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本編
大輝編53話~異世界へ行こう~
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「大輝、今度時間ある?」
「今度って?あと時間ってどれくらいだ?」
「近いうち。あと、時間にしたら二日程度かな」
睦月がこんなことを言い出すとき、大体はロクでもないことだと相場が決まっているのだが、今回はやや事情が違いそうな様子だった。
少し俺を巻き込むことを躊躇っている様な、そんな印象を受ける。
「大変そうな用事か?てか俺でいいの?」
「うん、他に必要なメンバーには声かけてあるから」
睦月が指定してきたのは、翌日の夕方だった。
えらい半端な時間を指定してくるな、と思ったが特に用事もなかったので承諾した。
「ちょっと異世界に行くから」
「異世界?もしかして去年英雄を選出したあそこか?」
「うん。ちょっとあそこの事情がね。ロキから連絡受けて、旅が停滞し始めてるって」
「ふむ。平和に暮らし始めちゃってるってことか?別に悪いことじゃないんじゃ?」
「いやいや、思い出してよ。旅の目的はドラゴン討伐と、その大元を絶つことだから。そうしないと世界はドラゴンに滅ぼされちゃうんだよ?」
「ああ、なるほどな。そりゃ確かに一大事だ。ってことは何だ、発破でもかけに行くのか?」
「まぁ、そうなるんだけど……場合によっては主人公クラスの人間をタイムリープさせたりって措置が必要になるかもしれない」
「時間遡行させるのか……それって、まずかったりしないの?」
「それについては大丈夫。一応、こういう事態は予期してたみたいで、ロキももう一個コピー作ったって言ってたから」
何だか大がかりな話だ。
俺なんかが行って何すればいいのか、想像がつかないがとりあえずは言う通りにしようということになった。
俺の他に、ロキとフレイヤ、トールという雷神を連れてくるらしい。
人間界からはほかに行くメンバーはいないという。
「まぁ、当初朋美似のラスボスがいる予定だったんだけどね。それに私たちが成り代わって彼らの前に立ちはだかることになると思う」
「ふむ、面白そうだな」
「まぁ、面白いことばっかりじゃないとは思うけど、一緒にきてくれるなら助かる」
聞いてるよりもおそらくは大変な話なんだろうが、異世界というのはどうも男として憧れる部分がある。
わくわくする気持ちは大きく、向こうでモンスターに襲われたらどうしよう、とか色々妄想してしまう。
もちろん襲われたからって、結局俺じゃなくても周りの神々が倒してしまうんだろうと思うが。
翌日、睦月が念じると、すぐに景色が変わって俺たちは異世界にきたんだと実感する。
明らかに人間界とも神界とも違う世界。
自然がかなり多めで、建物なんかも現代とは大分文明が違うのだとわかる。
「さて、じゃあちょっと移動するから」
更に睦月が念じて、また景色が変わる。
かなり広めの建物の中の様で、薄暗い感じがするが明かりは灯っている様だ。
「きたね。久しぶりだね、大輝」
「ロキか、久しぶり。その節は世話になった……よな?」
「まぁ、今の大輝があるのは半分ロキとフレイヤのおかげだからね」
「お前が大輝か、噂は聞いてる。スルーズにも勝ったそうだな」
ひげ面のむさい感じのおっさんが混ざっている。
「ああ、大輝紹介しとくね。このおっさんがトールだから。雷神って呼ばれてる」
「俺がおっさんならお前はおばさんだろうが」
「見た目の話だから。私ちゃんとピチピチしてるでしょ」
「何万年も生きててその見た目だと、人間の感性で言ったら化け物なんじゃないのか?なぁ大輝」
「は、ははは……」
割とこの二人は仲が良い様だ。
別にヤキモチを妬く様な感じではないが、やや複雑な心境ではある。
「心配しなくても、こいつとどうにかなったりとかありえないから」
「そりゃこっちのセリフだっつの。大体俺には妻がいる」
「ああ、まだ捨てられてなかったんだ?」
「バカが、ラブラブだわ」
「ま、まぁそれはいいとして……これからどうするんだ?ロキ一人で行っちゃったけど」
「今ロキが宣戦布告に行ってて、私たちはここで待ち受けるだけだね。多分明日になると思うけど」
「なるほど、戦闘になることもあるのか?」
俺の問いかけに答えたのはトールさんだった。
「まぁ、高確率でそうなるだろうな。連中の力を見たいというのもあるが、それ以上に俺が戦いたい」
「はぁ……」
「大輝、トールはほっといていいから。こいつ戦いか酒しか基本興味ないからさ」
「そ、そうか。まぁ、俺の出番はほとんどなさそうか、そうなると」
「そんなことはない。二人ずつ四パーティに分かれるはずだからな。お前には一番重要なところをやってもらう予定なんだ」
「え?俺が?」
「だって、この中で一番強いの大輝だし」
「いやいや、通常状態だったらこの中の誰にも勝てないっての……」
そもそも睦月に関してだって、あれは半分わざと受けてくれた様なものだったと俺は思ってる。
そうじゃなかったら、吹っ飛ばされてたのは間違いなく俺の方だろう。
もちろん、神の力を持っているとは言っても今回の相手は人間だし、負けるつもりはないが……やってみるまでわからない。
「大輝、不安なの?一回抜いておく?」
フレイヤが下品な慰め方をしてくる。
俺はフレイヤのこういうところは嫌いじゃないが、さすがに今日は良くない気がしてやんわりと辞退しておいた。
翌日になって、睦月に起こされた。
朝食の用意が出来ているから、とのことだったのでだだっ広いこの城の中を歩いて、洗面所を目指す。
洗面所へ行く途中で細長いテーブルの置いてある部屋があって、そこでトールやロキ、フレイヤが食事をとっていた。
神でも普通に飯食うんだな。
顔を洗って、俺も席に着くと目の前に突如料理が現れる。
人間界ではさすがに見慣れない光景に面食らいはしたが、ここはもう異世界だし、と割り切って食事に専念した。
あと数時間もしたらこっちの英雄とやらがやってくるわけか。
俺は顔とか見てないからわからないけど、強面な人たちじゃないことを祈る。
女で強面っていうのもちょっと嫌だけど……どうせなら優男二人にその辺にいそうな女で固まってると、気持ち的にも少し楽なんだけどな。
「来るみたいだね。大輝、そろそろ準備をしてくれ」
そう言われて、何かそれらしい衣装を渡される。
いよいよファンタジーの世界にやってきたという気持ちが強くなってきた。
剣なんかは正直自分で生成できるし、必要ならその都度出したらいい。
「じゃあ、トールは確か戦いたい相手決まってるんだったよね」
「ああ、雷使いがいると聞いてるのでな。どれほどのものか見極めたい」
「僕も昨日ケンカ売られた相手がいるから、その子の相手をするよ。となるとフレイヤは余りものになっちゃうんだけど、いいかな?」
「問題ないわよ。私の本職は戦いじゃないんだけどね。さすがに人間相手に遅れは取らないわ」
「で、大輝とスルーズは急成長中の彼、と」
「そいつ、強いのか?」
「んー、まぁ人間の中では飛びぬけてると思うけど所詮は人間だからね。大輝が本気になったら一瞬だよ。殺しちゃわない様に気を付けてくれ」
所用を済ませて、英雄一行を待つ。
相手が格下であることがわかっていても、やはりこういうときは多少緊張する。
「じゃあ、僕らは待機しているから。そちらもよろしくね」
そう言ってロキ、フレイヤ、トールが消えた。
別室で待つということなのだろう。
睦月もスルーズの姿に戻って敵を待ち受ける。
この姿を見るのも久しぶりな気がする。
思えば睦月は人間の姿のままでもかなりの力を使えるが、やはり慣れとか訓練の賜物なのだろうか。
敵の襲来に備えて、俺も女神化しておく。
「来たみたいだね。準備はいい?」
「ああ、問題ない」
睦月が一歩前に出て、敵の到着を見届けた。
「初めまして、朔……と遥、待ってたよ」
睦月が声をかけた相手は二人。
若い男女だった。
二人とも日本人に見える。
こんな、俺たちと年齢的に変わらなそうなやつらが、ドラゴンに立ち向かっていたというのか?
二人は俺たちを見て、やや驚きの表情を浮かべている。
「その羽、本物なのか?」
敵の男の方が尋ねる。
彼は巨大な両手剣を背中に携えていた。
マントがいかにも冒険者という雰囲気を醸し出している。
「本物だよ。飛べもするけど、これを動力としなくても飛べるんだけどね」
「万能だな。その万能な力で、お前はこの城も作ったし……何なら世界ごと作ったんだ、そうだろ?」
「んー……惜しい。七十点てところかな。城はそうだね、私が作ったものだよ。階段もそう。けど、世界は違う。今頃、メラニーと戦ってるんじゃないかな、世界を作った本人は」
メラニーって誰だ?
女の名前っぽいけど……。
だが、朔と呼ばれたその男の顔色が目に見えて変わった様に見える。
恋仲だったりするのかもしれないな。
ロキって俺よく知らないんだけど、やっぱり強いんだろうなぁ……。
「おい、まさか……」
男の方が青い顔をしながら睦月をにらむ。
ロキとの戦いを案じているのか、少し焦りが見え始めている。
「昨日、そっちのコテージにお邪魔した男がいたでしょ?あれがね、戦いたいって。力を見てみたいって言ってたから譲ってあげたんだ」
「さすがに、あれには勝てる気がしねぇぞ……」
「へぇ、実力差を見抜くなんて、やるね。けど私には勝てるって、そう思ってるの?」
「どうだかな……正直お前ら何人いるんだか知らねぇが、連戦になったら普通にこっちが全滅するんじゃないかって、今は思うよ」
どうやら男の方は冷静にこちらとの戦力差を把握した様だった。
それでも挑もうというのは、やはり守りたいものがあるから、ということなのかもしれない。
限りなくこちら側の人間に近い部分を持っているが、これもまた作り物なのだろうか。
俺たちとの戦力差を考えているのか、男は少し震えている様にも見える。
戦意喪失には至っていない様だが、この男を相手にするのは少し気が引ける。
「私はもちろん、隣にいるのにも、君は勝てないんじゃないかな、朔」
「ひ弱そうに見えるけどな。けど、お前と同様に万能なんだとしたら、さすがにやばいか……」
俺、ひ弱そうに見えるのか、そうか……。
まぁ確かにうちの女性陣を相手にして、勝てることなんかほとんどないもんな。
「俺は、万能なんかじゃないけどな。出来ることもこいつに比べたら、そう多くないし。力の絶対量が違う」
一応自分のことだし、正直に伝える。
ここで虚勢を張っても、大して意味はないだろう。
「お前、俺っ娘なのか。変わってんな」
いや、俺っ娘って……あ、そうか今俺女神なんだっけ。
胸もあるし、そう見えても仕方ないよな。
「ちょっと事情があってな。元々は男なんだ。女神でもあるけど」
「何でもありだな、お前ら……」
諦めと呆れた様な感情が入り混じった様な顔で、朔は俺を見た。
まぁ、神だしな。
朔が剣を抜くのを見て、遥も弓を構える。
いよいよ始まるのか。
「実力の差を理解してながら挑もうって言うの?」
「そうだよ。お前らを何とかして倒して、今までのこと全部謝罪してもらう。俺の友達を死なせたことも、罪も無い人たちを龍に襲わせたことも」
まぁ、ロキが作ったものだって言っても感情だってある。
彼らには彼らの、やらなければならない事情があるのだろう。
「やめといた方が無難だと思うけどね。大輝、どう思う?ああ、大輝って言うのはこの子の名前だよ。私はスルーズって言うんだ」
「まぁ、お前の言う通りだな。手加減なしで戦ったら、やられたことにすら気づかないで死ぬ、なんてこともあるだろうし」
俺たちが本気で戦ったら多分骨も残らないんだろう。
まともに食らえば、この睦月ですら消滅したほどの力。
これを目の前にいる二人にぶつけるのはさすがにまずい。
ロキが殺さない様に、って言っていたし手加減は必要だな。
「スルーズって……戦女神の……?」
遥が驚愕の表情で睦月を見る。
もしかして、少しは知識があるのか?
「物知りだね。私は伝説上じゃそこまで認知度高くないって認識でいたんだけど」
「北欧神話は一通り目を通しましたから……けど、そんな大それた相手と戦うなんて……」
遥も朔同様少しずつ体が震えてきている様だ。
相手が神であることを認識したのであれば、これもまた仕方のないことかもしれない。
「遥は賢明だね。そう、戦えば無事では済まない、なんてレベルじゃない。まず確実に死ぬだろうね」
実力差の大きく離れた相手であっても、睦月は容赦しないと言わんばかりにしれっと言った。
この一言に、遥もはっとした顔をする。
目の前に迫る死というこの状況に、どう立ち向かうかを考えている様に見えた。
睦月は剣を召喚して、軽く振って朔を見る。
「でも、やるって言うなら相手にはなるよ。その前に、話くらいはしてもいいかなって私は思ってるけど」
「おい、本当にやる気か?」
まだもう少し、彼らの話を聞いてからでもいい、と俺は考えた。
正直、こちらがゲームとかでいう管理者側だとしてもあまりにも一方的ではないかと思ったのだ。
「話って、何だ?この世界の成り立ちでも説明してくれるのか?」
「それが聞きたいなら教えるけど、君が聞きたいのはそんなこと?」
「……正直、わからないことだらけだ。お前ら、俺たちに何をさせたいんだ?」
「なるほど。じゃあ簡単に言っとくね。君たちにさせたいこと、それは人間の可能性を見せてもらうこと、かな」
「可能性?それは一体……」
それは俺も以前聞いた話ではある。
それを説明することで彼らはやる気を再燃する、とでも言うのだろうか。
「さっき大輝が言った様に、この子は元々人間の男の子だった。そんな彼がある日突然、女神になった。何でだと思う?」
謎かけでもするかの様に、睦月は言う。
剣をおろして、とりあえずは話し合おうという意思を見せている様だ。
「何でって……そんなのわかんねぇよ。神の力に触れたから、とかその程度しか思いつかねぇな」
「近いところまでは行ったね。正解は、彼が女神の子どもだったから。途中で気づくきっかけがあって、色々あって彼は女神の力を得た。つまり、神の力を与えた人間は覚醒する可能性を秘めている、っていうのが私たちの見方」
「狂ってやがんな……とても正気の沙汰とは思えねぇ」
確かに、俺のは特殊というかまず普通に考えてありえないケースだ。
全ての人間がそうであったなら、今の世界はもっと違った姿を見せていただろう。
「そうかな?それはあくまで人間の、倫理的な理屈であって、倫理だって人間が勝手に作り上げたものだよ。守らなければ罰するという仕組みがあって初めて成立する」
これも一理ある。
人間が、力を持たないがゆえに作り出したものだともいえる。
それがあるから今の世界は成り立っているのだ。
「覚醒しないまでも、神の力の一部を行使できる人間が、どこまで戦えるのか。我々に抗うほどの力を持ちえるのか。それを、私たちは見たい」
「そうか。俺たちは、お前らにとって何なんだ?」
「んー、何ら他の人間と変わらない仕組みの元に生きている、データではあるね」
ロキが作ったデータ。
だけど、普通の人間と同じ様な考えも倫理観もある。
本当に戦っていいのか、俺はまだ少し迷っている。
「何となく想像のついてた答えだが……改めて聞かされるとショックではあるな」
「でも、勘違いしないでね。君たちが自分たちで得た経験、記憶は紛れもなく君たち自身で獲得したもので、君たちの意思があったから得られたものではあるから」
「大体わかった。つーことは、作られた世界も、大輝……だっけ?がいた世界のものとは違うってことだよな」
「そうなるね。ほぼ百パーセントの一致率を持っている世界ではあるんだけどね。細かいところで違いが出てくる。それはそうだよね。それぞれが意思を持ってるんだから」
その時、何かひりつく様な感覚があった。
もしかして、他の面々の戦いが終わったのだろうか。
だとしたら、もうそろそろロキたちもこちらに合流するかもしれない。
「おい、そろそろだと思うぞ」
睦月が頷いて、天井を見上げる。
何かあるんだろうか。
「そろそろって、何の話だよ」
「君たちの仲間と、私たちの仲間との戦いが終わりそうってことだよ。こっちもぼちぼち、始めとくか」
睦月が再度剣を構える。
俺の中にも、こいつと戦ってみたいという感情が少し芽生えていた。
「待て、俺が先にやる。ちょっと下がっててくれないか。手は出すなよ?」
「仕方ないなぁ、大輝は……そんなに朔がお気に入りなの?」
「お前だって人のことは言えないだろうが」
こう見えて、睦月は割と朔を気に入っている。
それは話しているのを見て何となく感じていた。
もっとも朔本人は、そんなことに気づくだけの余裕がある様には見えないわけだが。
「そっちは二人でいい。俺とまず戦ってもらおうか」
睦月とかつて戦った時と同じ、炎の剣を召喚して朔と対峙する。
力の差がある以上、一対一でやっても意味はない。
朔と遥もそれぞれ武器を構えた。
「気は抜かない方がいいな。さっきも言った通り、気づく間もなく死んでる、なんてこともあるんだから」
そう言って俺は、一気に二人との距離を詰めた。
朔は武器破壊を懸念してか、俺から距離を取った。
「心配しなくても、お前らが持ってる武器は神の武具を作る際に使われる特殊金属製だ。熱で溶けたりはしない」
「そいつはご親切にどうも……んじゃ改めて」
俺の言葉に安心したのか、朔は再度武器を構えた。
再び距離を詰めて俺と朔が打ち合う。
まずは朔の実力を見ておくか。
火球を放って対応する様子を見たりと、基本的には朔に狙いを定めた攻撃を繰り返す。
向こうは遥が援護したりしてはいるが、どちらの攻撃も俺に当たることはない。
接近戦が得意なのかわからないが、今のままで朔が俺と打ち合っていたら多分この剣の熱で朔は倒れることになる。
「朔くん!距離を取って!」
遥が気づいた。
離れて見ている分、気づくのが早かった様だ。
「あ!?そんな余裕……」
朔が少しだけ距離を取ろうとするが、俺が追いすがる。
その時、俺の足元に遥の放った矢が刺さった。
「む?」
床がせりあがってきて、それが攻撃魔法であることを瞬時に理解した。
剣を振ってそれを相殺したが、その隙に朔は俺から離れる。
「あの剣に接近戦で挑んだら、普通の人間じゃまずもたないよ」
「んなこと言ったって……」
なかなか鋭い様だ。
俺の剣の特性を見抜いたということか。
太陽の力を宿すこの剣は、何もしていなくても相当な高温だ。
決死の覚悟で、遥が俺を見る。
「十秒稼ぐから、魔法で戦って」
「遥、お前……」
死を覚悟して、時間を稼ごうというわけか。
こういうの、好きなんだよなぁ……お互いを大事に思ってるっていうか、庇い合ってるっていうか。
俺はすっかりと、この二人のやりとりに感化されていた。
仮にこの二人が恋仲であっても、不思議はない。
そんなことを考えていたら、遥かが走り出すのが見えた。
おっと、いけない。
余裕見せすぎだな。
俺本人に飛来する矢は打ち払えばいいが、足元を狙う様な、先ほどと同様の攻撃は敢えて飛んだり身をよじったりして避けた。
遥は女の子だし……何となく剣を向けるのはちょっとなぁ……けどまぁ、本人の意思って大事だよな。
というわけで遥の攻撃が止んだ一瞬の隙に、遥に肉薄する。
朔は決定打を打とうと、魔力を溜めている様だ。
遥は足に自信ありってとこか。
まぁ、そこは認めよう。
ちょこまかと俊敏な動きで、俺から距離を取り続ける遥はちょっと可愛く見えた。
あんまり長引かせると遥も疲れちゃうかもしれない、なんて思って、俺は変質者っぽいなとか思いながらも遥を追い詰めて弓を払い落とした。
朔が、まずいという顔をするのが見える。
「遥!!」
「!!」
朔の声を聴いて、遥が落ちた弓に構わず飛び下がる。
「食らえ!!」
朔が剣を振ると、俺に向かって無数の氷の刃が飛来した。
このくらいなら、と俺は剣を振って迎撃しようとしたが、そこに朔の姿はなかった。
へぇ、人間でもここまでやれるのか……。
「おらあああああ!!」
朔は氷の刃の影から姿を現す。
どれほどのものなのか、という興味が湧いた。
言っておくが別に俺にマゾっ気はない。
繰り返すが、俺はマゾではない。
だが、俺と戦った時の睦月の気持ちが少しだけ理解できた気がした。
「へぇ……」
睦月が声を漏らした。
「ぐっ……これは……」
「どうだ、体の中を氷が駆け回る感触は」
体の中を、氷が……確かに、駆けずり回る様な鋭い痛みが体の中をめぐっているのを感じる。
生身の人間の体で受けてたら死んでるな、これは。
朔が再び距離を取った。
なるほど、こいつなら……。
「やられたね、大輝。もういいよ」
「悪いな、油断した」
油断なんかしてないし、多分睦月にもバレてはいるんだろうが、朔たちの手前こう言うことにしておいた。
これでも通じない、とか絶望させる意味がないからな。
「どうやら、時間みたい」
どうやら戦う気だったと思われる睦月が剣を納めて、朔と遥を見る。
「時間って……何のだ?」
「君は勝利した。けど、仲間は負けた様だよ」
睦月がパチンと指を鳴らすのと同時に部屋がライトアップされ、奥で朔の仲間と思しき六人の人間が鎖につながれて吊るされていた。
ちょっとばかり演出過剰じゃないのか……。
「マジか……」
朔と遥の顔が絶望に歪む。
ある程度予想はしていただろうが、ここまでとは思っていなかったのかもしれない。
まぁ、どのパーティも相手が悪かったとしか言い様がない。
「さて、朔……」
睦月が普段見せない様な、冷酷な笑みを浮かべる。
「私と戦って、全てを元通りにするのか。もしくは……」
朔が身構えて睦月を見据える。
「お前を倒せば、全部元通り、ってことでいいのか?」
「そうなるね。けど、君はもう一つ選ぶことができる。メラニーのいないこの世界で生きていくか」
「メラニーのいない世界ってのは、どういうことだ?」
構えたままで、朔が尋ねる。
メラニーってどの子なのかわからないが、殺すつもりなのだろうか。
メラニーと朔が恋仲であるとした場合、そうすることで朔のやる気が再燃すると考えているということか。
「君はね、この世界の救世主になりえる存在なんだよ、元々。けど、メラニーというイレギュラーが現れて……」
「イレギュラーって、元々レスターたちはメラニーと仲間だっただろ」
「それはね。メラニーが君に惚れてしまったことが、イレギュラーなんだよ」
「何だよそれ」
朔は納得いかない様子だ。
それはそうだろう。
俺が同じ様に言われたら、多分同じ反応をしているだろう自信がある。
「本来、もう少し私たちは観察を続ける予定だったんだ。こういう風に手を出すことなく。けど、メラニーが君に想いを告げて、君がメラニーを特別視する様になってから、事態は停滞する様になってしまった。君たちの関係が進めば進むほど、その傾向は強くなる可能性が高い。それを見かねて、我々は手を出すことにしたのさ」
「それが、冒険そのものを捨てる結果に繋がるって言いたいのか?」
「そうじゃないよ。けどね、私たちは退屈になってしまったんだ。物語の作り手としては、動きのない状態で停滞することは良いことと思えなかった、ってところかな」
気持ちとしてはわからないこともない。
某アニメが同じ様な内容を八週に渡って放送したとき、作品そのものの評価は良かったのにその回に関してだけは不評だったという話も聞いたことがある。
「つまりは、メラニーが俺を誘惑したから今の状態になっていて、メラニーがいなくなったあとで俺が更に動きを見せるはずだ、って踏んでるってことか」
「大体合ってるかな。君は、仮にここでメラニーが死ぬ様なことがあれば、想像を超える動きを見せる人間だと、私たちは思っている。メラニーが生存したままでは、恐らくここいらが頭打ちになるだろうね」
「そんなこと……認められるわけねぇだろ……お前らにとってはただのデータかもしれないが……俺たちには意思があって、こうして生きている」
「そうだね。だけど、その生死さえも私たちの機嫌一つだということを忘れてはいけない」
ゲームマスターであるゆえに、生死どころか世界そのもののリセットさえも睦月やロキの手に委ねられている。
こうなってくると、もう何をしようが彼らに勝算はないんだろう、と思えてくる。
「そんな、勝手すぎませんか?思う通りに動かないからって……だったら最初から私たちに意思なんか持たせなければ良いじゃないですか!!」
遥が激高して睦月に食って掛かった。
気持ちはわかるが、そういうことを言ってるのではないんだろう、と俺は考える。
ある程度の道筋も作っておいた。
その上で彼らが選択した道ではあるが、物語にはある程度動きが必要だ。
そうならないのであれば、やり直したり書き直したりと言った作業が必要になる。
作者側の都合という話ではあるが、物を作るというのはそういうことなのだろう。
「それではこの世界そのものが育たなくなってしまう。物語にはね、刺激が必要なんだよ。刺激のない生活を、平和なだけの生活を、君は楽しいと思えるの?」
「平和なら平和なりに、刺激がないと感じれば自分たちで考えて、そうできるのが意思を持った人間なんじゃないんですか?」
遥が弓を拾って、睦月に向けて矢を番えた。
「遥、よせ!!」
「止めないで、朔くん……私、この人たちを許せない」
「いい目をしてるね。けど、その矢は私に当たることはないし、無駄な労力を使うのはやめない?」
まぁ、そうだろうな。
仮に当たったとして、睦月は意に介さない。
そのくらい、差があるのだ。
「あ、そうだ。こういうのもありじゃん」
睦月が何か思いついたらしく、手を叩くと、金髪の女性が戒めから解放される。
一体何をしようって言うのか。
「確かこの子も、朔に気があったんだっけ。……フレイヤ、いる?」
「いるわよ。どうかしたの?」
急遽フレイヤを呼ぶ睦月。
フレイヤを呼んだということは……何かこういやらしい、くっころ系の何かか?
そんなくだらないことを考えている間に、遥が睦月に向かって矢を放った。
ノールックでその矢を、指一本で止めた睦月が解放された金髪の女性に目を向けた。
「この子と、さっきの遥。二人にあの術かけてみてもらえる?」
「え、正気?」
命じられたフレイヤも、信じられないと言った表情を浮かべる。
そんなに恐ろしい術をかけようということなのか。
「もちろん。ちょっと面白いことになるかなって」
「そ、そう……まぁ、やれっていうならやるけど……」
あまり気が進まない様ではあるが、睦月に逆らうことができない様でフレイヤは遥と金髪の女性に術をかけるべく詠唱を始める。
朔は動けずにいる様だ。
「朔くん、あの人を止めて!何か嫌な予感がする!!」
遥が叫んで、朔が咄嗟に飛び出す。
しかし、睦月が一瞬で朔の後ろに回り込んで、その首根っこを掴んだ。
「ごめんね、少しだけ静かにしてて」
そしてそのまま、遠くに放り投げる。
「んな!?」
為す術もなく朔は遠くに飛ばされてしまい、フレイヤを止められる人間がいなくなった。
いつの間にか金髪の女性も目を覚ましていた様で、フレイヤから光の玉をぶつけられて遥と共に苦悶の表情を浮かべた。
「な、何よこれ……」
「体の奥が……熱い……」
何とも煽情的な光景な気がするのは俺だけだろうか。
昔やった、性感度を何倍にも高めて、みたいなことか?
いや、それなら睦月にもできるはずだ。
「おい、二人に何したんだよ!?」
「見てればわかるよ」
朔が遠くから叫ぶ。
睦月は振り向きもせずに答えた。
「何かあってからじゃ遅い……って……」
術をかけられた二人の目が、朔を見ていることに、朔は気づいた様だ。
淫靡な雰囲気漂う二人。
何だろう、狂気を感じる。
「お、おい」
「ねぇハジメ……私……」
「朔くん……メラニーさんなんかほっといて、私と遊びませんか?」
「ああ、かけた術の正体を教えてなかったわね。それね、この星の人間の好感度を、限界突破させて上昇させる術なの」
何という術だ。
強制的にそんなことになったら、たとえこの二人でなかったとしても同じ様になるというわけか。
限界突破ってことは、今も尚上がり続けているということか?
だとすると、行きつく先はヤンデレ……だよな。
俺はその時朋美を連想して身震いした。
「え……え?」
「ハジメ、私……あなたの為なら、メラニーでもハルカでも殺してみせるよ?」
「お、お前何言って……」
「私だって、邪魔になる人間は全部殺す覚悟あるから……」
二人が尋常でない目の輝きを宿して、朔に迫る。
パッと見羨ましいと思えなくもない状況ではあるが、当の朔はもはやそれどころじゃないだろう。
メラニーを殺す、とか言われてるし。
けど、さすがにやりすぎな気がする……悪趣味だよな。
睦月を見ると、睦月は黙って二人を見ていた。
「ば、バカ言うな……お前ら、しっかりしてくれよ……そんな場合じゃないだろ」
「私、気づいちゃった……ハジメさえいれば、他はどうでもいいって」
「この世界がどうあっても、朔くんがいてくれるなら、私が朔くんを守ってあげるから……」
必死で朔は、二人から目を離さない様にしながら逃げる。
しかし二人の移動速度も常軌を逸していて、見る見る間に距離は詰まっていった。
「でもね、私のものにならないなら……殺してでも私のものにする」
「デリアさん、二人で殺して朔くんを半分こしましょう」
「お、俺は一人しかいねぇ!俺はメラニーのもんだ!!お前らだって、知ってんだろ!?」
殺して半分こって……もう狂人の発想じゃないか?
ヤンデレ結構好きだけど、あの朋美ですらそこまでぶっ飛んだ発想には至らない。
ちなみに半分こって縦かな、それとも横か?
完全にグロ注意な案件じゃないのか、これ。
朔は走りながら魔法力を溜めている様だった。
この状況を何とかして打破しようと考えているのかもしれない。
「ごめん、一瞬痛むかもだけど我慢してくれ!!」
そう言った朔がデリアと呼ばれた女性と遥の足元を凍結させようと魔法を放った。
当たることを確信していた朔に油断が生まれ、デリアと遥に避けられて朔は追い詰められてしまった。
「ひどいなぁ……私たちの愛情は、必要ないっていうの?」
ますますヤンデレもとい狂人ぶりに拍車のかかる二人。
朔の顔がどんどん青くなって行く。
二人が武器を手にして、朔に迫っていく。
朔も半分諦めた様な表情で二人を見る。
「ふざけんな!!」
甲高い女の声が聞こえたと思ったら、朔が突き飛ばされて吹っ飛ぶ。
二人の攻撃を朔の代わりに受けたのは、一人の黒髪をお団子にした少女だった。
足に遥の矢が、腹部にデリアの剣が突き刺さった少女。
この子がメラニーか?
崩れ落ちるメラニーを、俺も朔もただじっと見つめていた。
だが、朔は何処かまだ大丈夫、という顔をしている。
英雄は一日に二回までは死んでしまっても復活できる。
その現象を待っているのではないかと思う。
しかし、確か睦月がその力は解除した、と言っていた気がする。
だからロキも、殺さない様に、って言ってたんじゃなかったっけ。
標的を見失った二人は互いに殺し合うかの様に、遠慮のない攻撃をぶつけ合う。
もはや好感度が振り切れすぎてしまっているんだろうと思った。
「ああ、復活すると思ってる?そんなのとっくに無効化してあるよ。だから、ここへ来るまで敵にも遭遇しなかったでしょ?」
睦月が冷たく言い放つ。
デリアと遥の戦いが、デリアの勝利で決着する。
弓を跳ね飛ばされた遥に、勝ち目はもうないだろう。
「スルーズ」
朔が、睦月を呼んだ。
朔の目が、何かを覚悟したかの様な光を宿している。
「二人を止めてくれ。じゃなきゃ、俺はどちらも選ばない」
朔の武器である両手剣の刃を自らの首筋に当てて、朔は睦月をにらむ。
なるほど、自分の命と引き換えに二人の命を助けろとでも言うつもりなのか。
仲間思いなやつなんだな。
「自らの命を賭けて、仲間を守るって言うことかな?」
「そんな大したものじゃない。だが、ここで二人を殺し合わせるというなら、俺がここで命を絶つ。お前らにとっては、面倒なだけになると思うがな」
まぁ、現状で打てる手がないのであれば、最善と言えるかもしれない。
しかし、睦月がそれを受け入れるかどうかは別の話だが。
ただ、朔の覚悟そのものが本物だということは俺にもさすがにわかった。
「いいだろう、まずは二人を止める」
睦月が手をかざしたその時、二人がその場に意識を失って倒れ伏した。
「答えを聞こうか」
睦月が朔を見る。
朔も睦月をにらみ返した。
「その前に、一つだけ教えてくれ。全部元通りって言ったな?死んでしまった者たちも、蘇る。そういう認識でいいのか?」
「それで間違いないよ。厳密には、私たちと君だけが記憶を引き継いで、元に戻してあげよう。タイムリープって言った方が伝わりやすいか」
なるほど、昨夜言ってたのはこういうことだったのか。
やっぱり睦月にはこうなることがわかってた、ということだな。
メラニーがああいう行動をとることも、朔がこう提案してくることも。
「本来ならやっちゃいけないんだけどね、君らは何も達していなかったわけだし。ただ、今回は特別だよ」
「そうか、それだけ聞ければ十分だ」
朔が剣を納めて、動かなくなったメラニーを見る。
おそらくデリアと遥はまだ生きている。
だが、メラニーはもう事切れているだろう。
「今回は、お前らの思惑通りに動いてやるよ。けどな、そのうちほえ面かかせてやるからな」
彼の目は死んでない。
できるのであれば何度でもやり直してやる、と目が言っている。
「そうかそうか、それは楽しみだよ。じゃあ、見せてもらおうかな、君の決意を」
睦月が朔の頭に手を当てる。
タイムリープということは、おそらく精神の時間だけを戻すことにするんだろう。
つまり、肉体はこのまま残ることになる。
そして、一人欠けてしまった英雄たちはどうするのだろう。
朔の体から力が抜けて、デリアや遥と同じ様に倒れる。
「さて、これで朔の魂はもう一個のコピーに行った。だから、こっちは破棄しないといけないの」
「破棄って……消滅させるのか?」
「そうなるね。今の朔に記憶は一切ないし、目を覚ましたら混乱するだけだもん。他の仲間は記憶を持っているけど、目を覚ましたらメラニーのことを知って再度挑もうとしてくる。まぁ、消滅させてもここで始末しても結果として英雄が滅びることに変わりはないからね」
なるほど、そこまでは俺も考えが及ばなかった。
もう少し、朔とは話をしておきたかったな。
男相手にそんなことを思うのは、もしかしたら初めてかもしれない。
しかし、残された時間はもう、そう長くはない。
「わかった、じゃあ俺たちは元の地球に戻っていればいいのか?」
「そうだね、消滅に巻き込まれると面倒だし。すぐ行くから、待ってて」
睦月はロキと話がある様だったので、俺とフレイヤ、トールは先に戻ることにした。
もっともトールは神界にダイレクトに行ってしまったので、あとで睦月によろしく頼むことにしよう。
おそらくロキと睦月とで消滅させたであろうあの世界を思う。
探検、少しでもしとくんだったな、とかいろいろ考えるが、一番ショックだったのは、メラニーが目の前で死んでも何とも思わなかった俺自身に対してだった。
俺はそんなにも薄情な人間だったのか。
「そうじゃないよ。あくまでゲームマスターの一人として参加してもらったから、そういう感情を封印させたの、私が」
いつの間にか睦月が目の前に現れて、俺は睦月に抱きしめられていた。
ロキもすぐ横にいたが、睦月は気にしていない。
「僕も気が進まなかったんだけどね、そうでもしなかったらきっと大輝は向こう側に回って僕たちと敵対していた懸念がある。だから、スルーズから言われて君に会った瞬間に術をかけさせてもらった」
申し訳なさそうな表情のロキ。
いつもおどけた感じの振る舞いが目立つだけに、今回はちょっと堪えているのかもしれない。
「もう少ししたらきっと、術が解ける。気分が悪くなる様だったらすぐスルーズに言いなさいね」
それだけ言ってフレイヤも神界に帰っていった。
「すまなかった、大輝。だけど君は、よくやってくれた」
「やめてくれ。俺は結局あいつらを始末できなかったんだ。ゲームマスターとしてだって、失格だよ」
「そんなことはない。あそこで君が倒してしまっていたら、朔にあそこまでの決意をさせられなかったかもしれないんだ。だから……ありがとう」
いつになく真面目な表情のロキを見て、俺も少しだけ救われた気がする。
少しずつ悲しい感情がこみあげてくるが、これが術の解けた反動というやつだろうか。
「今度はきっと大丈夫だから。また、近いうちに見守ろう?」
「ああ……今度は全員がちゃんと動いてくれるといいな」
ロキも神界に帰り、今回の件が完結した。
あの朔の表情を見る限り、もう大丈夫だろうと思える。
次は助けてやれる様な、そんな役回りで行ってやりたい。
「で、私に似たラスボスはどうしたの?」
「え、えっと……」
帰ると、何故かまた俺が朋美に問い詰められる。
俺ほとんど関わってないも同然なんだが……。
「あのラスボスは今、もう一個のコピーでラスボスやってるから大丈夫だよ。朔たちと衝突するのはもうちょっと先になるんじゃないかな」
睦月が風呂から出てきて髪を拭きながら朋美に説明すると、朋美も納得した様だった。
俺の力は、戦いでももちろん使えるが……これからはもう少し、人の為に使える様なものも勉強していこう。
俺にもっと力があれば、とはもう思わない。
力はあるのだから、使い方の幅を広げて役立てていこう。
それが今回得た教訓だった。
「今度って?あと時間ってどれくらいだ?」
「近いうち。あと、時間にしたら二日程度かな」
睦月がこんなことを言い出すとき、大体はロクでもないことだと相場が決まっているのだが、今回はやや事情が違いそうな様子だった。
少し俺を巻き込むことを躊躇っている様な、そんな印象を受ける。
「大変そうな用事か?てか俺でいいの?」
「うん、他に必要なメンバーには声かけてあるから」
睦月が指定してきたのは、翌日の夕方だった。
えらい半端な時間を指定してくるな、と思ったが特に用事もなかったので承諾した。
「ちょっと異世界に行くから」
「異世界?もしかして去年英雄を選出したあそこか?」
「うん。ちょっとあそこの事情がね。ロキから連絡受けて、旅が停滞し始めてるって」
「ふむ。平和に暮らし始めちゃってるってことか?別に悪いことじゃないんじゃ?」
「いやいや、思い出してよ。旅の目的はドラゴン討伐と、その大元を絶つことだから。そうしないと世界はドラゴンに滅ぼされちゃうんだよ?」
「ああ、なるほどな。そりゃ確かに一大事だ。ってことは何だ、発破でもかけに行くのか?」
「まぁ、そうなるんだけど……場合によっては主人公クラスの人間をタイムリープさせたりって措置が必要になるかもしれない」
「時間遡行させるのか……それって、まずかったりしないの?」
「それについては大丈夫。一応、こういう事態は予期してたみたいで、ロキももう一個コピー作ったって言ってたから」
何だか大がかりな話だ。
俺なんかが行って何すればいいのか、想像がつかないがとりあえずは言う通りにしようということになった。
俺の他に、ロキとフレイヤ、トールという雷神を連れてくるらしい。
人間界からはほかに行くメンバーはいないという。
「まぁ、当初朋美似のラスボスがいる予定だったんだけどね。それに私たちが成り代わって彼らの前に立ちはだかることになると思う」
「ふむ、面白そうだな」
「まぁ、面白いことばっかりじゃないとは思うけど、一緒にきてくれるなら助かる」
聞いてるよりもおそらくは大変な話なんだろうが、異世界というのはどうも男として憧れる部分がある。
わくわくする気持ちは大きく、向こうでモンスターに襲われたらどうしよう、とか色々妄想してしまう。
もちろん襲われたからって、結局俺じゃなくても周りの神々が倒してしまうんだろうと思うが。
翌日、睦月が念じると、すぐに景色が変わって俺たちは異世界にきたんだと実感する。
明らかに人間界とも神界とも違う世界。
自然がかなり多めで、建物なんかも現代とは大分文明が違うのだとわかる。
「さて、じゃあちょっと移動するから」
更に睦月が念じて、また景色が変わる。
かなり広めの建物の中の様で、薄暗い感じがするが明かりは灯っている様だ。
「きたね。久しぶりだね、大輝」
「ロキか、久しぶり。その節は世話になった……よな?」
「まぁ、今の大輝があるのは半分ロキとフレイヤのおかげだからね」
「お前が大輝か、噂は聞いてる。スルーズにも勝ったそうだな」
ひげ面のむさい感じのおっさんが混ざっている。
「ああ、大輝紹介しとくね。このおっさんがトールだから。雷神って呼ばれてる」
「俺がおっさんならお前はおばさんだろうが」
「見た目の話だから。私ちゃんとピチピチしてるでしょ」
「何万年も生きててその見た目だと、人間の感性で言ったら化け物なんじゃないのか?なぁ大輝」
「は、ははは……」
割とこの二人は仲が良い様だ。
別にヤキモチを妬く様な感じではないが、やや複雑な心境ではある。
「心配しなくても、こいつとどうにかなったりとかありえないから」
「そりゃこっちのセリフだっつの。大体俺には妻がいる」
「ああ、まだ捨てられてなかったんだ?」
「バカが、ラブラブだわ」
「ま、まぁそれはいいとして……これからどうするんだ?ロキ一人で行っちゃったけど」
「今ロキが宣戦布告に行ってて、私たちはここで待ち受けるだけだね。多分明日になると思うけど」
「なるほど、戦闘になることもあるのか?」
俺の問いかけに答えたのはトールさんだった。
「まぁ、高確率でそうなるだろうな。連中の力を見たいというのもあるが、それ以上に俺が戦いたい」
「はぁ……」
「大輝、トールはほっといていいから。こいつ戦いか酒しか基本興味ないからさ」
「そ、そうか。まぁ、俺の出番はほとんどなさそうか、そうなると」
「そんなことはない。二人ずつ四パーティに分かれるはずだからな。お前には一番重要なところをやってもらう予定なんだ」
「え?俺が?」
「だって、この中で一番強いの大輝だし」
「いやいや、通常状態だったらこの中の誰にも勝てないっての……」
そもそも睦月に関してだって、あれは半分わざと受けてくれた様なものだったと俺は思ってる。
そうじゃなかったら、吹っ飛ばされてたのは間違いなく俺の方だろう。
もちろん、神の力を持っているとは言っても今回の相手は人間だし、負けるつもりはないが……やってみるまでわからない。
「大輝、不安なの?一回抜いておく?」
フレイヤが下品な慰め方をしてくる。
俺はフレイヤのこういうところは嫌いじゃないが、さすがに今日は良くない気がしてやんわりと辞退しておいた。
翌日になって、睦月に起こされた。
朝食の用意が出来ているから、とのことだったのでだだっ広いこの城の中を歩いて、洗面所を目指す。
洗面所へ行く途中で細長いテーブルの置いてある部屋があって、そこでトールやロキ、フレイヤが食事をとっていた。
神でも普通に飯食うんだな。
顔を洗って、俺も席に着くと目の前に突如料理が現れる。
人間界ではさすがに見慣れない光景に面食らいはしたが、ここはもう異世界だし、と割り切って食事に専念した。
あと数時間もしたらこっちの英雄とやらがやってくるわけか。
俺は顔とか見てないからわからないけど、強面な人たちじゃないことを祈る。
女で強面っていうのもちょっと嫌だけど……どうせなら優男二人にその辺にいそうな女で固まってると、気持ち的にも少し楽なんだけどな。
「来るみたいだね。大輝、そろそろ準備をしてくれ」
そう言われて、何かそれらしい衣装を渡される。
いよいよファンタジーの世界にやってきたという気持ちが強くなってきた。
剣なんかは正直自分で生成できるし、必要ならその都度出したらいい。
「じゃあ、トールは確か戦いたい相手決まってるんだったよね」
「ああ、雷使いがいると聞いてるのでな。どれほどのものか見極めたい」
「僕も昨日ケンカ売られた相手がいるから、その子の相手をするよ。となるとフレイヤは余りものになっちゃうんだけど、いいかな?」
「問題ないわよ。私の本職は戦いじゃないんだけどね。さすがに人間相手に遅れは取らないわ」
「で、大輝とスルーズは急成長中の彼、と」
「そいつ、強いのか?」
「んー、まぁ人間の中では飛びぬけてると思うけど所詮は人間だからね。大輝が本気になったら一瞬だよ。殺しちゃわない様に気を付けてくれ」
所用を済ませて、英雄一行を待つ。
相手が格下であることがわかっていても、やはりこういうときは多少緊張する。
「じゃあ、僕らは待機しているから。そちらもよろしくね」
そう言ってロキ、フレイヤ、トールが消えた。
別室で待つということなのだろう。
睦月もスルーズの姿に戻って敵を待ち受ける。
この姿を見るのも久しぶりな気がする。
思えば睦月は人間の姿のままでもかなりの力を使えるが、やはり慣れとか訓練の賜物なのだろうか。
敵の襲来に備えて、俺も女神化しておく。
「来たみたいだね。準備はいい?」
「ああ、問題ない」
睦月が一歩前に出て、敵の到着を見届けた。
「初めまして、朔……と遥、待ってたよ」
睦月が声をかけた相手は二人。
若い男女だった。
二人とも日本人に見える。
こんな、俺たちと年齢的に変わらなそうなやつらが、ドラゴンに立ち向かっていたというのか?
二人は俺たちを見て、やや驚きの表情を浮かべている。
「その羽、本物なのか?」
敵の男の方が尋ねる。
彼は巨大な両手剣を背中に携えていた。
マントがいかにも冒険者という雰囲気を醸し出している。
「本物だよ。飛べもするけど、これを動力としなくても飛べるんだけどね」
「万能だな。その万能な力で、お前はこの城も作ったし……何なら世界ごと作ったんだ、そうだろ?」
「んー……惜しい。七十点てところかな。城はそうだね、私が作ったものだよ。階段もそう。けど、世界は違う。今頃、メラニーと戦ってるんじゃないかな、世界を作った本人は」
メラニーって誰だ?
女の名前っぽいけど……。
だが、朔と呼ばれたその男の顔色が目に見えて変わった様に見える。
恋仲だったりするのかもしれないな。
ロキって俺よく知らないんだけど、やっぱり強いんだろうなぁ……。
「おい、まさか……」
男の方が青い顔をしながら睦月をにらむ。
ロキとの戦いを案じているのか、少し焦りが見え始めている。
「昨日、そっちのコテージにお邪魔した男がいたでしょ?あれがね、戦いたいって。力を見てみたいって言ってたから譲ってあげたんだ」
「さすがに、あれには勝てる気がしねぇぞ……」
「へぇ、実力差を見抜くなんて、やるね。けど私には勝てるって、そう思ってるの?」
「どうだかな……正直お前ら何人いるんだか知らねぇが、連戦になったら普通にこっちが全滅するんじゃないかって、今は思うよ」
どうやら男の方は冷静にこちらとの戦力差を把握した様だった。
それでも挑もうというのは、やはり守りたいものがあるから、ということなのかもしれない。
限りなくこちら側の人間に近い部分を持っているが、これもまた作り物なのだろうか。
俺たちとの戦力差を考えているのか、男は少し震えている様にも見える。
戦意喪失には至っていない様だが、この男を相手にするのは少し気が引ける。
「私はもちろん、隣にいるのにも、君は勝てないんじゃないかな、朔」
「ひ弱そうに見えるけどな。けど、お前と同様に万能なんだとしたら、さすがにやばいか……」
俺、ひ弱そうに見えるのか、そうか……。
まぁ確かにうちの女性陣を相手にして、勝てることなんかほとんどないもんな。
「俺は、万能なんかじゃないけどな。出来ることもこいつに比べたら、そう多くないし。力の絶対量が違う」
一応自分のことだし、正直に伝える。
ここで虚勢を張っても、大して意味はないだろう。
「お前、俺っ娘なのか。変わってんな」
いや、俺っ娘って……あ、そうか今俺女神なんだっけ。
胸もあるし、そう見えても仕方ないよな。
「ちょっと事情があってな。元々は男なんだ。女神でもあるけど」
「何でもありだな、お前ら……」
諦めと呆れた様な感情が入り混じった様な顔で、朔は俺を見た。
まぁ、神だしな。
朔が剣を抜くのを見て、遥も弓を構える。
いよいよ始まるのか。
「実力の差を理解してながら挑もうって言うの?」
「そうだよ。お前らを何とかして倒して、今までのこと全部謝罪してもらう。俺の友達を死なせたことも、罪も無い人たちを龍に襲わせたことも」
まぁ、ロキが作ったものだって言っても感情だってある。
彼らには彼らの、やらなければならない事情があるのだろう。
「やめといた方が無難だと思うけどね。大輝、どう思う?ああ、大輝って言うのはこの子の名前だよ。私はスルーズって言うんだ」
「まぁ、お前の言う通りだな。手加減なしで戦ったら、やられたことにすら気づかないで死ぬ、なんてこともあるだろうし」
俺たちが本気で戦ったら多分骨も残らないんだろう。
まともに食らえば、この睦月ですら消滅したほどの力。
これを目の前にいる二人にぶつけるのはさすがにまずい。
ロキが殺さない様に、って言っていたし手加減は必要だな。
「スルーズって……戦女神の……?」
遥が驚愕の表情で睦月を見る。
もしかして、少しは知識があるのか?
「物知りだね。私は伝説上じゃそこまで認知度高くないって認識でいたんだけど」
「北欧神話は一通り目を通しましたから……けど、そんな大それた相手と戦うなんて……」
遥も朔同様少しずつ体が震えてきている様だ。
相手が神であることを認識したのであれば、これもまた仕方のないことかもしれない。
「遥は賢明だね。そう、戦えば無事では済まない、なんてレベルじゃない。まず確実に死ぬだろうね」
実力差の大きく離れた相手であっても、睦月は容赦しないと言わんばかりにしれっと言った。
この一言に、遥もはっとした顔をする。
目の前に迫る死というこの状況に、どう立ち向かうかを考えている様に見えた。
睦月は剣を召喚して、軽く振って朔を見る。
「でも、やるって言うなら相手にはなるよ。その前に、話くらいはしてもいいかなって私は思ってるけど」
「おい、本当にやる気か?」
まだもう少し、彼らの話を聞いてからでもいい、と俺は考えた。
正直、こちらがゲームとかでいう管理者側だとしてもあまりにも一方的ではないかと思ったのだ。
「話って、何だ?この世界の成り立ちでも説明してくれるのか?」
「それが聞きたいなら教えるけど、君が聞きたいのはそんなこと?」
「……正直、わからないことだらけだ。お前ら、俺たちに何をさせたいんだ?」
「なるほど。じゃあ簡単に言っとくね。君たちにさせたいこと、それは人間の可能性を見せてもらうこと、かな」
「可能性?それは一体……」
それは俺も以前聞いた話ではある。
それを説明することで彼らはやる気を再燃する、とでも言うのだろうか。
「さっき大輝が言った様に、この子は元々人間の男の子だった。そんな彼がある日突然、女神になった。何でだと思う?」
謎かけでもするかの様に、睦月は言う。
剣をおろして、とりあえずは話し合おうという意思を見せている様だ。
「何でって……そんなのわかんねぇよ。神の力に触れたから、とかその程度しか思いつかねぇな」
「近いところまでは行ったね。正解は、彼が女神の子どもだったから。途中で気づくきっかけがあって、色々あって彼は女神の力を得た。つまり、神の力を与えた人間は覚醒する可能性を秘めている、っていうのが私たちの見方」
「狂ってやがんな……とても正気の沙汰とは思えねぇ」
確かに、俺のは特殊というかまず普通に考えてありえないケースだ。
全ての人間がそうであったなら、今の世界はもっと違った姿を見せていただろう。
「そうかな?それはあくまで人間の、倫理的な理屈であって、倫理だって人間が勝手に作り上げたものだよ。守らなければ罰するという仕組みがあって初めて成立する」
これも一理ある。
人間が、力を持たないがゆえに作り出したものだともいえる。
それがあるから今の世界は成り立っているのだ。
「覚醒しないまでも、神の力の一部を行使できる人間が、どこまで戦えるのか。我々に抗うほどの力を持ちえるのか。それを、私たちは見たい」
「そうか。俺たちは、お前らにとって何なんだ?」
「んー、何ら他の人間と変わらない仕組みの元に生きている、データではあるね」
ロキが作ったデータ。
だけど、普通の人間と同じ様な考えも倫理観もある。
本当に戦っていいのか、俺はまだ少し迷っている。
「何となく想像のついてた答えだが……改めて聞かされるとショックではあるな」
「でも、勘違いしないでね。君たちが自分たちで得た経験、記憶は紛れもなく君たち自身で獲得したもので、君たちの意思があったから得られたものではあるから」
「大体わかった。つーことは、作られた世界も、大輝……だっけ?がいた世界のものとは違うってことだよな」
「そうなるね。ほぼ百パーセントの一致率を持っている世界ではあるんだけどね。細かいところで違いが出てくる。それはそうだよね。それぞれが意思を持ってるんだから」
その時、何かひりつく様な感覚があった。
もしかして、他の面々の戦いが終わったのだろうか。
だとしたら、もうそろそろロキたちもこちらに合流するかもしれない。
「おい、そろそろだと思うぞ」
睦月が頷いて、天井を見上げる。
何かあるんだろうか。
「そろそろって、何の話だよ」
「君たちの仲間と、私たちの仲間との戦いが終わりそうってことだよ。こっちもぼちぼち、始めとくか」
睦月が再度剣を構える。
俺の中にも、こいつと戦ってみたいという感情が少し芽生えていた。
「待て、俺が先にやる。ちょっと下がっててくれないか。手は出すなよ?」
「仕方ないなぁ、大輝は……そんなに朔がお気に入りなの?」
「お前だって人のことは言えないだろうが」
こう見えて、睦月は割と朔を気に入っている。
それは話しているのを見て何となく感じていた。
もっとも朔本人は、そんなことに気づくだけの余裕がある様には見えないわけだが。
「そっちは二人でいい。俺とまず戦ってもらおうか」
睦月とかつて戦った時と同じ、炎の剣を召喚して朔と対峙する。
力の差がある以上、一対一でやっても意味はない。
朔と遥もそれぞれ武器を構えた。
「気は抜かない方がいいな。さっきも言った通り、気づく間もなく死んでる、なんてこともあるんだから」
そう言って俺は、一気に二人との距離を詰めた。
朔は武器破壊を懸念してか、俺から距離を取った。
「心配しなくても、お前らが持ってる武器は神の武具を作る際に使われる特殊金属製だ。熱で溶けたりはしない」
「そいつはご親切にどうも……んじゃ改めて」
俺の言葉に安心したのか、朔は再度武器を構えた。
再び距離を詰めて俺と朔が打ち合う。
まずは朔の実力を見ておくか。
火球を放って対応する様子を見たりと、基本的には朔に狙いを定めた攻撃を繰り返す。
向こうは遥が援護したりしてはいるが、どちらの攻撃も俺に当たることはない。
接近戦が得意なのかわからないが、今のままで朔が俺と打ち合っていたら多分この剣の熱で朔は倒れることになる。
「朔くん!距離を取って!」
遥が気づいた。
離れて見ている分、気づくのが早かった様だ。
「あ!?そんな余裕……」
朔が少しだけ距離を取ろうとするが、俺が追いすがる。
その時、俺の足元に遥の放った矢が刺さった。
「む?」
床がせりあがってきて、それが攻撃魔法であることを瞬時に理解した。
剣を振ってそれを相殺したが、その隙に朔は俺から離れる。
「あの剣に接近戦で挑んだら、普通の人間じゃまずもたないよ」
「んなこと言ったって……」
なかなか鋭い様だ。
俺の剣の特性を見抜いたということか。
太陽の力を宿すこの剣は、何もしていなくても相当な高温だ。
決死の覚悟で、遥が俺を見る。
「十秒稼ぐから、魔法で戦って」
「遥、お前……」
死を覚悟して、時間を稼ごうというわけか。
こういうの、好きなんだよなぁ……お互いを大事に思ってるっていうか、庇い合ってるっていうか。
俺はすっかりと、この二人のやりとりに感化されていた。
仮にこの二人が恋仲であっても、不思議はない。
そんなことを考えていたら、遥かが走り出すのが見えた。
おっと、いけない。
余裕見せすぎだな。
俺本人に飛来する矢は打ち払えばいいが、足元を狙う様な、先ほどと同様の攻撃は敢えて飛んだり身をよじったりして避けた。
遥は女の子だし……何となく剣を向けるのはちょっとなぁ……けどまぁ、本人の意思って大事だよな。
というわけで遥の攻撃が止んだ一瞬の隙に、遥に肉薄する。
朔は決定打を打とうと、魔力を溜めている様だ。
遥は足に自信ありってとこか。
まぁ、そこは認めよう。
ちょこまかと俊敏な動きで、俺から距離を取り続ける遥はちょっと可愛く見えた。
あんまり長引かせると遥も疲れちゃうかもしれない、なんて思って、俺は変質者っぽいなとか思いながらも遥を追い詰めて弓を払い落とした。
朔が、まずいという顔をするのが見える。
「遥!!」
「!!」
朔の声を聴いて、遥が落ちた弓に構わず飛び下がる。
「食らえ!!」
朔が剣を振ると、俺に向かって無数の氷の刃が飛来した。
このくらいなら、と俺は剣を振って迎撃しようとしたが、そこに朔の姿はなかった。
へぇ、人間でもここまでやれるのか……。
「おらあああああ!!」
朔は氷の刃の影から姿を現す。
どれほどのものなのか、という興味が湧いた。
言っておくが別に俺にマゾっ気はない。
繰り返すが、俺はマゾではない。
だが、俺と戦った時の睦月の気持ちが少しだけ理解できた気がした。
「へぇ……」
睦月が声を漏らした。
「ぐっ……これは……」
「どうだ、体の中を氷が駆け回る感触は」
体の中を、氷が……確かに、駆けずり回る様な鋭い痛みが体の中をめぐっているのを感じる。
生身の人間の体で受けてたら死んでるな、これは。
朔が再び距離を取った。
なるほど、こいつなら……。
「やられたね、大輝。もういいよ」
「悪いな、油断した」
油断なんかしてないし、多分睦月にもバレてはいるんだろうが、朔たちの手前こう言うことにしておいた。
これでも通じない、とか絶望させる意味がないからな。
「どうやら、時間みたい」
どうやら戦う気だったと思われる睦月が剣を納めて、朔と遥を見る。
「時間って……何のだ?」
「君は勝利した。けど、仲間は負けた様だよ」
睦月がパチンと指を鳴らすのと同時に部屋がライトアップされ、奥で朔の仲間と思しき六人の人間が鎖につながれて吊るされていた。
ちょっとばかり演出過剰じゃないのか……。
「マジか……」
朔と遥の顔が絶望に歪む。
ある程度予想はしていただろうが、ここまでとは思っていなかったのかもしれない。
まぁ、どのパーティも相手が悪かったとしか言い様がない。
「さて、朔……」
睦月が普段見せない様な、冷酷な笑みを浮かべる。
「私と戦って、全てを元通りにするのか。もしくは……」
朔が身構えて睦月を見据える。
「お前を倒せば、全部元通り、ってことでいいのか?」
「そうなるね。けど、君はもう一つ選ぶことができる。メラニーのいないこの世界で生きていくか」
「メラニーのいない世界ってのは、どういうことだ?」
構えたままで、朔が尋ねる。
メラニーってどの子なのかわからないが、殺すつもりなのだろうか。
メラニーと朔が恋仲であるとした場合、そうすることで朔のやる気が再燃すると考えているということか。
「君はね、この世界の救世主になりえる存在なんだよ、元々。けど、メラニーというイレギュラーが現れて……」
「イレギュラーって、元々レスターたちはメラニーと仲間だっただろ」
「それはね。メラニーが君に惚れてしまったことが、イレギュラーなんだよ」
「何だよそれ」
朔は納得いかない様子だ。
それはそうだろう。
俺が同じ様に言われたら、多分同じ反応をしているだろう自信がある。
「本来、もう少し私たちは観察を続ける予定だったんだ。こういう風に手を出すことなく。けど、メラニーが君に想いを告げて、君がメラニーを特別視する様になってから、事態は停滞する様になってしまった。君たちの関係が進めば進むほど、その傾向は強くなる可能性が高い。それを見かねて、我々は手を出すことにしたのさ」
「それが、冒険そのものを捨てる結果に繋がるって言いたいのか?」
「そうじゃないよ。けどね、私たちは退屈になってしまったんだ。物語の作り手としては、動きのない状態で停滞することは良いことと思えなかった、ってところかな」
気持ちとしてはわからないこともない。
某アニメが同じ様な内容を八週に渡って放送したとき、作品そのものの評価は良かったのにその回に関してだけは不評だったという話も聞いたことがある。
「つまりは、メラニーが俺を誘惑したから今の状態になっていて、メラニーがいなくなったあとで俺が更に動きを見せるはずだ、って踏んでるってことか」
「大体合ってるかな。君は、仮にここでメラニーが死ぬ様なことがあれば、想像を超える動きを見せる人間だと、私たちは思っている。メラニーが生存したままでは、恐らくここいらが頭打ちになるだろうね」
「そんなこと……認められるわけねぇだろ……お前らにとってはただのデータかもしれないが……俺たちには意思があって、こうして生きている」
「そうだね。だけど、その生死さえも私たちの機嫌一つだということを忘れてはいけない」
ゲームマスターであるゆえに、生死どころか世界そのもののリセットさえも睦月やロキの手に委ねられている。
こうなってくると、もう何をしようが彼らに勝算はないんだろう、と思えてくる。
「そんな、勝手すぎませんか?思う通りに動かないからって……だったら最初から私たちに意思なんか持たせなければ良いじゃないですか!!」
遥が激高して睦月に食って掛かった。
気持ちはわかるが、そういうことを言ってるのではないんだろう、と俺は考える。
ある程度の道筋も作っておいた。
その上で彼らが選択した道ではあるが、物語にはある程度動きが必要だ。
そうならないのであれば、やり直したり書き直したりと言った作業が必要になる。
作者側の都合という話ではあるが、物を作るというのはそういうことなのだろう。
「それではこの世界そのものが育たなくなってしまう。物語にはね、刺激が必要なんだよ。刺激のない生活を、平和なだけの生活を、君は楽しいと思えるの?」
「平和なら平和なりに、刺激がないと感じれば自分たちで考えて、そうできるのが意思を持った人間なんじゃないんですか?」
遥が弓を拾って、睦月に向けて矢を番えた。
「遥、よせ!!」
「止めないで、朔くん……私、この人たちを許せない」
「いい目をしてるね。けど、その矢は私に当たることはないし、無駄な労力を使うのはやめない?」
まぁ、そうだろうな。
仮に当たったとして、睦月は意に介さない。
そのくらい、差があるのだ。
「あ、そうだ。こういうのもありじゃん」
睦月が何か思いついたらしく、手を叩くと、金髪の女性が戒めから解放される。
一体何をしようって言うのか。
「確かこの子も、朔に気があったんだっけ。……フレイヤ、いる?」
「いるわよ。どうかしたの?」
急遽フレイヤを呼ぶ睦月。
フレイヤを呼んだということは……何かこういやらしい、くっころ系の何かか?
そんなくだらないことを考えている間に、遥が睦月に向かって矢を放った。
ノールックでその矢を、指一本で止めた睦月が解放された金髪の女性に目を向けた。
「この子と、さっきの遥。二人にあの術かけてみてもらえる?」
「え、正気?」
命じられたフレイヤも、信じられないと言った表情を浮かべる。
そんなに恐ろしい術をかけようということなのか。
「もちろん。ちょっと面白いことになるかなって」
「そ、そう……まぁ、やれっていうならやるけど……」
あまり気が進まない様ではあるが、睦月に逆らうことができない様でフレイヤは遥と金髪の女性に術をかけるべく詠唱を始める。
朔は動けずにいる様だ。
「朔くん、あの人を止めて!何か嫌な予感がする!!」
遥が叫んで、朔が咄嗟に飛び出す。
しかし、睦月が一瞬で朔の後ろに回り込んで、その首根っこを掴んだ。
「ごめんね、少しだけ静かにしてて」
そしてそのまま、遠くに放り投げる。
「んな!?」
為す術もなく朔は遠くに飛ばされてしまい、フレイヤを止められる人間がいなくなった。
いつの間にか金髪の女性も目を覚ましていた様で、フレイヤから光の玉をぶつけられて遥と共に苦悶の表情を浮かべた。
「な、何よこれ……」
「体の奥が……熱い……」
何とも煽情的な光景な気がするのは俺だけだろうか。
昔やった、性感度を何倍にも高めて、みたいなことか?
いや、それなら睦月にもできるはずだ。
「おい、二人に何したんだよ!?」
「見てればわかるよ」
朔が遠くから叫ぶ。
睦月は振り向きもせずに答えた。
「何かあってからじゃ遅い……って……」
術をかけられた二人の目が、朔を見ていることに、朔は気づいた様だ。
淫靡な雰囲気漂う二人。
何だろう、狂気を感じる。
「お、おい」
「ねぇハジメ……私……」
「朔くん……メラニーさんなんかほっといて、私と遊びませんか?」
「ああ、かけた術の正体を教えてなかったわね。それね、この星の人間の好感度を、限界突破させて上昇させる術なの」
何という術だ。
強制的にそんなことになったら、たとえこの二人でなかったとしても同じ様になるというわけか。
限界突破ってことは、今も尚上がり続けているということか?
だとすると、行きつく先はヤンデレ……だよな。
俺はその時朋美を連想して身震いした。
「え……え?」
「ハジメ、私……あなたの為なら、メラニーでもハルカでも殺してみせるよ?」
「お、お前何言って……」
「私だって、邪魔になる人間は全部殺す覚悟あるから……」
二人が尋常でない目の輝きを宿して、朔に迫る。
パッと見羨ましいと思えなくもない状況ではあるが、当の朔はもはやそれどころじゃないだろう。
メラニーを殺す、とか言われてるし。
けど、さすがにやりすぎな気がする……悪趣味だよな。
睦月を見ると、睦月は黙って二人を見ていた。
「ば、バカ言うな……お前ら、しっかりしてくれよ……そんな場合じゃないだろ」
「私、気づいちゃった……ハジメさえいれば、他はどうでもいいって」
「この世界がどうあっても、朔くんがいてくれるなら、私が朔くんを守ってあげるから……」
必死で朔は、二人から目を離さない様にしながら逃げる。
しかし二人の移動速度も常軌を逸していて、見る見る間に距離は詰まっていった。
「でもね、私のものにならないなら……殺してでも私のものにする」
「デリアさん、二人で殺して朔くんを半分こしましょう」
「お、俺は一人しかいねぇ!俺はメラニーのもんだ!!お前らだって、知ってんだろ!?」
殺して半分こって……もう狂人の発想じゃないか?
ヤンデレ結構好きだけど、あの朋美ですらそこまでぶっ飛んだ発想には至らない。
ちなみに半分こって縦かな、それとも横か?
完全にグロ注意な案件じゃないのか、これ。
朔は走りながら魔法力を溜めている様だった。
この状況を何とかして打破しようと考えているのかもしれない。
「ごめん、一瞬痛むかもだけど我慢してくれ!!」
そう言った朔がデリアと呼ばれた女性と遥の足元を凍結させようと魔法を放った。
当たることを確信していた朔に油断が生まれ、デリアと遥に避けられて朔は追い詰められてしまった。
「ひどいなぁ……私たちの愛情は、必要ないっていうの?」
ますますヤンデレもとい狂人ぶりに拍車のかかる二人。
朔の顔がどんどん青くなって行く。
二人が武器を手にして、朔に迫っていく。
朔も半分諦めた様な表情で二人を見る。
「ふざけんな!!」
甲高い女の声が聞こえたと思ったら、朔が突き飛ばされて吹っ飛ぶ。
二人の攻撃を朔の代わりに受けたのは、一人の黒髪をお団子にした少女だった。
足に遥の矢が、腹部にデリアの剣が突き刺さった少女。
この子がメラニーか?
崩れ落ちるメラニーを、俺も朔もただじっと見つめていた。
だが、朔は何処かまだ大丈夫、という顔をしている。
英雄は一日に二回までは死んでしまっても復活できる。
その現象を待っているのではないかと思う。
しかし、確か睦月がその力は解除した、と言っていた気がする。
だからロキも、殺さない様に、って言ってたんじゃなかったっけ。
標的を見失った二人は互いに殺し合うかの様に、遠慮のない攻撃をぶつけ合う。
もはや好感度が振り切れすぎてしまっているんだろうと思った。
「ああ、復活すると思ってる?そんなのとっくに無効化してあるよ。だから、ここへ来るまで敵にも遭遇しなかったでしょ?」
睦月が冷たく言い放つ。
デリアと遥の戦いが、デリアの勝利で決着する。
弓を跳ね飛ばされた遥に、勝ち目はもうないだろう。
「スルーズ」
朔が、睦月を呼んだ。
朔の目が、何かを覚悟したかの様な光を宿している。
「二人を止めてくれ。じゃなきゃ、俺はどちらも選ばない」
朔の武器である両手剣の刃を自らの首筋に当てて、朔は睦月をにらむ。
なるほど、自分の命と引き換えに二人の命を助けろとでも言うつもりなのか。
仲間思いなやつなんだな。
「自らの命を賭けて、仲間を守るって言うことかな?」
「そんな大したものじゃない。だが、ここで二人を殺し合わせるというなら、俺がここで命を絶つ。お前らにとっては、面倒なだけになると思うがな」
まぁ、現状で打てる手がないのであれば、最善と言えるかもしれない。
しかし、睦月がそれを受け入れるかどうかは別の話だが。
ただ、朔の覚悟そのものが本物だということは俺にもさすがにわかった。
「いいだろう、まずは二人を止める」
睦月が手をかざしたその時、二人がその場に意識を失って倒れ伏した。
「答えを聞こうか」
睦月が朔を見る。
朔も睦月をにらみ返した。
「その前に、一つだけ教えてくれ。全部元通りって言ったな?死んでしまった者たちも、蘇る。そういう認識でいいのか?」
「それで間違いないよ。厳密には、私たちと君だけが記憶を引き継いで、元に戻してあげよう。タイムリープって言った方が伝わりやすいか」
なるほど、昨夜言ってたのはこういうことだったのか。
やっぱり睦月にはこうなることがわかってた、ということだな。
メラニーがああいう行動をとることも、朔がこう提案してくることも。
「本来ならやっちゃいけないんだけどね、君らは何も達していなかったわけだし。ただ、今回は特別だよ」
「そうか、それだけ聞ければ十分だ」
朔が剣を納めて、動かなくなったメラニーを見る。
おそらくデリアと遥はまだ生きている。
だが、メラニーはもう事切れているだろう。
「今回は、お前らの思惑通りに動いてやるよ。けどな、そのうちほえ面かかせてやるからな」
彼の目は死んでない。
できるのであれば何度でもやり直してやる、と目が言っている。
「そうかそうか、それは楽しみだよ。じゃあ、見せてもらおうかな、君の決意を」
睦月が朔の頭に手を当てる。
タイムリープということは、おそらく精神の時間だけを戻すことにするんだろう。
つまり、肉体はこのまま残ることになる。
そして、一人欠けてしまった英雄たちはどうするのだろう。
朔の体から力が抜けて、デリアや遥と同じ様に倒れる。
「さて、これで朔の魂はもう一個のコピーに行った。だから、こっちは破棄しないといけないの」
「破棄って……消滅させるのか?」
「そうなるね。今の朔に記憶は一切ないし、目を覚ましたら混乱するだけだもん。他の仲間は記憶を持っているけど、目を覚ましたらメラニーのことを知って再度挑もうとしてくる。まぁ、消滅させてもここで始末しても結果として英雄が滅びることに変わりはないからね」
なるほど、そこまでは俺も考えが及ばなかった。
もう少し、朔とは話をしておきたかったな。
男相手にそんなことを思うのは、もしかしたら初めてかもしれない。
しかし、残された時間はもう、そう長くはない。
「わかった、じゃあ俺たちは元の地球に戻っていればいいのか?」
「そうだね、消滅に巻き込まれると面倒だし。すぐ行くから、待ってて」
睦月はロキと話がある様だったので、俺とフレイヤ、トールは先に戻ることにした。
もっともトールは神界にダイレクトに行ってしまったので、あとで睦月によろしく頼むことにしよう。
おそらくロキと睦月とで消滅させたであろうあの世界を思う。
探検、少しでもしとくんだったな、とかいろいろ考えるが、一番ショックだったのは、メラニーが目の前で死んでも何とも思わなかった俺自身に対してだった。
俺はそんなにも薄情な人間だったのか。
「そうじゃないよ。あくまでゲームマスターの一人として参加してもらったから、そういう感情を封印させたの、私が」
いつの間にか睦月が目の前に現れて、俺は睦月に抱きしめられていた。
ロキもすぐ横にいたが、睦月は気にしていない。
「僕も気が進まなかったんだけどね、そうでもしなかったらきっと大輝は向こう側に回って僕たちと敵対していた懸念がある。だから、スルーズから言われて君に会った瞬間に術をかけさせてもらった」
申し訳なさそうな表情のロキ。
いつもおどけた感じの振る舞いが目立つだけに、今回はちょっと堪えているのかもしれない。
「もう少ししたらきっと、術が解ける。気分が悪くなる様だったらすぐスルーズに言いなさいね」
それだけ言ってフレイヤも神界に帰っていった。
「すまなかった、大輝。だけど君は、よくやってくれた」
「やめてくれ。俺は結局あいつらを始末できなかったんだ。ゲームマスターとしてだって、失格だよ」
「そんなことはない。あそこで君が倒してしまっていたら、朔にあそこまでの決意をさせられなかったかもしれないんだ。だから……ありがとう」
いつになく真面目な表情のロキを見て、俺も少しだけ救われた気がする。
少しずつ悲しい感情がこみあげてくるが、これが術の解けた反動というやつだろうか。
「今度はきっと大丈夫だから。また、近いうちに見守ろう?」
「ああ……今度は全員がちゃんと動いてくれるといいな」
ロキも神界に帰り、今回の件が完結した。
あの朔の表情を見る限り、もう大丈夫だろうと思える。
次は助けてやれる様な、そんな役回りで行ってやりたい。
「で、私に似たラスボスはどうしたの?」
「え、えっと……」
帰ると、何故かまた俺が朋美に問い詰められる。
俺ほとんど関わってないも同然なんだが……。
「あのラスボスは今、もう一個のコピーでラスボスやってるから大丈夫だよ。朔たちと衝突するのはもうちょっと先になるんじゃないかな」
睦月が風呂から出てきて髪を拭きながら朋美に説明すると、朋美も納得した様だった。
俺の力は、戦いでももちろん使えるが……これからはもう少し、人の為に使える様なものも勉強していこう。
俺にもっと力があれば、とはもう思わない。
力はあるのだから、使い方の幅を広げて役立てていこう。
それが今回得た教訓だった。
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