降りそそぐ灰色に

二色燕𠀋

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降りそそぐ灰色に

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 太陽のように眩しかった美智佳。でも、だからあたしは太陽じゃなくていいなって、そう思ってた。
 例えばじゃぁ、星かなんか、そういうヤツで。

 そう思ってたから…悲しい気持ちになった。
 後悔してるなと自覚をしていたのは始めからで、今それがもう本当に報われないとわかってしまった、あの瞬間。

 酒も入ってないのにボロボロ泣いた。
 学もこっちを見ないし、もう、ボロボロ泣いた。

 太陽はいつも、見上げるとキラキラ…水蒸気のような何かが目に貼り付くように見えるんだ。
 あの色が何色か、何色が焼かれてここに降り注ぐのかと、考えたことがあった。
 透明で、無色になったそれ。塵とか空気とか、そういう……。

 せめて声だけでも聞きたい。そっと、呟くような。
 ただそっと側にいれれば、それだけでよかったんだよ。

 ある程度泣いてスッキリして、曲もそんな感じで上げたり下げたりと、ライブ進行はとてもスムーズにいっていた。

 場もかなり盛り上がっていた。
 10曲ほどをやり終えたグラシアは楽屋に戻ってきた。
 アンコールも鳴っている。

 だけど、曽根原さんが一度パッと出てまた戻ってくるともう、終わりの合図で客席BGMが上がっていた。

 …アンコール、やらずに引き上げたんだ。リハではあったのだろう、だからきっと、今のはスタッフに打ち止めの合図をしに行ったんだろう。

 どうしたんだろうかと思えば「はーっ!!満足した~、よかったな!」と、本当に満足そうだった。

「…ビビりましたよ曲変」
「あっはっは、ごめんねりゅうちゃん!」
「いえ、めっちゃよかったんだけどどう?聴いてた?」

 こっちはこっちで、メンバーの中では若干厳つそうな気がしなくもない高峯がそう聞いてくる。

 なんなんだ皆して。

「いや、めっちゃくちゃよかったけど…」

 そこででんにじが「おつかれーっす!」と元気よく戻ってきた。

 美人で清楚そうな女の人が、子供と手を繋ぎ「こんばんは~」と挨拶をする。これが奥さんと子供か。
 学は例の、ドラムキッズ「ゆあちゃん」に釘付けになっていた。

 「わ~どうも~」と挨拶し合う中、「あの、」と、でんにじギターが少し気まずそうにあたしを見てきて、その後ろからシンジが顔を覗かせた。

「あ」
「…よぅ」

 仕方ないなと…色々構ってもらっている学はそこに取り敢えず置いておき、楽屋から出る。

「何」
「いや、お前」
「ごめんね行かなくて」

 シンジの顔を見ないように、というか一応学を遠目で見張っておくことにする。

 きっと「来てくれ」だとかそんなことだろうと思ったが、予想に反しシンジが「決まったんだな」と言ったのに、思わず顔を見てしまった。

 シンジは少し寂しそうに笑い「そうか、」と、勝手にスッキリ言うのだった。

「…勘違いしないで」
「…は?」
「んー、わかった。スタジオ行くから。
 あいつらどう?」
「…それが…別れた」
「……わ、」

 え。

「別れたぁ!?」

 一瞬シンとしてしまった。
 事態が一気に、バレる。

「あぁ、あっさりな。お前が2回目バックレた後。3回目からはもう空気がそれどころじゃないし、4回目からはみよ子も来なくなった」
「…マジ?」
「マジ。どーやらやっぱりみよ子じゃあいつを抑えられないが、そもそも最後に正論をぶちかましてきた、『なんであんたに合わせなきゃなんないのよ!』てな」
「うっわ……」

 最悪じゃん。
 どーすんだよそれ。

「あー。じゃあ次対バン無理そーだな?」

 曽根原さんが入ってきた。

「えっ」
「…どうしましょうか」
「ん、いーよ。じゃあグラシアワンマンやっかー。
 でも都合も俺しかつかないな、なんせグラシアは俺がメンバーだから。まぁみんなメンバーっちゃメンバーだけども」
「え」
「は」

 なんだそれ。
 しかしでんにじがいる。
 「あー俺ら今なら空いてまーす」と天崎が手を上げるが。

「いや、いい。空いてないお前らは」
「えーだって」
「第一、次もオナメンとかどーすんの」

 やべえ。
 どーしよこれ。

「……どーしま」
「まぁでも茜ちゃんと山里くんは空いてんなぁ、はい、ベースとドラムとギターそれぞれ!」

 曽根原さんが振り向くとそれぞれパートがシャキッとしたのがわかった。

「はい、話し合って」

 あーマジで?えーすげー。と、ノリノリになったグラシア、でんにじ面子の元に「はい、山里くんあっち」と曽根原さんは指示をする。

 あたしも見て促しているが、何かを察したように腕を組んだ曽根原さんは優しくふぅと息を吐き「全く…」と呟く。

「アーティストってさ」

 ふと、彼は少し上を向いた。

「確かに見せつけなきゃならないけど、結局は、そこにあるコンテンツでしかないんだよなぁ」

 どうやらそれは、酷くシンプルで。

 曽根原さんはそれ以上、言及をしなかった。

 だかこそ、そっと胸に…そしてじわじわと響いてくる。まるで…そう、それは確かにFマイナーかなんかの、特別でもない、メロディーラインのように。

 メンバー達は楽しそうに話し始めている。まるで、この前の風景に似てる。
 これが集まったら、確かにきっと、本当に凄いし楽しいだろうな。

「…ちゃんと最後まで見届けるんで」

 聞いたかはわからない。ただ、楽しそうなメンバー達を見て、「楽しそ」という大先輩に、頭は上がらなかった。
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