私、悪役令嬢おたすけ課 ~魔法少女は公務員です?!~

ビオラン

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対乙女ゲーム令嬢 案件

令嬢第四事例 報告10

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 魔法省からこちらの世界に戻った私は、早速提案をしてみた。

「ダリア様、方針転換をしたいと思います」
「というと?」

「私考えました。そして結論ですが、エドウィン王子を止めることは不可能だと思います」
「なんてこと!」

 本当に、なんてこったという顔をしたダリア。 

「でも、一つ別の手を思いつきました」
「別の手?」

 タロウに言われた、"新しいチャレンジ"を試してみる方針に変更するのだ。
 一つのやり方に執着する必要はない。むしろ視野が狭まると判断した私は、他の方法を提案することにした。それは……

「違う相手をアピールさせればよいのです!」

 私が新たに思いついた案は、ダリアに害のない相手を主人公リゼットの攻略ルートにする案だ。
 別に対エドウィンの案を今更止める気はないが、新しい案を並行して試す価値はあると考える。

「ちなみに、ダリア様にとって今回害のない方はどなたでしょうか?」
「強いて言うなら、オールドでしょうか。貴族でありクールキャラで、真面目な性格です。オールドルートを選んだ場合も私悪役令嬢は破滅しますが、この系列の貴族とのかかわりを絶つ程度の断罪内容なので、それほど大きな影響はありません」
「では、その方のルートに進んでもらうように行動を移しましょう」

 この時期ではすでに出会いイベントは終了し、特に大きな邪魔もしなかったことから、私たちの把握していない環境で、適度に攻略ルートが進んでいると想定された。
 あとは主人公をオールドルートに誘導するのみ。


 ーーダリア情報によるとオールドはクールタイプらしい。
 勉強をすることが多く、イベント内容も共に勉強をしたり、探索に行ったりと、割と知的な存在なのだ。
 イベントも図書館で行われることが多いとのこと。

 私はダリアと共に、図書館の棚の裏に隠れて、張り込むことにした。

 目先想定されるイベントは"図書館居眠りイベント"という、ちょっとふざけた名前のイベントらしい。
 ダリアの意見を参考にイベント開催日のオールドを見張る。
 
 ーー想定通り図書館にオールドが現れた。
 オールドは黒髪メガネ男子といったところだろう。真面目系が好みであるタイプのプレイヤーが攻略しそうな雰囲気だ。

 オールドが図書館に行くと、先客がいたらしい。リゼットが図書館で居眠りをしている。さすが居眠りイベント。なんと居眠りするリゼットと共に進めされるらしい。

 寝ている相手とどうやって話を進めるのだろうと気になっていると、オールドがリゼットに近寄るのが見えた。

 オールドはリゼットの側まで来ると、迷う事なく横に座った。そして本を開き、読書をするフリをしつつ……横で心地良さそうに寝るリゼットをじっと眺め始める。

 そして、起こすのかと思いきや、

ーーオールドも、突っ伏して寝始めたのだ。

 いや、あなたも寝るんかーい。真面目キャラどこにいったー! と思わず私は心の中でツッコミを入れたのだが、思いは届かず。オールドとリゼットは肩を並べて寝息を立て始めた。

 私達は2人の動向を監視するためとはいえ、しばらく2人がスウスウ寝ている様を見せられることになった。私は何を見せられているのだろうか。

 一つ言わせてもらうと図書館は寝る所ではない。紙の匂いと静かさで適度に寝れそうではあるのを私も重々承知してはいるのだが、どこか起こしたくなった。


 しばらくして……オールドが、失念したと言わんばかり起き出した。
 しかし再び本を読むことはなく、何故かリゼットの顔をガン見している。

 そして視線を感じたのか、リゼットがついに目を覚ました。
 起きると目の前で微笑ましく寝顔を見ていたオールドと目が合ったのだろう。
 リゼットは恥ずかしそうに飛び起きた。

「すみません、つい寝てしまって!」
「起こしてしまったか」
「気づいたなら起こしてくださっても良かったのに……寝顔を見られてしまい、恥ずかしいですわ」

 リゼットは恥ずかしそうに手で顔を隠している。
 しかし、そんなリゼットに対して安心させようとしかのか、はたまた心の声が漏れてしまったのか……

 ーーオールドは和かに微笑み、こう告げた。

「いや、僕はいつまでも見ていられたけどね」

 クール系が珍しくデレた瞬間だろうか。次の瞬間、2人とも顔を赤らめて目を晒した。

 ーー束の間の沈黙が生まれる。

 なんて初々しい……おっと、今度は私の心の声が漏れた。
 エドウィンの口説き様を見ていた私にとって少し新鮮な光景である。正直オールドの不慣れな感じはつい応援したくなりそうだ。

「「パララ、ララリラーン!」」

 ゲームがクリアされた音が響き渡る。
 イベントが正常にクリアされたらしい。

 今のでクリアだったのか。なんという初々しい感じのストーリーだろうか。

 図書館に来たのに本を読んでないぞ。と思ったが、少しほのぼのとしたから許しておこう。
 

 ーーそして、今回のイベントを皮切りに、以降私達はオールドルートが進むよう陰ながら促すことにした。

 リゼットが図書館に行くように、通路に物を置いたり、魔法でクイッと方向転換して図書館の中に呼び込んだり……オールドとできるだけ出会う機会を増やすように仕向ける。

 この作戦、どうやら成功だったらしい。
 私達の努力の甲斐があってか、順調にオールドのイベントが進んでいく様子を確認出来ている。

 ただ……並行して、エドウィンとリゼットの接触もまだ続いているようで……

 ついに攻略のレベルは、エドウィンかオールドの二択になったのだった。


◇◇◇◇◇◇


 そして、運命の卒業式がやってきた。

 この卒業式で主人公のリゼットが誰のルートを攻略したのかが確定するのだ。

 ルートの選択方法は至って簡単。卒業式後に待機している攻略者の所にリゼットが向かうのだ。向かった先の相手が攻略確定者となる。

 私は卒業式を終え早々に抜け出したダリアと合流し、リゼットの行動監視のため、目眩しの魔法を使い学園の建物の上で待機した。

「ダリア様、ご卒業おめでとうございます」
「ありがとう。ついにこの日が来ましたね……」
「あとは、リゼットがどのルートを選ぶか見守るだけです」
「そうね、オールドともいい感じだっかたら後は運に任せるしかないわね」

 ーー程なくして、卒業式を終えたリゼットの姿が見えた。

 当の攻略対象であるエドウィンは王家の使うラウンジ、オールドは図書館で待機となっている。

 私たちはリゼットがオールドのいる図書館に向かうよう必死に祈りつつ、その様子を見守る。

 しかし……私達の祈りは届かなかったのだろうか。
 リゼットが進んだのはラウンジのある建物の方向だ。

「あ! エドウィンのいる校舎に向かおうとしています!」
「なんてこと! やっぱり運命には逆らえないのかしら!」

 リゼットが図書館ではなく校舎の入り口に向かう姿を見てしまった私達は、二人して絶望のあまり肩を落としてしまった。

 ーーやはり、運命には逆らえないのだろうか?

 諦めかけた。
 しかし、心のどこかではまだ納得していない自分がいるらしい。私はまだ諦めない……足掻いてやる。と、項垂れつつもこぶしを握り締める。

 次の瞬間、私は咄嗟に魔法を使っていた。

「マジカル ポポロン!」
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