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「仕方ねぇなぁ」
樹実はぼやいてから、後ろから突進してくる木崎准将に涼しい顔で裏拳をかました。あぁ、確かに左側だと反応が早いんだなぁ。
第三研究室やそれぞれ空いている部屋から人が出てくる。だが樹実は、「うるさいなぁ」とのんびり言い、右側を顎でくいっと示したので、仕方なく非常ベルを撃った。
ちょっとやっぱりオートマチックは使いにくいなぁ。好きじゃないよ師匠。
取り敢えずサイレンは止まった。
「みなさんお集まりのなかどーも。はい、国勢調査でーす。わかったらさっさと誰でもいいから資料室連れてけ」
と言い、樹実はFBI手帳を見せびらかす。多分、間違えて出してしまったことに彼は気付いていない。が、面白いので言わないでおこう。
まわりの研究者や軍人が、「初めて見た」だの、「FBIかよ!?」だのひそひそ言い始めたあたりで漸く樹実は気付き、確認。「あっ」と洩らす。
「まぁいいや。もーいいや。偉い人んとこ連れて」
喋っている最中に右側から白衣を来た研究者が樹実に発砲しようとしていたので、咄嗟に撃ってしまった。
「あっ」
見事に後ろに倒れた。血飛沫が綺麗に、舞う。
やべぇ、殺したかな。一介の研究者を。
「おい!」と、その研究者に皆一様に駆け寄る。そして「いてぇぇ!」と、撃たれた本人が喚いているので、どうやら殺してはいないことがわかった。
少し安心したのも束の間、僕らはどうやら一気に「テロリスト」色が強くなってしまったらしい。先程よりも向けられる銃口が増えた。
まぁここまで来てしまっては仕方がない。元々アウェイだ。
「てめぇら後悔すんなよ」
喋り方だけは楽しそうにそうだが、目付きは鋭く口許だけはシニカルに吊り上がる。耳元で、「このまま突き進もうか」と、樹実は無謀な事を言っているが表情的に、どうやら結構マジらしい。
「無茶しますね」
「そうかなぁ」
もう溜め息を吐くしかない。だがそんな僕を見て彼は、今度は軽やかに楽しそうに笑った。
それを合図にしたかのように、彼の起爆スイッチは入ったようだった。
恐らく3人ほどぶん殴った辺りで援護がどこかからやって来たのだろうが、案外意味はないようだ。流れるように人の並みは、道が出来てなくなっていく。相手が軍人だからこそ、彼は確実な体術で敵をかわし、怪我を負わせていく。
しかしながらやはり右からの攻撃にはどうもワンテンポ遅れてしまうようだ。
それでも、その辺の軍人が束になってもまったく意味がないくらいにずば抜けた体術を持っていた。最早、場数が違うのだろうとわかる。
彼は一体何者なのだろうか。
二人で夢中になっている最中、一人の、援護に来た軍人が言う。
「射殺命令が下ったぞ!」
と。
ぶっちゃけ遅すぎるがまぁ、これでこちらも遠慮なくいける。
「疲れたしちょーどいーわ」
樹実も同じ事を考えたらしい。ネクタイを緩め、ニヒルに笑った。
「掛かってこいよ、全員ぶっ殺す」
一斉に拳銃を向けられる。敵方の殺意が一気に上がったが。
「しゃべぇなぁ」
却って樹実はやる気を失ったように、深い溜め息を吐いてタバコを取りだし、火をつけた。ダルそうに首に手を当て、傾げるように骨を鳴らす。
「行くか。拍子抜けした」
確かに皆さま疲労感やらびびってる感やらで誰一人来ようとはしませんね。まぁ、あんだけ化け物みたいな身体能力を見せつけられたらそりゃぁ…。
とか思っていたら樹実がちらっと右側を見たので、ハンマーが鳴った気がするその右側へ取り敢えず一発撃ち込んでみる。
「おい!」
「貴様ぁぁ、なんて事を!」
騒然とした。思いのほか当たりだったようだ。まだ若手っぽい軍人の眼球あたりを仕留める。樹実が口を吹いた。
「今サボりましたよね」
「ダルいんだもん。てかすげぇじゃん」
確かに僕、よく出来たな今。
動揺が敵軍に走る中、樹実は、面倒臭そうに、一番真ん中にいた奴の左肩辺りに発砲した。
「うがっ!」
かと思えば走ってそいつを掴み、道を開けるように引き摺っていく。どうやら樹実は新たな人質を確保したらしい。その行動の鮮やかさに、唖然としている暇もなく僕は後ろをついていくことしか出来なかった。
それからワンテンポ遅れて見える軍人たちの攻撃にも、樹実は銃の持ち手に一発撃ち込んだり蹴っ飛ばしたりナイフを奪ったり人質を盾にしたりしながらかわしていく様は最早殺人鬼でも出来ないだろうと思えた。
後ろからも一応援護射撃をして、人だかりを突破。その頃にはお互い血塗れになっていた。吸っていたタバコもいつの間にやら捨てたようだった。
「あっ、」
大体が倒れているなか最後、血走った目でジャックナイフを持ち奇声を発して樹実に突進したのは研究者だった。戦闘に慣れていなそうなそれが反って予測不能で、樹実に後あと一歩で刺さりそうになってしまった。
気付けば僕は、その研究者を射殺していた。よく見れば右側だった。この時ばかりは大層驚いた表情で樹実は僕を見つめてきた。
「…お前…」
よくよく見れば樹実も、結構息は上がっていたが。そりゃぁ、そうかと少し、納得したような驚いたような気がした。
樹実はぼやいてから、後ろから突進してくる木崎准将に涼しい顔で裏拳をかました。あぁ、確かに左側だと反応が早いんだなぁ。
第三研究室やそれぞれ空いている部屋から人が出てくる。だが樹実は、「うるさいなぁ」とのんびり言い、右側を顎でくいっと示したので、仕方なく非常ベルを撃った。
ちょっとやっぱりオートマチックは使いにくいなぁ。好きじゃないよ師匠。
取り敢えずサイレンは止まった。
「みなさんお集まりのなかどーも。はい、国勢調査でーす。わかったらさっさと誰でもいいから資料室連れてけ」
と言い、樹実はFBI手帳を見せびらかす。多分、間違えて出してしまったことに彼は気付いていない。が、面白いので言わないでおこう。
まわりの研究者や軍人が、「初めて見た」だの、「FBIかよ!?」だのひそひそ言い始めたあたりで漸く樹実は気付き、確認。「あっ」と洩らす。
「まぁいいや。もーいいや。偉い人んとこ連れて」
喋っている最中に右側から白衣を来た研究者が樹実に発砲しようとしていたので、咄嗟に撃ってしまった。
「あっ」
見事に後ろに倒れた。血飛沫が綺麗に、舞う。
やべぇ、殺したかな。一介の研究者を。
「おい!」と、その研究者に皆一様に駆け寄る。そして「いてぇぇ!」と、撃たれた本人が喚いているので、どうやら殺してはいないことがわかった。
少し安心したのも束の間、僕らはどうやら一気に「テロリスト」色が強くなってしまったらしい。先程よりも向けられる銃口が増えた。
まぁここまで来てしまっては仕方がない。元々アウェイだ。
「てめぇら後悔すんなよ」
喋り方だけは楽しそうにそうだが、目付きは鋭く口許だけはシニカルに吊り上がる。耳元で、「このまま突き進もうか」と、樹実は無謀な事を言っているが表情的に、どうやら結構マジらしい。
「無茶しますね」
「そうかなぁ」
もう溜め息を吐くしかない。だがそんな僕を見て彼は、今度は軽やかに楽しそうに笑った。
それを合図にしたかのように、彼の起爆スイッチは入ったようだった。
恐らく3人ほどぶん殴った辺りで援護がどこかからやって来たのだろうが、案外意味はないようだ。流れるように人の並みは、道が出来てなくなっていく。相手が軍人だからこそ、彼は確実な体術で敵をかわし、怪我を負わせていく。
しかしながらやはり右からの攻撃にはどうもワンテンポ遅れてしまうようだ。
それでも、その辺の軍人が束になってもまったく意味がないくらいにずば抜けた体術を持っていた。最早、場数が違うのだろうとわかる。
彼は一体何者なのだろうか。
二人で夢中になっている最中、一人の、援護に来た軍人が言う。
「射殺命令が下ったぞ!」
と。
ぶっちゃけ遅すぎるがまぁ、これでこちらも遠慮なくいける。
「疲れたしちょーどいーわ」
樹実も同じ事を考えたらしい。ネクタイを緩め、ニヒルに笑った。
「掛かってこいよ、全員ぶっ殺す」
一斉に拳銃を向けられる。敵方の殺意が一気に上がったが。
「しゃべぇなぁ」
却って樹実はやる気を失ったように、深い溜め息を吐いてタバコを取りだし、火をつけた。ダルそうに首に手を当て、傾げるように骨を鳴らす。
「行くか。拍子抜けした」
確かに皆さま疲労感やらびびってる感やらで誰一人来ようとはしませんね。まぁ、あんだけ化け物みたいな身体能力を見せつけられたらそりゃぁ…。
とか思っていたら樹実がちらっと右側を見たので、ハンマーが鳴った気がするその右側へ取り敢えず一発撃ち込んでみる。
「おい!」
「貴様ぁぁ、なんて事を!」
騒然とした。思いのほか当たりだったようだ。まだ若手っぽい軍人の眼球あたりを仕留める。樹実が口を吹いた。
「今サボりましたよね」
「ダルいんだもん。てかすげぇじゃん」
確かに僕、よく出来たな今。
動揺が敵軍に走る中、樹実は、面倒臭そうに、一番真ん中にいた奴の左肩辺りに発砲した。
「うがっ!」
かと思えば走ってそいつを掴み、道を開けるように引き摺っていく。どうやら樹実は新たな人質を確保したらしい。その行動の鮮やかさに、唖然としている暇もなく僕は後ろをついていくことしか出来なかった。
それからワンテンポ遅れて見える軍人たちの攻撃にも、樹実は銃の持ち手に一発撃ち込んだり蹴っ飛ばしたりナイフを奪ったり人質を盾にしたりしながらかわしていく様は最早殺人鬼でも出来ないだろうと思えた。
後ろからも一応援護射撃をして、人だかりを突破。その頃にはお互い血塗れになっていた。吸っていたタバコもいつの間にやら捨てたようだった。
「あっ、」
大体が倒れているなか最後、血走った目でジャックナイフを持ち奇声を発して樹実に突進したのは研究者だった。戦闘に慣れていなそうなそれが反って予測不能で、樹実に後あと一歩で刺さりそうになってしまった。
気付けば僕は、その研究者を射殺していた。よく見れば右側だった。この時ばかりは大層驚いた表情で樹実は僕を見つめてきた。
「…お前…」
よくよく見れば樹実も、結構息は上がっていたが。そりゃぁ、そうかと少し、納得したような驚いたような気がした。
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