あじさい

二色燕𠀋

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第三話

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 家に帰って早速、小夜は俺がバイトの休憩中に作っておいたテストをやった。漢字20問。
 真里は、ご褒美は売っ払った時の金で買ってやろうと提案してきた。

「いいのかよ?」
「別にいんねー服だし、ほとんど光也さんの元カノのだし」

 そんな話をしていると、真里のケータイが突如鳴った。「誰だろ」と言って画面を確認した真里が、ふと俺を見た。

 何だろう。

「はい、もしもし」

 電話に出ながら真里は、ベランダを指差してきたので、よくわからないままベランダに二人で出る。

「あぁ、聞きました?はい、概ね合ってます。え?代わります?でも… 」

 真里はちらっと俺を見て、ケータイ画面を見せてきた。光也さん 姉 と表示されている。俺は即座に首を振った。

「今ね、買い物に出ちゃってます。帰るの?さぁ…まぁ本人には言ってみますけど。
 あぁ旦那さん?ふーん。いや、代わらなくて結構です。多分俺だと、失礼ながらボロっくそに言っちゃうから。はい、はーい」

 真里はあっさり電話を切った。

「バレるの早かったなー」
「旦那が言ったんだとよ。まぁ、あれはあれで反省したんだろ」
「別に反省なんかしなくても…」
「泣いてたよ、ねぇちゃん」
「…それに俺はなんて返したらいい?」
「さあ。ただあんたには伝えとくよ。
 もう大号泣で半分くらい何言ってるかわかんなかったわ」
「…昔から姉ちゃん泣き虫だから。強がってるけどさ」

 街灯に蝉がぶつかってる。それをぼんやり眺める。

「ちょっと失礼」

 そう言って真里はまた、後ろから緩く抱き締めてくる。

「お前このポジション好きだな」
「ていうより光也さん背中がなんかね、頼りないからついやっちゃう。嫌だったら払い退けていいけど?」

 外、涼しいから良いけどさ。

「これでいいの?流石にねぇちゃんちょっと可哀想だったよ」
「いい。
 俺もわりと頑固だからな。一度決めたら変えないんだよ」
「確かに仕事もそうだね。だからあんだけ無理したんだもんな」
「…そうだな。
 あの、真里さん?こんな時に非常に言いにくいこと言っていい?」
「なんでしょうかセンパイ」
「…腰辺りに当たってるんすよね、ブツが」

 さっきから徐々に気になってたんだよなー。若いから仕方ないけども…。

「仕方ないですね。男の本能ですわ」
「お前なぁ…これ禁止するよ?」
「いやごめんって!だけど寝かせらんないのあんた知ってるでしょ?」
「知ってますけど!気持ちわかりますけどちょっと工夫出来ませんかね」

 コイツ本当にガチでそっち系なんだな。俺マジで一緒に住んでて貞操守れるのかな。体格でいったら絶対に負けるんだが。

「一応頑張ってね、ちょっと違うこと考えたりとかしてんだけど身体は正直だねー、なんか指摘されるとより…」
「先に戻ります」

 これは怖いのでとにかく逃げよう。

 あっさり腕から逃げて部屋に戻る。小夜はまだテストをやっていた。邪魔をしないようにベッドへ腰かける。

 ちらっと見れば、結構出来ていた。やっぱり子供の吸収力ってすごいな。

 名前の欄にはまだ名前を書いていない。
そう言えば俺も小さい頃、名前は最後に書いていたなぁ。
 だけど中学生くらいまでそれを続けていると、解けないとき、志摩光也って画数多くてイライラしたもんだ。

 ふとケータイを見れば、制限時間はあと5分くらいだった。小夜はそこでやっと全部終わって名前を書き、見直しをしている。

 テストの仕方、勝海と竜太郎に教わったのかな。ちゃんと出来てる。

 そーっと真里が入ってきた。真里もそれを見て、静かに俺の隣に座る。時間まで二人で小夜を見守った。

「はい、終わり」

 そう言って小夜は伸びをした。
 早速答案を見て、漢字スキルを開いた。それから俺と二人で答案とスキルを見比べながら答え合わせをする。

「20問中15問正解。良くできました。…ん?」

 ふと見ると、回答用紙の下に用意した点数を書くところの下、欄外に、“紫陽花”と書かれていた。

「あじさい。むらさきにたいようのはなだって。遥子お姉ちゃんが教えてくれた」
「…そっか」

 嬉しそうに話す小夜の頭を撫でる。

 俺の日常に色濃く姉貴が存在してたことを、こんな形で再確認することになるとは思わなかった。

「良い点取れたからご褒美買いに行こうか。何がいいかな」

 取り敢えず近くのショッピングセンターにでも行こうかな。
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