははは」
「…………」
三人の雰囲気が、穏やかでないものに変貌する。
小学生相手にムキになるなよ、お前ら……。
「大輝くん優しいから。だからね……」
「うん?」
「大輝くん、将来結婚してあげるね」
「え?」
とまぁ、冒頭に至るわけだ。
子どもの言うことだし、と俺は軽く受け流すことにしようかと思っていたのだが……。
「でもね、絵里香ちゃん。大輝くんは私たちの彼氏なんだよ?」
お前、いきなり小学生の夢を破壊する様なこと言わなくても……。
「私たち、ってことは大輝くん、三人も彼女いるの?」
「ううん、三人じゃないよ?九人いるんだよ~?」
お前ら……。
小学生にハーレムの実態とか教える必要あんのか……今どきの保健体育でそんな授業あるなんて俺は聞いたことないぞ。
「九人……」
ほら見ろ、絵里香ちゃんが何か複雑な顔してるじゃないか。
このまま泣いたりしないだろうな……。
高校生四人で小学生一人をいじめてる様にしか見えないんだけど、これ……。
俺も含めるのかって?
一蓮托生だろ、この場合……。
「すごいね、大輝くん!大人ってみんなそんな感じ!?もっと聞きたいな!!」
俺たちの予想に反して、絵里香ちゃんは更に俺に興味を持った様だった。
「大輝くん、メッセ交換しよ!」
「え?あ、ああ」
今どきの小学生って携帯持ってるの当たり前なんだろうか。
まぁ物騒な世の中だしな、ということで三人の冷ややかな視線を浴びながら俺は絵里香ちゃんと連絡先交換をした。
念のため、と三人も絵里香ちゃんと交換をするが、絵里香ちゃんはあまり乗り気でなかった様だったのが印象的だった。
その日、時間もそこそこ遅くなってきたということで俺たちは絵里香ちゃんを家まで送って、俺は久しぶりに施設にでも、なんて思っていたのだが。
「大輝、お話しようね」
にっこりと笑って俺の腕をがっちりホールドしてくる彼女に逆らう術もなく、敢え無くマンションに拉致された。
「で、どういうことなのかな?」
「ど、どうって……見たまんまだろ。てかお前ら、小学生相手に大人げないぞ……」
「バカね。小学生だって女の子は女の子なんだから。それに、女の子は男の子よりも成長が早いって話、きいたことあるでしょ?」
「そりゃまぁな……」
睦月が……というかその時は春海だったっけ。
俺と知り合ったときは確かに小学生だったし、大人びていた様な印象はあったけど……それはこいつが何万年も生きてる女神だったからであって、絵里香ちゃんがそういうわけでもあるまいに。
「それに、あの年頃の女の子は恋に恋するっていう感じだから……うっかりしてると本当に事案発生とかになっちゃうかもしれないよ?」
桜子がさらりとおっかないことを言い出す。
事案って、俺から絵里香ちゃんに何かするとでも思ってるのだろうか。
「お、いるな。大輝、とうとう小学生にまでその魔の手を伸ばしたって?」
愛美さんが入ってきて、物騒なことを言い出す。
マジで人に聞かれたら大問題だから、そういうの外で言うのやめてね。
「語弊があるってレベルじゃないですよ、それ……普通に助けてあげただけで……」
「でも連絡先交換してたよね?」
「…………」
「ひゅぅ!大輝やっるぅ!」
愛美さんはすごく楽しそうだ。
でも、小学生からしたら二十台半ばの女性って、おばさんとかになったりしないんだろうか。
そう考えると、絵里香ちゃんに愛美さんを会わせるのは怖い気がする。
「俺からしようって言ったんじゃないですし……それに、あの雰囲気で断るのはちょっと……」
「ごめん、絵里香ちゃん……俺、携帯持ってないんだ……とか言ったらよかったじゃん」
「それ、誰の真似?まさか俺?」
「もちろん。似てた?」
睦月が悪ふざけをしだす。
ちょっとだけ似てたのが悔しい。
「あ、望月?緊急会議よ。すぐに来て頂戴」
明日香が和歌さんを呼び出す。
睦月が神界のメンツに声をかけて、よりによって朋美を呼びに行きやがった。
俺、何も悪いことしてないのに……それどころか人助けしたはずなのに、殺されちゃう……。
「へぇ、大輝……節操ないなぁとは思ってたけど、とうとう小学生にまで……へぇ……」
「ち、違うから!マジで誤解だから!」
「まぁ、さすがに小学生に手を出すなんて思ってはいないけど……どうするの?結婚とか言われてるみたいだけど」
「騒ぐ様なことじゃなくないか?小学生だぞ?」
「世の中に絶対なんてないんだよ?そう、私みたいな神が力でも使わない限りは」
「おい、何するつもりだ……」
「いや、何もしないんだけど」
まさか神の力で絵里香ちゃんに心変わりさせようとか、そこまでする様ならさすがに俺も黙ってるわけにはいかない。
だが、そういうわけでもないみたいで、ほっと胸を撫で下ろした。
「まぁ、睦月の言うことも一理あるわよね。だって、もしよ?もし仮にその絵里香ちゃん?が成人するまでずっと大輝のこと好きでい続けたら?」
「うん、重い」
「ちょっと!何でそういうこと言うの!?女の子の気持ちを何だと思ってるわけ!?しかも即答って」
「お、お前庇ったら絶対怒るだろうが!だからとりあえず反対意見を言ってみたのに……」
「だからって、重いはないでしょうが……本当、極端なんだから」
どっちにしても怒られるんじゃないか……理不尽じゃないか?
「だが、少女が大人に恋するというのは、そんなに問題なのか?私にはちょっとわからないんだが」
ロヴンさんが口を挟む。
確かにこの人にはわからないだろうなぁ。
「神の世界には、処女懐胎した神だっているというのに。大輝ならそれくらい訳もないだろう?」
「いや、絵里香ちゃんを妊娠なんかさせたら俺警察に捕まっちゃいますよ。それ以前にここのメンツに殺されます」
「そうか……人間っていうのは難しいものなんだな」
「でもさ、正直小学生の心なんて移ろいやすいものだと思うよ?」
ノルンさん、いいこと言った。
ここへきてやっと、俺は味方を得た気がする。
「明日にはもしかしたら、違う男の子のこと好き、とか言ってるかもしれないし。それ考えたら、小学生が結婚してあげる、なんて可愛いもんじゃん」
「そうですよね?俺もそう思ってたんです」
「嘘だ。大輝、好き、とか結婚してあげるー、とか言われて鼻の下伸びてたもん」
「やめろ!冤罪なんてレベルじゃねーぞ!」
「え、そうなの?大輝」
「いや……そりゃ好かれて嫌だなんて思うほど、俺歪んでませんから……」
正直、小学生が相手とは言え、好かれて嬉しいって感情がゼロだったとは言わない。
けど、ノルンさんが言った様に明日には違う男を、なんてことは普通にあると思う。
『大輝くん!今九人の彼女さんと一緒?今度私も会ってみたいな!』
何という間の悪さ。
振動した携帯を、朋美が奪う。
「ほう。会ってみたい、だそうよ?」
「そ、そうだな」
「十人目になりたいって意思の表れかしらね」
「ま、まさか……ははは……」
「これ、明日もきっと同じこと言ってるね」
そして翌日。
さすがに今日は会うこともなかろう、なんて思って三人と一緒に校門へ。
校門のすぐ先で人だかりができているのが見えた。
何かあったのだろうか。
何やら可愛い、とか誰か待ってるの?とか聞こえるが、まさか……。
「あ、大輝くん!」
ああ……やっぱり……。
ランドセルを背負って帽子をかぶった絵里香ちゃんが、俺に走り寄ってくる。
「あ、待ってるの宇堂くんだったんだ?妹さん?」
「い、いや……」
そうです、とか言って適当にお茶を濁すのが正解だったかもしれない。
だが本人の前で妹、とかいうのは少し気が引けた。
「あ、お姉さんトイレ。実に一八二日ぶりのお通じが。先行ってて」
なんつー言い訳をするんだ、睦月……。
そんなに溜め込んだらさすがに病気になるか最悪死んでるんじゃないか?
人だかりをかき分けて俺と絵里香ちゃん、明日香と桜子は昨日の公園へ。
俺は三人に飲み物を買ってきて、手渡した。
「大輝くん、ありがとう!女慣れっていうの?すごいなぁ!」
「あ、ああ、うん、そうだね」
誰だよ、こんな純粋な子に女慣れなんて言葉教えたやつ……。
「お待たせぇ」
睦月が、魔王を……いや朋美を連れてやってきた。
一八二日分のお通じは大丈夫だったのか?
「初めまして、九人のうちの一人の、朋美です。よろしくね」
にこやかに朋美が絵里香ちゃんに自己紹介をした。
絵里香ちゃんは何処か怯えた様な様子で朋美を見ている。
なるほど、純粋な目の前では朋美の本性など隠しきれるものではない、ということか。
「大輝、あとで話があるからね?」
何でこう、モノローグ読まれるんだろう、俺。
「絵里香ちゃん、こいつ……じゃなくてこのお姉さんはね、桜井朋美っていうんだ。仲良くしてやってくれな」
ジロリと朋美が俺を見る。
背筋が凍る様な思いをしながら、俺はその視線を振り切って睦月と朋美の分の飲み物を買ってきた。
「大輝くん、パシリってやつなの?こき使われてるの?」
「はい?」
「だってさっきから忙しそうで全然私にかまってくれない」
「あ、ああ、いや違うんだよ。女の子には飲み物を、っていうのが俺のポリシーで……」
「ふぅん?お姉さんたち、あんまり大輝くんをいじめないで?私の旦那様になる人なんだから」
ピシリと空気が凍り付いた気がする。
純粋ゆえの、取り繕うことが全くない爆弾。
絵里香ちゃん……恐ろしい子っ!!
「わ、私たちは別に、いじめてなんかないよ?ねぇ大輝?」
「あ、ああ。いじめられてはいないかな」
たまにぶん殴られたり理不尽なことは結構あるけどな。
「夜プロレスごっこするくらいだよね」
「おいこら!!」
「プロレスごっこ?パパとママがたまにやってる様なやつ?」
あ、見たことあるんだ……。
ていうか生々しい。
「絵里香ちゃん、それパパとママに言っちゃだめだからね?」
「うん、大丈夫。これは大人しかやっちゃダメなやつなんだ、ってパパが言ってたから」
「…………」
この話題から早く離れよう。
うん、それが一番安全だ。
「絵里香ちゃん、もっと私の仲間を紹介してあげる」
睦月がそう言って、トイレトイレ言いながら消えていった。
「睦月お姉さんは、何処行ったの?」
「あー、えっとトイレ、かな?」
どうせ女神勢を呼びに行ってるんだろう。
もしかしたら全員集合なんてこともありえる。
「絵里香ちゃん、時間大丈夫?」
「うん、大輝くんに会いに行ってくるって言ってあるから」
「え、誰に?まさか……」
「ん?ママだよ。お友達だと思われてるみたいだったから、未来の旦那様って言っといた」
全員の表情が凍り付く。
怖い!子どもって怖い!
何てことを親に言うのか!
俺確実にマークされるじゃん!
「今度会わせてね、ってママ言ってた」
「そ、そう……」
会いたくないんだけど。
てかハーレムの実態を知ったら俺、通報されたりしないか?
「おお、この子か。大輝、お前も隅に置けないなぁ」
やっぱりきた。
この子と愛美さんを会わせるのは避けたいところだったのに……睦月に言っておけばよかった。
「この人たち全部大輝くんの彼女?すごい!歳もバラバラなんだね!」
「あ、そ、その話題は……」
「おい大輝、何か文句でもあるのか?」
「私たちの年齢が、どうかしたか?」
「あ、いえ……」
和歌さんと愛美さんに凄まれて、俺は引き下がる。
だから嫌だったんだよ……。
「お姉さんたち、いくつなの?」
純粋って、こんなに怖いんだな……俺にもあんな頃があったのか……。
「二十六だよ」
「二十五だ」
あれ、愛美さんちょっと前に二十七に……。
いや、気のせいだったかもしれない。
愛美さんが俺をじろっと見たので、俺の記憶違いだったということにしとこう。
でもきっと、絵里香ちゃん以外はみんな同じこと思ってそうだけど……。
ノルンさんたち女神勢は答えない。
というか何万歳とか言ったところで信じるわけがないんだが。
「へぇ……みんな大輝くんの彼女なのかぁ……すごいなぁ……」
絵里香ちゃんは珍しいものでも見るかの様に、全員を見まわしている。
ノルンさんやフレイヤが、やたら絵里香ちゃんを可愛がっていた。
絵里香ちゃんも二人になついている様だ。
何だか見ていてほほえましい。
「大輝くん、みんなには飲み物買ってこないの?」
「え?」
「だって、女の子には飲み物って……あ、そっか!愛美さんと和歌さんは女の人だから?」
「あ、ああうん、そう、女の子じゃなくて女の人だから……」
「ふん!!」
「おふぅ……」
愛美さんの渾身の一撃が俺の脇腹にめり込んで、俺は悶絶した。
絵里香ちゃん、何ということを……。
とは言え、このままじゃどうにもならない。
さて、どうしたものか。
痛む脇腹をさすりながら、考える。
「大輝、私たちに考えがあるんだ。任せてくれ」
和歌さんが俺に囁く。
そして、そのまま絵里香ちゃんが見ているにも関わらず、キスをした。
いきなり何を……。
そしてハーレムの面々が次々に俺にキスをする。
「ちょ、いきなり……」
「わぁ!私も!私も大輝くんにちゅってする!」
「絵里香ちゃん」
睦月が前に出る。
「これはね、大人じゃないとしちゃダメなことなの。だからね?」
睦月が絵里香ちゃんの頭に手をのせた。
「大人になっても、まだ大輝のこと好きだったらその時はキスしにおいで」
なるほど、さっきのプロレスごっこのくだりが……。
なんつー会話してんだ、なんて思ったが思わぬところで突破口が開けたという訳か。
絵里香ちゃんは何となく納得したのか、俺の方を向く。
「じゃあ、大輝くん!私十六になったらまたくるから!でも、たまにはメッセしてくれる?」
「く、くるのか……うん、メッセでも電話でも、しておいで。でも、友達はちゃんと大切にな?」
「何だ、わかっちゃってたのかぁ……」
「だって、俺たちと遊んでるより、友達と遊ぶ方が自然だろ?何なら今度、友達も一緒に遊んでやるから」
「うん、仲直りする!できたらまた連絡するからね!」
そして俺たちは絵里香ちゃんを家の前まで送る。
お母さんが出てきそうになったので、慌ててワープしたのは内緒だ。
「さて、女子小学生を惑わせた分、お仕置きはきつめにいかないとな」
愛美さんが先陣を切って俺をベッドルームに運ぶ。
この日のお仕置きは確かにきつかった。
将来ここに、絵里香ちゃんが加わったりしない様に祈るばかりだ。
「え?」
一応このセリフを言ったのは、桜子ではない。
もちろん明日香でも、他の面々でもない。
なら誰なのか。
事の発端は、今日の学校の帰り道。
先生に修学旅行での反省文を提出して、くどくどとお説教をくらい、その間に睦月やらは帰ってしまっている様だった。
夕方になってもまだ明るいこのあたりは、小学生が遊んでいたりと割と人が多く行き交う。
あいつら冷たいよなぁ、なんて考えながら道を歩いていると、一人の女の子が側溝に手を突っ込んで何やら探している様に見えた。
歳の頃は大体……十歳前後か?
小学校中学年くらい、というのが俺の見立てだった。
だが、助けるためとは言っても声をかけていいものかと少し躊躇われる。
なにしろ今の世知辛い世の中というのは、小学生の女の子に声をかけようものなら即通報、事案発生という様な時代なのだ。
防犯ブザーでも鳴らされてはたまらない。
「あ、そこのお兄さん……助けてくれませんか」
ガッデム……モタモタしてる間に、俺はその子から声をかけられてしまった。
しまった、さっさと立ち去っておくべきだったのだ。
泣きそうな顔をして、俺に助けを求める少女。
それを放置していったら、それはそれで俺が悪者にされそうな気がして、俺は仕方なく応えることにした。
「どうしたの?何か探してるの?」
「うん……おうちのカギ、ここに落っこっちゃって……」
見るとその側溝は本当に側溝か?というくらいに深い。
しかし幅がそこまでないので、いくらこの子が小さいからと言っても入っていける様なところではなかった。
確かに、一瞬光るものが見えた様な気がする。
あれか……遠いな。
「ふむ、じゃあお兄ちゃんがとってあげよう。ちょっとその棒貸して」
少女が手を突っ込んで一生懸命操っていたその棒を受け取って、俺は側溝に手を突っ込む。
制服が汚れたりしないかな、とか余計なことを考えるがあとで女神の力で汚れくらい何とでもなるだろう。
だが、悲しいかな。
俺の短い腕では、少女のそれより長いとは言っても少し長さが足りなかった様だ。
これは困った。
だが、取れない、なんて言ったら少女は泣いてしまうかもしれない。
そんなことになったら周辺住民に通報されたり、なんて……。
ここで使わずしていつ使うのか、俺の力。
ということで俺は女神化しなくても、ある程度なら使えるこの力を活用することにする。
棒の先の更に五センチほど先だろうか。
そこに、鍵はあった。
少女にわからない様に棒を動かしながら力を行使して、鍵を浮き上がらせる。
そしてさも偶然引っかかったかの様に、手ごたえあり、みたいな反応をしてみせた。
「と、取れそう?」
「おう、任せとけ!」
一分くらい、俺は鍵と格闘するフリをして見事鍵を引っかけたというフリをして、棒を引き上げる。
先端の少し曲がっているところに鍵が引っかかっている。
「わ、やったぁ!すごいよお兄ちゃん!」
「そ、そうか?」
俺、君のお兄ちゃんじゃないけどな、とか心の中で呟きながら、鍵についてしまっている泥を落とすべく公園を探す。
「あっちに公園、あったよ」
少女が俺を連れて公園へ。
というかもう、俺は用済みじゃないの?
公園の水道で少女のカギを洗って、ハンカチを取り出して拭いてあげると、少女は目を輝かせて喜んだ。
まぁ、喜んでもらえて何よりだ。
通報とかされなくてよかった。
「あれ、大輝?」
「へ?」
気づくと睦月と明日香、桜子が俺たちの後ろにいた。
何してたんだこいつら……俺がどれだけ苦労をしたと……。
「この公園でクレープ食べてたんだけど……その子誰?」
「えっと……」
「まさか、さらってきたとかじゃ……」
「バカ、人聞き悪いこと言うな!」
慌てて全否定する。
さらってきた、とかでかい声で騒がれて通報でもされたらどうするんだ。
「お兄ちゃんにひどいこと言わないで!」
そんなことを考えていた俺の前に、俺を庇う様にまだ名前も知らない少女が立ちはだかった。
「お兄ちゃんは私の落とした鍵を拾ってくれたんだもん!さらわれてなんかないもん!」
きょとんとした表情でその少女を見つめる三人。
一方の俺も、まさか味方をされるとは思ってなかったから、ちょっと驚いて少女を見る。
「そ、そうなんだ?……本当なの、大輝」
「ああ、合ってるけど……」
「お嬢ちゃん、お名前なんて言うの?」
「富沢絵里香」
「何歳かな?」
「九歳」
桜子の質問に淡々と答えていく少女、絵里香ちゃん。
何だか警戒されているのは、三人の様に見える。
「まぁ、そういう訳だ。俺は何もしてないぞ」
「そんなこと言ってないでしょ……」
「お兄ちゃんは?お名前なんて言うの?」
「あ、俺?う、宇堂大輝」
「何キョドってんの、キモ」
「キモいとか言うな……」
対抗心丸出しの睦月と、他二人。
小学生の知り合いなんて……施設にはいるけど最近話してないな、そういえば。
「大輝くんっていうんだ。私、大輝くん好き」
「え、あ、そ、そうか。う、うれしいなぁ、ははは」
「…………」
三人の雰囲気が、穏やかでないものに変貌する。
小学生相手にムキになるなよ、お前ら……。
「大輝くん優しいから。だからね……」
「うん?」
「大輝くん、将来結婚してあげるね」
「え?」
とまぁ、冒頭に至るわけだ。
子どもの言うことだし、と俺は軽く受け流すことにしようかと思っていたのだが……。
「でもね、絵里香ちゃん。大輝くんは私たちの彼氏なんだよ?」
お前、いきなり小学生の夢を破壊する様なこと言わなくても……。
「私たち、ってことは大輝くん、三人も彼女いるの?」
「ううん、三人じゃないよ?九人いるんだよ~?」
お前ら……。
小学生にハーレムの実態とか教える必要あんのか……今どきの保健体育でそんな授業あるなんて俺は聞いたことないぞ。
「九人……」
ほら見ろ、絵里香ちゃんが何か複雑な顔してるじゃないか。
このまま泣いたりしないだろうな……。
高校生四人で小学生一人をいじめてる様にしか見えないんだけど、これ……。
俺も含めるのかって?
一蓮托生だろ、この場合……。
「すごいね、大輝くん!大人ってみんなそんな感じ!?もっと聞きたいな!!」
俺たちの予想に反して、絵里香ちゃんは更に俺に興味を持った様だった。
「大輝くん、メッセ交換しよ!」
「え?あ、ああ」
今どきの小学生って携帯持ってるの当たり前なんだろうか。
まぁ物騒な世の中だしな、ということで三人の冷ややかな視線を浴びながら俺は絵里香ちゃんと連絡先交換をした。
念のため、と三人も絵里香ちゃんと交換をするが、絵里香ちゃんはあまり乗り気でなかった様だったのが印象的だった。
その日、時間もそこそこ遅くなってきたということで俺たちは絵里香ちゃんを家まで送って、俺は久しぶりに施設にでも、なんて思っていたのだが。
「大輝、お話しようね」
にっこりと笑って俺の腕をがっちりホールドしてくる彼女に逆らう術もなく、敢え無くマンションに拉致された。
「で、どういうことなのかな?」
「ど、どうって……見たまんまだろ。てかお前ら、小学生相手に大人げないぞ……」
「バカね。小学生だって女の子は女の子なんだから。それに、女の子は男の子よりも成長が早いって話、きいたことあるでしょ?」
「そりゃまぁな……」
睦月が……というかその時は春海だったっけ。
俺と知り合ったときは確かに小学生だったし、大人びていた様な印象はあったけど……それはこいつが何万年も生きてる女神だったからであって、絵里香ちゃんがそういうわけでもあるまいに。
「それに、あの年頃の女の子は恋に恋するっていう感じだから……うっかりしてると本当に事案発生とかになっちゃうかもしれないよ?」
桜子がさらりとおっかないことを言い出す。
事案って、俺から絵里香ちゃんに何かするとでも思ってるのだろうか。
「お、いるな。大輝、とうとう小学生にまでその魔の手を伸ばしたって?」
愛美さんが入ってきて、物騒なことを言い出す。
マジで人に聞かれたら大問題だから、そういうの外で言うのやめてね。
「語弊があるってレベルじゃないですよ、それ……普通に助けてあげただけで……」
「でも連絡先交換してたよね?」
「…………」
「ひゅぅ!大輝やっるぅ!」
愛美さんはすごく楽しそうだ。
でも、小学生からしたら二十台半ばの女性って、おばさんとかになったりしないんだろうか。
そう考えると、絵里香ちゃんに愛美さんを会わせるのは怖い気がする。
「俺からしようって言ったんじゃないですし……それに、あの雰囲気で断るのはちょっと……」
「ごめん、絵里香ちゃん……俺、携帯持ってないんだ……とか言ったらよかったじゃん」
「それ、誰の真似?まさか俺?」
「もちろん。似てた?」
睦月が悪ふざけをしだす。
ちょっとだけ似てたのが悔しい。
「あ、望月?緊急会議よ。すぐに来て頂戴」
明日香が和歌さんを呼び出す。
睦月が神界のメンツに声をかけて、よりによって朋美を呼びに行きやがった。
俺、何も悪いことしてないのに……それどころか人助けしたはずなのに、殺されちゃう……。
「へぇ、大輝……節操ないなぁとは思ってたけど、とうとう小学生にまで……へぇ……」
「ち、違うから!マジで誤解だから!」
「まぁ、さすがに小学生に手を出すなんて思ってはいないけど……どうするの?結婚とか言われてるみたいだけど」
「騒ぐ様なことじゃなくないか?小学生だぞ?」
「世の中に絶対なんてないんだよ?そう、私みたいな神が力でも使わない限りは」
「おい、何するつもりだ……」
「いや、何もしないんだけど」
まさか神の力で絵里香ちゃんに心変わりさせようとか、そこまでする様ならさすがに俺も黙ってるわけにはいかない。
だが、そういうわけでもないみたいで、ほっと胸を撫で下ろした。
「まぁ、睦月の言うことも一理あるわよね。だって、もしよ?もし仮にその絵里香ちゃん?が成人するまでずっと大輝のこと好きでい続けたら?」
「うん、重い」
「ちょっと!何でそういうこと言うの!?女の子の気持ちを何だと思ってるわけ!?しかも即答って」
「お、お前庇ったら絶対怒るだろうが!だからとりあえず反対意見を言ってみたのに……」
「だからって、重いはないでしょうが……本当、極端なんだから」
どっちにしても怒られるんじゃないか……理不尽じゃないか?
「だが、少女が大人に恋するというのは、そんなに問題なのか?私にはちょっとわからないんだが」
ロヴンさんが口を挟む。
確かにこの人にはわからないだろうなぁ。
「神の世界には、処女懐胎した神だっているというのに。大輝ならそれくらい訳もないだろう?」
「いや、絵里香ちゃんを妊娠なんかさせたら俺警察に捕まっちゃいますよ。それ以前にここのメンツに殺されます」
「そうか……人間っていうのは難しいものなんだな」
「でもさ、正直小学生の心なんて移ろいやすいものだと思うよ?」
ノルンさん、いいこと言った。
ここへきてやっと、俺は味方を得た気がする。
「明日にはもしかしたら、違う男の子のこと好き、とか言ってるかもしれないし。それ考えたら、小学生が結婚してあげる、なんて可愛いもんじゃん」
「そうですよね?俺もそう思ってたんです」
「嘘だ。大輝、好き、とか結婚してあげるー、とか言われて鼻の下伸びてたもん」
「やめろ!冤罪なんてレベルじゃねーぞ!」
「え、そうなの?大輝」
「いや……そりゃ好かれて嫌だなんて思うほど、俺歪んでませんから……」
正直、小学生が相手とは言え、好かれて嬉しいって感情がゼロだったとは言わない。
けど、ノルンさんが言った様に明日には違う男を、なんてことは普通にあると思う。
『大輝くん!今九人の彼女さんと一緒?今度私も会ってみたいな!』
何という間の悪さ。
振動した携帯を、朋美が奪う。
「ほう。会ってみたい、だそうよ?」
「そ、そうだな」
「十人目になりたいって意思の表れかしらね」
「ま、まさか……ははは……」
「これ、明日もきっと同じこと言ってるね」
そして翌日。
さすがに今日は会うこともなかろう、なんて思って三人と一緒に校門へ。
校門のすぐ先で人だかりができているのが見えた。
何かあったのだろうか。
何やら可愛い、とか誰か待ってるの?とか聞こえるが、まさか……。
「あ、大輝くん!」
ああ……やっぱり……。
ランドセルを背負って帽子をかぶった絵里香ちゃんが、俺に走り寄ってくる。
「あ、待ってるの宇堂くんだったんだ?妹さん?」
「い、いや……」
そうです、とか言って適当にお茶を濁すのが正解だったかもしれない。
だが本人の前で妹、とかいうのは少し気が引けた。
「あ、お姉さんトイレ。実に一八二日ぶりのお通じが。先行ってて」
なんつー言い訳をするんだ、睦月……。
そんなに溜め込んだらさすがに病気になるか最悪死んでるんじゃないか?
人だかりをかき分けて俺と絵里香ちゃん、明日香と桜子は昨日の公園へ。
俺は三人に飲み物を買ってきて、手渡した。
「大輝くん、ありがとう!女慣れっていうの?すごいなぁ!」
「あ、ああ、うん、そうだね」
誰だよ、こんな純粋な子に女慣れなんて言葉教えたやつ……。
「お待たせぇ」
睦月が、魔王を……いや朋美を連れてやってきた。
一八二日分のお通じは大丈夫だったのか?
「初めまして、九人のうちの一人の、朋美です。よろしくね」
にこやかに朋美が絵里香ちゃんに自己紹介をした。
絵里香ちゃんは何処か怯えた様な様子で朋美を見ている。
なるほど、純粋な目の前では朋美の本性など隠しきれるものではない、ということか。
「大輝、あとで話があるからね?」
何でこう、モノローグ読まれるんだろう、俺。
「絵里香ちゃん、こいつ……じゃなくてこのお姉さんはね、桜井朋美っていうんだ。仲良くしてやってくれな」
ジロリと朋美が俺を見る。
背筋が凍る様な思いをしながら、俺はその視線を振り切って睦月と朋美の分の飲み物を買ってきた。
「大輝くん、パシリってやつなの?こき使われてるの?」
「はい?」
「だってさっきから忙しそうで全然私にかまってくれない」
「あ、ああ、いや違うんだよ。女の子には飲み物を、っていうのが俺のポリシーで……」
「ふぅん?お姉さんたち、あんまり大輝くんをいじめないで?私の旦那様になる人なんだから」
ピシリと空気が凍り付いた気がする。
純粋ゆえの、取り繕うことが全くない爆弾。
絵里香ちゃん……恐ろしい子っ!!
「わ、私たちは別に、いじめてなんかないよ?ねぇ大輝?」
「あ、ああ。いじめられてはいないかな」
たまにぶん殴られたり理不尽なことは結構あるけどな。
「夜プロレスごっこするくらいだよね」
「おいこら!!」
「プロレスごっこ?パパとママがたまにやってる様なやつ?」
あ、見たことあるんだ……。
ていうか生々しい。
「絵里香ちゃん、それパパとママに言っちゃだめだからね?」
「うん、大丈夫。これは大人しかやっちゃダメなやつなんだ、ってパパが言ってたから」
「…………」
この話題から早く離れよう。
うん、それが一番安全だ。
「絵里香ちゃん、もっと私の仲間を紹介してあげる」
睦月がそう言って、トイレトイレ言いながら消えていった。
「睦月お姉さんは、何処行ったの?」
「あー、えっとトイレ、かな?」
どうせ女神勢を呼びに行ってるんだろう。
もしかしたら全員集合なんてこともありえる。
「絵里香ちゃん、時間大丈夫?」
「うん、大輝くんに会いに行ってくるって言ってあるから」
「え、誰に?まさか……」
「ん?ママだよ。お友達だと思われてるみたいだったから、未来の旦那様って言っといた」
全員の表情が凍り付く。
怖い!子どもって怖い!
何てことを親に言うのか!
俺確実にマークされるじゃん!
「今度会わせてね、ってママ言ってた」
「そ、そう……」
会いたくないんだけど。
てかハーレムの実態を知ったら俺、通報されたりしないか?
「おお、この子か。大輝、お前も隅に置けないなぁ」
やっぱりきた。
この子と愛美さんを会わせるのは避けたいところだったのに……睦月に言っておけばよかった。
「この人たち全部大輝くんの彼女?すごい!歳もバラバラなんだね!」
「あ、そ、その話題は……」
「おい大輝、何か文句でもあるのか?」
「私たちの年齢が、どうかしたか?」
「あ、いえ……」
和歌さんと愛美さんに凄まれて、俺は引き下がる。
だから嫌だったんだよ……。
「お姉さんたち、いくつなの?」
純粋って、こんなに怖いんだな……俺にもあんな頃があったのか……。
「二十六だよ」
「二十五だ」
あれ、愛美さんちょっと前に二十七に……。
いや、気のせいだったかもしれない。
愛美さんが俺をじろっと見たので、俺の記憶違いだったということにしとこう。
でもきっと、絵里香ちゃん以外はみんな同じこと思ってそうだけど……。
ノルンさんたち女神勢は答えない。
というか何万歳とか言ったところで信じるわけがないんだが。
「へぇ……みんな大輝くんの彼女なのかぁ……すごいなぁ……」
絵里香ちゃんは珍しいものでも見るかの様に、全員を見まわしている。
ノルンさんやフレイヤが、やたら絵里香ちゃんを可愛がっていた。
絵里香ちゃんも二人になついている様だ。
何だか見ていてほほえましい。
「大輝くん、みんなには飲み物買ってこないの?」
「え?」
「だって、女の子には飲み物って……あ、そっか!愛美さんと和歌さんは女の人だから?」
「あ、ああうん、そう、女の子じゃなくて女の人だから……」
「ふん!!」
「おふぅ……」
愛美さんの渾身の一撃が俺の脇腹にめり込んで、俺は悶絶した。
絵里香ちゃん、何ということを……。
とは言え、このままじゃどうにもならない。
さて、どうしたものか。
痛む脇腹をさすりながら、考える。
「大輝、私たちに考えがあるんだ。任せてくれ」
和歌さんが俺に囁く。
そして、そのまま絵里香ちゃんが見ているにも関わらず、キスをした。
いきなり何を……。
そしてハーレムの面々が次々に俺にキスをする。
「ちょ、いきなり……」
「わぁ!私も!私も大輝くんにちゅってする!」
「絵里香ちゃん」
睦月が前に出る。
「これはね、大人じゃないとしちゃダメなことなの。だからね?」
睦月が絵里香ちゃんの頭に手をのせた。
「大人になっても、まだ大輝のこと好きだったらその時はキスしにおいで」
なるほど、さっきのプロレスごっこのくだりが……。
なんつー会話してんだ、なんて思ったが思わぬところで突破口が開けたという訳か。
絵里香ちゃんは何となく納得したのか、俺の方を向く。
「じゃあ、大輝くん!私十六になったらまたくるから!でも、たまにはメッセしてくれる?」
「く、くるのか……うん、メッセでも電話でも、しておいで。でも、友達はちゃんと大切にな?」
「何だ、わかっちゃってたのかぁ……」
「だって、俺たちと遊んでるより、友達と遊ぶ方が自然だろ?何なら今度、友達も一緒に遊んでやるから」
「うん、仲直りする!できたらまた連絡するからね!」
そして俺たちは絵里香ちゃんを家の前まで送る。
お母さんが出てきそうになったので、慌ててワープしたのは内緒だ。
「さて、女子小学生を惑わせた分、お仕置きはきつめにいかないとな」
愛美さんが先陣を切って俺をベッドルームに運ぶ。
この日のお仕置きは確かにきつかった。
将来ここに、絵里香ちゃんが加わったりしない様に祈るばかりだ。
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