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PLAY MUSIC to ECCENTRIC
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「え?は、え、えぇいがぁ?」
スタジオにて。
バイト終わりの文杜が腕立てをしながら間抜けに真樹に訪ねる。ナトリも腕を伸ばしたりしている。
果たして世の軽音部(一度そう表現したら真樹は西東にシメられた)の風景なのだろうかこれ。肩幅広い、腕立てしていれば猫背でもない、ジャージを着てちょっと汗ばむ目付き悪い前髪輪ゴムと、普通にがたいが良い長身のすっきり外人顔って。
俺そーゆーのなんも多分出来ない。出来たとして長座体前屈かもしれない。
そう真樹はぼんやり考えて、取り敢えずやるかと、突如座り込んで足を広げ、前に上半身を倒したら案外半身がぺたりと床についてしまったもんで。
「真樹スゴいね」
「タコみたいだなお前気持ち悪っ」
「うん、自分でもぉ、ちょっとぉ、ビックリぃ!」
いつのまにやら他二人は体操をやめ、真樹を立って眺め始める。
文杜なんかは面白がって後ろから真樹の背中を押す、というより両腕ついて真樹の背中に体重を掛け「うりゃうりゃ」と遊び始めたり。
「痛い、流石に重いあと臭ぇしなんか熱、いたたたたぁ!」
痛い痛いと言う真樹に、「これなんか意味あんのか真樹」と聞くのはナトリ。
「多分ないよね。真樹も腕立てやっ、たらっ!」
「腕立ては出来ねぇっ!つかお前らなっ、で、やって、んの!」
文杜を半ばすっ飛ばすように真樹は半身上げて横曲げ、爪先に手をつけてみた。
卑猥な触り方で肋骨辺りをなぞる文杜に「ひぃ、」と変な声があがる。
「ね、文杜、殺すぉ!」
「やだなぁ、」
ぴきっと体が、というより右辺りの筋が吊った気がした。息を呑むような真樹の「ひぃぅ、」に、ちょっかいを出していた文杜は思わず「え、何感じた?」とか凄く的外れな事を言っているが真樹には聞こえない。
察したナトリが「おいチビ、」と焦る。
「お前、まさか」
「ぃぃい…」
「え?なに真樹ヤバいの?」
「も、とに戻し…」
「あ死ぬからやめろ、まずは息を吸」
それにテンパった文杜が右に真樹の腕を引っ張る。「いぁぁ!」と悲鳴。ナトリは溜め息を吐いて掌で顔を覆ってから、
いや呆れてる場合ちゃうねんと思い直し、「待てぇ、待て文杜、と真樹!」と声を掛ける。
「なーにしてんの君たち」
後れ馳せながら西東、漸く登場し、現場を眺めるが、「大変西東さん、Vテン、呼んで真樹死ぬ!」だの、「いぁぁ、」だのふざけている三人集が西東には通常運行中にしか見えない。
「あ、のぅ、さ、いとー、氏ぃ、よー、ちゃんがねぇ、え、映画をぉ、観よって」
「あまちゃん何言ってるか全くわかんないけどビラは?」
「話たってぇ、で、映画を、」
「真樹、ゆっくりだ、ゆっくり息吸って一回体勢をな、ほら吸って吐いて」
「御産みたいだ…ごめん真樹俺が責任取るわはい、ひっひ、ふー」
「っざけんな、痛ぇ、ぅっ殺すぞバカ二人ヤバい、戻らない戻らないホントに助けてぇ、今動いたら俺折れる。西東さん、冗談抜きで見てこの汗助けてぇ!」
「いや君たち何してんの夜中にむさ苦しいんだけど御産?陽介呼ぶの?」
「違うじゃんこのば、痛い、は、腹に、力入れたら痛」
「はいはいはいはい」
西東、歩み強引に真樹の腕を引っ張りおんぶ。真樹、「ひっ、」と呼吸が止まる。
「陽介のとこ行けばいいのね?破水?」
「あっ、いぃ…」
「西東さん多分違うけどそう」
めんどくさそうに文杜が答えれば、「は?」と西東。
ナトリは、最早これは日本人特有の異文化コミュニケーションだと眺めることにした。ただ、小さな声で、「貧乏くじは今回お前だな真樹」と、にやけた。
最早ぐったりしつつ真樹は「…よーちゃん家ぃ、も、やだ、」と泣きそうになった。
「どーしたのこの子」
「わかんない。タコなんじゃん?」
「え君にまで悪口言われるようになったのあまちゃん」
「いやそうじゃないんすよ西東さん。そいつら二人バカなんすよ」
「いや知ってる。けどおかしくない?」
さして疑問でもなさそうだが取り敢えずさっきまでの経緯を西東にナトリが話してみれば。
途中で、「えよくわからん」だの「極端だね栗村氏」だの言われながら最終的に、
「ふ、はははははぁ!え、え、ま、マジぃ、ひ、ひぃ、や、やめてよちょ、死ぬ、わ、笑う!ひっひっふーやんっ!」
背負った真樹を振り落とさん勢いで西東に大爆笑されてしまった。時間的にうるさい、近所迷惑である。
何より真樹が、落ちそうなくらい西東の身体が揺れ、突然笑いスイッチが入ったもんだから真樹の身体がぴくっとし、二人が後ろからその異様さを見て明らかにその都度ビビっている。
「さ、西東さん、多分うるさいっすよマジ」
「あと俺の相棒がちょっとビビってます。落ちそう。可哀想」
「はぁ?相棒てなになに」
「あの、真樹氏です」
「えなにビビってんのあまちゃん」
「こ怖い、マジ落下る。あと西東氏怖い、どして、なんで何が悪かったの俺ぇ、」
「あマジだこ、声が、ふ、震えて、ひっ、ひっ、」
「の野郎ぅ、ネコくっつけるぞ外国被れぇ!
ハゲ、助けて、助けて怖い、ホント怖い!」
「あ悪口言ったうらぁ!」
西東、前屈み。というかお辞儀というか、背負い投げスタイル。
「きぃぁぁぁ!」という真樹の叫び。現在23時54分マンションの外廊下、7階。防音と言えど、うるさい。
「うるせぇよバカ!」
508、一番端の扉が開き、家主の一之江出迎えた。構図を見て「は?」と一言不機嫌に漏らす。
スタジオにて。
バイト終わりの文杜が腕立てをしながら間抜けに真樹に訪ねる。ナトリも腕を伸ばしたりしている。
果たして世の軽音部(一度そう表現したら真樹は西東にシメられた)の風景なのだろうかこれ。肩幅広い、腕立てしていれば猫背でもない、ジャージを着てちょっと汗ばむ目付き悪い前髪輪ゴムと、普通にがたいが良い長身のすっきり外人顔って。
俺そーゆーのなんも多分出来ない。出来たとして長座体前屈かもしれない。
そう真樹はぼんやり考えて、取り敢えずやるかと、突如座り込んで足を広げ、前に上半身を倒したら案外半身がぺたりと床についてしまったもんで。
「真樹スゴいね」
「タコみたいだなお前気持ち悪っ」
「うん、自分でもぉ、ちょっとぉ、ビックリぃ!」
いつのまにやら他二人は体操をやめ、真樹を立って眺め始める。
文杜なんかは面白がって後ろから真樹の背中を押す、というより両腕ついて真樹の背中に体重を掛け「うりゃうりゃ」と遊び始めたり。
「痛い、流石に重いあと臭ぇしなんか熱、いたたたたぁ!」
痛い痛いと言う真樹に、「これなんか意味あんのか真樹」と聞くのはナトリ。
「多分ないよね。真樹も腕立てやっ、たらっ!」
「腕立ては出来ねぇっ!つかお前らなっ、で、やって、んの!」
文杜を半ばすっ飛ばすように真樹は半身上げて横曲げ、爪先に手をつけてみた。
卑猥な触り方で肋骨辺りをなぞる文杜に「ひぃ、」と変な声があがる。
「ね、文杜、殺すぉ!」
「やだなぁ、」
ぴきっと体が、というより右辺りの筋が吊った気がした。息を呑むような真樹の「ひぃぅ、」に、ちょっかいを出していた文杜は思わず「え、何感じた?」とか凄く的外れな事を言っているが真樹には聞こえない。
察したナトリが「おいチビ、」と焦る。
「お前、まさか」
「ぃぃい…」
「え?なに真樹ヤバいの?」
「も、とに戻し…」
「あ死ぬからやめろ、まずは息を吸」
それにテンパった文杜が右に真樹の腕を引っ張る。「いぁぁ!」と悲鳴。ナトリは溜め息を吐いて掌で顔を覆ってから、
いや呆れてる場合ちゃうねんと思い直し、「待てぇ、待て文杜、と真樹!」と声を掛ける。
「なーにしてんの君たち」
後れ馳せながら西東、漸く登場し、現場を眺めるが、「大変西東さん、Vテン、呼んで真樹死ぬ!」だの、「いぁぁ、」だのふざけている三人集が西東には通常運行中にしか見えない。
「あ、のぅ、さ、いとー、氏ぃ、よー、ちゃんがねぇ、え、映画をぉ、観よって」
「あまちゃん何言ってるか全くわかんないけどビラは?」
「話たってぇ、で、映画を、」
「真樹、ゆっくりだ、ゆっくり息吸って一回体勢をな、ほら吸って吐いて」
「御産みたいだ…ごめん真樹俺が責任取るわはい、ひっひ、ふー」
「っざけんな、痛ぇ、ぅっ殺すぞバカ二人ヤバい、戻らない戻らないホントに助けてぇ、今動いたら俺折れる。西東さん、冗談抜きで見てこの汗助けてぇ!」
「いや君たち何してんの夜中にむさ苦しいんだけど御産?陽介呼ぶの?」
「違うじゃんこのば、痛い、は、腹に、力入れたら痛」
「はいはいはいはい」
西東、歩み強引に真樹の腕を引っ張りおんぶ。真樹、「ひっ、」と呼吸が止まる。
「陽介のとこ行けばいいのね?破水?」
「あっ、いぃ…」
「西東さん多分違うけどそう」
めんどくさそうに文杜が答えれば、「は?」と西東。
ナトリは、最早これは日本人特有の異文化コミュニケーションだと眺めることにした。ただ、小さな声で、「貧乏くじは今回お前だな真樹」と、にやけた。
最早ぐったりしつつ真樹は「…よーちゃん家ぃ、も、やだ、」と泣きそうになった。
「どーしたのこの子」
「わかんない。タコなんじゃん?」
「え君にまで悪口言われるようになったのあまちゃん」
「いやそうじゃないんすよ西東さん。そいつら二人バカなんすよ」
「いや知ってる。けどおかしくない?」
さして疑問でもなさそうだが取り敢えずさっきまでの経緯を西東にナトリが話してみれば。
途中で、「えよくわからん」だの「極端だね栗村氏」だの言われながら最終的に、
「ふ、はははははぁ!え、え、ま、マジぃ、ひ、ひぃ、や、やめてよちょ、死ぬ、わ、笑う!ひっひっふーやんっ!」
背負った真樹を振り落とさん勢いで西東に大爆笑されてしまった。時間的にうるさい、近所迷惑である。
何より真樹が、落ちそうなくらい西東の身体が揺れ、突然笑いスイッチが入ったもんだから真樹の身体がぴくっとし、二人が後ろからその異様さを見て明らかにその都度ビビっている。
「さ、西東さん、多分うるさいっすよマジ」
「あと俺の相棒がちょっとビビってます。落ちそう。可哀想」
「はぁ?相棒てなになに」
「あの、真樹氏です」
「えなにビビってんのあまちゃん」
「こ怖い、マジ落下る。あと西東氏怖い、どして、なんで何が悪かったの俺ぇ、」
「あマジだこ、声が、ふ、震えて、ひっ、ひっ、」
「の野郎ぅ、ネコくっつけるぞ外国被れぇ!
ハゲ、助けて、助けて怖い、ホント怖い!」
「あ悪口言ったうらぁ!」
西東、前屈み。というかお辞儀というか、背負い投げスタイル。
「きぃぁぁぁ!」という真樹の叫び。現在23時54分マンションの外廊下、7階。防音と言えど、うるさい。
「うるせぇよバカ!」
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