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ハナちゃんママの店に入ると「あらりっちゃんおめでと、退職祝いね!」だなんてハナちゃんママはニコニコしてくれた。
しかし律の顔をよく見て「ん?」と、けばけば化粧の顔が曇る。
「あらヤダりっちゃん、どうしたの?今日はブスねぇ~」
お疲れ様~、と言いながら然り気無くハナちゃんママは一番端のカウンター席を促してくれる。
へなへなと座り込む律の感情は最早ぐるぐるして金曜日並みの疲弊だった。
「メキシ」いや、明日もあるし「ごめんやっぱりカシスウーロンで…」と頼んでぼんやりとした。
「あら、いかないのりっちゃん、辞めたんでしょ?」
「いや…辞められるけど明日金曜日だから…」
「すっぱりじゃないのね、やっぱり」
何か食べる?と聞いてくれたハナちゃんママに「うぅん、ちょっと考えたくて…」と、どちらかといえば賑やかな店で何を言ってるんだという気になった。
「悪い癖ねぇ、りっちゃんの。で?どーしたの」
「うん…あぁ、えっと…」
「あの社長辞めさしてくんなかったんでしょ?」
はい、ほうれん草もね、と小鉢とカシスウーロンを出してくれた。
はいはーいと写メを撮るハナちゃんママのテンションに、うんまぁ…話したいから来たんだろうなと「それが…」と自然と出て行く。
「凄くあっさり辞めることになった…多分…」
「何?辞めたがってたじゃない。清算するんじゃなかったの?」
「うん…」
「引き留めてくれなかったの?」
うっ。
そうもはっきり突かれてしまうと心は悼むが、いや、あっさりでもなかったなと「うーん…」と複雑になる。
「全くりっちゃんは女みたいね、話しちゃえば良いじゃない」
「うん…まぁ…」
しかしハメ撮りで脅されたとか、言いたくないなとふとカウンターを見上げれば、ハナちゃんママの少しの剃り残しを発見した。
今日は金色だかなんだかのてかてかなジャケット。前回はシャツがぴったりしすぎて乳首が立っていたな。
「ハナちゃんママ、このへん剃り残してる」
右の顎あたりを擦って教えると「そーなのよ寝坊しちゃって」とあっさりしているもんだ。
「律はいいわよねぇ~毛が薄くて。羨ましい。脱毛してんの?」
「んー…元からだけど少しだけ気は使うような…」
「そう、若い子みんなそう言うのよ最近」
清潔感、めっちゃ重要らしいので…と思っていても「で?」とくる。
「うん、まぁ願いと届けにポンポン判子を押されてあっさり退職は出来そうです、いや、あっさりでもないんだけどあっさりで…」
「まぁあんたの社長、絶対しつこいものね」
「今日も散々「急だねどうしたの?誰か死んだ?」とかなんとかネチネチ言われた…」
「あんたホントに男運ないのよね、アキヒコといい社長といい…て…、何?じゃあ別れるのに引きずりそうなの?」
「いや、付き合って…ないですよそもそも。あっちはお子さんもいるし…」
「でもあれ?奥さんとは別れてるんだったわよね?」
「ええ、いやそうですけど」
いざ初戦、という日に軽く言われた「君ならいけると思うんだよね」を思い出し更に腹が立ってくる。よくよく考えたらなんだそれは。でもそれは確かハナちゃんママもそういえば当時憤慨してくれていた…。
「だから別れたんじゃないの?あんた」
「いや、違います…ちょっとだけ。確かにころっと着いて行っちゃいましたけど…」
晃彦と別れてすぐだ。
自棄になり、昔通ったハプバーにフラっと戻りそうだった日、その局地的タイミングで「こんなところに…」と入り口で鉢合わせたのが社長だった。
今にして思えばあれ、絶対尾行だった、だってあの人ノーマルだし。
…だなんて、やっぱり傲っていたんだろうか。
センチメンタルになりそうになったがいや待て、あれも充分脅しじゃないのか?とやはり複雑な気分で。
「りっちゃんって昔からそういうとこあるわよね。だからあたしなんかに食われるのよ」
うんそう、確かにそうだ。かなり流されやすい自覚はある。
うだうだ、ほうれん草をつまむ。
「…そう考えると晃彦の時、もう少し違かったかもなぁ~……」
独り言を呟いた時、ハナちゃんママがケータイを見て急に「あら、ヤダっ」と口を押さえて大きく呟いた。
なんだ?と思わずともハナちゃんママは自分を見て「りっちゃん!!!大変よ!!!」と奇声をあげる。
「…どうしたの?」
「あんた、これ……。
ヤバイ、バズってる…!」
なんだ?と思う間もなくハナちゃんママはケータイを見せてきた。
驚愕だった。
「…えっ!」
明らかなる捨てアカ、名前は「シズオミ」…志津沼晴臣社長から、自分の「仕事、辞めます!」の呟きにリプライが付いている。
動画ファイルだった。
「これ、あんたよね!?」
角度的に横か…ビジネスホテルのベッド。
急いでイヤホンを付けたハナちゃんママが自分に寄越してくる。
布団の中で組み敷かれているそれは自分だ。もぞもぞ、もぞもぞに合わせて「しゃちょ……あっ、そこ、」だなんて、かなりの醜態だった。
しかし律の顔をよく見て「ん?」と、けばけば化粧の顔が曇る。
「あらヤダりっちゃん、どうしたの?今日はブスねぇ~」
お疲れ様~、と言いながら然り気無くハナちゃんママは一番端のカウンター席を促してくれる。
へなへなと座り込む律の感情は最早ぐるぐるして金曜日並みの疲弊だった。
「メキシ」いや、明日もあるし「ごめんやっぱりカシスウーロンで…」と頼んでぼんやりとした。
「あら、いかないのりっちゃん、辞めたんでしょ?」
「いや…辞められるけど明日金曜日だから…」
「すっぱりじゃないのね、やっぱり」
何か食べる?と聞いてくれたハナちゃんママに「うぅん、ちょっと考えたくて…」と、どちらかといえば賑やかな店で何を言ってるんだという気になった。
「悪い癖ねぇ、りっちゃんの。で?どーしたの」
「うん…あぁ、えっと…」
「あの社長辞めさしてくんなかったんでしょ?」
はい、ほうれん草もね、と小鉢とカシスウーロンを出してくれた。
はいはーいと写メを撮るハナちゃんママのテンションに、うんまぁ…話したいから来たんだろうなと「それが…」と自然と出て行く。
「凄くあっさり辞めることになった…多分…」
「何?辞めたがってたじゃない。清算するんじゃなかったの?」
「うん…」
「引き留めてくれなかったの?」
うっ。
そうもはっきり突かれてしまうと心は悼むが、いや、あっさりでもなかったなと「うーん…」と複雑になる。
「全くりっちゃんは女みたいね、話しちゃえば良いじゃない」
「うん…まぁ…」
しかしハメ撮りで脅されたとか、言いたくないなとふとカウンターを見上げれば、ハナちゃんママの少しの剃り残しを発見した。
今日は金色だかなんだかのてかてかなジャケット。前回はシャツがぴったりしすぎて乳首が立っていたな。
「ハナちゃんママ、このへん剃り残してる」
右の顎あたりを擦って教えると「そーなのよ寝坊しちゃって」とあっさりしているもんだ。
「律はいいわよねぇ~毛が薄くて。羨ましい。脱毛してんの?」
「んー…元からだけど少しだけ気は使うような…」
「そう、若い子みんなそう言うのよ最近」
清潔感、めっちゃ重要らしいので…と思っていても「で?」とくる。
「うん、まぁ願いと届けにポンポン判子を押されてあっさり退職は出来そうです、いや、あっさりでもないんだけどあっさりで…」
「まぁあんたの社長、絶対しつこいものね」
「今日も散々「急だねどうしたの?誰か死んだ?」とかなんとかネチネチ言われた…」
「あんたホントに男運ないのよね、アキヒコといい社長といい…て…、何?じゃあ別れるのに引きずりそうなの?」
「いや、付き合って…ないですよそもそも。あっちはお子さんもいるし…」
「でもあれ?奥さんとは別れてるんだったわよね?」
「ええ、いやそうですけど」
いざ初戦、という日に軽く言われた「君ならいけると思うんだよね」を思い出し更に腹が立ってくる。よくよく考えたらなんだそれは。でもそれは確かハナちゃんママもそういえば当時憤慨してくれていた…。
「だから別れたんじゃないの?あんた」
「いや、違います…ちょっとだけ。確かにころっと着いて行っちゃいましたけど…」
晃彦と別れてすぐだ。
自棄になり、昔通ったハプバーにフラっと戻りそうだった日、その局地的タイミングで「こんなところに…」と入り口で鉢合わせたのが社長だった。
今にして思えばあれ、絶対尾行だった、だってあの人ノーマルだし。
…だなんて、やっぱり傲っていたんだろうか。
センチメンタルになりそうになったがいや待て、あれも充分脅しじゃないのか?とやはり複雑な気分で。
「りっちゃんって昔からそういうとこあるわよね。だからあたしなんかに食われるのよ」
うんそう、確かにそうだ。かなり流されやすい自覚はある。
うだうだ、ほうれん草をつまむ。
「…そう考えると晃彦の時、もう少し違かったかもなぁ~……」
独り言を呟いた時、ハナちゃんママがケータイを見て急に「あら、ヤダっ」と口を押さえて大きく呟いた。
なんだ?と思わずともハナちゃんママは自分を見て「りっちゃん!!!大変よ!!!」と奇声をあげる。
「…どうしたの?」
「あんた、これ……。
ヤバイ、バズってる…!」
なんだ?と思う間もなくハナちゃんママはケータイを見せてきた。
驚愕だった。
「…えっ!」
明らかなる捨てアカ、名前は「シズオミ」…志津沼晴臣社長から、自分の「仕事、辞めます!」の呟きにリプライが付いている。
動画ファイルだった。
「これ、あんたよね!?」
角度的に横か…ビジネスホテルのベッド。
急いでイヤホンを付けたハナちゃんママが自分に寄越してくる。
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