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試験課題 特例(対マジカル戦士)案件
令嬢第二事例 試験報告1
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私は課長から突き付けられた『マジカル戦士』という理解し難い特例案件の資料を持って、対象の世界にやって来た。
この世界はビルが立ち並び、人々が忙しなく行き来している。そしてビルを少し離れると住宅街や公園などが広がっていた。令嬢の屋敷街とは少し違うらしい。
早速、ビルの屋上で私は資料を確認した。
ノン悪事案 No.2
場所:世界番号063
救済対象:悪役化可能性令嬢
真悪役疑惑:ボス(確定)
依頼主:ノン悪疑惑である令嬢本人(接触可否:可)
魔法の存在:有(認知度:低程度)
備考:……
ここまではいつものノン悪案件のように見える。しかし、備考で目を疑うことに。
備考:マジカル戦士の悪役として参戦。本人は世界及びマジカル戦士を恨む要素はなく、悪役として配備されたことに疑問がある模様。戦闘を避けたいとのこと。なお、役名は『悪役令嬢メンドイーナ』
頭に何か雷が落ちたかのような衝撃を受けた。だって、予想をはるか斜め上にいく依頼だと知ったからだ。
「……ここかー!ここで悪役令嬢でてくるのかー!!悪役令嬢ってそういうことね!マジカル戦士の悪役で、役名が悪役令嬢ってことね!」
思わず声に出してしまった。
何が、"なお、役名は『悪役令嬢メンドイーナ』"だ。さらっと最後に重要なことを書いている。貴族の本物の令嬢ではなく、役名として悪役令嬢を担っている者を、悪役から解放しろということだ。
無事初仕事を終えたものの、調子に乗り過ぎないように、急にイレギュラーな案件を試験に与えられてしまったらしい。課長からの躾課題としても考えて良さそうだ。私はガックリと肩を落とした。
しかし、依頼されたからには全力でやるのが私のモットーだ。ひとまず依頼主の所に向かうことにした。
にしても、メンドイーナなんて名前……なんだか安直である。笑いそうになったが、相手に失礼なので噴き出さないように笑を堪える練習をしながら依頼主を探した。
目くらましの魔法を使いながら空を飛んでいると、ビルの屋上に座り込む、物憂げな表情の人物が視界に入った。濃い緑色の髪に、同じく緑色の目、ダーク系を連想する黒いドレスを着た、あからさまに悪役だと言わんばかりの見た目をしている。
私は直感的に依頼主であることを確信した。
絶対あの人だ。いや間違いない。
物凄い確信のもと、私はその女性に近づいた。
「突然失礼します。もしや悪役令嬢のメンドイーナ様でしょうか?」
すると、女性はこちらを訝しげに見た。機嫌の悪さが滲み出している。
「そうだけど、何?」
そして私の姿を見た直後、女性はスイッチが入ったようにスッと立ち上がりこちらを見下すような目つきになった。
「あなた……もしかしてマジカル戦士?」
明らかに先程の物憂げな様子とは違い、ツンとした表情をしている。その変わり身の早さに驚きつつ、とりあえず自己紹介をした。
「わたくし、悪役令嬢おたすけ課の魔法少女、エミリーと申します。依頼を承りにきました。」
すると、さっきまでツンとしていた顔が豹変し、一気にパアッと明るい表情へ。
「あらやだ、本当に? 実在していたの? あぁ、一か八か依頼してみて良かったわーー!!」
この反応、依頼主で間違いないらしい。
「そんな格好で話しかけてくるからてっきりマジカル戦士かと……魔法少女だったのね! 慌てて悪役のフリしちゃった!」
どうやら私をマジカル戦士だと間違えたらしい。確かに近い服装をしているので間違うのは致し方ない気もするが、全くの別物だ。私は魔法を使うのみ。マジカル戦士のように戦いをする存在ではない。
それにしても、私が来たと分かり大変喜んでいるようだ。メンドイーナはよほど嬉しいのか、その場をクルクルと回っていた。
態度の変貌具合に少々驚きはしたが、私を見てここまで喜ぶということは余程困っていたらしい。これは早急に対応する必要があるかもしれない。私は調査を早々に開始した。
「ときにメンドイーナ様、依頼内容の確認をしたいのですが」
「本当に助けてくれるの?! 私助かるの?!」
「確実とは言えませんが、できる限りのことはさせていただきます。それには依頼主様の協力も不可欠なので、お力添えをお願いします」
「助かるのならなんだってするわ! よろしくお願いします!」
メンドイーナは依頼内容を話し始めた。
「私、マジカル戦士の悪役として任命されたの。しかも悪役令嬢という役柄だそうよ。でも私マジカル戦士と戦う意義が見いだせなくて……なんら悪役のボスのことも尊敬してないし。このままだとマジカル戦士の悪役一直線。さらには戦うだけならまだしも、今回のマジカル戦士が登場して20話目くらいには浄化されてリストラされる運命のキャラらしいのよ。そんな運命絶対に嫌。今のうちに逃げられないかなって」
「なるほど、途中で消されてしまうということが分かっているのですね……」
ということはタイムリミットは20話頃ということになる。そこまでに解決する必要があるが、結構内容はシビアそうだ。
「あとね、私個人的なことなんだけど……」
「はい、どうしました?」
「私、マジカル戦士が大好きなのよね。だから本当は愛でたいのに攻撃する側になっちゃって……」
それは辛い、辛すぎる。あからさまにしょぼくれるメンドイーナ。大好きなマジカル戦士を攻撃する側になったのは残念すぎる。
「それは……非常につらいですね……」
分かってくれる?と言わんばかりにメンドイーナはこちらをウルウルとした目で見ていた。
ーーそんな話をしていた直後、空からワープホールのようなものが現れ、何か光るものが住宅街に落ちていった。
その光は道を歩く一人の少女の顔面に正面衝突。
少女は尻餅をつくやいなや、顔に張り付いたものを引き剥がした。
「いった~~~~~い!」」
すると、何やらモフモフとした生物が空中に浮かんでいる。先ほど衝突したのはこの生物らしい。
「始まったーーーーーー!!!」
突如横にいたメンドイーナが絶望感溢れる表情で天を仰ぎ始めた。そしてヤバイヤバイと横で独り言を連発する。パニックになっているメンドイーナ。思わず状況が分からず聞いた。
「ど、どうしたんですか?! メンドイーナ様?!」
「ついに始まってしまったのよ! 物語が!」
「……と、いいますと?」
「御覧なさい、先ほど落ちてきたのはマジカル戦士に登場する妖精よ。そして、あの正面衝突をした少女。あの子が今回のマジカル戦士の第一号となる人物よ! ついに妖精と少女が出会ってしまったわ……」
「と、いうことは……」
「マジカル戦士の誕生よ……!!」
この世界はビルが立ち並び、人々が忙しなく行き来している。そしてビルを少し離れると住宅街や公園などが広がっていた。令嬢の屋敷街とは少し違うらしい。
早速、ビルの屋上で私は資料を確認した。
ノン悪事案 No.2
場所:世界番号063
救済対象:悪役化可能性令嬢
真悪役疑惑:ボス(確定)
依頼主:ノン悪疑惑である令嬢本人(接触可否:可)
魔法の存在:有(認知度:低程度)
備考:……
ここまではいつものノン悪案件のように見える。しかし、備考で目を疑うことに。
備考:マジカル戦士の悪役として参戦。本人は世界及びマジカル戦士を恨む要素はなく、悪役として配備されたことに疑問がある模様。戦闘を避けたいとのこと。なお、役名は『悪役令嬢メンドイーナ』
頭に何か雷が落ちたかのような衝撃を受けた。だって、予想をはるか斜め上にいく依頼だと知ったからだ。
「……ここかー!ここで悪役令嬢でてくるのかー!!悪役令嬢ってそういうことね!マジカル戦士の悪役で、役名が悪役令嬢ってことね!」
思わず声に出してしまった。
何が、"なお、役名は『悪役令嬢メンドイーナ』"だ。さらっと最後に重要なことを書いている。貴族の本物の令嬢ではなく、役名として悪役令嬢を担っている者を、悪役から解放しろということだ。
無事初仕事を終えたものの、調子に乗り過ぎないように、急にイレギュラーな案件を試験に与えられてしまったらしい。課長からの躾課題としても考えて良さそうだ。私はガックリと肩を落とした。
しかし、依頼されたからには全力でやるのが私のモットーだ。ひとまず依頼主の所に向かうことにした。
にしても、メンドイーナなんて名前……なんだか安直である。笑いそうになったが、相手に失礼なので噴き出さないように笑を堪える練習をしながら依頼主を探した。
目くらましの魔法を使いながら空を飛んでいると、ビルの屋上に座り込む、物憂げな表情の人物が視界に入った。濃い緑色の髪に、同じく緑色の目、ダーク系を連想する黒いドレスを着た、あからさまに悪役だと言わんばかりの見た目をしている。
私は直感的に依頼主であることを確信した。
絶対あの人だ。いや間違いない。
物凄い確信のもと、私はその女性に近づいた。
「突然失礼します。もしや悪役令嬢のメンドイーナ様でしょうか?」
すると、女性はこちらを訝しげに見た。機嫌の悪さが滲み出している。
「そうだけど、何?」
そして私の姿を見た直後、女性はスイッチが入ったようにスッと立ち上がりこちらを見下すような目つきになった。
「あなた……もしかしてマジカル戦士?」
明らかに先程の物憂げな様子とは違い、ツンとした表情をしている。その変わり身の早さに驚きつつ、とりあえず自己紹介をした。
「わたくし、悪役令嬢おたすけ課の魔法少女、エミリーと申します。依頼を承りにきました。」
すると、さっきまでツンとしていた顔が豹変し、一気にパアッと明るい表情へ。
「あらやだ、本当に? 実在していたの? あぁ、一か八か依頼してみて良かったわーー!!」
この反応、依頼主で間違いないらしい。
「そんな格好で話しかけてくるからてっきりマジカル戦士かと……魔法少女だったのね! 慌てて悪役のフリしちゃった!」
どうやら私をマジカル戦士だと間違えたらしい。確かに近い服装をしているので間違うのは致し方ない気もするが、全くの別物だ。私は魔法を使うのみ。マジカル戦士のように戦いをする存在ではない。
それにしても、私が来たと分かり大変喜んでいるようだ。メンドイーナはよほど嬉しいのか、その場をクルクルと回っていた。
態度の変貌具合に少々驚きはしたが、私を見てここまで喜ぶということは余程困っていたらしい。これは早急に対応する必要があるかもしれない。私は調査を早々に開始した。
「ときにメンドイーナ様、依頼内容の確認をしたいのですが」
「本当に助けてくれるの?! 私助かるの?!」
「確実とは言えませんが、できる限りのことはさせていただきます。それには依頼主様の協力も不可欠なので、お力添えをお願いします」
「助かるのならなんだってするわ! よろしくお願いします!」
メンドイーナは依頼内容を話し始めた。
「私、マジカル戦士の悪役として任命されたの。しかも悪役令嬢という役柄だそうよ。でも私マジカル戦士と戦う意義が見いだせなくて……なんら悪役のボスのことも尊敬してないし。このままだとマジカル戦士の悪役一直線。さらには戦うだけならまだしも、今回のマジカル戦士が登場して20話目くらいには浄化されてリストラされる運命のキャラらしいのよ。そんな運命絶対に嫌。今のうちに逃げられないかなって」
「なるほど、途中で消されてしまうということが分かっているのですね……」
ということはタイムリミットは20話頃ということになる。そこまでに解決する必要があるが、結構内容はシビアそうだ。
「あとね、私個人的なことなんだけど……」
「はい、どうしました?」
「私、マジカル戦士が大好きなのよね。だから本当は愛でたいのに攻撃する側になっちゃって……」
それは辛い、辛すぎる。あからさまにしょぼくれるメンドイーナ。大好きなマジカル戦士を攻撃する側になったのは残念すぎる。
「それは……非常につらいですね……」
分かってくれる?と言わんばかりにメンドイーナはこちらをウルウルとした目で見ていた。
ーーそんな話をしていた直後、空からワープホールのようなものが現れ、何か光るものが住宅街に落ちていった。
その光は道を歩く一人の少女の顔面に正面衝突。
少女は尻餅をつくやいなや、顔に張り付いたものを引き剥がした。
「いった~~~~~い!」」
すると、何やらモフモフとした生物が空中に浮かんでいる。先ほど衝突したのはこの生物らしい。
「始まったーーーーーー!!!」
突如横にいたメンドイーナが絶望感溢れる表情で天を仰ぎ始めた。そしてヤバイヤバイと横で独り言を連発する。パニックになっているメンドイーナ。思わず状況が分からず聞いた。
「ど、どうしたんですか?! メンドイーナ様?!」
「ついに始まってしまったのよ! 物語が!」
「……と、いいますと?」
「御覧なさい、先ほど落ちてきたのはマジカル戦士に登場する妖精よ。そして、あの正面衝突をした少女。あの子が今回のマジカル戦士の第一号となる人物よ! ついに妖精と少女が出会ってしまったわ……」
「と、いうことは……」
「マジカル戦士の誕生よ……!!」
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