二色短編集 2017~2019

二色燕𠀋

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「いい加減にしてくれないかな」

 ストーカーは本気でウザイ。
 相手が美人、しかもスレンダー。
 確かに送りつけられてきた映像でシルエットはわかったけども。

 ファンサービスで送ったメールとか真に受けてホントにライブ来てくれた、
訳でなく出待ちをしていたようだからお持ち帰ってみたら大変だ。

 多分自傷癖、手首に傷がスゴい。職業柄僕こーゆー気が狂った女、無理、隠すように掴んで。

 まぁ、でも色っぽい。声が高くて硝子細工のように綺麗で何より。

 僕を見る目が空虚で仕方ない。これが、心底を見るようで僕は、好きかも。あのクスリの陶酔に似ていて。

 けどなんだろう。
 凄くこう、僕はそう、背徳感は好きじゃなくて。
 流石にちょっと、可哀想かなとか。
 あとは、まぁ、相性良さげだし。

 少し話を聞いてみようとしたらなんか話が通じない。 

どうしてだろう。
身体しか通じない。

 終わってみたら筆談されて納得。

“難聴”

 なるほど。
 僕はとても悪いことをしたらしい。

 まぁまぁ、泣きながらゆったり、時間を掛けて話してくれたら。
 そう、調子こいて動画をあげたらまわされちゃって?
 ストレスで引きこもり。
 難聴患っちゃった。
 けど、低音はなんとなく聞こえる。

 自分はどちらかと言えば声が高いからたまに叫んで低くしようと、
ダメにしようとしてみたりしてもうまくいかないだなんて。

 笑っちゃうよ。
 けどなんだろう。

 クラゲみたい。
 空虚が浮いていく。

「君って頭おかしいけど、まぁ、」

 僕に似ている気もするよ。
 だからそう。

「気が狂っちゃったのねぇ」
「うぅ、」

でもさぁ。

「あっ、」

僕もねえ。
そんな君の叫びを聞きながら興奮できるくらいには。

「いやぁぁぁぁぁあ」
「大丈夫?」

あぁぁ、快感。

「やめ、や、」
「仕方ないよ、君、君の声。
 凄く素敵だよ、音羽」
「いたっ、あぁぁ、」

でも。

 よがって空虚な瞳でそう僕を見て。
 凄く幸せそうに、八重歯、見せて笑ってくれる。

 実はもう。
 付き合って4年目とか、君忘れちゃってるけど。
あれかなぁ?
 君を一回失神させるまで首絞めちゃったあれが悪かったかなぁ。

「いやぁぁぁ、ん、」
「あはは、スゴい幸せそうじゃない、快感」
「ぅん、はぁ、いくちゃん、」
「はいはい、その捻り潰した声、切れたギターみたいでそれも好きだよ、ねぇ、」
「いやぁぁぁ」

はぁ、
ホントうぜぇ。
誰が?
でも。

「幸せ」

そう。
幸せです。僕たちは。きっと。

「  」

 君には聞こえない。
 聞こえないんだ、僕の。

「哀しいなぁ」

 この、空虚が。
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