あじさい

二色燕𠀋

文字の大きさ
40 / 86
第三話

11

しおりを挟む
 3人でブラブラと歩いて近くのショッピングセンターに向かった。ついでに夕飯も何か買おう。

 テキトーにそれっぽいところを歩いてみたが、なかなか小夜のお眼鏡に敵わない。というより、小夜はどうやらこういう大きな店には初めて来たらしい。ずっとキョロキョロしていた。

 ふと小夜が立ち止まったのはゲーセンの前だった。

「ん?」

 小夜が恐る恐るといった感じに指差したのはUFOキャッチャーの青いクマだった。

「あれ?」
「あんなんでいいのか?」

 俺と真里が二人して驚くなか小夜は頷いた。

「よし、俺が取ってやろう」

 UFOキャッチャーは男の得意分野だ。大体女の子に取ってあげる係りをやらされるものだ。

 100円入れてみても反応しない。あれ?

「光也さん、今のUFOキャッチャーはね、100円じゃないんだぜ」
「え?」

 見たら1回200円。なんじゃそら。

「マジか。時代の流れやな」

 仕方なくもう100円入れてやってみる。
こーゆーのは気持ちズレたところを狙うといいんだ。

 あえなく失敗。UFOキャッチャーあるあるの、アームがクソゆるい。

「まだ勝負はこれからだ!手前の青いやつ転がそうかな」

 アームがユルいときはこれをやるといい。が、これは同時に俺の操縦テクが関わってくる。

 小銭を探したらなかった。

「真里、」

 俺は財布から札を出した。間違えて1万円を出してしまったので慌ててしまって千円を真里に渡す。

「小遣いじゃないぞ?」
「あんたいつになく真剣だな…」

 真里はすぐさまその千円を両替して戻ってきた。百円玉10枚計5プレイ。いける。絶対仕留めてやる。
 クマとの戦い2ラウンド目スタート。

「真里、横から見てストップって言えよ?最初は自分でいく」
「へーい」

 狙いを定めて縦方向!

「うああっ!行きすぎたわぁぁ!」
「これは次だな」
「つかなにこのボタン止まんねぇんだけどぉ!」

 テキトーに左右ボタン押して終了、第3ラウンドへ。

「てか光也さん、言っとくが俺なら一発で穴に仕留めるぜ」
「おらやってみろヤリチンが」

※小夜がいて尚且つ公共の場なのを忘れています。

「一発でいったら俺にもご褒美くれるならやってやるよ」
「時と場合と物による!」
「んーじゃぁね、ちゅーね」

 言ってるうちにタイムアップ。

「あっ」

 思わず二人でハモった。第4ラウンド、選手交替で真里へ。

「光也さん甘いな。こーゆーのはなぁ」

 え、めっちゃズレましたけど。横から見てても手前しか引っ掛からないんじゃ…。

「こーして、こうだ!」

 クマ2匹取れるんじゃないかという位置でアームは止まり、降りた。案の定、クマ2匹掴んだが…。

「あっ!」

 後のピンク色のクマと青色のクマ。どちらも持ち上げるのは不可能だが、それを利用したらしい。どちらもつかんだ結果どちらもずり落ち、後のピンク色のクマが青色のクマを蹴飛ばして見事ゴールイン。

「す、すげぇ…」
「伊達に暇な学生やってねーよ。ゲーマーなめんな」

 真里の意外な一面を発覚。
 思い出してクマを取りだし、小夜に渡した。

「ありがと!かわいい」

 耳のところに花がついている。どうやらそれが気に入ったらしい。

「かっこよかったよ」
「だってよ、真里」
「んー」

 残った400円をしまおうとしたら、

「なんかもの足りねぇな。小夜、も一個いる?ピンク」
「え?」
「ちょうど400円だ。勝負しようぜ。ちなみにさっきのチューは忘れてないからな」
「あれはなしだろータイムアップじゃん!」
「じゃぁもっかい唇貞操掛けて」

 勝てる気がしない。

「えぇー」
「じゃぁあんた勝ったら何がいい?」
「んー…タバコ一箱」
「はいきたやるぜ」

 なんでこんなコイツやる気満々なんだよー…。

 ピンクのクマと俺の貞操を掛けていざ、勝負。

 こーゆーのは作戦勝ちだ。どちらも一回キリならこっちが有利に立たねばなるまい。
 さっきのピンクちゃん(仮名)は後ろに転がってしまったのでなかなか取りづらいが果たして真里はどれをゆくか。

「言い出しっぺ、先に行け」
「ま、元からそのつもりだ。あとで泣くなよセンパイ」

 こいつなんでこんな自信があるんだ。どー頑張っても一発では無理だぞ。

「頑張るなよ後輩」

 ここに来て弱気になる俺のもやし根性。それを見て真里はにやけて200円を入れた。

 まさか、戦意喪失させる作戦なのか。

「あー楽しみだなぁ今夜♪」
「そこまでの貞操はやらんからな!」

 正面に行ってくるっと回して…あ、やべ、持ち上がっちゃったけど…。足がしぶといな。よっしゃぁぁ!ギリギリで失敗、落ちた!

「うっし!」
「んだこのクソ機械。ぶっ壊すぞ」
「怖い怖い怖い!」

 おかげで大変有利になった。やったな。セッターソフトパック一箱浮いたな。

 そっからあっさりクマゲット。

「小夜、取れたぞ!」

 そして小夜の両手はクマで塞がっていた。

「二つももらっちゃった」
「よかったなー」
「マリちゃん、みっちゃんありがと」

 終わってみると、こんなのでホントによかったのかなって気もするが、小夜は今にもスキップしそうな勢いで喜んでいた。

「金のかからんガキだなぁ、小夜は」

 青クマ800円、ピンククマ400円。確かに金のかからないご褒美だった。せめて夕飯くらいは何か好きなものでもと思ったが、「オムライス」とか言うもんだから、本日かかった出費は3000円に満たないくらいだった。

「どっか良いとこ連れてってやったらいいのかね?」
「いや、いいんじゃね?小夜がいいって言うんだし。そっちの方が嬉しいのかもよ。試しに聞いてみる?小夜ー!」

 ホント間髪入れねぇな。

「ん?」

 青クマを肩に背負って前を歩いてた小夜は振り返る。

「オムライスさ、デミグラスとケチャップどっち派?」
「え?…わかんない。ケチャップ?しか」
「あー、なるほどそうきたか。うんと、ハヤシライスのルーがかかってるヤツがデミグラス」
「え!なにそれ!」

 すっげー興味津々だ。

「じゃぁさ、
 超一流シェフが作るオムライス屋さんのオムライスと、俺か光也さんが作るオムライス、どっち食いたい?」
「んん?」 
「超一流って言ってもわかんなくね?」
「んー…マジですごいコック」
「なんだそのガキみたいな説明」
「じゃぁ光也さんならなんて言うよ!?」
「んー…。美味しいお店」
「うわぁまとめた。けどなんか違ぇ」
「どこが違うよ」
「いや美味い店だけどね、なんか胃にすとんと落ちねぇな。あんたの面倒臭がりが凝縮された一言だわ」
「悪かったな」

 とか二人でコントみたいなやり取りを繰り広げていると、小夜が笑い出した。

「また今度行きたい。今日はみんなで作ろ?」
「…そだな。材料買ったしな」

 真里よりも大人だなぁ、小夜。

「なんか光也さんより大人じゃね?」
「…俺もいま、真里より小夜の方が大人だなって思ってた」

 なんだか真里と二人でハモるように溜め息を吐いてしまった。

「あうんの呼吸?」
「え?どこで覚えたそんな言葉」
「意味若干違うし」
「遥子お姉ちゃん」

 やっぱり!と言うのもまたハモってしまった。

「小夜、あのな、あいつわりと頭悪いからな。あいつから教わった言葉は一回辞書で調べようか」
「あとはね、私の辞書に不可能はないとか」
「あんのクソ姉貴っ!無駄なことばっかり…」
「隣の柿はよく客食う客だ」
「……」
「小夜、俺が一個教えてやる。今の光也さんのあの状態な、“絶句”って言うんだぜ」
「まさしく!」
「これが、あうんの呼吸」

 今度会ったらぶちのめす。
 あ、もう逢わないのか。

「…まいいや!帰ろ!」

 気付いたら俺は二人より先に歩いていた。辺りはもう、夕方だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...