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3章
どうせなら精霊も一緒にパーティしちゃいましょう!
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ゴーンゴーンと大きな鐘の音が聞こえる。
人の体よりも何倍も大きなそれは少し重く、鈍い音を学園に響かせていた。
「あら、今日の授業はここまでですね。皆さん無事に精霊と契約出来たようですし、何か用事がある時だけじゃなく、普段からコミュニケーションをとることを忘れないようにしてください。そうすればきっと良き相棒となってくれるでしょう。それでは、また明日もよろしくお願いします。」
そう言って先生は教室を出ていく。
今日の授業ももう終わりだ。
「ルア。」
『兄たちならお前を迎えに向かってきてるみたいだぞ。』
「うそ。早くない?こんなに早く来たら周りがざわついちゃうじゃん。」
学園も終わり、帰る時間。今日はお兄様達と一緒に帰る約束をしていたから、みんなが揃うまでどこかで待ってようと思ったのに。
せっかくルアに伝言頼んでネオスやルナと話しながら待とうと声掛けたのが無駄になっちゃったな。
2人には謝らないと。
「フィル。どうかしたの?」
「ネオス……。お兄様達が迎えにもう向かってきてるみたい。ごめんね、私がお話付き合ってって言ったのに。ルナもごめんね。」
「そっかぁ、それはしょうがないよ!気にしないで。まだまだ学園始まったばっかりだしまた今度放課後遊ぼ?」
こくんと頷く。
あーあ、ネオスとルナが揃ってる日だったのに。
2人ともなんだかんだ王族と商人の娘。家の事で遊ぶ時間は少ないんだよね。私は暇だけど。
多分お兄様達にいえば待っててくれるんだろうけど、それはそれで申し訳ないし、お兄様達にも精霊のこと早く伝えたいし、今日は大人しく帰るかぁ。
項垂れていると、段々と教室の周りが騒がしくなってくる。ルアが言った通りほんとにお兄様達が向かってるらしい。貴族の子達はもちろん知ってるし、平民の子達もお兄様達の美貌にざわついちゃうんだろうな……。3人とも美形なのは間違いないし。
「あれ、どうしたのフィル。元気ないね?」
扉を開けて入ってきたエル兄様。開口1番私の心配って。来るのが早すぎるって思ってごめんなさい。申し訳ないくらい私の気持ちを最優先させてくれるからな。
周りの目もあるけど、だからこそ逆にお兄様にぎゅうっとくっつく。私たちフリードリヒ家の仲の良さをアピールするために。なんせ私はまだ8歳。まだまだ貴族の子だけれど甘えても多めに見てもらえる。これが2桁の歳になるとまた違うんだけどね。成人まであと7年、まだまだ大人の半分。甘えられるうちに甘えとこう。まぁ、うちの家族は私が大人になっても変わらないんだろうけど。
「大丈夫です!エル兄様。お迎えありがとうございます!」
「そう?ならいいけど。」
ニコニコと抱き合いながら微笑んでいたらエル兄様の後ろから声がかかった。
「おーい。俺もいるぞ?」
「……僕も。」
「ふふ。リーベ兄様もジュール兄様もお迎えありがとうございます。」
少し拗ねたように2人のお兄様に声をかけられたのでしっかり感謝を伝えればにこにこと笑顔になってくれた。
リーベ兄様のそろそろ帰るぞという言葉に頷きネオスとルナにバイバイをする。明日は学園がお休みだから会えるのはまた明後日。2人に勉強やお手伝い頑張ってと伝えて教室をでる。外にでても周りの視線は私たちに注がれていて、あまりいい気分ではないけれど少しは慣れてきたかな。お兄様達は特に気にした様子もなく談笑しながら馬車に向かっていくから遅れないようについて行った。
♢
学園の正面。うちの馬車はもう準備されていたようで4人乗り込む。
馬車といっても見た目ほど狭くはない。お母様の魔法でゆったりとした空間が中に作られているから4人乗っても十分なスペースがある。さすがに家のようには広くないけれど座席の間にミニテーブルが置ける程度の広さだ。前世でいうと、正方形に近いリムジンみたいな?乗ったことはないけれどリムジンってたしか細長い車でテーブルとかあって小さなパーティしながら移動できるんだよね?
まぁ、そんな感じだ。
「フィル、精霊召喚はどうだったんだ?すっげぇ楽しみにしてただろ?」
「私もネオスもルナも無事に契約できましたよ!」
3人とも無事に契約できたことを伝えれば褒めてくれた。
基本的に十分な魔力があれば召喚自体は簡単なんだと教えてくれる。そこから契約することが難しいのだと。
確かに下位の精霊にもしっかり自我があるから好き嫌いもあるもんね。まぁ下位の精霊は魔力質が好みのものであれば大抵の子達は契約まではとんとんと進んでいくみたい。
でも、中位、高位と位が上がっていくほど魔力質はもちろ性格面を重視する精霊たちも増えるらしい。中には下位の子たちと同じように魔力質だけを求める子もいるみたいだけど、精霊たちも一体一体性格があるから位が上がると契約も難しくなる。その中でも特殊で数も少ない闇と光の精霊と契約したものがクラスに2人いるのは凄いことなんだと。
ネオスに関しては光の使い手だしね。まだまだ制御は難しいみたいだけど本人はがんばってる。ルナにカッコイイとこ見せたいだろうし。
「そういえば今日はフィルならきっと契約できるだろうからって初契約のお祝いをするって言ってたよ。」
「え?」
「父さん……張り切ってた……。母さんも。」
「この前入学祝いのパーティしましたよね?」
「フィルにプレゼントやりすぎて母さんから控えるように言われた父さんなりの考えじゃねぇの?祝いっていう理由があればプレゼントしても怒られねぇし、父さんはフィルが好きすぎて何でもかんでも与えようとするからな。俺らに対しても必要と思ったものは惜しまず与えてくれるけどフィルに対してはやばいもんな。」
うーん、前にもこんなことあった気がする。
たしか、3歳の時かな?私が家の中で転んだとき家中ふわふわのカーペット敷いて家具もクッションをつけたやつに全部変えるって大騒動したとき。あの時もお母様に止められたんだよね。でもお母様もカーペットについては良しとしてた。
しかもプレゼントに関してはお父様だけじゃなかったよね。お兄様達も言われてたよね。
毎回外出する度、商人が家に来る度に何かしら私に与えようとするから私が困り果ててお母様が控えるように言ったのだ。なのにこんなにパーティを沢山開いていいのかな?
「大丈夫だよフィル。家族だけのお祝いだからそんなに手間もお金もかからないし、みんながやりたくてやるんだ、フィルは楽しめばいいよ。」
「エル兄様……。」
もう、しょうがないか。
それがうちの家族だし。私もなんだかんだ嬉しいし。こうなったら開き直った方が楽しいよね!
あ、それなら、
「エル兄様、精霊も呼んでもいいですか?」
どうせなら精霊も一緒にパーティしちゃえばよくない?
人の体よりも何倍も大きなそれは少し重く、鈍い音を学園に響かせていた。
「あら、今日の授業はここまでですね。皆さん無事に精霊と契約出来たようですし、何か用事がある時だけじゃなく、普段からコミュニケーションをとることを忘れないようにしてください。そうすればきっと良き相棒となってくれるでしょう。それでは、また明日もよろしくお願いします。」
そう言って先生は教室を出ていく。
今日の授業ももう終わりだ。
「ルア。」
『兄たちならお前を迎えに向かってきてるみたいだぞ。』
「うそ。早くない?こんなに早く来たら周りがざわついちゃうじゃん。」
学園も終わり、帰る時間。今日はお兄様達と一緒に帰る約束をしていたから、みんなが揃うまでどこかで待ってようと思ったのに。
せっかくルアに伝言頼んでネオスやルナと話しながら待とうと声掛けたのが無駄になっちゃったな。
2人には謝らないと。
「フィル。どうかしたの?」
「ネオス……。お兄様達が迎えにもう向かってきてるみたい。ごめんね、私がお話付き合ってって言ったのに。ルナもごめんね。」
「そっかぁ、それはしょうがないよ!気にしないで。まだまだ学園始まったばっかりだしまた今度放課後遊ぼ?」
こくんと頷く。
あーあ、ネオスとルナが揃ってる日だったのに。
2人ともなんだかんだ王族と商人の娘。家の事で遊ぶ時間は少ないんだよね。私は暇だけど。
多分お兄様達にいえば待っててくれるんだろうけど、それはそれで申し訳ないし、お兄様達にも精霊のこと早く伝えたいし、今日は大人しく帰るかぁ。
項垂れていると、段々と教室の周りが騒がしくなってくる。ルアが言った通りほんとにお兄様達が向かってるらしい。貴族の子達はもちろん知ってるし、平民の子達もお兄様達の美貌にざわついちゃうんだろうな……。3人とも美形なのは間違いないし。
「あれ、どうしたのフィル。元気ないね?」
扉を開けて入ってきたエル兄様。開口1番私の心配って。来るのが早すぎるって思ってごめんなさい。申し訳ないくらい私の気持ちを最優先させてくれるからな。
周りの目もあるけど、だからこそ逆にお兄様にぎゅうっとくっつく。私たちフリードリヒ家の仲の良さをアピールするために。なんせ私はまだ8歳。まだまだ貴族の子だけれど甘えても多めに見てもらえる。これが2桁の歳になるとまた違うんだけどね。成人まであと7年、まだまだ大人の半分。甘えられるうちに甘えとこう。まぁ、うちの家族は私が大人になっても変わらないんだろうけど。
「大丈夫です!エル兄様。お迎えありがとうございます!」
「そう?ならいいけど。」
ニコニコと抱き合いながら微笑んでいたらエル兄様の後ろから声がかかった。
「おーい。俺もいるぞ?」
「……僕も。」
「ふふ。リーベ兄様もジュール兄様もお迎えありがとうございます。」
少し拗ねたように2人のお兄様に声をかけられたのでしっかり感謝を伝えればにこにこと笑顔になってくれた。
リーベ兄様のそろそろ帰るぞという言葉に頷きネオスとルナにバイバイをする。明日は学園がお休みだから会えるのはまた明後日。2人に勉強やお手伝い頑張ってと伝えて教室をでる。外にでても周りの視線は私たちに注がれていて、あまりいい気分ではないけれど少しは慣れてきたかな。お兄様達は特に気にした様子もなく談笑しながら馬車に向かっていくから遅れないようについて行った。
♢
学園の正面。うちの馬車はもう準備されていたようで4人乗り込む。
馬車といっても見た目ほど狭くはない。お母様の魔法でゆったりとした空間が中に作られているから4人乗っても十分なスペースがある。さすがに家のようには広くないけれど座席の間にミニテーブルが置ける程度の広さだ。前世でいうと、正方形に近いリムジンみたいな?乗ったことはないけれどリムジンってたしか細長い車でテーブルとかあって小さなパーティしながら移動できるんだよね?
まぁ、そんな感じだ。
「フィル、精霊召喚はどうだったんだ?すっげぇ楽しみにしてただろ?」
「私もネオスもルナも無事に契約できましたよ!」
3人とも無事に契約できたことを伝えれば褒めてくれた。
基本的に十分な魔力があれば召喚自体は簡単なんだと教えてくれる。そこから契約することが難しいのだと。
確かに下位の精霊にもしっかり自我があるから好き嫌いもあるもんね。まぁ下位の精霊は魔力質が好みのものであれば大抵の子達は契約まではとんとんと進んでいくみたい。
でも、中位、高位と位が上がっていくほど魔力質はもちろ性格面を重視する精霊たちも増えるらしい。中には下位の子たちと同じように魔力質だけを求める子もいるみたいだけど、精霊たちも一体一体性格があるから位が上がると契約も難しくなる。その中でも特殊で数も少ない闇と光の精霊と契約したものがクラスに2人いるのは凄いことなんだと。
ネオスに関しては光の使い手だしね。まだまだ制御は難しいみたいだけど本人はがんばってる。ルナにカッコイイとこ見せたいだろうし。
「そういえば今日はフィルならきっと契約できるだろうからって初契約のお祝いをするって言ってたよ。」
「え?」
「父さん……張り切ってた……。母さんも。」
「この前入学祝いのパーティしましたよね?」
「フィルにプレゼントやりすぎて母さんから控えるように言われた父さんなりの考えじゃねぇの?祝いっていう理由があればプレゼントしても怒られねぇし、父さんはフィルが好きすぎて何でもかんでも与えようとするからな。俺らに対しても必要と思ったものは惜しまず与えてくれるけどフィルに対してはやばいもんな。」
うーん、前にもこんなことあった気がする。
たしか、3歳の時かな?私が家の中で転んだとき家中ふわふわのカーペット敷いて家具もクッションをつけたやつに全部変えるって大騒動したとき。あの時もお母様に止められたんだよね。でもお母様もカーペットについては良しとしてた。
しかもプレゼントに関してはお父様だけじゃなかったよね。お兄様達も言われてたよね。
毎回外出する度、商人が家に来る度に何かしら私に与えようとするから私が困り果ててお母様が控えるように言ったのだ。なのにこんなにパーティを沢山開いていいのかな?
「大丈夫だよフィル。家族だけのお祝いだからそんなに手間もお金もかからないし、みんながやりたくてやるんだ、フィルは楽しめばいいよ。」
「エル兄様……。」
もう、しょうがないか。
それがうちの家族だし。私もなんだかんだ嬉しいし。こうなったら開き直った方が楽しいよね!
あ、それなら、
「エル兄様、精霊も呼んでもいいですか?」
どうせなら精霊も一緒にパーティしちゃえばよくない?
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