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試験課題 特例(対マジカル戦士)案件
令嬢第二事例 試験報告2
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「残念ながらマジカル戦士が誕生してしまうらしいわ。物語の開始は免れないのね……!!」
がっくりとうなだれるメンドイーナ。確かに、可愛いピンクヘアーの少女が妖精らしき生物と話している。いかにもこれからピンク担当のマジカル戦士を担いそうな風貌である。
ーーメンドイーナの言う通り、物語は始まってしまったらしい。
対策を講じる前に物語が始まってしまっては仕方ない。ノン悪疑惑の令嬢ではなく、悪に仕立て上げられた令嬢を救う方針に切り替えた。
メンドイーナもそれを察しているようで提案をしてくる。
「とりあえずボスが怖いから今は悪役のふりをして過ごそうと思うの」
「そうですね、こちらもその間にメンドイーナ様が助かるように動きたいと思います」
「そうしてほしいわ。では、私は第一戦を初めるわね」
私はメンドイーナの状況を知るため、目くらましの魔法を起動しつつ、ついていくことにした。
メンドイーナは住宅街で暴れることを避けるため、あえて広い公園で怪物『メンドー』を召喚。なんとなく悪役っぽく暴れさせた。
「ゆけ! メンドー!」
「「メンドー!!」」
怪物が暴れだす。するとそれに応えるように先ほどの少女と妖精が颯爽と公園に現れた。少女は酷いと言わんばかりの顔をして、その様子を見ている。そしてなにやら妖精が少女に話しだした。
「マジカル戦士になるのだ!」
「わ、私が?」
「時間がない! これを持ってマジカルチェンジと叫ぶのだ!」そう言うと、妖精はステッキを手渡した。
「え!? えーい! ……マジカルチェンジ!」
少女が戸惑いつつも叫ぶと光が纏い始め、急にピンクの背景が現れる。そしてどこからか音楽が聞こえてきた。すると少女は先ほどまでの姿からは考えられないほど髪が鮮やかなピンクに染まり、毛量が増え、可愛らしい衣装に変身した。
「マジカル ピンク!」
マジカル戦士の誕生である。
「わー、すごーい! 私変身してるー!」
話がトントン拍子で進んでいくなと感心しながら私はその様子を見守っていた。”マジカルチェンジ”の呪文が被っていることに少し文句をつけたくなったが我慢をして。
メンドイーナは変身を見届けると悪役らしく、自己紹介をした。
「我が名はメンドイーナ。誇り高き悪役令嬢じゃ。お前一人など、簡単に倒して見せよう。オーッホホホ!!」
演技力に圧倒される。先程まで物憂げな表情だった人と同一人物だとは思えなかった。
メンドイーナはマジカル戦士に早速攻撃を与える。
「ゆけ! メンドー!」
「「メンドー!!」」
攻撃を避けるためマジカル戦士はジャンプした。
思いっきり高く飛びすぎたのか、慌てる戦士。だが、空から街の様子が一望できるらしく、体勢を立て直すと「すごーい」と少女は少し景色を楽しんでいる素振りがあった。
そして降りるなり、妖精の指示の下メンドーなる怪物にキックをあたえる。大袈裟に倒れるメンドー。
「マジカルピンク シャワー!」
妖精の合図で呪文を唱えたマジカル戦士の手から、ピンクのビームが放たれる。
するとメンドーはいとも簡単に浄化されて消えていった。
「「マジメニシマスー…」」
その様子を見たメンドイーナはわざとらしくとても悔しそうな顔をして見せる。
「くっ、覚えてなさい!」
そして黒い闇と共にその場を去った。
◇◇◇◇◇
一連の流れが終わり、私とメンドイーナは再び先程の屋上に戻った。
「あの……迫真の演技でしたね……!!」
メンドイーナの迫真の演技力に私は思わず拍手を送った。すると少し照れ臭いのかメンドイーナは顔を赤くする。
「そ、そんなことより! 私悪役デビューしちゃったんだけど、助かるのかしら?!」
「あ、そ、そうですよね……」
悪役となってしまった以上、途中で悪役を抜け出すとメンドイーナが仕事を放棄することになるのと一緒だ。今後の影響を考えるとなんとか平和な方法で解決したい。
「悪役を辞めれたらいいのだけど……」
「そうですよね、悪役を辞退できれば…………そう、それです!」
「へ?」
メンドイーナの言葉から私は名案を思いついた。
「悪役をやめれないか、そもそも悪役チームに許可を貰えばいいのではないでしょうか!」
「そんなことできるの?」
「出来るかどうかは分かりません。でも試してみる価値はありそうです」
我ながら良い手だと思う。正式に辞退を申し出れば解決するかもしれない。試さない手はない。
私は許可をもらうため一度本部に戻ることにした。
◇◇◇◇◇◇
本部に戻るなり、私は課長に聞いてみた。
「課長、例の悪役令嬢を悪役から解放するため、悪役救済部の方に許可を貰おうと思うのですが」
席に座っていた課長が無表情のままこちらを一瞥する。
「ふむ、一度帰ってきたというとこは、悪役化を未然に防ぐことは出来なかったのだな」
痛いところを突かれて、ギクッとした。課長はさすが、何でもお見通しのようだ。
課長の視線が痛く、私はしどろもどろとしながらも、今までの経緯を念の為報告した。こんな直接的な提案は受け入れられないと言われるのを覚悟しながら。
しかし、私の判断を即座に理解したのか、提案については否定されなかった。むしろ認めてもらえた。
「まぁ、確かに悪役を辞退する意向を伝えるというのは一理ある。斬新な発想だが認めよう。申請書を提出するように」
認められた喜びも束の間、申請書の一言で一気にテンションが下がる。
「え、そんなの電話一本とかで終わらないんですか?」
「悪役救済部だけならば胸のバッジによる情報共有で済むのだが、悪役の変更となれば悪役局への問い合わせも必要だ。悪役局はバッジでの対応ができていないから、書類提出の必要がある。」
一気にめんどくさい感じがした。
「もしかして、印鑑を各上格者に貰わないといけないですよね」
「そうだ」
「それって物凄く時間がかかりますよね?」
「そうだな」
この世界よりメンドイーナの世界の方が時間の進みが早いと資料から認識している。印鑑を貰って返ってくるまでに物語がどこまで進行してしまうか心配になった。しかし今はそれしか方法がないと思われる。腹を括って私は申請書を作り始めた。
完成した申請書は課長の印鑑が押されると、パートナーの妖精であるリンデンによって大事そうに抱えられた。この魔法省ではパートナーの妖精が手紙の郵送や伝達をすることが多い。今回もリンデンに頼むことになる。
「リンちゃん、お使いお願いね!」
「私をだれだと思っている! 容易いわ!」
怒っているけど、でも別に嫌がってない。今日もそんなツンデレが働くリンデンは、そう言うと悪役救済部の元へと旅立って行った。
悪役局に連絡した旨を報告するため、私はまた世界に移動した。
がっくりとうなだれるメンドイーナ。確かに、可愛いピンクヘアーの少女が妖精らしき生物と話している。いかにもこれからピンク担当のマジカル戦士を担いそうな風貌である。
ーーメンドイーナの言う通り、物語は始まってしまったらしい。
対策を講じる前に物語が始まってしまっては仕方ない。ノン悪疑惑の令嬢ではなく、悪に仕立て上げられた令嬢を救う方針に切り替えた。
メンドイーナもそれを察しているようで提案をしてくる。
「とりあえずボスが怖いから今は悪役のふりをして過ごそうと思うの」
「そうですね、こちらもその間にメンドイーナ様が助かるように動きたいと思います」
「そうしてほしいわ。では、私は第一戦を初めるわね」
私はメンドイーナの状況を知るため、目くらましの魔法を起動しつつ、ついていくことにした。
メンドイーナは住宅街で暴れることを避けるため、あえて広い公園で怪物『メンドー』を召喚。なんとなく悪役っぽく暴れさせた。
「ゆけ! メンドー!」
「「メンドー!!」」
怪物が暴れだす。するとそれに応えるように先ほどの少女と妖精が颯爽と公園に現れた。少女は酷いと言わんばかりの顔をして、その様子を見ている。そしてなにやら妖精が少女に話しだした。
「マジカル戦士になるのだ!」
「わ、私が?」
「時間がない! これを持ってマジカルチェンジと叫ぶのだ!」そう言うと、妖精はステッキを手渡した。
「え!? えーい! ……マジカルチェンジ!」
少女が戸惑いつつも叫ぶと光が纏い始め、急にピンクの背景が現れる。そしてどこからか音楽が聞こえてきた。すると少女は先ほどまでの姿からは考えられないほど髪が鮮やかなピンクに染まり、毛量が増え、可愛らしい衣装に変身した。
「マジカル ピンク!」
マジカル戦士の誕生である。
「わー、すごーい! 私変身してるー!」
話がトントン拍子で進んでいくなと感心しながら私はその様子を見守っていた。”マジカルチェンジ”の呪文が被っていることに少し文句をつけたくなったが我慢をして。
メンドイーナは変身を見届けると悪役らしく、自己紹介をした。
「我が名はメンドイーナ。誇り高き悪役令嬢じゃ。お前一人など、簡単に倒して見せよう。オーッホホホ!!」
演技力に圧倒される。先程まで物憂げな表情だった人と同一人物だとは思えなかった。
メンドイーナはマジカル戦士に早速攻撃を与える。
「ゆけ! メンドー!」
「「メンドー!!」」
攻撃を避けるためマジカル戦士はジャンプした。
思いっきり高く飛びすぎたのか、慌てる戦士。だが、空から街の様子が一望できるらしく、体勢を立て直すと「すごーい」と少女は少し景色を楽しんでいる素振りがあった。
そして降りるなり、妖精の指示の下メンドーなる怪物にキックをあたえる。大袈裟に倒れるメンドー。
「マジカルピンク シャワー!」
妖精の合図で呪文を唱えたマジカル戦士の手から、ピンクのビームが放たれる。
するとメンドーはいとも簡単に浄化されて消えていった。
「「マジメニシマスー…」」
その様子を見たメンドイーナはわざとらしくとても悔しそうな顔をして見せる。
「くっ、覚えてなさい!」
そして黒い闇と共にその場を去った。
◇◇◇◇◇
一連の流れが終わり、私とメンドイーナは再び先程の屋上に戻った。
「あの……迫真の演技でしたね……!!」
メンドイーナの迫真の演技力に私は思わず拍手を送った。すると少し照れ臭いのかメンドイーナは顔を赤くする。
「そ、そんなことより! 私悪役デビューしちゃったんだけど、助かるのかしら?!」
「あ、そ、そうですよね……」
悪役となってしまった以上、途中で悪役を抜け出すとメンドイーナが仕事を放棄することになるのと一緒だ。今後の影響を考えるとなんとか平和な方法で解決したい。
「悪役を辞めれたらいいのだけど……」
「そうですよね、悪役を辞退できれば…………そう、それです!」
「へ?」
メンドイーナの言葉から私は名案を思いついた。
「悪役をやめれないか、そもそも悪役チームに許可を貰えばいいのではないでしょうか!」
「そんなことできるの?」
「出来るかどうかは分かりません。でも試してみる価値はありそうです」
我ながら良い手だと思う。正式に辞退を申し出れば解決するかもしれない。試さない手はない。
私は許可をもらうため一度本部に戻ることにした。
◇◇◇◇◇◇
本部に戻るなり、私は課長に聞いてみた。
「課長、例の悪役令嬢を悪役から解放するため、悪役救済部の方に許可を貰おうと思うのですが」
席に座っていた課長が無表情のままこちらを一瞥する。
「ふむ、一度帰ってきたというとこは、悪役化を未然に防ぐことは出来なかったのだな」
痛いところを突かれて、ギクッとした。課長はさすが、何でもお見通しのようだ。
課長の視線が痛く、私はしどろもどろとしながらも、今までの経緯を念の為報告した。こんな直接的な提案は受け入れられないと言われるのを覚悟しながら。
しかし、私の判断を即座に理解したのか、提案については否定されなかった。むしろ認めてもらえた。
「まぁ、確かに悪役を辞退する意向を伝えるというのは一理ある。斬新な発想だが認めよう。申請書を提出するように」
認められた喜びも束の間、申請書の一言で一気にテンションが下がる。
「え、そんなの電話一本とかで終わらないんですか?」
「悪役救済部だけならば胸のバッジによる情報共有で済むのだが、悪役の変更となれば悪役局への問い合わせも必要だ。悪役局はバッジでの対応ができていないから、書類提出の必要がある。」
一気にめんどくさい感じがした。
「もしかして、印鑑を各上格者に貰わないといけないですよね」
「そうだ」
「それって物凄く時間がかかりますよね?」
「そうだな」
この世界よりメンドイーナの世界の方が時間の進みが早いと資料から認識している。印鑑を貰って返ってくるまでに物語がどこまで進行してしまうか心配になった。しかし今はそれしか方法がないと思われる。腹を括って私は申請書を作り始めた。
完成した申請書は課長の印鑑が押されると、パートナーの妖精であるリンデンによって大事そうに抱えられた。この魔法省ではパートナーの妖精が手紙の郵送や伝達をすることが多い。今回もリンデンに頼むことになる。
「リンちゃん、お使いお願いね!」
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